【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第九話「現実──逸らせず、背負えず、突き刺さる」

「ブブ……」

「……何してんの?」

 

 呆れた顔でコマチを見た響が問い掛けた。

 二課のシミュレーションルームで訓練をしていた響。途中マフラーが外れ何処か行き、探して見渡した所、コマチがマフラーに絡まって転んでいた。

 最初は解こうとジタバタしていたようだが、どんどん複雑に絡まっていき、今は全てを諦めた顔をして床に頬をくっ付けて寝ている。

 

 どうしてそうなったんだろう? 

 

 そう思いつつ訓練を一時中止して、響はコマチに絡まったマフラーを解こうとする。

 ……思っていたよりも複雑に絡まって取れない。それどころか一つ解く度にギュッとコマチを縛りつけ、強制的に変顔をさせている。

 

「──ブーーーイ!」

「ちょ、今暴れたら……!」

 

 

 

「響。さっき奏が……」

 

 そこにクリスがやって来た。

 響を探していたようで、彼女の名を呼びながら部屋に入り……。

 

「……何してるの?」

「……見れば分かるでしょ」

「分かんないから聞いているんだけど」

 

 マフラーで繭状になり顔だけ出したコマチが、響の右腕に寄生していた。

 どうやら、解こうとしている最中に暴れられて響の右腕を巻き込んでさらに絡まった結果こうなったらしい。

 

「いや、そうはならないでしょ」

「ブイ、ブイ!」

 

 なっとる、やろがい! とコマチが叫んだ。

 響も困り果てた顔をし、どうしたものかとため息を吐いていた。

 

「こうして振り回したら飛び出るかな?」

「ブブブブブブブブ」

「ちょ、ストップストップ! コマチがバイブみたいな声出してる!」

 

 バイブ。

 

「わたしが外すから待ってて」

 

 仕方ないなとクリスが呆れた顔をしながら、響の腕にそっと触れる。

 そして解こうとマフラーを引っ張っていくが。

 ……明らかに、クリスの記憶にある長さと違う。

 そもそも、響が巻いていたあのマフラーの長さで、彼女の腕とコマチを包み込む事ができるのか? 

 疑問に思いつつもクリスは腕を動かし──。

 

 

 

「おーいクリスー、響ー。ここに居るのかー?」

「ふっ。まさかイチャイチャして時間を忘れたんじゃ──」

 

 響を探し、クリスにも呼んでくるように頼み、しかし来なかった為、奏と翼も探しに向かい、こうしてシミュレーションルームにやって来た。

 しかし彼女たちは、部屋の中に居た響たちを見て言葉を失った。

 視線の先に居たのは……。

 

「……」

「……っ」

「ブーイ……」

 

 マフラーがクリスをエロチックに縛り上げ。

 響の手がクリスの胸を鷲掴みにし。

 コマチは顔を真っ赤にして尻もち着いたクリスの下敷きになっていた。

 

『そうはならんだろ……』

『なっとる! やろがい!!』

「ブイブイ!」

 

 結局、響がギアを解除すれば良いと気づくまで、全員でワチャワチャと騒ぎ、四苦八苦し、五人で大騒ぎ。

 

「……ふ」

 

 そんななか、響はその光景に人しれず笑みを浮かべ──。

 

 

 

【──あああああああああああ!!】

 

 コマチを失った響は──闇に飲まれた。

 

 

 第九話「現実──逸らせず、背負えず、突き刺さる」

 

 

「──あれは、暴走?」

 

 失意の底に二課が沈むなか、奏は響を見て呆然と呟いた。

 彼女の視線の先には響が黒く染まり、獣のような荒い息を吐きネフィリムを睨み付けていた。

 それを彼女は──彼女たちは見る事しかできない。

 

【フウウウウ……! フウウウウ……!】

 

 コマチを失った事による喪失感。それを上回る怒り。ネフィリムへの憎悪。

 かつて、コマチを奪われた際にも彼女は自我を保てなくなっていた。

 響が暴走状態になるには──十分だった。

 

【グ──】

 

 様子の変わった響にネフィリムが警戒を顕にする。

 それと同時に苛立ってもいた。

 せっかく美味しい御馳走にありつけたのに、不快な感情をこちらに叩きつけて来る害虫が居ることに。

 だから目の前の彼女も喰ってしまおうと飛びかかり──一瞬で懐に入り込まれ、拳を叩き付けられた。

 

【ゴア……!?】

 

 その衝撃で浮いた瞬間に頬を蹴られて吹き飛ばされる。

 ネフィリムの巨体を物ともしないその怪力に、ウェルは立花響の暴走の力にゴクリと生唾を飲み込み──呟いた。

 

「不味いですね。このままだとネフィリムが殺される」

 

 それは、計画遂行の為に看過できない事態だった。

 

「キリカくん! ネフィリムの保護を!」

 

 ウェルの指示にセレナがギョッとして叫んだ。

 

「アナタ、自分が何を言っているのか分かっているのですか!?」

 

 セレナは知っている。

 キリカはコマチの事を気に入り、友達だと思っていた事を。

 そんな彼女に、友達を喰った怪物を助けろとあの男は言っているのだ。

 嫌悪の感情を隠す事なく、セレナはウェルを睨み付けた。

 

「君こそ何を言っているんだ!」

 

 それをウェルの怒号が打ち返す。

 

「ネフィリムはフロンティアを使うのに必要な完全聖遺物! 貴方方の目的の為にも、僕の素晴らしい野望の為にも掛け替えの無い存在だ!」

 

 彼の言っている事は正しかった。

 

「──本来とは逆となりましたが、こうなっては致し方なし! そうでしょうマリアさん?」

「──ええ、そうね」

「姉さん!?」

 

 ウェルの言葉をマリアが肯定し、セレナが悲鳴にも似た声を上げた。

 あの光景を見てマリアが何も思わない筈が無い。

 それを彼女は己の感情を押し殺して、目的を達成するべく──かつての、そして今の仇を助けようとしている。

 

 セレナは苦虫か噛んだ表情をしながらアームドギアを構え、キリカも悲しそうな顔をしながらウェルの言葉に従い。

 

 それを翼たちが立ち塞がる。

 

「悪いが、此処は通さねえぞ」

「てめえらを先に片付けてから、響を助ける……!」

 

 血を吐くようにして翼がそう言い、奏は瞳孔が開いた目でマリア達を見ていた。

 クリスもまたスコープ越しにマリアを覗いて援護態勢に入った。

 それを見たウェルが唾を吐き捨てる。

 

「止める相手が違うぞトッキブツ!」

「何を!」

「君達が今止めるべきなのは憎き敵ではなく、手を伸ばすべき隣の仲間!」

 

 ウェルが響を指差す。

 

「復讐の手助けをするのも良いが──そういう人間は総じて最期は悲惨な目に遭う!」

 

 そして彼は──決定的な事を言った。

 

「このまま彼女を放っておけば──戻れなくなるぞ」

 

 彼の言葉と同時に、響の体から黄色に輝く結晶が突き抜けた。

 それを翼たちは──目を見開いて見ることしかできなかった。

 

 

 

【グ──】

 

 煩しそうに響は、自分の肉の内側から生えた結晶を掴み強引に引き抜く。

 ブチブチと嫌な音が響き、彼女の手には先が血で濡れた結晶が握られ。

 

【……】

 

 それを握り締めて砕き──破片が響の闇に染まると同時に一本の刀へと変えた。さらに背中から生えたもう一本の結晶も同じ方法で刀に変え──ニヤリと笑みを浮かべてネフィリムに斬り込む。

 

【グオ!?】

【ガア!?】

 

 ザシュッと鮮血が舞い、肉を削ぎ落とされていくネフィリム。

 苦悶の声を上げるが、ネフィリムはカウンターの拳を響に叩き込む。

 太い腕により遠くへと殴り飛ばされた響の背に、さらに結晶が二本生える。

 しかし紫電が走ると結晶はボロリと崩れ去り、さらに響の手にある刀を崩そうとする。

 それを響は──邪魔をするなと憎悪の黒雷で紫電を打ち消し、さらなる結晶を翼のように生やして、羽から磁場を発生させて空を飛んだ。

 

 空高く飛び上がった響は、刀を眼前に突き出しそのまま体を高速回転。

 黒い雷を撒き散らしながらそのままドリルのようにネフィリムへと突進し──そのまま大きな風穴を空けて、辺り一帯に肉片を撒き散らした。

 

【──】

 

 絶叫を上げる事なく、コマチのように呆気なく、稼働停止に追い込まれたネフィリムは音を立てて倒れ込んだ。

 

【フー……! フー……!】

 

 しかし、響はまだ殺したりないのか、未だに殺意を滾らせてネフィリムの遺体へと飛び乗る。

 そしてそのまま──考えられるだけの暴力を繰り返した。

 殴る。蹴る。引っ掻く。噛み千切る。捻り切る。掴んで引き千切る。

 が、どれだけ痛みを与えようと、どれだけ怒ろうが──コマチは帰って来ない。

 

 その虚しさを埋める為に憎悪を滾らせ、悲しみを誤魔化す為に怒りの炎を燃やし、響は右腕に全エネルギーを集中させる。

 彼女の右腕を中心に力の渦が生まれ

 そして腕は闇より深く漆黒に、右腕以外は元に戻り覗かせた顔は、頬には血の涙が、口からはギリギリと歯を噛み締める音が鳴り響き。

 響は──全てをネフィリムに叩き込んだ。

 

「あああああああああああ!!!」

 

 悲しみの絶叫と共に。

 

 そして響を中心に閃光が走り──遅れて大爆発が起きた。

 

 

 ◆

 

 

 その場に居た皆が爆風に晒される中、キリカの元にナニカが飛んできた。

 キリカはそれをキャッチし、ウェルは彼女の手にある物を見て驚いた。

 

「それは──ネフィリムの心臓!」

 

 そしてもう一つは──卵だった。

 ほんのりと温かい。

 

「キリカくん。撤退しますよ」

「……でも博士」

 

 キリカが何を気にしているのか、ウェルは分かっていた。

 それでも尚、彼は撤退するように指示を出す。

 

「僕の野望を叶えてくれるんですよね? ──調くんの為に」

「っ……」

 

 ウェルの言葉にキリカの肩がピクリと跳ね上がる。

 ここで彼の言葉に従わなければどうなるのか。

 目の前の人間に情が移り、本当に大切な人を悲しませて良いのか。

 彼は言外にそう言い、キリカは悲しそうな顔をして──。

 

「……分かった、デス」

 

 痛みに耐えるように、悔しそうにしながらウェルに従った。

 それを見たウェルは穏やかな表情を浮かべて彼女の頭を撫でる。

 

「英断、感謝しますよ。流石は僕の最高傑作だ」

「……」

「悲しむ事はありません。君は僕の言う通りにすれば良いのです」

 

 しかしキリカは表情が暗いままで、それを見ていたセレナは激情に駆られ今にも飛び出しそうになっていた。

 

「おや? どうしたのですかセレナさん」

「──いえ、何でもありません」

 

 これでは飼い殺しだ。

 反吐が出る。

 その言葉を飲み込んで、セレナは目を伏せる。

 ──目的の為にはウェルの言動が正しいのだから。

 

 しかし、マリアだけはウェル達と別方向へと歩いていく。

 

「……姉さん?」

「先に帰ってなさい──すぐに追い付くから」

 

 マリアの言葉にセレナは不安そうにするが、振り向いた姉の顔を見て──ウェル達と共にこの場を去った。

 セレナは、彼女に言葉を掛ける事ができなかった。

 だって、先ほど振り向いたマリアの顔は──あの時、リッくん先輩を失った時と同じだったからだ。

 

 セレナ達が離脱するなか、翼たちは動かなかった──いや、動けなかった。

 失意のどん底に堕ち、響が復讐を為しても──胸の奥が晴れる事は無かった。

 

『……』

 

 それでも、マリアが響に近づくのを止めようとした。

 ……した、のだが。

 

「退きなさい」

『……』

「今のあなた達では──わたしを止められないわ」

 

 それだけ伝えるとマリアは彼女達の横を通り過ぎ、クレーターの底にいる響の元に向かう。

 彼女がマウントを取っていたネフィリムは先程の爆発で完全に消滅したらしい。

 それだけの怒りが響にあった。

 それだけの怒りを抱く程に──コマチが大切だった。

 

 マリアが響の前に立つ。

 膝を突き、俯いている彼女の顔は見えない。

 しかし、地面に絶えず落ちている水滴が、マリアに響が今どんな顔をしているのか、容易に想像させた。

 

「……──」

 

 口を開いたマリアが言葉を紡ごうとした瞬間──響が掴み掛かった。

 マリアはそれに抵抗せずそのまま押し倒され──頬に握り締められた拳が打ち込まれた。

 鈍い音が響き、マリアの頬に衝撃が伝わり、ポタリポタリと響の涙が落ちた。

 

「返せよ」

 

 響が殴る。

 

「返せよ……」

 

 しかしガングニールを纏っているマリアには効かない。

 

「返せよ……!」

 

 それでも響は殴り続ける。

 訴え続ける。

 

「返せよぉっ!!!!!」

 

 殴る。殴る。……殴り続ける。

 コマチと繋いでいた手を握り締めて、大切な人との温もりを感じていた手で。

 目の前に居る許せない相手に、冷え切った心で手を握り締めて叩き付ける。

 

「言い訳じゃ無いけど、アレはわたし達も予想外の出来事だった」

「そんな言い訳ぇ!」

「事実よ──でも、あなたのそれは八つ当たりでは無い」

「そんな事──」

 

 パシリと響の拳が受け止められる。

 グイッと持ち上げられ、マリアが立ち上がり、宙吊りになった響は、目の前の女を睨み続けた。それをマリアは真っ直ぐな目で見つめた。

 

 ──それが、誰かを助けようとしているコマチに似ていて、響は怒りの表情から悲しみの表情へと変わり、泣いた。

 

「なんで……」

「……」

「なんで、わたしから奪うの……! なんで、わたしの日陰を奪ったの……!」

 

 心が、折り砕けた。

 

「わたしは、ただアイツと一緒に居たかっただけなんだ」

 

 涙が流れ続ける。

 

「ただ馬鹿みたいに遊んで、美味しい物食べて」

 

 言葉から紡がれるのは、もう叶えられないささやかな願い。

 

「そして最後は一緒にあったかい布団で、幸せな夢を見る──それだけが、わたしの!!」

 

 その願いは──永遠に絶たれた。

 

「ねぇ……お願い」

 

 マリアが響の手を離し、しかし彼女は縋り付く。

 

「返して……」

 

 涙を流しながら、心を震わせながら。

 

「返してよぉ……」

 

 マリアに懇願した。

 

 それをマリアは──。

 

「できないわ」

 

 力強く、響の言葉を拒絶した。

 

「わたしにそんな力は無い……いえ、あったとしても無理でしょうね」

 

 マリアの言葉が、紡がれる。

 響にとって耐え難い厳しく、強く、真っ直ぐな言葉を。

 

「わたしはあなたの敵だから」

 

 同じ痛みを知る敵同士。

 

「だから謝らない。許して欲しいとも思わない。可哀想だと思ってはいけない」

 

 歩み寄る事は不可能だと、彼女は言う。

 

「わたしにできる事はない──」

「っ──ぁああああ!!」

 

 響が泣き叫び、握った拳を目の前の敵に振り翳し──ギアと波導の力を解いたマリアの頬に叩き込んだ。

 

「ぐっ……!」

 

 幼い姿のマリアは吹き飛び地面に倒れ伏す。

 口の端から血が流れ、腫れ上がり──響が傷付けたのだと明確に表していた。

 

「ぁ──」

「っ──それが、復讐、よ……」

 

 痛みに耐えながらマリアは立ち上がり、響を強く見据えながら言った。

 

「あなたにはその権限がある──でも、忘れないで。()()が殴るという事。復讐だという事──彼が最も望んでいない事」

「──」

「それを、その痛みを」

 

 マリアはギュッと胸を握り締めながら。

 

「我慢しながら、抱えながら、進むしかない事を覚えておいて──もう支えてくれる人は居ない事もね」

 

 それだけを伝えるとマリアは再びギアと波導を纏い大人の姿になると、最後に響を振り返って──その場を去った。

 

 

 ◆

 

 

「響くん!」

 

 二課のスタッフと共にカ・ディンギル跡地にやって来た弦十郎。

 彼は他の者に翼達を頼むといの一番に響の元に向かった。

 暴走したというのもあるが、やはり一番精神的に不安定だと判断したのだろう。

 呆然とマリアが去った方向を見続ける響の前に立ち、彼女の肩に触れて強く揺さぶると、ようやく彼の方へ向かった。

 

「……げんじゅろーさん」

 

 覚束ない口調で彼を呼ぶ。

 そんな彼女を痛まし気に見ながら、なんだ? と優しく力強く尋ねる。

 

「こまちは、どこですか?」

「──」

「さっきからさがしているんですけど、いないんです」

 

 キョロキョロと不思議そうにコマチを探す響。

 

「まったく、しかたないやつですね。わたしがいないとダメだ。はなれたらわるいやつにつかまる──」

「響くん……アカシア、いやコマチくんは──」

「──あぁ、そっか。喰われたんでしたっけ」

 

 響が弦十郎の手を払い除けて、クレーターを駆け上がる。それを慌てて弦十郎が追い、彼女は地上に出ると叫んだ。

 

「──コマチィ! 出て来なさい!」

「響くん……!」

「あんた、また何かやらかしてて、このタイミング利用して隠れているんでしょ!? ほら、今出て来たら怒らないから!」

 

 支離滅裂だった。

 響は──精神崩壊を起こしかけていた。

 

「響くん……彼は、もう」

「うるさい! アイツはわたしと約束したんだ! ずっと側に居るって! そう言って助けてくれた! だから今も──」

「響くん」

「コマチ! いい加減にしないと怒るよ! コマチー!」

「響くん……!」

「ねぇ、お願いだからさ、コマチ……コマ──」

「響くん!」

 

 ピタリと響が叫ぶのが止まり、振り返って弦十郎を睨み付けた。

 邪魔をするなと。現実を突き付けるなと。これ以上わたしを悲しませるなと。

 

「うるさい! あいつは絶対帰ってくる!」

「……」

「ああそうだ! ボール! ほらフィーネが作ったあの装置! これだけ探しても居ないって事はそこに居るんだ! 二課にあるんでしょ? コマチはそこに──」

「響くん」

「……」

 

 たしかに二課にコマチの制御装置はある。しかし肝心の記憶をセーブする機能が無い。

 そもそもアレを作れるのは、記憶をセーブする制御装置はフィーネだけであり、それもあの戦いの後、コマチが復活と同時に失われた。

 

 そして、二課にあるその制御装置にコマチは戻らなかった。

 

 加えて──響にとって更なる絶望する情報があった。

 

 弦十郎の元に通信が入る──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『風鳴司令。やはり見つかりませんでした、アカシアの反応は。前回の誘拐に備えて、フィーネが残したデータから作り上げた探知機能にありませんでした。影すらも』

「!? 馬鹿者! 今すぐ口を──」

『これでは確定していますね、彼の死は。そしておそらく復活しても無いでしょう──コマチとしての記憶が』

 

 報告は終わりです、と告げてそのオペレーターからの通信が途絶える。

 

「おい待て! お前は何を考えている! そもそも本当に二課の者か!? くそ! 友里、先程のオペレーターは──」

「──そっかぁ。コマチは本当に死んだんだぁ」

「──っ! 響くん! 気をしっかりと持て! 響くん! 響くん!」

 

 コマチは死んだ。

 あまりにも重く、背負い切れない事実が響にのし掛かった。

 

 弦十郎の必死の呼び掛けが続く中。

 

 響は──目の前が、真っ暗になった。

 

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