【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第二話「最悪の天敵」

「くっ……!」

「狙撃手にしてはよく動きますね」

 

 クリスは現在、正体不明の敵と戦闘を行っていた。

 剣を持ち、風を纏う斬撃を振るう謎の女性──否、人形。

 彼女の拳を以てしても倒れない。

 さらに。

 

「っ……」

「しっかりして……」

 

 クリスは怪我人を庇いながら戦っていた。

 それも、明らかに目の前の人形がつけたと思われる裂傷をその身に刻んで。

 イチイバルで弾丸を放ちながら、クリスは問い掛ける。

 

「アナタは何者……? 何が目的?」

「──ファラ。それがこの身に刻まれた名。そして、私の目的は──」

 

 ファラの剣が上段から振り下ろされ、それをクリスがライフルで受け止める。

 が、ビキッと音を立てて刀身が食い込む。

 

「マスターの本懐を遂げる事!」

「答えになっていない……!」

 

 ライフルを破棄して後ろに下がり、新たに作ったアームドギアで破棄したライフルを撃ち抜き爆発させる。

 ファラはそれを至近距離で受け、しかしそれで倒せると思っていないクリスは少女を抱えて走る。

 

「あのレベル相手に近距離戦は不利。離れないと……」

 

 戦況は最悪に近く、響とも連絡が取れない。

 加えて、クリスは嫌な予感がしていた。

 目の前の相手から。

 

 

 第二話「最悪の天敵」

 

 

「ブウウウウ──イイッ!!」

「──!」

 

 コマチは、エネルギーを自分の体内に溜め、それを一気に解放した。

 それにより、相手のエーフィのサイコキネシスを打ち破り拘束を解いた。

 まさか外されると思わなかったエーフィは驚きの表情を浮かべ、しかしすぐに憎々しげにコマチを見る。

 コマチは、その視線に戸惑いながらも響の元に駆け寄る。

 

「ブイ!」

「大丈夫、それより──」

 

 瓦礫の中から這い出て来た響は、目の前にいる光景に言葉を失っていた。

 コマチに似た生物が、八体居る。

 しかも、全員キャロルに従い──自分たちと敵対している。

 それが──響は酷く悲しく思えた。

 まるで、コマチと戦っているようで、拳を握り締める事ができない。

 

「ブイ! ブイブイ!」

 

 響の前に出たコマチが訴えかける。

 何で襲ってくるんだ。戦わなければならないのか、と。

 同じポケモンなら、こんな戦いするべきではない、と。

 しかし……。

 

『シャ──!!』

「ブイ!?」

 

 何故か大顰蹙を買い、威嚇されてしまう始末。

 思わずコマチは響の首元のマフラーに逃げ隠れる。

 それを見たキャロルが言った。

 

「奇跡の体現者アカシア。こいつらはお前を、お前の存在を否定する──その為に造られた」

「──造られた?」

 

 キャロルの言葉に、響が反応する。

 どういうことだ。それではまるで──。

 響の考えを裏付けるようにして、彼女は言う。

 

「アカシア・クローン」

 

 それは、禁忌の存在。

 

「──アカシア、貴様から造られた存在だ。とことんお前を否定し、そして倒す為の悲しきモンスターさ」

 

 キャロルの言葉が重く乗し掛かり──胸に宿る怒りを晴らすかのようにして、アカシア・クローン達は襲い掛かった。

 

「──ダース」

「っ、はや──」

 

 バチっと音が鳴ったかと思えば、サンダースが既に響の懐に入り込み──にどげりにてコマチと引き離した。

 

「ブ──」

「コマ──」

 

 自分の元から離され、ダメージを負うコマチを見て、彼女は手を伸ばし。

 

「お前の相手は──オレだ!」

 

 しかし、キャロルの錬金術によりそれも阻まれる。

 風が、炎が、水が、金属の槍が、響に襲い掛かる。その対処をしながら、コマチを助けるにはキャロルを倒さなければならない事を悟る響。

 

「コマチ……!」

 

 響が心配するなか、コマチは必死になって逃げていた。

 流石は進化系という事もあり、身体的なスペックは向こうが勝っている。一定の距離を保って囲まれてしまっている。

 響と合流する為には、どれか一体突破しなくてはならない。

 一つ思案して──コマチはブースターを選んだ。

 

 確かに攻撃力が高く、炎の力は危険だ。

 しかし見る限り、この中で走るスピードは遅い方だ。

 なら、彼から抜け出せば良い。

 

 急な方向転換を行い、ブースターに向かって突き進む。

 そしてある程度距離が近づいた瞬間、でんこうせっかを行って振り切るためにスピードを上げ──。

 

「──ダー!」

 

 舐めるな、とコマチ以上のでんこうせっかで横から体当たりするサンダース。

 それにより態勢を崩したコマチは──不味い、と背筋に悪寒が走った。

 隙を見せたことで相手の猛攻が始まる! 

 

「ブウウ──スタァ!」

「ブイ……!」

 

 至近距離からブースターのオーバーヒートが炸裂し、まもるを使ったコマチだが勢いを殺せず吹き飛ばされビルに叩きつけられる。

 

「シャウ──ワァ!!」

「ダース!」

 

 さらにシャワーズがハイドロポンプを放ち、そこにサンダースがでんげきはを加える。

 直撃すれば感電してしまう。

 コマチは回避することを諦め、まもる力に集中し受け止める。

 それが相手の狙いだと気づかずに。

 

「シィイイ──ァア!!」

 

 グレイシアのれいとうビームがハイドロポンプ事コマチを凍り付かせる。

 氷の牢獄に閉じ込められたコマチは、電気による痺れと身が凍える寒さに耐えながら脱出する為に意識を集中させテレポートし。

 

「フィー!」

 

 エーフィにそれを察知させられ、コマチは無理矢理空中に転移させられてしまう。

 さっきのテレポートもエーフィの仕業だったのか、とコマチは己の失策に内心舌打ちし──しかしすぐに意識を切り替えさせられる。

 

「リー……!」

 

 すぐ目の前でリーフィアがリーフブレードを発動させ斬りかかってきている! 

 コマチはアイアンテールに応戦をする。

 しかし──リーフィアの方が速く、鋭かった。

 二合三合と切り結ぶ度に追いつけなくなり、すぐに防戦一方になり、そして最後には着いていけなくなり地面に叩き落された。

 

「ブ──」

 

 まともにダメージを受け、コマチの意識が遠のく。

 連携、連撃が彼をじわじわと追い詰めていく。

 

 だとしても。

 ここで倒れるわけにはいかなかった。

 何故戦わないといけないのか。

 何故そこまで自分に怒りの感情を向けるのか。

 それを知るまで──。

 

「ブ──イ!」

 

 ここで負けるわけにはいかない。

 コマチは、全エネルギーを集中させて、高威力のシャドーボールを形成する。

 この技を叩き込んで一度怯ませて、響と合流する。

 それが彼の狙いだった。しかし……。

 

 ──キュアアアアア……! 

 

 それ以上の力の奔流を感じ、視線を向ければ──八匹の獣たちが集い、一つのシャドーボールを作り上げていた。

 コマチが作ったシャドーボールの何倍も巨大なシャドーボールを。

 彼は驚きの表情でそれを見て──そしてそのまま自分に向かって放たれた。

 

「──ブイ!!」

 

 それに焦ったコマチもシャドーボールを放ち、しかしすぐに押し負けて消し飛ばされ、シャドーボールがコマチのいた場所を吹き飛ばした。

 衝撃でコマチは空中に吹き飛び、気づいた。

 ノールタイプのイーブイにゴーストタイプのシャドーボールは効かない──撃たせられた! 

 その事に気づいた時はもう遅く、空に舞うコマチに向かってブラッキーとニンフィアが──。

 

「ブウウラァ!」

「フィイイァ!」

 

 悪の波導と破壊光線が解き放たれ、コマチに直撃し──彼はどうしようもなく敗北し、空からそのまま力なく堕ちた。

 

 

 ◆

 

 そして、敗北したのはコマチだけではない──シンフォギアもまた、敗北していた。

 

「──ノイズじゃ、ない!?」

 

 ファラと戦闘を行っていたクリスが。

 

「どういう事、だ……!?」

 

 ロンドンでレイアと戦っていた翼が。

 

「コマチ……!?」

 

 キャロルと戦っていた響が──負けた。

 

「何するものぞ──シンフォギア」

 

 シンフォギアは──ノイズであってノイズではない、アルカ・ノイズにより敗北に喫した。

 

 

 ──だが、彼女達には仲間がいる。

 

「──翼!」

 

 ギアを失い、膝をつく翼を、ガングニールを纏った奏が庇う。

 アルカ・ノイズは、奏も無力化しようと攻撃を繰り出すが──。

 

「──っ! ……ん?」

「──!?」

 

 しかし、奏の胸に宿る雷がノイズを弾き、そのまま煤へと変えた。

 それに奏は戸惑い、レイアは忌々しそうにする。

 

「やはり地味に効かないか──特記戦力には」

 

 レイアはコインを取り出し、奏に向かって撃ち出す。

 奏はアームドギアを振り回して弾き飛ばし。

 

「なんだか知らねえが、一気に決めてやる!」

 

 槍を掲げ、胸の雷を解放し、召喚されたアルカ・ノイズを万雷を以て蹴散らした。

 

──THUNDER VOLT♾NOVA

 

「ちっ、情報通り派手な技だ──が、地味に目的は果たした」

 

 ここは退かせて貰う。

 それだけ言うと、レイアは転移しその場から消え、万雷を回避した。

 

「何だったんだアイツは……」

 

 何もなくなった戦場で、奏は一人零した。

 

 

 ◆

 

 

 レイアが言った特記戦力。

 その意味をSONGはまだ理解していない。

 しかし──彼女が、特記戦力と言われる事は納得できるだろう。

 

「ハアッ!!」

「グッ──!?」

 

 クリスが倒された直後、彼女を守るようにしてマリアが到着した。

 そしてそのままアルカ・ノイズを蹴散らし、そのままファラと戦闘に突入し──圧倒している。

 

「やはり、アナタが一番計画の邪魔なようですねっ!」

「その計画とやらが何なのかは──ベッドの上で聞かせて貰うわ!」

 

 ファラの剣を殴り折り、顔面を蹴り吹き飛ばす。

 パキリと顔にヒビが入り、苦悶の表情を浮かべながらもファラはアルカ・ノイズを召喚する。

 彼女には、クリスのシンフォギアを壊した力が届かない。それでも一瞬でも時間を稼げばと思い──。

 

「──無駄よ」

 

 しかし、流れるようにアルカ・ノイズの間を走り抜け、そのまま再びファラに肉薄する。

 ファラは剣を使う近接主体の戦闘スタイル。その彼女から見ても──マリアと近接戦闘をするのは憚れた。

 

「くっ!」

 

 苦し紛れにマリアを弾き飛ばして、テレポートジェムを取り出すが。

 

「遅い!」

 

 槍の一閃で砕かれ、さらにファラも吹き飛ばす。

 それによりファラは離脱できずにダメージを負っていく。

 

「化け物め……!」

 

 思わず悪態が出るが、状況は変わらずファラは窮地に陥り、マリアが勝負を決めようとした瞬間──大地が揺れた。

 

「な──」

「好機!」

 

 それを見たファラはさっさと予備のテレポートジェムにて戦線を離脱。

 敵を逃してしまったマリアは、しかし遠方に居るであろう響たちの身を心配していた。

 加えて、先ほど感じた力──。

 

「まさか……」

 

 彼女は、ギュッと胸を握り締め──クリスと襲われていた少女を救助する。

 

 

 ◆

 

 

「響さん!」

 

 セレナが到着した時は既に──戦闘は終わっていた。

 アルカ・ノイズによりシンフォギアが解除された響。

 傷だらけになり力無く倒れているコマチ。

 

 そして、威風堂々と佇むキャロルとアカシア・クローンたち。

 

「リッくん先輩!? そんな──」

「弱い──弱すぎるぞシンフォギア。このままでは、世界は本当に崩壊するぞ」

 

 舌打ち混じりにそう吐き捨て。

 

「だが、それも仕方ないのかもしれないな」

「フィー」

「……ああ、分かっている。目的は違えないさ」

 

 心配そうに擦り寄ってきたエーフィの頭を撫で、不安そうに見つめるアカシア・クローンたちに笑みを送った。

 

「あなたは、一体……!」

「ソイツに伝えろ──戦えないなら戦場に立つな、と」

「……!?」

「はっきり言って目障りだ──精々足掻くんだな装者共よ」

 

 それだけ伝えると、専用テレポートジェムでアカシア・クローン達を収納すると、彼女はその場を飛び去った。

 セレナはそれを見送ることが出来ず──抱えた響とコマチが目を覚ましたのを確認すると、呼び掛けた。

 

「リッくん先輩! 響さん! 大丈夫ですか!?」

「──大丈夫、なんかじゃない……!」

 

 ギリっと響が奥歯を噛み締める。

 反対にコマチは酷く落ち込んだ様子で静かにしており、そんな彼を抱き寄せながら叫んだ。

 

「──戦えなかった。コマチじゃないって頭の中で分かっているのに、心が拒絶した!」

 

 アカシア・クローンが目の前に飛び出した時、響は動きを止めてしまった。

 それも、何度も。

 握られた拳が解かれ、胸の歌が止まり、戦意が削がれる。

 

「わたしは──あの子達と戦えない」

 

 アカシア・クローン。

 それは──装者の天敵だった。

 彼に助けられた者ほど、彼と同じ時を過ごした者ほど──戦うことができない。

 そして、彼に助けられた装者は──多すぎる。

 

 最悪の敵の出現に──その意味を知った彼女たちは、絶望する。

 

 彼女たちは──アカシア・クローン相手に戦えない。

 

「……」

 

 そしてコマチもまた──彼らの事を想い、胸を痛めていた。

 

 

 錬金術師たちとの初戦は──どうしようもなく、大敗を喫していた。

 

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