【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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世界を◾️◾️為の歌がある。


第五部 戦姫絶唱シンフォギア 獣の奏者キャロル編
第一話「奇跡の殺戮者」


『おや、起きたのかいキャロル』

 

 ──これは、夢だ。

 

 焼き残ったパパとの大切な思い出。

 

「紹介しよう。僕の友人の──だ」

 

 思い出にノイズが走り、見えないもの、聞こえないものが現れる。

 

「──」

 

 影が過去のオレに話しかける。

 何を言っているのか──思い出せない。

 思い出せないまま、オレが──わたしが口を開く。

 

「そうなの? だったら」

 

 しかし、この時オレは何を言ったのか思い出せず──目を覚ました。

 

 

 第一話「奇跡の殺戮者」

 

 

 七月になり、暑い日差しの中、響は未来と共に登校していた。

 ジンワリと汗が伝い、彼女は呟いた。

 

「あっつ……」

「暑いねぇ……」

 

 気温は30度を上回り、周りの他の生徒も暑そうにしている。

 心なしか響の表情も険しく、未来も疲れているような顔をしている。

 

「……そういえばコマチは大丈夫? 見た目からしてわたし達より暑そうだけど……」

「……朝、冷蔵庫の中に入ろうとしていたから叱っておいた」

 

 毛皮モフモフなコマチは、どうやら暑さに弱いらしい。

 今朝も暑くて暴れて、響にお灸を据えられていた。

 現在はSONGの本部で涼んでいるだろう。

 ……そう思うとイラっとする響であった。

 

「あ、響さん! おはようデース!」

 

 朝からダウナーな響とは違い、明るく元気な声が彼女に掛けられる。

 視線をそちらに向けると、車椅子(ウェル&調&ナスターシャによる改造済)に座っている切歌が笑顔で響たちに手を振っていた。

 ……そして、その後ろで切歌の車椅子に圧し掛かり、溶けている調も居た。

 挨拶を返しつつ、響がジト目で彼女に尋ねる。

 

「何してんの?」

「しんでる」

 

 思っていた以上に死に体な声で響たちは驚く。

 

「あつい……しぬ……」

 

 どうやら元々体力のない調だったが、この暑さにやられてダウンしているらしい。

 それでも切歌をここまで連れて来た根性には脱帽ものだが。

 しかしそうなると、疑問が生じる。

 何故、まだ体が回復し切っていない切歌は元気いっぱいなのか? それは──。

 

「調、代わるデスか? この車椅子ウェル博士の頭のおかしい技術で気温が保たれているデスから気持ちいいですよ」

「いや、いい……それで切ちゃんに何かあったら悔やんでも悔やみ切れないから……」

 

 どうやら切歌の為に作られたこの車椅子は、彼女を最大限守る為の機能が搭載されているらしい。科学者ども自重しろ。

 しかしこれにより、切歌は学校に通う事ができ、思い出作りができている。調もその事はうれしく思い、ウェルの願いが込められているのが伺える。

 

「まったく、だから普段から運動しなさいと言っているでしょう」

 

 そこに、調に苦言を漏らす者が現れた。

 この状況で小言を言われるのは嫌なのか、うへえと顔を顰めながら調が牽制する。

 

「この暑さで説教は勘弁」

「切歌を守るのでしょう? シャンとしなさい」

 

 背筋を伸ばしハキハキと注意するのは──調たちと同じ制服を着ているマリアだった。

 

「今日も可愛く着こなしているデスねマリア!」

「うんありがとう。でもできたらスルーしてくれたら助かるわ……」

 

 切歌の純真無垢な誉め言葉に、マリアは顔を真っ赤にさせてプルプル震えている。

 

 そう、何故かマリアは調たちと同じ学年に配属されている。

 

 経緯はこうだ。

 調だけでは、切歌が心配だとウェルがマリアに相談し、調に尻を蹴られたある日のこと。

 思案したマリアは、彼にこう申し出た。

 

「わたしも(教師として)学校に行くわ」

「え? ミス・マリアが(生徒として)学校に?」

 

 二人だけならしばらく話し合えば、お互いの勘違いに気づき軌道修正ができただろう。

 しかし、そこに極上のハイエナが現れた。

 

「姉さんだけに負担はかけられません! (私欲10割) わたしが手続きしておきますね? (全てを理解している)」

「あらそう? それじゃあお願いね(全てを理解していない)」

「あ……(察し)」

 

 こうして、マリアは制服を着て登校している。切歌が純粋に喜んでいる為、結局撤回することができず、セレナが一人勝ちした。

 ちなみにそのセレナはちゃっかりと教師として赴任し、マリアの可愛さを堪能しつつ教師生活を楽しんでいる。

 それを見たコマチが爆笑し、波導を叩き込まれた。

 

 ちなみに、初等学科の配属も視野に入れられており、それにマリアがガチギレして現在の形に落ち着いた。

 セレナの策略勝ちである。

 

「ほら、行くわよ」

 

 しかし──。

 

「……あいつ、何だかんだで楽しんでいるよね」

「響っ」

 

 響の言葉は未来によって阻まれたが、つまりはそういう事である。

 

 

 ◆

 

 

 はー、今頃響ちゃんたちはクリスちゃんの家で、翼さんたちの海外ライブの応援しているのかなー。

 俺も行きたかったけど……。

 

「まだ落ち込んでいるのですか? アナタも大概メンタル弱いですね」

 

 不貞腐れている俺に、ウェルさんがため息を吐く。

 だってさ、ライブだよ? ツヴァイウィングの! それなのにこんな……。

 

「アカシア、我慢してください──国連所属となった以上、何かしらのしがらみは増えるものです」

 

 ナスターシャ教授も諭すようにして語り掛けてくる。

 でもさ──本当に必要な事なの? 

 

「ええ、当然ですよ──あなたの予知夢は精度が高すぎる」

 

 そう、今回俺がこの二人に拘束されているのが──また、未来で起きる夢を見てしまったからだ。

 それを知った響ちゃんはおやっさんに報告し、かつての俺を分析していた二人に検査を命じた。

 

「ツヴァイウィングのライブ事件。ネフィリムの暴走。現在確認されている予知夢二つともが、当たっている」

「これを軽視する事はあり得ません」

 

 というわけで、ウェルさんのダイレクトフィードバックシステムの応用で俺の予知夢を調査することになったのだが……肝心の予知夢がな……。

 

「それにしても不可解ですね。視点がコロコロと変わる夢というのは」

「しかし夢の内容は同じ──」

 

 ウェルさんの言う通り、俺は何度も瞬間しているかのようにして若干見える視界が変わっている。にも関わらず、場所は変わっていない。

 そして夢の内容は──。

 

「──響さんと戦っている夢」

「──にわかには信じがたい夢ですね」

 

 そうなのである。模擬戦とかそういうのではなく、ガチの戦闘を行っている。

 しかも、夢の中の響ちゃんはとても辛そうで──正直見ていられなかった。

 不安だ。

 そう思っていると、ポンっと頭に手が乗せられる。

 

「夢の内容が分かれば回避できるかもしれません──アナタは何時だってそうしてきたじゃないですか」

「今度は我々が助ける番ですよ──数多にある恩の一つくらい、返させてください」

 

 ──ありがとう。

 

 俺は二人にお礼は言い──その数十分後、夢の内容を俺は知る。

 しかしそれは調査によってではなく、現実によって。

 

 

 ◆

 

 

 火災が発生し、SONGに救援要請が出される。

 クリスと響が先行し、響の活躍により人命に被害は無かった。

 

 しかし、この火災を起こした原因がまだ見つかっていなかった。

 響が人命救助をしているなか、クリスが索敵を行い──敵と遭遇した。

 

 敵の名は──ファラ。

 とある錬金術師が作り出したオートスコアラーというの名の戦う人形。

 クリスが応戦するなか、響は一人の少女と相対する。

 

「貴様が立花響か」

「……民間人、じゃなさそうだね」

 

 逃げ遅れていない人が居ないか、辺りは見回りしていた響は、目の前の少女に警戒し、構える。

 どういう訳か、本部ともクリスとも通信が繋がらない。

 

「オレの名はキャロル・マールス・ディーンハイム──奇跡の殺戮者だ」

「──奇跡の、殺戮者……?」

「ああ、そして──」

 

 

「ブウウ──────イ!!」

 

 空から特徴的な鳴き声が響き、シュタッと響の肩に降り立つ。

 本部から通信が繋がらなくなった響の元にテレポートし、しかし何故か座標がズレて空に投げ出されたコマチである。

 衝撃はサイコキネシスで無くしたが、それでもびっくりしたのか目が回っている。

 

「……大丈夫?」

「ブイ……」

 

 響の言葉に、大丈夫だと答えるコマチ。

 

「──くっ」

「……?」

「ああ、悪い。こういう所は一緒──わかったわかった、もう言わん」

 

 それを見て何故か笑い出すキャロル。

 さらにぶつぶつと独り言を呟き、響とコマチは怪訝な表情を浮かべる。

 彼女たちの反応に気づいたのか、キャロルはコホンと咳ばらいをし、キッと表情を改める。

 

「すまんな、話を続けるぞ──役者は揃ったようだしな」

「役者……? 何が目的?」

「何簡単なことだ」

 

 スッとキャロルが手を前に出し──。

 それにコマチが反応して前に出るのと、響がペンダントを握りしめるのは同時だった。

 

「貴様らの力を、見極めさせてもらう──世界を守れるのか」

 

 キャロルが力を行使し、爆炎が放たれる。

 それをコマチが「守る」で防ぎ、響ごと炎に包まれた。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

 しかし、炎の中から歌が聞こえ──薙ぎ払われると、そこにはガングニールを纏った響が現れた。

 

「アナタが何者で、何が目的か分からないけど──」

 

 響がグッと拳を握り締め。

 

「とりあえず倒してから、話を聞かせてもらう!」

 

 一跳びでキャロルとの距離を詰め、そしてそのまま拳撃が繰り出され──。

 

 

 

「──ブラ、ッキー!!」

 

 キャロルの前に飛び出したナニカによって「まもられ」た。

 

「──!?」

 

 それを見た響は目を見開いて、動きを止めた。

 だって、何故なら、目の前に居るのは──。

 

「フィーア!!」

 

 さらに突風が別方向から放たれ、響が吹き飛ばされ壁に激突する。

 

「ブイ!」

 

 それを見たコマチが駆け寄ろうとし──彼の前に二つの影が立ち塞がる。

 

「──リー」

「──ブー、スター!」

 

 そして、鋭い斬撃と炎の一撃が叩き込まれ、コマチも吹き飛ぶ。

 しかし、空中で動きを止められた。

 

「ブ──」

 

 そこで、コマチは相手の正体を見た。

 あり得なかった。

 この世界に、自分以外は存在していない筈だ。

 それなのに、何故──。

 

「──改めて自己紹介しよう」

 

 キャロルの元に八匹の獣が集う。

 

「オレはキャロル・マールス・ディーンハイム、奇跡の殺戮者だ──それと同時に」

 

 彼女が従えるのは──ブースター。サンダース。シャワーズ。エーフィ。ブラッキー。グレイシア。リーフィア。ニンフィア。いずれもイーブイの進化系。つまり──。

 

「獣の奏者でもある──以後お見知りおきを」

 

 ポケットモンスター。縮めてポケモン。

 それが、彼女の元に集い、コマチを睨み付けていた。

 

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