【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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前日談的なの

 ──フロンティア事変は確かに解決された。

 

 月の落下を止め、悪意を覚えた完全聖遺物ネフィリムの暴挙を防ぎ、星を、世界を救った。

 

 ──だが、それだけだ。

 

 まだ、残された命題がある。

 まだ、残された禍根がある。

 まだ──取り除かなければならない種がある。

 

 彼らは致命的な見落としをしている。

 

 故に──人形は笑う。

 彼らが守った世界を──壊す為に。

 

 

 ◆

 

 

 浮上したフロンティアは、謂わばパンドラの箱であった。

 異端技術に関する情報が溢れるようにして存在し、フロンティア事態、現存する兵器を凌駕する力を有していた。

 どの国も、その力を欲していた。

 しかし一つの国がフロンティアを所有すれば、世界情勢のバランスが崩れるのは明らかであった。

 故に、慎重に話し合うことになったのだが──。

 

 そのフロンティアにて、襲撃が起きていた。

 

「うわあああああ!?」

「何なんだお前は!? や、やめ──」

 

「煩いな、ハエどもが。用はないんだよ、貴様らに」

 

 大雑把に力を使い、各国が派遣していた軍事船は海に沈み、人はゴミの様に散る。

 しかしそのヒトデナシは興味を見せる事なく、そこに向かう。

 彼が目指すのは──フロンティアの心臓部。

 正確には、現在世界で唯一開いているであろうバビロニアの宝物庫への扉。

 男は、何者にも邪魔される事なく目的地に着き、そのまま──宝物庫へと足を踏み入れた。

 

 

 ◆

 

 

 ──何故、奴を喰えなかった? 

 ──何故、このような目に合っている? 

 ──何故、あのような眼で見られなければならない? 

 

 基底状態になったネフィリムは、何度も何度も自分が負けた理由を考えていた。

 アカシアを取り込んだ際に得た感情と知性で、蓄積された知識を閲覧して理由を模索する。

 だが、分からなかった。分からなかったが──答えを得ることができた。

 基底状態になったネフィリムを拾った人形によって。

 

「君は立花響とアカシアに負けたと思っているが違う。彼らではない」

 

 人形は言う。

 

「君は彼女に負けたのだ。あのホムンクルスに」

【──!?】

 

 ネフィリムが強く脈打ち、抗議する。

 ふざけるな、と。あの残りカスに自分は負けたのか、と。

 アカシアやガングニールの装者に負けたのなら良い。

 しかし、あのような出来損ないの人形に負けたと言われるのは、我慢ならなかった。

 

 その怨嗟の声を聞いた人形は──。

 

「ならばこれからじっくりと味わうが良い。その人形に使われる屈辱を」

【!?!?!?】

 

 ネフィリムは強大な力により自我が奪われ──ただの力となった。

 それを何の感慨も無く確認した人形は、扉を開け外へと出た。

 

 

 ◆

 

 

「無駄骨だったな、態々出向いたというのに」

 

 扉から出たヒトデナシは、得るものがなかったのか不服だった。

 心臓部の外に出て、空へと飛び、フロンティア全貌を見渡せる高さまでたどり着くと、振り返る。

 そこには、救援要請を受けたのか追加の軍事船が到着しており、事切れている大量の軍人達を前に言葉を失っていた。

 

 それが、彼らの命運を賭けた。

 

「──黄金に消えよ、フロンティア」

 

 ヒトデナシの服が吹き飛び、掲げた腕に太陽が君臨する。

 それを見上げた軍人達は──自分が死んだ事に気づく事なく蒸発し……フロンティア事消え失せた。

 

「これで消えた、不安要素は。しかし遂に現れなかったな──あの魔女は」

 

 アカシアが関係している以上、現れ何かしらの妨害をしてくると思っていた。

 しかし現れなかった。

 肩透かしだが、障害が無いのなら計画を進めるだけだ。

 

 ヒトデナシは、その場を去り──。

 

「……」

 

 それをジッと見ている者が居た。

 

 

 ◆

 

「みんな、丸くなったな」

 

 翼さんのその一言が──乙女達に火を付けた。

 

 これは、尊厳を賭けた聖戦である。

 

 

 

 事の始まりはこうだ。

 拘束されたマリア達だったが、これから設立される国連直轄の組織SONGに所属する事により自由の身となった。

 元々緩かったけど、これで大手を振って外に出られる。

 響ちゃん達もその事を喜び、同じ仕事場で働く事となる彼女達の歓迎会をしようとした矢先に──先ほどのセリフだ。

 

 和気藹々した空気が一転、重く冷たくなる。

 気付いていないのは、本人だけで、周りは戦慄していた。

 

 ……ちなみに、翼さんは性格的な意味でマリア達に丸くなったと言っている。敵対していた時は、目的の為にピリピリしていたから、こうして落ち着いている姿を見れば丸くなったっと思うのも無理は無い。

 

 ──が、俺は気付いている! 

 

 プリンよりプリン体が大好きなセレナ! ちょっと最近呑み過ぎてお腹周りを気にしている!! 

 

 普段から運動不足の調博士! 二課(現在SONG)の職員が作る栄養満点の食事を取りながら、研究か寝るかの生活をして肉が付いている! 

 

 切歌ちゃん! もっと食え! 

 

 そして、丸くなっているのは元FIS組だけじゃない! 

 

 奏さん! 最近ケチャップ使って大食い番組に出てお腹気にしてる! 

 

 クリスちゃん! 成長期でまたおっぱいデカくなったと別の意味で丸くなる!! 

 

 未来ちゃん! 響ちゃんとお好み焼きフラワーによく行くようになって、胸よりお腹が成長! 

 

 そして最後に響ちゃん! 最近いつもよく食べるようになって成長からの成長! 正直一緒に寝る時柔らかくて枕としてさいこ──。

 

 ──ズンッ。

 

「──それ以上言ったら……もぐ」

 

 ナニを!? 

 

「……とりあえず、トレーニングするか?」

 

 奏さんの申し出に、全員頷いた。

 

 

 

 仮説本部には、装者のスキルアップをする為の施設がたくさんある。税金の有効活用ですね。

 そこで、その施設を使ってダイエ……トレーニングする事になったのだけど、人数が多いから二つに分ける事になった。

 

 αチームには翼さん、セレナ、調博士、未来ちゃん。

 βチームには奏さん、クリスちゃん、マリア、切歌ちゃん、響ちゃん。

 

 親睦を深める意味も込めて、普段行動を共にしている組はあえて分けている。

 ちなみに俺は参加しても仕方ないので、両チームの様子を見る事に。

 

 先に様子を見に行ったのはαチーム。

 彼女達はジムでトレーニングをしている……のだけど。

 

「カフュー……カフュー……」

「ぜえ……ぜえ……ぜえ……!」

 

 元々体力の無い調博士と装者じゃない未来ちゃんがグロッキーだ。

 比べて翼さんとセレナはケロッとしている。

 セレナは死に体の二人にスポーツドリンクを渡しながら謝った。

 

「すみませんペース配分を間違えていました。いつも姉さんがこなしているメニューをさせてしまい……」

「あ、あれがトレーニング……?」

「拷問の間違いじゃなくて……?」

 

 二人はセレナの言葉に戦慄していた。

 

「なるほど。あの規格外な戦闘能力には、このトレーニングメニューによるものか」

「頭おかしいわよ、あのロリ勇者。身体年齢はわたし達の中で一番下でしょう……!?」

 

 まぁ、正直俺もドン引きしている。

 そしてそれに着いて行ける翼さんは翼さんですげえ。

 

「確かにキツイけど、オレには秘策があるからな」

「あるなら……先に言って……」

「わたしも……知りたいです……」

 

 グロッキー組の懇願に、翼さんは胸を張って答えた。

 

「訓練後のご褒美をイメージすれば良い」

 

 訓練後のイメージ? 好きな食べ物とか? 

 

「ああ、分かります。訓練後に飲むビールはかくべ──」

「訓練終わったらな。奏がお疲れ様って頭を撫でてくれるんだ。クリスもタオルとか持ってきてくれて労ってくれる! そう考えるとトレーニングも苦じゃないだろ!?」

「──そうですね! 確かにそういうご褒美があると、トレーニングも楽々ですよね!」

 

 翼さんの理論、かなり頭痛いな……。

 そしてセレナが必死に誤魔化している姿もかなり痛々しいな……。

 調博士も翼理論が理解できないのか、苦言を漏らす。

 

「そんな根性論で乗り越えれる訳がない……」

「そうなのか? 調は訓練の後に切歌に労って貰っても嬉しくないのか?」

「……」

 

 翼さんの言葉に、調博士が黙り込む。

 え? もしかして、マジですか? 

 

「──舐めないで、切ちゃんの笑顔にはエナドリ10本分以上のエネルギーがある」

 

 こればかりは譲れないと、強い意志を持って応える。

 ……いや、そこでムキになる所なの? 

 

「わ、わたしだって! 響の笑顔があれば!」

 

 ちょっと待って未来ちゃん君まで参戦しないで??? 

 

「ふふふ。わたしも分かります。普段真面目な姉さんが見せる優しい笑顔と、あのちっちゃな体を抱き締めた時の感触、そして照れて赤くなる顔──ふふふ、堪りません」

 

 そしてセレナさん、多分アナタだけ趣旨が違う。色々とやばいよ発言とその顔は。

 

「よし! じゃあみんなまだまだ頑張れるって事だな!」

『え……?』

「そうですね。最初は姉さんがしているウォーミングアップでいっぱいいっぱいだと思いましたが、この調子なら本メニューでも行けそうですね」

『──え?』

 

 さて、俺は響ちゃん達の方へ向かうか。

 

 背後から聞こえる悲鳴に聞こえないフリをしながら、俺は水練場に向かった。

 

 

 俺が来る前に一泳ぎしたのか、みんなプールサイドに座って休憩していた。

 こっちには切歌ちゃんも居り、リハビリも込めてプールでトレーニングをしている。

 

 

「マリアは泳ぎ方を教えるのも上手デスが、泳ぐのも上手でしたね! 凄いデス!」

「まさかぶっちぎりで勝つとは思わなかったぜ……」

「うん……早かった……」

「というか、その体の何処にあんな力があるだろ……」

 

 どうやら、切歌ちゃんを抜いた四人で競争しているらしい。

 そして一番早かったのはマリア、と。

 相変わらず凄いなマリアは……やること為すこと人並み以上だ。

 

「わたしが勝てたのは、アナタ達と競争したからね」

「……なに? 優越感に浸れるから勝てるって思ったの?」

 

 響ちゃんが何処かトゲのある言葉で聞き返す。彼女、まだ何処かマリアに対して苦手意識持っているんだよね……。

 しかしマリアは、響ちゃんの言葉に苦笑して首を横に振る。

 

「別にそういう訳では無いわ。ただ、古来、人は競争を繰り返す事で進化して来た。

 相手に勝ちたい。相手に負けたく無い。

 その想いが弱い人間に進化を、成長を促して今がある」

「……」

「切磋琢磨──日本には良い言葉があるわね。隣人と互いに己を高め合う。そして、その力で相手を助ける事ができる──。

 だからわたし、こういう事好きなの。独りで黙々と自主練するよりも、皆で仲良くした方が、わたしも、アナタ達も、一秒前の自分よりも強くなれるから」

「……」

「まっ、そういうのが苦手な人も居るんだけどね」

 

 そう言ってマリアは茶目っ気たっぷりにウィンクした。

 しかし、皆マリアの言葉に感心してポカーンとしている。

 すぐに復帰した切歌が彼女を褒め称えた。

 

「マリアは凄いデス! カッコいいデス!」

「ふふふ。ありがとう」

 

 素直に称賛の言葉を受け止めるマリア。

 しかし──。

 

「そんなにちっこいのに、凄いデス!」

「──」

 

 続く切歌の言葉でビシリっと動きが止まった。

 

 ──いきなりだが、此処で解説しよう! 

 

 βチームのメンバーは奏さん! クリスちゃん! 響ちゃん! 切歌ちゃん! 

 そしてマリアだ! 

 一見特になんて事はないが、実はこのチームには一人仲間外れが居る! 

 

 その少女の名はマリア・カデンツヴァ・イヴ! このチーム唯一のペッタン娘だ! 

 

 奏さんとクリスちゃんは説明不要! 響ちゃんは良い物持っており、切歌ちゃんも何気に立派な物を持っている! 

 

 が! 

 

 しかし! 

 

 マリアだけは! その身体年齢によって絶壁! 赤壁! 風鳴翼! ウォールマリアなのだ! 

 

 競争する前から負けている! 切磋琢磨するには無さ過ぎる! 

 

 辛い現実が、彼女達とマリアを隔てていた! 

 

 ……水泳勝負で勝ったのって抵抗力が無いから──。

 

「フンッ!!」

「ブイ!!!???」

 

 突如、マリアがプール越しにある入り口……つまり俺が隠れている場所に向かって拳を振り抜いた。

 するとプールがモーゼの如く真っ二つに割れ、俺は拳圧で吹き飛ばされた。

 

「ちょっと待ってなさい」

 

 それだけ言うとマリアは──っていつの間に俺を掴んでいるの? いつ移動したの? と言うより、もしかしてさっきかんがえている事分かったの? どうやって? 

 

「波導で全て知っているわ。リッくん先輩、着いて来て貰うわ」

 

 え、ちょ、まっ。

 さっきの事は謝るから、だから許し──。

 

 

 あああああああああ。

 

 

「わたしだって大人になったらこれくらいあるわ」

 

 メガシンカの力を使ったマリアは、大人の姿となって皆の前に戻って来た。

 響ちゃんたちは何とも言えない表情で、マリアを見ていた。

 

 ……マリア・可変バストァ・偽部。

 

「──フン!!!」

「ブウウウウイ!?」

 

 ドボンッと俺はプールの中に捨てられた。

 

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