【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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今回は短め


第四話「戦う為の意志」

 

「シュウワア!」

 

 シャワーズのハイドロポンプがマリアに向かって放たれる。

 激水の奔流をマリアはマントで防ごうとし──直前に、響と未来を抱えて回避行動を取る。

 結果、ハイドロポンプはコンクリートを砕き、続けて放たれたれいとうビームが音を立てて氷の花を咲かせた。

 

「シア!?」

 

 避けられた事にグレイシアが驚く中、マリアは二人を安全な場所に置くと響に言った。

 

「耐えられないなら、見ない事をお勧めするわね」

「っ……!」

 

 その言葉の意味を理解できない響ではなく、そしてマリアもまた全てを教えてくれるほど優しく無い。

 

 マリアが駆け出し、水と氷の砲弾を槍で砕きながら肉薄する。

 

 一方、アカシア・クローンに守られたガリィが、舌打ちして悪態を吐く。

 

「余計な事をしやがって」

 

 そんな彼女に、マスターから撤退命令が出される。

 

「あら、よろしいのですかマスター? せっかくの獲物が」

 

 ガリィの言葉に、すぐに応援が来るから逃げ出すべきだと言い放つ。

 それに、自分も現地に向かうから万が一は計画の調整をするから問題ない、と。

 ガリィは不服そうにしながらもテレポートジェムを取り出し。

 

「覚えていろよ……!」

 

 心底苛立った様子でこの場を去り、それを見たマリアが内心毒付く。

 

(引き際を弁えている──厄介な)

 

 目を鋭くさせたマリアは──拳を振り抜き、シャワーズの腹部に拳撃を叩き込んだ。

 

「──っ」

 

 それを見た響がヒュッと息を呑み、目を見開いた。

 

 本当に、やった。

 

 その事に血が昇りそうになって──マリアの顔を見てそれも直ぐに冷めた。

 

 そうだ、彼女も──。

 

 マリアは続けて波導弾をグレイシアに叩き込み、吹き飛ばす。

 

「シャワ!」

 

 それを見たシャワーズが悲鳴を上げて、グレイシアに駆け寄る。

 

「シア……」

 

 大ダメージを受けたグレイシアが弱々しく鳴き声を上げ、シャワーズはそんな彼女に回復する為の技を発動させる。

 しかし体の奥深くまでダメージが根付いているのか、なかなか起き上がらない。

 

「──拘束してそのまま連行させて貰うわ」

 

 それを無表情で見ていたマリアが近付き、それに気付いたシャワーズがグレイシアを守るようにして立ち塞がる。

 

「──」

 

 それを見たマリアが、一瞬動きを止め──。

 

【ッ──!】

 

 その瞬間、禍々しい鎧と剣を持った黒い騎士が現れ──そのままシャワーズとグレイシアを斬り付けた。

 

「シャワ!?」

「シイ!?」

 

 悲鳴を上げるシャワーズとグレイシア。

 

「何を!?」

 

 突然の事に叫ぶマリア。

 

 しかし黒騎士はそれに構わず、剣についた血を満足そうに見つめ──そのまま、現れた時同様姿を消した。

 

「待て!」

 

 突然現れた騎士に声を上げるマリアだったが、それも意味を為さず。

 その場に残ったのはマリア達と血濡れて横たわる二体のアカシア・クローン。

 

「──遅かったか」

 

 そこに、キャロルが駆け付けた。

 瀕死の二体を痛まし気に見つめた後、専用テレポートジェムで収納し、マリア達を見る。

 

「流石だな、マリア・カデンツヴァ・イヴ」

「……あら? わたしのファンかしら?」

「ファンでは無いが、よく調べさせて貰ったよ──そこの立花響と天羽奏共々な」

 

 この三人の共通点はガングニールの装者である事とアカシア由来の力を行使する者だ。

 ──正確にはだった、が正しい。

 

「だが、今回のことでハッキリした──立花響」

「……!」

「お前は、オレ達の敵では無い。アカシアの雷を失い、クローンの存在に胸を痛め、戦うべき時に戦えない──論外だ」

「──」

 

 キャロルの強い言葉が、響の心を打つ。

 

「もうオレ達の前に立たない事をお勧めする──ではな」

 

 それだけ伝えると、キャロルはその場から居なくなった。

 

 いやな静粛が場を包む中、一つの声が響く。

 

「マリアさん! 響さん!」

「……エルフナイン?」

 

 どうやら居てもたっても居られなくなり、此処まで来たとの事。

 本部に通信を繋げてみると、エルフナインが消えたと大騒ぎになっていた。どうやらまだ通信妨害らしい。

 

 まだ荒れそうだな、と一人マリアはため息を吐いた。

 

 

 第四話「戦う為の意志」

 

 

 本部に戻り、エルフナインが説教をされた後。

 エルフナインから、キャロルについて説明される。

 特に今回主に活動しているオートスコアラーについて。

 

「なるほどデス。オートスコアラーは四体で、今のところ戦闘用のミカがまだ出てきていない、と」

 

 切歌の言葉に、エルフナインは頷く。

 ミカは活動させるのに多くの想い出が必要であり、動いていないという事は想い出不足。

 しかし、それが無くなればSONGに猛威を振るう事は想像に難しく無い。

 

「逆にあのガリィってのは戦闘に不向き……それぞれ役割分担しているんだ」

 

 調が呟くように言い、それをエルフナインは肯定する。

 

「じゃあ、アレか? 今回出てきたアカシア・クローンはその補完って訳か?」

 

 奏の問いに、エルフナインは顎に手を添えて思案し、そうなのかもしれない、と曖昧に答える。

 アカシア・クローンは基本キャロルの側に居る。

 そこから離れるという事は、彼ら専用の仕事を与えられているか、それとも──。

 答えが出ず、基本はそうなのかもしれない、とエルフナインは言った。

 

「それで、この黒騎士は」

 

 クリスが上げたのは、アカシア・クローンを斬り倒した騎士について。

 騎士は、マリア達に敵対する素振りは見せなかった。むしろ彼女達の敵であるアカシア・クローンを斬り伏せ、駆け付けたキャロルに舌打ちまじりにその存在を疎く思っている節があった。

 

 SONGの仲間と認識するにはまだ早く、目的が不明瞭。

 しかし、キャロルと敵対しているのは明らかだった。

 

 

 ◆

 

 

 ──また夢を見ている。

 

『パパ、どうしたの?』

『ああ、すまない……ちょっと考え事をね』

 

 記憶の中のキャロルの父、イザークは珍しく悩んでいる素振りを見せていた。

 それが気になったキャロルが心配し、娘の優しさに笑みを浮かべながら言葉を濁す。

 

『パパ! 言ってみて!』

『え?』

『一人では無理でも、二人なら解けるかもしれない!』

 

 その言葉にイザークは驚き──しかしすぐに優しい顔で、キャロルの頭を撫でた。

 

『わ、わ!?』

『ありがとう』

 

 その時の手はとても大きく、そして温かった。

 ──だから、失った時彼女は。

 

『実はね──』

 

 イザークは、キャロルに自分の悩みを少し話した。すると。

 

『なーんだ! だったら大丈夫だよ!』

『もしパパが無理だったらわたしが──』

 

 

 ◇

 

 

 ──わたしが、助けてみせるよ! 

 

「──夢、か」

 

 遠い日の忘れていたと思われる記憶。

 それを夢という形で見たキャロルは──身動きができなかった。

 

「……こいつら」

 

 自分の体を見下ろすと、そこにはアカシア・クローン達がピットリと彼女に張り付いて眠っていた。

 温もりがあり心地よいが、体の小さなキャロルにとって、彼らは些か重すぎた。

 

 しかし、払い除ける事はしなかった。

 こうして彼らが擦り寄るのは、キャロルが魘されている時。

 そして先ほどの夢は──胸が温かいから見たのだろうか。

 

「……」

 

 キャロルの視線の先には、シャワーズとグレイシアが入ったテレポートジェム。

 今は傷付き休んでいる。しばらく外に出す事はできない。

 

「──必ず、命題を」

 

 成し遂げてみせる。

 改めてそう誓い、キャロルは再び目を閉じた。

 

 

 ◆

 

 

「……」

 

 響ちゃん……。

 

 現在、響ちゃんは物凄く落ち込んでいる。

 先ほどマリアさんがシャワーズたちと戦ったみたいなんだけど──割と遠慮なく攻撃を当てているのを見てショックだったみたいだ。

 

 ……いや、正確には傷付けられているところを見て、か。

 

 それも仕方ないのかもしれない。

 相手はイーブイの進化系。どうしてもイーブイである俺を連想してしまう。

 

 絶対無いけど、もし俺と響ちゃんが敵対したら大変な事になるな。

 

「ブイ」

 

 響ちゃん、大丈夫? と尋ねる。

 しかし無言で首を横に振るだけ。

 ダメか。

 さらに俺を抱き締めてベッドで横になる。

 これは相当参っていますね。

 

「わたし──アンタの為なら、世界とだって戦えると思ってた」

 

 おおう。結構重い事言いますね。

 

「でも──わたしでも戦えない相手が居た」

 

 ……響ちゃん。

 

「……エルフナインが言ってた。わたしにはアンタの力を使えないかもって」

 

 ……。

 

「アカシア・クローンに対して否定的だと、反応してくれないって。ねえ、コマチ──」

 

 ──わたし、戦えない。

 

 響ちゃんの訴えは、とても弱く──折れてしまいそうだった。

 

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