【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第三話「装者たちの黄昏」

 クリス、並びにマリアに保護された少女は、自らをエルフナインと名乗った。

 エルフナインと名乗る少女は、自分の正体を──ホムンクルスである事を打ち明けた。

 メディカルチェックを担当したウェル曰く。

 

「エルフナインくんに性別はありませんね。錬金術で作られたホムンクルス──なるほどね……」

「……ねえ、あの姿は」

 

 今はSONGが用意した服を着ているエルフナインに向かってクリスが問い掛ける。

 どうやらあの時の姿が衝撃的だったらしく、エルフナインに尋ねていた。

 それに対して、オートスコアラーからの追撃を免れる為、と答えた。

 それを聞いたクリスが、趣味ではない事が分かりホッとしていた。

 

 とりあえず、便宜上エルフナインは女性として認識される事となった。

 ウェルの言葉を聞いた後だと違和感があるが、すぐに慣れるだろうとの事。

 

 そして彼女の目的は──キャロルが為そうとしている事を止める。その為に逃げ出した事を話した。

 

「──万象黙示録」

「世界を……バラバラに」

 

 話を聞いた装者たちは表情を険しくさせた。

 特にキャロルが完成させたアルカ・ノイズの力をその身を以て知っている。

 ギアが分解されるあの感覚。あれが世界に向けられた結果──その先はきっと陸でもない光景が広がっているだろう。

 

「ねえ、聞きたい事があるんだけど」

「何ですか?」

「──アカシア・クローンって何?」

 

 響の言葉に、全員が知らず知らずのうちに体に力が入る。

 コマチもあの時の事を思い出しているのか、元気が無い。

 その場にいる全員の眼差しを受けて、エルフナインは語り始めた。

 

 アカシア・クローンの正体を。

 

 

 第三話「装者たちの黄昏」

 

 

 そもそも、アカシアの細胞は様々な組織が所有している。

 しかしその力を活用させて、実際の運用させる事はできなかった。長年の間、誰もがあの奇跡を起こしてみせようと、自分の物にしようと、また、助けられたお礼を言いたいと、再び同じ時間を過ごしたいと──願い続けた。

 が、それが叶う事はなかった──あの日までは。

 

「フロンティア事変の最中、アカシアはネフィリムに喰われて吸収され──その後、響さんによって葬り去られました」

「……」

 

 その時の事を思い出したのか、響の表情が曇る。

 他の装者たちにとっても忘れ難い苦い思い出で、暗い顔をした。

 それに構わずエルフナインが続ける。

 

「響さんの拳で肉片と化し飛び散ったネフィリムの細胞には、アカシアの細胞も含まれていました」

 

 アカシア単体では使えないが──そこに聖遺物を取り込み己の物とするネフィリムが加われば話は別だ。

 ネフィリムを操る技術はFISにあり、それを応用すれば。

 

『──』

「それを回収し、錬金術で造られたのが──アカシア・クローン」

 

 それが、キャロルに付き従う獣達の正体だ。

 ノイズを基に造られたアルカ・ノイズ。

 アカシアを基にして造られたアカシア・クローン。

 レシピは既に、とうの昔にできていた。

 

「アルカ・ノイズも、アカシア・クローンも戦力としては大変優秀で──」

 

 ──ガンッ!! 

 

 エルフナインの言葉を遮る様にして、鈍い音が響く。

 

「……!」

「響……」

 

 壁に拳を叩きつけた響に、奏がそっと寄り添う。

 許せないのだろう。大切な者の尊厳が弄ばれ、兵器として使われている事に。

 そしてそれは奏も──いや、この場にいる誰もが同じ気持ちだった。

 

「一つ疑問なんだけど、何故奏とわたしはアルカ・ノイズに分解されなかったの?」

 

 空気を変える為、マリアが気になっていた事を尋ねた。

 

「それは、アナタ達にアカシアの力が宿っていたからです。アルカ・ノイズは……いや、ノイズはアカシアに完全不利な関係です。その力を行使できずそのまま無力化されます」

 

 その言葉を聞いて彼女達は確かにと、過去の戦いを思い出していた。

 聖遺物という事を抜いても、彼はノイズに対してあまりにも無敵だった。

 

 エルフナインはそんな彼女達に、自分が此処に来た真の理由を告げる。

 

「キャロルを止めてください。その為に切り札を持ってきました」

 

 取り出したのは、アカシア・クローンを作る際に使われた細胞データとその実物。

 

「聖遺物とアカシア細胞の共鳴から成る新たなギア──デュオレリックギアを!」

 

 

 

 

「……」

 

 学校の放課後、響は頬を突いてブスッと表情を険しくさせていた。

 側から見て明らかに不機嫌だと分かり、板場たち三人娘はどうしたものかとは悩んでいた。

 

 というより、凄く怖い。

 正直声を掛けるのも怖いくらいだ。

 

「どうする?」

「どうすると言いましても」

「こうなったら、とにかく話題作ってお話しよう!」

 

 そう言って特攻隊長板場が選んだのは。

 

「今度の進路について! 未来について話し合えば行けるって!」

 

 と、その話題を選んだ──選んでしまった。

 知らず知らずのうちに死地に向かう彼女に、二人も着いて行く。

 

「ビッキー! ビッキーって将来何に──」

「ごめん、今はそっとしておいて」

 

 勢い良く話しかけた板場だったが、絶対零度の如く冷たい声が一刀両断した。

 心が折れそうになる三人。

 しかし、彼女達は耐えた。

 ここで退いてしまえば、彼女の友人おなれない。

 

「そういえば、三者面談誰が来る? わたしはお母さん」

「うちはお父さんかなー?」

「響さんはどうですか?」

 

 努めて明るく尋ねた──のだが。

 

「……」

「あの、響さーん……?」

 

 明らかに先ほどよりも機嫌が悪くなり始めた響。

 さすが不味いか? と彼女たちが身を震わせて冷や汗を流した所、救世主が現れる。

 

「もう、何しているの?」

「ヒナ!」

 

 三人が顔を輝かせて未来を見るなか、彼女は言った。

 

「今日はこの後響と用事があるから、先に帰ってくれない?」

「え? でも──」

「──ね?」

 

 ニッコリと笑みを浮かべて、三人に静かにお願いする三人。

 すると彼女たちは敬礼をして素直に従った。

 

『サー! イエッサー!』

 

 お疲れ様でーす! と言いながら教室を出て、未来は響の前に座り尋ねる。

 

「……おばさんの所にはまだ?」

「……うん。まだ踏ん切りが着かなくて、未だに手紙のみ」

 

 響は、故郷に帰っていない。

 一応、彼女の心境を考慮して弦十郎たちも強くは出ていないが、一度面と向かって話し合って欲しいところ。

 仲間もできた。記憶も取り戻した。コマチもそばに居る。

 それでも、まだ一歩踏み出せない。

 

「……あの、おじさんは──」

「──お願い。アイツの事は話さないで」

 

 未来ですら、その話題に触れられるのが嫌なのか、強く拒絶する響。

 

 彼女を大切だと言ってくれる人が居れば。

 彼女を苦しみから助け出してくれた人が居れば。

 彼女の側を離れない人が。

 

 そんな温かい人が居れば居るほど──響は、彼の事を許せない。

 

 側から離れ、助けてくれなくて、大切だと言ってくれていたのに──だからこそ、響は、父を許せなかった。

 

 

 ◆

 

 

「そんな事が……」

 

 下校の途中、未来は昨日起きた事の顛末を聞いた。

 特に驚いたのがアカシア・クローンについて。

 正直、今までの戦いで辛い戦いなのではないかと思っていた。装者としても、コマチとしても。

 

「それでも、いざという時は覚悟を決めなくてはならないわ」

 

 そんな未来に、マリアが強い意志を持って答える。彼女は、ギアを修理中ゆえに戦えない響を護衛する為に、わざわざ学校に残っていた。

 そして先輩方に可愛いともみくちゃにされた。

 マリアは切れた。いつかセレナを泣かすと。

 

 マリアの言葉を聞いた響が、目つきを鋭くさせて噛み付く。

 

「アンタは大切じゃないの? コマチの事が」

「大切よ」

「だったら──」

「だとしても。それで戦わなければ──傷付くのは彼」

 

 響の反論を、マリアがピシャッと跳ね除ける。

 

「考えてもみなさい。自分から作り出された存在が、世界を壊そうとしている──これ以上ない程に、彼を深く傷付ける」

「……っ」

「彼は、この世界に居る顔も知らない誰かが傷付く事すら悲しむ。それを自分が為したと思えば──正直想像したくないわね」

 

 実際、彼がリオル時代、救えなかった命に強く後悔していた。

 そんな彼が手を汚せば──果たしてその時、彼は正気を保てるのだろうか。

 自分の命を犠牲に、他者を救う選択を躊躇無く選ぶ彼が。

 

「だから、わたしは迷いたくないわ──少しでも彼の負担を無くせるのであれば」

「でも──」

「だったら貴女は、彼に強いるの? ──自分殺しを」

「──っ!」

「それをさせるくらいなら、わたしは──っ」

 

 そこまで言って、マリアは何かに気付いたかのようにして、響たちを庇うように立ち、木陰を睨み付ける。

 

「出てきなさい──人形といえど、波導は見えるわ」

「鋭いですねえ、見た目はちっこいのに」

 

 そう言ってマリアを見下しながら嗤い、クルリクルリと回りながら出てきたのは──。

 

「初めまして。オートスコアラーのガリィと申します──別に以後お見知り置きしなくて良いですよ?」

 

 そう言ってケタケタと笑う彼女に、目的は何だと尋ねるマリア。

 

「思い出集めに繰り出したところ、探し物を見つけたのですが──」

 

 ハア、とため息する動作をするガリィ。

 

「見失ってしまいましてね。ガリィちゃん、割とショック」

 

 だから、と続けて。

 

「弱々の装者でも虐めて、憂さ晴らしでもしようかと!」

 

 そう言ってガリィは、氷の礫を響に向かって解き放つ。

 狙われた響が逃げようとし、さらに未来が庇おうとして──。

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl」

 

 前に出たマリアがガングニールを纏い、アームドギアで全て叩き落とした。

 それを見たガリィが舌打ちをして、憎々し気に吐き捨てる。

 

「そこでジッとしてろよ特記戦力! ガリィちゃんはアンタなんかと──」

「嘘を付くなら、もっと上手に付きなさい」

「──」

 

 ガリィの表情が変わる。

 

「アナタの目的は響ではない──そうでしょ?」

「──は」

 

 ベロリと舌を突き出し、凶悪な顔をするガリィ。

 

「見破ったからなんだって言うんだ!」

「……」

「粋がっていても、シンフォギアのみのお前なら、コイツらに勝てないだろ!」

 

 そう言ってテレポートジェムを放り投げ──アルカ・ノイズを召喚。

 それも、速度重視した飛行タイプだ。マリアに波導の力を使わせないつもりなようだ。

 自分のギアを破壊しようと迫るアルカ・ノイズに対して、マリアは──。

 

「ハア──」

 

 拳を突き出して、アルカ・ノイズと衝突。

 しかし翼やクリス同様、押し負けて分解を始め──。

 

「波導は我にあり──」

 

 しかし、溢れ出した波動が分解を押し返し、マリアの腕のギアが黒く染まる。

 

「我が心に応えろ奇跡の石──」

 

 さらにマリアは反対の腕を突き出してアルカ・ノイズを殴り飛ばし、その腕も黒く変化。

 そして次々と攻撃を繰り返すたびにマリアのギアが変わり、遂には──。

 

「進化を超えろ、メガシンカ!!」

 

 マリアの全身を包んだ光が晴れた瞬間──そこには、波導の勇者が居た。

 彼女はそのままアムードギアを薙ぎ払い、アルカ・ノイズを蹴散らす。

 赤いチリが舞い、視界が晴れると──そこには誰も居ない。

 

「──後ろがお留守ですよ」

 

 しかし、背後にはガリィが居り、氷を腕に纏わせてそのままマリアに突き出し──。

 

「言った筈よ」

 

 が、マリアの波動弾がガリィを吹き飛ばし。

 

「──嘘は、もっと上手く付けと」

 

 そして、水の力で姿を消していたガリィ本体を、水で作り出した幻共々弾き飛ばした。

 ガリィは、本気で焦った顔で叫ぶ。

 

「これを初見で見破るとか、なんだお前!?」

「──ただの装者よ!」

 

 トドメを刺すべく駆けるマリア。

 ガリィはテレポートジェムを取り出し──しかし間に合わないと悟る。

 万事休すか──そう思われた、その時! 

 

「シャー……ワ!」

「シイイイイイ、ア!」

 

 水と氷の塊が、ガリィとマリアの間に叩き込まれる。

 

 その技を見た響の鼓動が早まる。

 

「シャワ」

「シア!」

 

 ガリィを庇うように立つのは──アカシア・クローンのシャワーズとグレイシア。

 現れた天敵に──マリアの表情が揺らいだ。

 

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