【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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進化しないシンフォギア
後日談的なの


「──つまり、ネフィリムがアカシアくんを喰らった事が、記憶の保持に繋がったと?」

「ええ、そうですね。そもそも、活動を終えると同時に、記憶をリセットして別の姿になる方が妙なのです。いち聖遺物としての権能にしては多才過ぎる」

「なるほど……」

 

 なるほど──さっぱり分かんない! 

 

 現在俺は、おやっさんに連れられてナスターシャ教授と面会をしている。

 何でも、今回俺がコマチのまま蘇った理由を、聖遺物に詳しい彼女なら何かしら知っているのでは? と思っての事らしい。

 結果はこの通りですが。

 

「しかし彼なら……ミスターウェルならこう答えるでしょうね──愛の力だと」

「何故そこで愛ッ!?」

 

 この人見た目に似合わず茶目っ気あるな!? 

 

「知りません。彼ならそう言うと思っただけです」

「そうなのか……」

 

 でもその理論だと響ちゃんが俺の事大大大(以下略)好きになっちゃいますけど大丈夫ですか? む、悪寒。

 

「ただ、マリアが気になる事を言っていました」

「マリアくんが?」

 

 何だろう。

 

「あの状態のアカシアは、酷く不安定であり、同時に安定していたと」

 

 不安定で安定……? 

 謎謎か何かかな? 俺、そこまで頭よろしく無いんだ……。

 

「完全聖遺物キマイラ。そう呼ばれてはいましたが、力の本質は別の所にあると思います」

「力の本質?」

「はい……ネフィリムに喰われ基底状態に戻ったからこそ、本来の力が剥き出しになった。そして、その状態でキリカがエネルギーを注入させた結果」

 

 ──今ここに居る俺って訳か。

 ……まったく。あの白髪デス子め。

 何で自分の命を使ったんだって怒ってやりたいのに、俺の扱いが雑なアイツに自慢のフワフワ尻尾でビンタしてやりたいのに。

 ああ、本当──何で死んだんだよキリカ……! 

 

「ブイ……」

「……貴重な話をありがとう」

「いえ、構いません──ですので、どうかマリアを」

「分かっています──彼女達は必ず守ります」

 

 おやっさんは最後にそう約束して、ナスターシャ教授に宛てがわれている部屋を出ていく。

 出る際になんとなく、おやっさんの肩の上で手を振ると、一瞬驚いた顔をして──しかし直ぐに笑みを浮かべて手を振った。

 

「さて。オレは発令室に戻るがアカシアくんは?」

 

 ん〜……マリア達の所へ行くよ。

 響ちゃん達は学校だし、調ちゃん達はこの時間忙しいだろうし。

 発令室に居ても、ふっじー達の邪魔になるしね。

 

 と、身振り手振りで伝えてみる。

 

「そうか。分かった。何かあったらすぐに戻って来い」

 

 おやっさんと別れ、俺はマリア達の部屋の前まで走る。

 ドアの前に立ち、足元のセンサーに手をかざして中に入る。

 

「あら? どなた──」

 

 来客に気付いたセレナがこっちを見て──。

 

「キャー! リッくん先輩じゃないですか!」

 

 嬉しそうに悲鳴を上げて、俺を抱き上げて頬擦りし始めた。

 恐ろしく早いモフモフ……! 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

「まったく。セレナ、はしゃぎすぎよ」

 

 呆れた声で妹を嗜めるちっこいお姉さん事マリア。

 何やら本を読んでいたようで、パタンと音を立てて閉じる。

 ……何読んでいるの? 

 

「愛憎」

 

 本当に何読んでいるの!? 

 

「適当に見繕った本がこれだっただけよ。深い意味は無いわ」

 

 そ、そうなのか……。

 それにしても外見に合わず難しそうな本を読んでますね……。

 

「外見に合わずは余計よ。やる事が無いから本を読む事くらいしか、暇潰しできないのよ」

 

 ふむ。ならば割と一人の時間が多い俺が、暇潰しの方法を伝授させてやろう。

 もちろんセレナにもね。

 

「わー! ありがとうございます! あ、紅茶煎れますね」

 

 うむ。でも冷やしてね? 猫舌じゃないけど熱いの舐めるとアチッてなるから。

 

「……それ、猫舌でしょ?」

 

 

 ◇

 

 

 ──そして哀れなふじもんは、俺のやらかしにより【美少女動物園ロリコン管理員】なる汚名を被ってしまったんだ……。

 

「っ……そんなの悲しすぎます。笑えませんっ」

「いや赤の他人からしたら涙流して笑うわよ。話術で流されないで」

 

 でも本人も割と満更じゃなさそうだった。

 

「リッくん先輩。そのホームレスとは縁を切りなさい。切らないならわたしが切るわ」

 

 そう言ってマリアはシュッと手刀を繰り出した。わー、痛そう。

 ……そういえば、なんでこんな話していたんだっけ? 

 

「さあ?」

「……ハア」

 

 俺とセレナが二人揃って首を傾げていると、何故かマリアがため息を吐いた。

 どうしたん? 

 そう問い掛けるも「別に」と素っ気無く返される。

 

「あ、茶葉が切れたので隣の部屋に行って取りに行って来ますね!」

 

 扉を開けてパタパタと走り去って行ったセレナ。

 うーん。自由だなー。

 

「拘束されている自覚は無いのかしら……」

 

 まぁ有っていないような物だしね。

 

 現在マリア達は二課が身柄を確保している。しかし割と自由にさせているのはおやっさんの温情──ではなく。

 ちょっと世論がややこしい事になっているからだ。

 

 現在、武装組織フィーネは「世界に宣戦布告したテロ組織」と「月の落下を阻止した英雄」と、二つに別れて見られている。

 あのライブでソロモンの杖を使い、無関係の人間を危険な目に合わせた、宣戦布告した、世界を混乱させたと声高に言うのはアメリカ。元々FISはアメリカ管轄の組織で、そこから暴走して手綱を握り切れなかったと見られるのが嫌らしく、マリア達の身柄の受け渡しを要求していたんだけど、蕎麦食っていたおじさんが先手売って牽制しているらしい。FISが過去にしてきた事とか、証拠隠滅の為に実験に使われていた子ども達を処分しようとしたりとか、月の落下を黙っていた事とか。

 それで今、世界全体から猛烈に非難されて対応に追われているらしい。

 

 そして、マリア達を英雄視しているのは……ある宗教団体らしい。

 詳しくは聞かせて貰えなかったけど、この世界ではとても発言力があるらしく、大国であるアメリカも無視できないだとか。だからマリア達に対して下手な扱いをするなと日本政府から通達があったとか。

 

 俺が分かるのはこれくらい。政治はよく分からん。

 

 でもおかげでマリア達が息苦しい思いをしなくて済んでるから結果オーライかな。

 

「……コホン」

 

 突然マリアが咳き込んだ。

 風邪かな? なんか心無しか頬も赤いし……だったらお暇させて貰おうかな。悪化したら悪いし。

 

「そ、そうじゃなくてっ」

 

 しかしマリアは俺を強く呼び止めて、キョロキョロと周りを見渡し、セレナがまだ帰って来ない事を確認し──。

 

「……ん」

 

 とても恥ずかしそうに、瞳をウルウルさせて顔を真っ赤にさせたマリアが、俺に向かって両手を広げた。

 ……素直じゃないなぁ。

 俺はマリアに近づき、ぴょんっと跳んで彼女の腕の中に収まる。

 

「──モフモフ」

 

 マリアが蕩けた顔でそう呟いた。

 普段のキリッとしたマリアからは考えられない姿だ。

 実はこうして二人っきりになると、彼女は甘えてくる。

 ふん、流石は俺のイーブイボディだ。

 

「……夢みたいだわ」

 

 ふと、マリアが語り出す。

 

「以前もこうして抱かせて貰っていた。でも、それは二度と叶わないと思って──」

 

 ポタリ、と俺の背中に雫が落ちる。

 

「──ずっと会いたかった……! こうして抱き締めたかった……! もっともっと一緒に過ごしたかった!」

 

 彼女は、過去を想い、胸に抱えた想いを伝える。

 

「あの卵に触れた時、気付いた。願えば取り戻せると。でも──」

 

 俺の隣には既に響ちゃんが居た。

 だからマリアは身を引いた。

 辛く無い訳が無かった。……でも、彼女は。

 

「ブイ」

 

 ありがとうマリア。

 君のおかげで、俺は大切な人を忘れないで済んだ──感謝している。

 

 ──強くなったな……マリア。

 

「──リッくん先輩っ」

 

 マリアは泣き続けた。

 俺を抱き締めてずっとずっと……。

 俺は覚えていないけど、涙を流すほど、取り戻したい時間があったのだろう。

 でも、それでも彼女は──奪いたい訳ではなかった。

 

 ……本当に強いな。

 

 彼女は、勇者だ。

 胸にある勇気で、誰かの笑顔を護る強き者。

 

 尊敬するよ、本当に。

 

 でも今は。

 

 ただの少女であってくれ。

 

 その為なら──幾らでもモフらせてあげるから! 

 

「──姉さん……!」

 

 マリアは、しばらく俺を抱き締めていた。

 

 

 ◆

 

 

「あ、ちんちくりん」

 

 誰がちんちくりんじゃい。

 俺はコマチだ! 

 

「あはは! 冗談デスよ!」

 

 本当に分かっているのだろうかこのデス子は……。

 それはそうと体は大丈夫? 

 

「ん……まだ走り回ったりとか激しい運動は無理デスが、体調的には元気モリモリなのデス!」

 

 そっか……。

 俺に癒しの力が残っていれば良かったんだけどな……。

 

「……立花響の前でそういう事言わないでよ。たるいから」

 

 ジト目でこっちを見ながら調博士が、俺に釘を刺してくる。

 わ、分かっているよ……もし言ったらどうなるかなんて分かり切っているし……。

 

「だったら良い──それに」

 

 調博士がそっと切歌ちゃんに触れて、強い意志を持って言う。

 

「切ちゃんはわたしが支える。……キリちゃんと約束したし」

「──そうデスね! 早く元気になってもう一人のアタシを安心させてあげるデスよ!」

 

 ──ありがとう。

 

「なんでコマチがお礼を言っているデスか?」

「むしろお礼を言いたいのはこっち」

 

 それでも、受け取って欲しい。

 俺の言葉を受け、二人は困ったような笑みを浮かべて。

 

「仕方ないデスねー」

「受け取らなかったらしつこそうだから、貰っておく」

 

 それでもしっかりと俺の我がままを受け止めてくれた。

 何かあれば手伝うから! 俺ができる事なら何でもするよ! 

 

「──へえ」

 

 ──あれ、悪寒。

 調博士の目が怪しく光る。

 切歌ちゃんは何故か「あちゃー」と額に手を当てていた。

 え? どういうこと? 俺何か不味い事言った??? 

 

 ガシッと調博士に掴まれる。

 早すぎて気付かなかった。

 

「わたしから言うと立花響に殺されそうだから言えなかったけど──当の本人が“良い”って言うのなら、良いよね」

「ブ……ブイ?」

 

 えっと、一体全体何の事でしょう……? 

 

「科学者の端くれとして、あなたの事はとても興味を持っていた。だから──」

 

 頬を染めて、ハアハアと息を荒げながら──。

 

「──解剖させて?」

 

 とんでもない事を言い出した。

 

 ──俺は、悲鳴を上げて調博士から逃げようとし、それを「先っぽ! 先っぽだけだから!」と調博士が追いかけ回し、切ちゃんが彼女を止めるまでこの鬼ごっこは続いた。

 

 

 マッドサイエンティスト、こわい。

 

 

 ◆

 

 

 夕方になり、学校を終えた皆が仮説本部へとやって来た。

 収録していたツヴァイウィングも一緒なのか、ゾロゾロと人数が多い。

 俺は彼女達の出迎えをする。

 

「光彦!」

 

 俺を見つけた奏さんがいの一番に駆け付け、そのまま抱き上げてギュッとやわっこい大きなアレで俺を包み込んだ。

 やっほい! やっほい! 

 

「ただいま〜」

 

 おかえり〜。

 

 あの日以来、俺はこうして彼女達に抱擁されながら、ただいまとおかえり、とその存在を確かめ合っている。

 ずっと俺が居なかったから不安らしい。全面的に俺が悪いので、受け入れている。

 

 それに柔らかくて役得だしね! 

 

「次はオレだな。ほら来〜い光彦〜」

 

 翼さんが俺を抱き上げて、奏さんと同じ事をする。

 ……。

 ゴツゴツして痛えわ。壁か? 

 

「はっはっは──剣だ」

 

 シュッと手刀を突き付けてハイライトが消えた目で、俺を至近距離で見つめる翼さん。

 こわいこわい。チビりそうだから止めて。

 

「こら、そんな事言わないの」

 

 ヒョイっと翼さんから俺を取り上げて、メッと注意してくるクリスちゃん。

 やっぱりこの子あざといな。

 それにおっぱいも翼さんと違ってデカい。年下なのに。身長低いのに。

 

「……」

 

 翼さんの目が死んでますね。クリスちゃんの巨大ミサイルを斬り落としかねない目で見ている。

 しかしそれに気付いていないクリスちゃんはギュッと俺を強く抱き締めている。

 役得! 役得! 

 

「はい、次は響の番だよ」

 

 堪能したのか、クリスちゃんは後ろでみんなを見ていた響に俺を手渡そうとする。

 

「いや、わたしは良いよ」

 

 しかし、響ちゃんはそれを拒否する。

 というより恥ずかしがっていますねこれは。毎度の如く。

 はぁ、まったく素直じゃ無いんだから。

 俺はクリスちゃんの腕の中から飛び出して、響ちゃんの肩に乗る。そしてふわふわの尻尾をクルンと巻き付けて一声鳴いた。

 

「ブーイ」

 

 素直になりなよ? 

 

「……うるさいっ」

 

 しかし響ちゃんはプイッと顔を背け、それでも俺が巻いた尻尾を払い除ける事はなかった。

 

「じゃあわたしが纏めて抱き締めるねっ」

 

 そんな俺たちに、背後から近付き、俺ごとギュッと抱き締めるのは──未来ちゃん。

 

「み、未来!?」

「なぁに? 響」

 

 驚いた声を上げる響ちゃんに、未来ちゃんはニッコリと笑顔を向けて。

 

「──ううん。何でも無い」

「そう、分かった」

 

 目を閉じてそっとため息を吐き、でもこっそりと笑みを浮かべる響ちゃんに、未来ちゃんは嬉しそうにギュッと抱き締めた。

 

 ……翼さん。

 

「なんだ?」

 

 この二人に挟まるの、大罪な気がする。

 

「だろうな。でもお前は大丈夫じゃないのか?」

 

 そうなんですかね……。

 

「ああ。……で、何でオレに聞くんだ?」

 

 そりゃあ、ねえ。

 

「納得できねえ!」

 

 グヌヌと唸る翼さんを眺めながら、俺はお日様と陽だまりに挟まれ、その温もりを感じ取っていた。

 

 

 ◆

 

 

「ん」

 

 はいはい。

 

 就寝時間になり、ベッドの上で響ちゃんが両手を広げる。

 俺はその腕の中に入り、そのままゴロンと横になる。

 

 皆の前では素直になれない響ちゃんだが、この時間はとても素直だ。

 ギューっと痛いくらいに抱き締めてくる響ちゃんの抱擁を、俺は甘んじて受け入れる。

 

「──おやすみ」

「ブイ」

 

 パチンと部屋の電気が消え、俺も目を閉じる。

 しばらくすると、響ちゃんが話しかけてきた。

 

「コマチ、此処に居るよね?」

「ブイ」

「もう何処にも行かないで」

「ブイ」

「──おかえり、コマチ」

「──ブイ」

 

 その言葉を最後に響ちゃんは安らかな寝息を立てて──俺もいつの間にか眠った。

 

 ……おやすみ、響ちゃん。

 ……ただいま、響ちゃん。




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