【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
【挿絵表示】
八つ手さんより、この絵を描いた際のコメントをいただきました。
【イラストを正面向きにした理由は『もう逃げない』。
右目の光があまりない理由が、イーブイの光がまだ届ききってないため。
雷が足元で紫色になりかけているのは、イーブイなしの響という存在の脆さ、暴走の示唆】
そしてこちら更新の時にTwitterに載る方です
【挿絵表示】
こちらでもコメントが!
【OGPイラストはG~GXあたりの響の曲のCDのオマージュ・リスペクトですが
背景の白模様は、原作響のスッキリした疾風とは違い
荒々しい豪雷の風情を混ぜています】
エモいですね。ヤバイですね。抜剣しそうです。
八つ手さん、ありがとうございました!
あたしは人間じゃないデス。
博士と調に造られた――暁切歌の偽物。
与えられた人格も作り物。
与えられた記憶も作り物。
与えられた役割は――生まれた瞬間に消えた。
でもアタシは――調の事が大好きデス。
だから、あの子が笑顔になれるなら何でもしたデス。
博士の実験も耐えられたデス。
守れる力が欲しいと改造もして貰ったデス。
でもアタシは偽物だから、調はちっとも笑ってくれない。
だからアタシは切歌を絶対に目覚めさせると誓ったデス。
――例え捨てられるとしても。
――本物が蘇った時、アタシがお払い箱になるとしても。
だから、アタシは――友達を撃つ事になっても戸惑わないデス。
……ごめんデス、クリス。
調の為に――倒れて欲しいデス。
許してとは言わない。
恨んでくれても良い。
アタシは──ホムンクルスだからこんな事しかできないから。
第六話「暗躍──その目に映る未来は」
キリカの構えるイチイバルは、クリスのイチイバルとは少し違っていた。
クリスのイチイバルは一撃の特化したスタイルで形状は大型ライフル。対してキリカが取り出したのは――重火器。それもクリスの一点特化とは違い、広範囲殲滅タイプだ。
キリカは二つのガトリング砲を抱えると、二課の装者たちに向けて一斉放射。
ばら撒かれる弾丸に、彼女たちは散り散りになって回避をする。
「クリスのと比べて随分と荒っぽいな!」
「どっちも……どっち!」
翼と響がそれぞれ斬撃と紫電を纏った拳圧を放つ。
しかし、それをマリアがマントにて弾き飛ばし、キリカを援護する。
その隙に弾幕が展開され、装者たちは強制的に後退させられる。
「さっきのアメノハバキリもそうだが、微妙に違うな!」
「一撃はわたしの方が重いけど、速度と弾数に負けている」
先ほどの戦いと今のキリカのスタイルを見て、何となく彼女の力の本質に気づき始める奏。
クリスもまた冷静に分析していた。
キリカの力は、こちらを完全に上回っている訳ではない。
方向性が違うだけだ。
初見故に翻弄されているだけだ。
なら――。
「パワーのゴリ押しで、吹き飛ばしてやる!」
奏が槍を掲げて暗雲を呼び、胸の雷を空に向かって放出。そして今か今かと解放されるのを待っている万の雷を。
「喰らいやがれ!」
──THUNDER VOLT♾NOVA
槍を思いっきり振り下ろし、キリカ達に向けて落とした。
夜闇を切り裂く閃光と静粛を壊す衝撃が廃病院を照らし出す。
キリカがばら撒いていた弾丸も雷により消し炭となり、彼女達も万雷に襲われ巻き起こった土煙により姿が見えない。
やり過ぎたか? と奏がタラリと冷や汗を流し――煙が晴れ見えた光景に言葉を失う。
「おいおいおい――マジかよ」
そこには――無傷のマリア達がそこに居た。
セレナが先頭に立ち、短剣を四方に散らして自分たちを包み込むようにエネルギーシールドを展開。
そして形状を三角錐にする事で衝撃と雷を地面に流していた。
完璧に対処されている。
奏は息を乱し、膝を着きながら悔しそうに睨み付けた。
「いや、ナイスだ奏!」
しかしそれを称賛する者が居た。
アメノハバキリに乗り、空から奇襲を仕掛けている翼だ。
剣先にギアのほぼ全てのエネルギーを集束させて、セレナのシールドを突き破るつもりだ。
奏の万雷に上手く紛れたようだ。
だが――。
「奇襲するのなら、その口を閉じる事を覚えなさい!」
マリアが跳躍し、対処する。
槍に波導を纏わせて、翼を斬り落とそうと振りかぶった。
それを見た翼が笑った。
「何――!?」
悪い予感がし振り返ると――コマチに「手助け」されて、拳を光らせる響がセレナ達の背後に回り込んでいた。
「セレナ!!」
「おっと、行かせないぞ!」
マリアを足止めする翼。
どうやら自分が囮になってマリアを引き付け、他の装者を先に倒す算段のつもりなようだ。
セレナ達も背後の響に気付いて対応しようとし――クリスもまたチャージを終えたイチイバルを彼女達に向けていた。
奏の万雷から皆が個人個人で動いて繋いだ連携技。
これまで良いように翻弄された分、纏めて返すつもりのようだ。
「ウオオオオオオオオオ!!」
「はあああああああああ!!」
響とクリスの雄叫びが上がり。
『いっけえええええええ!!』
両翼が後押しした。
「はぁ――舐めないで」
しかしそんな危機的状況を覆すからこそ――彼女はフィーネと名乗り、世界と敵対している。
翼の近くでパンッと乾いた音が響き――マリアの姿が消える。
「どこにーー」
「――良い景色ね。空から敵を眺めるのは」
上から声が聞こえた瞬間――翼はアメノハバキリを両断され、そのまま地面に殴り落とされた。
殴られた際に意識が飛び、落下の勢いにより強制的に目を覚まし、そして地中深くまで突き抜け、海底に沈んで白目を剥いた。
「つば――」
「次は我が身って分かっていないの?」
背後からの声に、奏はほぼ反射でアームドギアを振るった。長年の戦闘によって培われた経験による反撃。
しかし奏のアームドギアは、マリアのアームドギアと衝突し――奏の槍に波導が流し込まれ、黒く変色し、マリアの烈槍に吸収されてしまった。
「な――」
「同じガングニールだからかしらね――でも」
グイッと槍を掲げて。
「装者の差は歴然ね」
地響がする程の威力で――奏の意識を刈り取った。
さらに――マリアはそのまま槍を投げた。
槍の向かう先は――クリスのライフルの砲身。
今まさに放たれようとしていたエネルギーは、外部からの物理的干渉により――暴発。
大爆発を起こし、担い手であるクリスは――煤だらけになって倒れ伏した。
その光景に一瞬響が目を奪われ――高速で移動して来たマリアが彼女の拳を、片手で受け止めた。
込められた力が衝撃となり、マリアに向かって放たれた。
轟ッ!! とマリアの長く綺麗な髪が揺られ――それで終わった。
「――な」
「力の使い方が未熟――出直して来い!」
マリアの握り締められた拳が響の頬に叩き込まれ――そのまま廃病院へと吹き飛び、瓦礫の山へと変えて――沈黙した。
「ブイブイ!?」
響によって咄嗟に投げ飛ばされたコマチは、瓦礫と化した廃病院に向かって走る。彼女を助ける為に。
それをマリアがジッと見つめて――しかしすぐに視線をウェルへと向ける。
「もう十分でしょう? 行きましょう」
「ええ、そうですね。アカシアの状態も確認できました。ククク……これで、僕はようやく――」
怪しく笑いながらウェルはキリカに抱えられ戦線を離脱し、セレナもそれに続こうとし――動かないマリアに声を掛ける。
「姉さん……?」
「――何でもないわ。行きましょう」
しかしすぐにマリアはキリカ達を追いかけ、セレナもそれに続いた――完全敗北した二課の装者達をチラリと見た後に。
◆
「用意周到だな」
「はい。やはりというか、今回の突入は向こうの罠だったようです」
戦闘が終わった後、二課は瓦礫を撤去後敷地内を調べた。
しかし、そこには何も無くもぬけの殻であった。
つまり二課の襲撃はあちら側が立てた台本だという事。
さらに結果は――完全敗北。
「他のアジトの特定は?」
弦十郎の問いに緒川は首を横に振る。
二課の捜査網を使っても分からないとの事。
……彼らはこの状況に身の覚えがあった。
響の居所が分からなかったあの時と同じだ。
「裏に何らかのデカい組織があるのは確かだが――まさか、な」
「あり得ないと言えないのが、不気味ですね」
うーむ、と唸る弦十郎と緒川。
政府の方も調べているようだが、何も分かっていないようだ――米国政府を除いて。
悩みの種が尽きず、思わず弦十郎がため息を吐き、彼は緒川に尋ねた。
「装者たちは?」
「……精神的ショックは大きいようですが、光彦さんがメンタルケアをして頂いたおかげで、問題ありません」
メンタルケア(モフモフ)。
「はぁ……自分が一番混乱しているだろうに、本当に彼は……」
「……完全聖遺物、ですか」
ウェルの語った話は、当然ながら二課の間でも動揺が走った。
どこからどう見ても動物にしか見えない彼が、聖遺物と言われ――正直困惑しているのがほとんどだ。
しかしそれ以上に、仲間が実験動物扱いされていた話を聞いて――誰もが義憤に駆られていた。
それは緒川も、そして弦十郎もだった。
――そして、気になる事がある。
「了子さんは知っていたんですね」
「ああ。だから守ろうとしていたんだ――米国から、日本政府から……そして鎌倉から」
――妙だとは思っていた。
あのライブ事件の後の強引な引き渡し。米国の干渉。鎌倉の圧力。
初めは未知の力に対する警戒からくるものだと思っていた。実際、政府もそのような姿勢を見せていた。
――だが、もし彼の正体を知っていれば?
そうなると話が変わってくる。
彼らは未知の力では無く、知り尽くしている強力な力が欲しかったのだ。
だからあそこまで過度な干渉をして来ていた。
「――ままならないな」
弦十郎は――一人拳を強く握り締め、後手に回っている自分に怒りを抱いた。
◆
「ウィヒヒヒ……ハハハハハハッハハハハハハ!!」
「……ご機嫌ね、ウェル博士」
別のアジトへと帰投したマリア達。
しかし帰ってすぐウェルが狂気じみた笑い声を上げて、マリアは不快そうに、セレナは少し怯え、キリカはうんざりしていた。
ナスターシャも厳しい視線を彼に向けており、周りからの目に気付いた彼は、しかし気にする事なく言葉を紡ぐ。
「それはもう! 我々の希望が後もう少しで手に入るのですから! 感謝しますよフィーネ! アナタのその圧倒的な力!! あと僕は博士じゃありません」
「どういたしまして。それで? 肝心のネフィリムはどうなの?」
「ネフィリムですか? ああ、こいつなら――」
ズレたメガネを押し上げ、彼は言った。
「思っていたより成長していなくて、ヤバイですね……」
「はあ!? 聖遺物は全て喰らい尽くした筈よ!?」
二課を誘い込む為、その前に持ち込んだ聖遺物を全てネフィリムに与えたマリアたち。しかしどういう訳か、想定以上に成長が遅い」
「考えられるのは、過去に受けた傷が思ったよりも深かった。
アカシアの一撃をまともに喰らったのですから、まあ当然でしょう」
『……』
その時の光景を思い出し、口を閉じ悲壮な表情を浮かべるマリア一行。
しかしウェルはそれに構わず、もう一つの推測を上げる。
「後はそうですね……飢えているとか?」
「飢えている?」
「はい。聖遺物を喰らっている時、心無しか作業的でした。もしかしたら喰いたいナニカがあるのかもしれませんね」
――この時。
マリアとセレナは、何故か強い悪寒を感じていた。
それを見逃してはならないと。
しかし現時点で気付く事なく、違和感を抱きながらも受け流してしまった。
「仕方ないですか、聖遺物を与えて地道に成長させましょう」
「何を言っているのです。我々にはストックされている聖遺物は、もう」
「アナタこそ何を言っているのですか? 聖遺物なんてこのご時勢、その辺にゴロゴロありますよ」
「確かにそうデスね!」
そう言ってキリカが複数のコンバーターを掲げた。
ウェルはそれをそっとキリカの胸元に戻した。
「まさか、二課の?」
「ええ、そうですよ。敵の戦力を削ぎつつ目的を完遂する。良い作戦だと思いませんか?」
利に適っているが――正直セレナはその手を取りたくなかった。
目的の為に、他人の物を取り上げる――胸が締め付けられる思いだった。
しかしマリアはその作戦に賛同した。
「分かったわ。それじゃあわたしが――」
「あー。わざわざアナタの手を煩わせる事はありません」
マリアの申し出を断り、彼はキリカの肩に手を乗せて――笑った。
「キリカくんに頑張って貰いますよ――ふふふ」
せいぜい楽しんで貰いますよ。
不気味な笑みを浮かべてそう宣う彼の姿は――まるで悪戯を思いついた悪魔のようであった