【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第五話「思い出の力」

「デュオレリックシステムの進捗率は95%。ほぼ完成しています」

 

 SONG本部にて、オペレーターの友里が新生シンフォギアの経過報告を行う。

 

「本部のメンテと被った時はどうなるかと思いましたが……」

 

 ホッと安心する様子を見せつつ、藤孝がボヤく。

 SONG本部は潜水艦であり、定期的にメンテンスをする必要がある。

 その間当然本部の施設は使えないのが普通だが、稼働に必要なエネルギーは外部からの供給により補われている。

 

「二課時代のアメノハバキリとイチイバルのデータにより、想定以上に進みが早いです」

 

 また、新生シンフォギアの進捗率を上げているのは三人の人間の活躍によるものがある。

 ナスターシャとウェル、そして調だ。

 

「せっかく救われた世界です。分解されては堪りません」

「ボクにはまだやるべき事がありますからね。協力は惜しみません」

「キリちゃんが好きだったこの世界は、絶対に守ってみせる」

 

 彼女たちの協力により、響のガングニール、翼のアメノハバキリ、クリスのイチイバル、セレナのアガートラム、調のシュルシャガナ、切歌のイガリマは新たな力を得ようとしている。

 

 ちなみに切歌はそんな彼女たちの身の回りの手伝いをしている。

 

「しかし、シンフォギアの改修となると機密の中枢に触れるという事──よく許可が得られましたね」

「事が事だからな……それに、八紘の兄貴の口添えもあったからな」

 

「……っ」

「翼?」

 

 弦十郎の言葉に、翼の表情が険しくなる。

 それに気付いた彼女が声を掛けるが、何も答えない。

 奏だけは、何か知っているのか複雑そうな顔をしている。

 

「聞いた事があります。確か──」

「風鳴八紘。内閣情報官。司令の兄であり、戸籍上は翼の父──」

 

「あんな奴! オレの父親なんかじゃねえ!!」

 

 セレナとマリアは、SONGに加入する際に世話になった為、その男の事を多少知っていた。

 しかし知っていたのはあくまで情報だけ。

 ゆえに触れてしまった──翼の逆さ鱗に。

 感情を顕にして叫ぶ翼は、皆が自分を見ている事に気づき、そして自分が口走った事を自覚して。

 

「──すまねえ」

 

 一言それだけ言うと、彼女は発令室から飛び出していき。

 

「翼!」

 

 それをクリスが追い掛けて行った。

 奏はそんな二人を見送り、ため息を吐いてジロリと弦十郎を非難するように見る。

 

「……旦那」

「必要だと思ったから言ったまでだ」

 

 それに後から知って「あの男が関係してたのなら使わない!」と駄々を捏ねられる可能性もあったと弦十郎は語る。

 

「何か訳ありのようね」

「……こればかりは本人の口から聞いてくれ」

「そうさせて貰うわ」

 

 そう言うなり、マリアはセレナを伴って発令室を出て、翼とクリス達の後を追う。

 何処にいるのかは、波導で分かっていた。

 彼女達の向かった先は食堂。

 そこに翼とクリスが座っていた。

 

「翼」

「……マリア。それにセレナも。さっきはすまなかったな」

 

 クリスによって、落ち着かされたのかマリア達に謝る翼。

 マリア達は気にしていないと謝罪を受け入れ、本題に入る。

 

「聞かせて貰えるかしら? 彼とアナタの間にあった事を」

「……」

 

 翼は、語り始めた──何故自分が防人である事を捨て、装者になったのかを。

 

 

 かつて、翼がまだ【オレ】ではなく【わたし】と言っていた頃、彼女には大切な人が居た。

 その人は、翼の夢を応援してくれていた。

 その人は、翼の存在を認めてくれていた。

 その人は──翼の自由を願って息絶えた。

 

 風鳴家に恨みを持つ者によるテロだった。

 その人間は翼を狙い、殺そうとした。

 防人の後継者を殺せば、憎しみが晴れるとでも思ったのだろう。

 しかしそれは失敗した。

 翼は守られた──彼女にとって大切な人、母によって。

 

「──風鳴に縛られることなく、自由に羽ばたきなさい」

 

 その言葉を最期に、彼女は逝った。

 翼は悲しんで、泣いて、悔やんで──その言葉を胸に夢を叶えようとした。

 

 しかし、父にその夢を否定された。

 

 防人に歌は不要。

 もしその道を行くのなら、風鳴を捨てろ。

 

 昔から厳しかった父の言葉が、この時は突き刺さり悲しかった。

 

 その悲しみが怒りに変わるのに時間は掛からなかった。

 

 翼を狙ったあのテロ事件は──風鳴が起こしたのだと知った。

 より強い防人を育てる為に、邪魔な者を排除し、心を鍛え上げる為の茶番。

 

 そして、それを──翼の大切な人の夫が容認した。

 

「オレが問い詰めたら何て答えたと思う? ──防人の為だと抜かしやがった!!」

 

 ──翼が、父を殴ったのはそれが初めてであり、最後であろう。

 

「だからオレは決めたんだ。防人なんかにはならない。人を救う装者になるって」

 

 そして、胸に誓った言葉を綴る。

 

「そして、母さんとの約束を守るって決めたんだ」

 

 その話を聞き、クリスは翼がかつて響に言った言葉を思い出していた。

 

 ──それでも! 残された側は必死に生きていかないといけないんだ! 辛くても! 苦しくても! それが助けられた側の、託された側の義務だ! 

 

(翼……)

 

 母との約束。

 それを想いながら、父を恨む翼は──果たして青空の下を飛べるのだろうか。

 

 彼女は、それが酷く気になった。

 

 

 第五話「思い出の力」

 

 

 ──警報が鳴り響く。

 モニターに現れるのはアルカノイズの文字。

 

「アルカノイズの反応を検知!」

「座標を絞り込みま──」

 

 友里の言葉を遮る様にして、本部が揺れる。

 モニターには、大量のアルカノイズがある物に向けて攻撃を行っていた。それは──。

 

「敵の狙いは──我々が補給を受けているこの基地の発電施設!」

「本丸を叩きに来たか……!」

 

 現在本部は外部のエネルギーで稼働している。その状態でエネルギー源を絶たれれ、本部が強襲を受ければ一溜りもない。

 

(しかし、何故このタイミングで……? 狙っていたのか?)

 

 違和感を抱く弦十郎だが──迎え討たなくてはならない。

 それに、新たな牙は既に研ぎ終わっている。

 

「装者達を向かわせろ──反撃の狼煙を上げる!」

 

 既にデュオレリックシステムは完成していた。

 

 

 ◆

 

 

 出動したのは、奏、翼、クリス、マリア、セレナの五人だ。

 調と切歌はシンフォギアの改修により体力を使い果たし、響とコマチは待機させられている。

 

 戦場に出た五人はギアを纏い、アルカ・ノイズの大群へと突っ込む。

 奏は特に問題無く、マリアも波導の力を使っていないが己のスキルにより対応している。

 そして改修されたギアを纏っているセレナ、翼、クリスは──。

 

「よし……分解されません!」

「行けるぞ!」

「うん……!」

 

 どうやら無事アカシアの力が組み込まれているようで、アルカ・ノイズと問題無く戦っている。

 分解されないのなら、このまま装者たちの力で全滅できると誰もが思っていた。

 

 そう、このままなら。

 

「キャハハハハ!!」

「っ!」

 

 突如、翼が横から殴り飛ばされる。

 

「翼!」

 

 吹き飛ばされる翼をクリスが受け止め、現れた敵を睨み付ける。

 通信で敵の姿を見ていたエルフナインがその正体を言った。

 

 オートスコアラー最後の一体にして、戦闘特化のミカ。

 その強さは今までのオートスコアラーの比ではない。

 

「はああ!」

「せい!」

 

 奏とマリアがアームドギアの槍を叩き付けるが。

 

「弱いゾ!」

「ぐっ!」

「きゃっ!」

 

 取り出したカーボンロッドで受け止め、そのまま力付くで弾き飛ばした。

 膂力は突撃のあるガングニール以上。

 強敵の出現に歯噛みするなか、翼とクリスの元に通信が入る。

 

『翼さん、クリスさん。実はそのギアはまだ未完成なんです』

『え?』

 

 その言葉に耳を疑う二人に構わず、エルフナインは言う──彼女たちが纏うシンフォギアの真の力を。

 

『アナタたちに備わっているその力は、謂わば卵。可能性に満ち溢れています』

「卵……」

「可能性……」

『それを引き出すのはアナタたちの──アナタたちとアカシアとの思い出の力。それが卵を孵化させて、新たな力を得る事が出来る筈です』

 

 エルフナインの言葉を受けて、二人は目を閉じる。

 思い出すのは──彼と歩んできた道と貰った想い。

 

(コマチ……)

 

 クリスは考える。

 彼から何を貰ったのか。何を得たのか。何を授かったのか。

 そして、その時彼女の胸に宿ったのは何なのか。

 

(光彦……)

 

 翼は考える。

 彼から何を貰ったのか。何を得たのか。何を授かったのか。

 そして、その時彼女の胸に宿ったのは何なのか。

 

 

 答えは既に、彼女たちの胸の歌と共にあった。

 

(そうだ。わたしはコマチから勇気を貰ったんだ。人に歩み寄り、手を繋ぐ為の──真っ赤に燃える勇気を!)

 

(そうだ。オレは光彦に背中を押して貰ったんだ。そしてその背中から奏と一緒に、何処までも、何時迄も、世界の果てまで飛んで行ける──さらにもっと貴く!)

 

 クリスのギアから炎が吹き出し、それが彼女の装甲となる。

 赤く、紅く、朱い炎のマントとウサギのような長い耳が揺れ、炎を撒き散らしながら銃身が炎と化したイチイバルを構える。

 

 ──イチイバル・レイジングフレア。

 

「猛火を抱いて、敵を撃つ!」

 

 

 翼のギアからは大量の青い羽が舞い上がり、それが彼女の翼となる。

 青く、蒼く、碧い羽が彼女の背中に集い、彼女を連れて空へ、さらに向こうへ、もっと貴く飛ぶ為の翼が生えた。

 

 ──アメノハバキリ・フリューゲル。

 

「天に解き放つ翼で、敵を斬る!」

 

 

 ◆

 

 

 コマチ/光彦との思い出が、アカシアの力を解き放ち、姿を変えた二人にマリアたちの視線が向けられる。

 

「こいつは──」

「わたしたちに──」

『──任せてくれ!』

 

 敵から見れば大口。しかし味方から見れば──。

 

「──任せた!」

「行ってこい、翼!」

 

 何よりも頼もしい覚悟ある言葉だ。

 マリアと奏は、セレナと共にアルカノイズの殲滅に赴く。

 ミカには目もくれず。

 

「生意気だゾ!」

 

 それを挑発と受け取ったのか、ミカが翼たちに向けて勢いよくカーボンロッドを射出──しかし。

 

 ──QUEEN'S ABYSS。

 

 放たれた炎の弾丸がカーボンロッドを溶かし、そのまま突き進む。

 

「っ!」

 

 受けたらダメだと判断したミカが回避し──着弾点にて大規模な爆発が起きる。

 

「ぐ……!」

 

 ミカはその爆風により身を焦がしながら吹き飛び、ゴロゴロと地面を転がる。

 しかしすぐに立ち上がりカーボンロッドを取り出し。

 

「ボコボコにしてやるゾ!」

「──誰を?」

 

 しかし背後で声がした瞬間、視界でチラリと青い羽が舞う。

 後ろだ。

 ミカが振り返ると同時に、彼女は強烈な向かい風に煽られる。

 ──いや、正確には追い風だ。

 翼が高く、速く飛ぶ為の──風だ。

 

 翼が剣を構える。

 

「──っ!」

 

 それを見たミカがカーボンロッドを手に飛び出し──交差。

 お互いに武器を振り抜いた体勢で止まり──しかしすぐに片方が崩れる。

 倒れたのは──ミカだった。

 

「な、なんだ今の──」

 

 ミカの両手のカーボンロッドと両足は綺麗に斬られていた。

 しかしそれ以上に不可解なのは、斬られた瞬間にあった。

 

「一回で三回斬っていたゾ……!?」

「さすが戦闘用。よく見えたな」

 

 ──飛剣・燕返し。

 

 必ず当てる為の翼の剣。

 それがアカシアの空を飛ぶ為の力と合わさって完成された三つの斬撃を一度で放つ技。

 それによりミカは武器破壊と足を潰された。

 

 形勢は逆転された。

 翼はトドメを刺すために剣を振りかぶり──。

 

「オラァ!」

 

 勢いよく振り下ろした──が。

 

「──ブラァ!」

「──っ!」

 

 ミカとの間にブラッキーが現れ、翼の剣からその身を、そして家族を守った。

 

「フィー!」

 

 さらに、空中に跳んだニンフィアが破壊光線を発射。

 

「っ!」

 

 それを見たクリスが相殺するべく、炎の砲撃を放つが。

 

「ブー、スター!」

 

 その射線上にブースターが割り込み、クリスの炎を貰い受けて吸収した。

 

「──そんな」

 

 それにより、破壊光線はそのまま翼に向かい──しかし直前で回避してクリスの側に降り立った為、直撃は免れた。

 

 守られたミカは腕を使って上体を起こし。

 

「お前ら、何のつも──」

 

 しかし、悪態を吐く暇も無くマスターから撤退命令出される。

 

「そんな! まだ戦えるゾ!」

 

 ミカが反論するが、マスターは受け入れず、代わりは既に向かわせると言い、強く戻れと言った。

 

「……分かったゾ」

 

 不承不承ながら了承し、ミカはテレポートジェムを使って戦線を離脱した。

 それをブラッキーは悲しそうに見つめ。

 

「よくやった」

「……ブラ」

 

 そんなブラッキーの頭に手を乗せて褒めるキャロル。

 それにブラッキーは泣きそうな声を出し、キャロルは慰めるように強く撫でた。

 

「キャロル!」

 

 敵の首領が現れたと、翼が声を上げ、アルカノイズを殲滅し終えたマリア達も集う。

 そしてキャロルの元にもシャワーズ、グレイシアを除いたアカシア・クローンが集結した。

 

 両陣営が睨み付けるなか、キャロルは翼とクリスのギアを見て感心したように呟いた。

 

「ほう。炎と飛行か。良い力を開花させたな」

「アンタを止める為に、エルフナインが頑張ってくれたんだ」

「それに、調たちも」

 

 その言葉を聞いたキャロルは──。

 

「──何だと?」

 

 目を見開いて驚いた。

 そしてそれはアカシア・クローン達も同様であり、戸惑っている様子だった。

 

「馬鹿な生きて……いや、確かにあの時──」

 

 ブツブツと独り言を言っていたキャロルだったが──キッと装者たちを睨み付けて言った。

 

「どうやら、その船に用ができたみたいだ」

「させると思うのか!?」

 

 ギアを構える翼たち。そこに援軍が駆け付ける。

 

「到着デース!」

「切ちゃん、無理しないで」

 

 ギアを纏った調と切歌も出張ってきた。

 何でも、エルフナインの進言で彼女たちも出動させたらしい。

 キャロルを止めるなら此処でしかない、と。

 

「ほう。これで丁度数が揃ったな」

 

 キャロル。ブースター。サンダース。エーフィ。ブラッキー。リーフィア。ニンフィア。

 

 奏。翼。クリス。マリア。セレナ。調。切歌。

 

 七対七。確かにキャロルの言う通り、戦場での両陣営は数が揃っている。

 

「良いだろう──力比べといこうか!」

 

 キャロルの錬金術が炸裂し──第二ラウンドが開始された。

 




ほのおタイプのクリス
飛行タイプの翼
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