【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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毎日更新は途切れさせたく無いです


第七話「刻まれた胸の痛み」

 青い空、白い雲。

 そして透き通るように綺麗な海に、キラキラと光る砂浜。

 

「ブウウウウウウイ!!」

 

 詩的な感想はもういらねえ! 

 つまり海だ! やっほおおおおおおおお! 

 そして! 

 海と言えば当然──水着だあああああああ!! 

 

「荒ぶってんな、光彦の奴……」

 

 奏さんがなんか呟いているけど、知らないや! 

 

 ──俺達は現在、特別訓練の為、政府が保有するビーチに遊びに来ています。

 

 弦十郎さん、ありがとう……! 

 拝む俺に、何故か視線が何度も突き刺さった。

 

 第七話「刻まれた胸の痛み」

 

 

 活かしたメンバーの水着を紹介するぜ! 

 

「なんか始まった」

 

 まずは奏さん! 

 明るいオレンジのビキニタイプ! スタイルがよく活発的な奏さんに見事ベストマッチしており、ぐっとおぶぐっと! ボリューミな髪もいつもと違って上で纏められて、普段と違った印象を受ける! 

 

 次は翼さん! 動きやすさ重視で選びました言わんばかりの青いビキニ! しかし俺は知っている! この日の為に選びに選んだと! ……割と可愛いのも好きなんじゃ──危な!? 解説の途中で手刀しないで! 

 

 そして真打ち登場! ク・リ・ス・ちゃん! デカアアアアアアイ! 説明不要ミサイルをこれでもかと主張させる真っ赤に燃える真紅の三角ビキニ! かなり恥ずかしがっているけどそれが尚良し! 翼さん良い仕事をした! (後日二人揃ってボコボコにされる)

 

 次はマリア! 子ども体型にはやっぱりこれでしょうとセレナが持ってきたのは──スク水! 胸のところに「まりあ」と書かれているのがコマチ的にポイント高い! セレナも良い仕事をした! (後日二人揃ってボコボコにされる)

 

 そしてマリアをコーディネートしたセレナ! 白いタンキニでグラマラスな体型をカバー! ビールでちょっとプニってる体をカバー! 正直今回の訓練で一番テンション低かったのをカバー! 

 ごめん言い過ぎた。許して。

 

 まだまだ続くぞ! 白ずぎて心配したくなる程のインドア調博士は、ピンクのワンピースタイプの水着に──は、白衣だと!? まさか此処で新境地に赴くとは──流石科学の申し子。探究心が半端ない……! え? 冷房機能付いてる発明品? ……可愛いから良し! 

 

 そしてお次は切歌ちゃん! 緑色のハイネックビキニを着こなし、調博士よりも良いスタイルをスッキリとヘルシーな印象に見せて、彼女の自尊心を守ろうとしているのが分かる! でも無駄だね! おっきいからね! 可愛いよ! 

 

 さらに此処でレアキャラ登場、未来ちゃんだ! 紫色のオフショルダービキニを着こなし、綺麗な肩周りを見せつけている! 美麗で言うことなし! ……え? 胸? 死にたくないからノーコメントで。

 

 そしてそしてそしてぇ! 最後は響ちゃん! 俺が選んだ黄色のホルターネックタイプの水着が彼女を包み込み──なんでいつもの灰色パーカー着てんの? 

 

「恥ずかしいから──それより」

 

 はい、何でしょう。

 

「獣にもセクハラは通用すると思うんだ」

 

 ……優しくしてね☆

 

 ──俺は、青空の下、綺麗な放物線を描いて、海に投げ込まれた。

 

 

 ◆

 

 

 そういえば、エルフナインは来ないの? 

 

「断られちゃった」

「でも正直助かったかも……恥ずかしいし」

 

 そう言ってクリスちゃんはもじもじする。うむ、胸の破壊力が凄まじいな。

 しかし、恥ずかしいのか……。

 確かにホムンクルスで性別がなくて、同じ女の子と言えないかもしれないけど……まぁ、その辺は感覚の問題かな。

 

「……わたしは、アイツの事苦手」

 

 あー……響ちゃんは最後までデュオレリックシステムに反対……いや、今もしているのか。

 普段の様子から何となく察していたけど、ちょっと悲しいな。せっかくの仲間なのに。

 

「……」

 

 ん? どうしたのマリア? 

 

「いえ、何でもないわ──それはそれとして、切歌は大丈夫なの?」

「大丈夫デス! それどころか楽しくて仕方ないデス!」

 

 そう元気に告げる切歌ちゃんに、しかし尚心配する者が居た。

 クリスちゃんだ。

 

「無理しないで。まだ本調子じゃないんだから」

「だ、大丈夫デスよ! 相変わらずクリス先輩は心配性なんですから!」

「──うん。ごめんね」

 

 そう言ってクリスが謝り、切歌ちゃんの笑い声が響き、何故か微妙な空気が流れる。

 うーん。あの二人も普段からこの調子か。

 俺が調博士に視線を向けるも、首を横に振られる。

 こればかりは時間が解決するまで待つしかないか。

 

 ──グ〜〜……。

 

 む、誰かのお腹の虫が悲鳴を上げている。

 上げたのは……響ちゃんか! 

 

「……っ」

 

 顔を真っ赤にさせて、響ちゃんが睨み付けてくる。でも皆は生暖かい目で彼女を見ており、それがさらに羞恥心を加速させる。

 くぁいいね! いいね! 

 

「ふん!」

 

 あふん。照れた響ちゃんにデコピンされる。

 

 さてさて。ご飯を食べるにしても、このビーチに基本俺たち以外の人はいない。

 つまり食料を調達するには、少し距離のあるコンビニまで買いに行かないといけない──これは、始まるな。

 

「買い出しジャンケン……!」

「おー! 楽しそうデス!」

 

 あ、切歌ちゃんは強制的に不参加ね。

 

「何故デス!?」

 

 いや、そりゃあ流石にそんな事させたら調博士怒るし、ウェルさんもウェルさんで何するか分からない。

 

「……怒りのウェル博士、ノットウェルカ〜ム」

「ブホッ!?!?」

 

 ……なんだか、夏なのに寒いな。

 それに一人変なツボにハマっている人居るし……。

 とりあえずクリスちゃんと翼さんは買い物組ね。

 

『異議無し』

『なんで!?』

 

 当然の処置だよっ! 

 という訳で、残りのメンバーでジャーンケーン──。

 

 

 はい、ジャンケンの結果、買い物組は翼さん、クリスちゃん、響ちゃん、未来ちゃん、マリアとなりました。

 いやー、最後に残った俺とマリアのジャンケン勝負は白熱したね……。

 

「なんでアイツジャンケンあんなに強いんだ?」

「奏、多分それは考えたらいけない事だと思う」

 

 なんだかツヴァイウィングがコソコソ話していますが気にせずに。

 

 買い物組さん、頑張ってねー! 

 あ、俺おにぎり欲しい! 

 

「あまり調子に乗ってるとモグよ」

 

 ……ふぁい。

 響ちゃんの脅しに屈した俺は、へんにょりした尻尾を振って皆を見送った。

 

 

「まったく、クリス先輩は気にしすぎデス」

 

 待っている間は日光浴しようと決めた俺たちはパラソルの下のんびりしていた。

 そんななか、切歌ちゃんがブーたれていた。どうやら、クリスの過保護がお気に召していないらしい。

 

「──アタシは、キリカじゃなくて切歌なのに」

 

 ……どうやらそれ以前の問題なようだ。

 

「あの、リッくん先輩」

 

 どうしたものかと悩んでいると、セレナが側にやって来た。

 どうしたの? と聞いてみると、逆にある事を聞いて来た。

 

「あの黒騎士に見覚えはありませんか? 何故か酷くリッくん先輩の事を……」

 

 ──正直分からないな。

 俺のクローンと俺を執拗に狙っている様子から、かなり恨んでいるみたいだけど……俺、記憶失っている事がほとんどだからな。だから──。

 

「違うんです」

 

 ……? 

 

「確かにリッくん先輩は姿を変えて何度も生まれ変わっています。でも──」

 

 ──今の姿を見て明確に憎悪していたように見えました。

 セレナは静かにそう言った。

 ……そう言われてみれば確かにそうだな。俺の力を感じ取って……というには違和感がある。

 それに、イーブイの進化系の彼らを執拗に襲っているのももしかして……。

 

「それにわたし……あの黒い騎士と会った事があるんです」

 

 なんですと!? 

 

「何処で会ったのかは分かりません。でも──嫌な感じです」

 

 神妙な顔で彼女はそう言い──次の瞬間、海がひっくり返った。

 

「──な!?」

「デスデスデース!?」

 

 いや、実際には違う。

 ひっくり返ったと思う程の何かが、海水の中から飛び出したんだ。

 俺たちは流される海から脱出し、そして──上を見上げて口をポカンと開いた。

 

「……」

 

 デカイ。

 そこに居たのは、包帯に身を包んだ女の巨人だった。

 さらにその肩にいるのは──翼さん達を襲ったレイア! 

 

「さて──派手にその力を見せてもらおうか!」

 

 コインの銃弾が俺たちを襲い──戦場に歌が響いた。

 

 

 ◆

 

 

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

 

 いの一番にギアを纏ったのは──アガートラムの装者セレナ・カデンツヴァ・イヴ。

 彼女に続くようにして調と切歌、奏も胸の歌を唄いギアを纏う。

 

 それを見たレイアは大量のテレポートジェムを放り投げ、砂浜を埋め尽くさん限りのアルカノイズを召喚した。

 

「調さん、切歌さん、リッくん先輩はアルカノイズを! 奏さんはあの大きいのを! オートスコアラーはわたしが!」

「分かったデス!」

「了解!」

「ブイ!」

「それが良さそうだな!」

 

 敵戦力を分析し、指示を出すセレナ。コマチ達もその指示に素直に従い、それぞれ動く。

 

「オラオラ! あたしの槍を受けてみろ!」

「……!」

 

 奏の槍の一撃は装者の中でもトップクラスに強力だ。

 しかし相手は巨人。片腕で悠々と受け止めていた。

 体格通りの守りの固さに、奏は内心舌を巻く。

 

(こりゃあ、撃ちどころミスったらやられるな)

 

 槍を振るいながら、奏は勝機を狙い続ける。

 

 一方、セレナとレイアの戦いは拮抗していた。

 レイアの終わらない銃撃でセレナは攻勢に出れず、レイアもまたセレナの盾を貫けず攻めあぐねていた。

 

(戦況を見間違えていた!? やっぱりわたしにはマリア姉さんみたいには……)

 

 しかし、この拮抗はすぐに崩れるとお互いに気付いていた。

 

 セレナのアカシアの力が孵化すれば、形勢は彼女に傾く。

 故に──セレナは迷っていた。

 

(明らかに──誘っている)

 

 戦っていて分かる。目の前の相手の動きの違和感に。

 彼女は何かを狙っている。

 そしてその為にセレナにあの力を使わせようとしている。

 果たして、その企みに乗って良いのか? 

 

(リッくん先輩だったらもっと上手く……)

 

 悩むセレナに──跳弾した金色のコインが、背後からセレナの銀の鎧を穿つ。

 

「っ……!?」

「使わないなら使わないで──派手に散らせるまで!」

 

 セレンの迷いを読み切ったレイアの銃撃に激しさが増す。

 それに耐えながらセレナは考え続け──姉の言葉を思い出す。

 

『アナタは悩み過ぎてドツボに嵌る事が多いわ』

『仰る通りです……このままだと、姉さんみたいに──』

『こら』

『あいたっ!?』

 

 ウジウジと悩む妹に対してマリアはため息を吐き、そのままデコピンした彼女は言う。

 

『アナタはアナタのまま強くなりなさい』

『でも』

『──リッくん先輩は、強いアナタじゃなくて、優しいアナタが好きだと言ったのよ』

『──!』

『そしてそれはわたしも同じよ、セレナ』

 

 

「──迷う必要は無かった!」

 

 セレナは自分を覆うようにしてエネルギーシールドを展開し、胸元のギアに触れる。

 

「リッくん先輩みたいに強くはなれないかもしれない。マリア姉さんみたいに凄くなれないかもしれない! ──それでも」

 

 セレナのギアが──変わる。

 

「あの背中に憧れていられるから、わたしはわたしらしく居られるんだ!」

 

 憧れる二人からの想いが、まるで魔法の様にセレナの心を包み込む。

 セレナのギアから愛に満ち溢れた光が溢れ出し、その身を包み込む。

 そして光が晴れたその姿は──一見何も変わっていなかった。

 

「なんだ? こけおどしか?」

「──こけおどしかどうかは──」

 

 ──これから見せます。

 そう言ってセレナがその場で腕を振った瞬間──レイアが弾き飛ばされた。まるで何かに叩かれたように。

 

「!? これは──」

 

 セレナが再び腕を振るい、レイアは咄嗟に全方位にコインを弾く。

 すると、幾つかのコインが何も無い所で弾かれ、そのままレイアが再び叩かれる。

 

「これは──不可視の鞭か!」

「いいえ──リボンです!」

 

──アガートラム・マジカルベール

 

 セレナが開花させたのは不思議な妖精が持つ魔法の力。

 一見見た目に変化は無いが、セレナの目にはハッキリと自分に巻き付くリボンが見えている。

 それでレイアを攻撃していたのだ。

 だが──彼女の力の真価はここからだ。

 

「はっ!」

 

──MAGIC†DECORATION

 

「デス!? なんか巻き付いて──」

「切ちゃん!? 何事──」

 

 不可視のリボンが二人に巻きつき──透明化させた。

 二人とも自分の手を見て、お互いを見て、セレナを見て。

 

「すごいデス!」

「これなら!」

 

 二人を見失い、右往左往しているアルカノイズを次々と倒していく。

 そばで戦っていたコマチは、アルカノイズがいきなり刻み込まれてビックリしてひっくり返っていた。

 それを見てセレナは可笑しそうに笑い──レイアを見る。

 依然として不可視のリボンはレイアを何度も弾き飛ばしており──さらに、準備は整っている。

 

 レイアの周囲50メートルが光り出す。

 それも何かの紋様で。

 

「これは、錬金術!?」

「いいえ、これは──妖精の操る魔法!」

 

 魔法陣から冷気が発生し、パキパキとレイアの体が凍り始める。

 

「──!」

 

 それを見た巨人が助けようとし。

 

「おっと──隙を見せたな」

 

 すかさず奏が槍を掲げて──胸の雷を解放した。

 

──MAGIC†EXECUTION

──THUNDER VOLT♾NOVA

 

 氷の棺が全てを閉ざし、破壊の万雷が青空の下轟き──戦場に二つの影が駆け抜けた。

 

 

 ◆

 

 

「セレナの力、凄いデス!」

「驚いた。割とチート級」

 

 うお、びっくりした!? 

 いきなり消えたと思っていたら、急に現れた! 

 二人の言葉から察するにセレナの新しいギアの力っぽいけど──どんな力なの? 

 視線を向けるとでっかい氷の棺ができている。さらに奏さんも万雷を解放したみたいで、巨人が倒れている。

 

「戦闘、終了です」

「一丁上がりってか」

 

 セレナさんと奏さんがハイタッチを交わす。

 どうやら本当に終わったみたいだ。

 さて、しばらくしたら響ちゃんたちもこっちに──。

 

「──フィア!!」

「──ダース!!」

「ブイ!?」

 

 と、思っていたら撥ね飛ばされた!? 

 

「リッくん先輩!?」

 

 地面に落下する俺を何かが包み込む。

 なんだこれ? もしかしてセレナの力? 

 どうやらそうみたいでセレナは露骨にホッとして──視線を彼らに向ける。

 

「前回は共闘しましたが、リッくん先輩を傷付けるのなら拘束します!」

 

 そう言ってセレナが手を翳し。

 

「フィア!」

「ダース!」

 

 しかしニンフィアが一声上げるとサンダースは頷き──ニンフィアを背に乗せて、指示通りに駆ける。

 

「まさか、見えて──」

 

 セレナが驚きの声を上げる中、ニンフィアは口から不思議な色を放つ炎を吐き出した。

 その炎は氷の棺に当たると──消滅した。

 溶けたのではなく、消滅した。

 え? 何が起きたの? 

 

「まさか、わたしと同じタイプの力? それで干渉して──」

 

 なんかセレナが難しいことを言っているが、不味い。

 レイアが解放されて、さらにサンダースがあの巨人を縛り付けていた電気を吸い取りやがった。

 

 ニンフィアたちに助けられたレイア達は、ググッと起き上がると──。

 

「……っ! 相変わらず妙な真似をする奴だ!」

「……!」

 

 そう言って──ニンフィア達に攻撃を仕掛けた。

 

「な──!?」

「何をしているデスか!?」

 

 ──仲間割れ? 

 コインの銃弾と、巨大な手が砂浜を撒き散らし、ニンフィア達は後ろに跳んで避ける。

 だが。

 そんな事よりも──何で、ニンフィアたちも、レイアも巨人も苦しそうな、悲しそうな顔をしているんだ? 

 

「フィア……」

「ダース……」

「っ……やめろ……! そんな目で、見るな……!」

 

 レイアは、食いしばりながらコインを持った腕を伸ばし──その腕を握って無理矢理下ろす者が現れた。

 

「──黒騎士」

「……」

 

 レイアの隣には──黒騎士が居た。

 でも、それはあり得ない。

 なんで、キャロルちゃんと敵対している黒騎士が──オートスコアラーの仲間のように隣り合って立っているんだ? 

 

「フィア……!」

 

 黒騎士を見たニンフィアが威嚇し──黒騎士は一飛びで距離を詰めた。

 

「ダ──」

 

 サンダースの体がパリッと光のと、黒騎士の一閃が振るわれたのは同時だった。

 鮮血が舞い、ニンフィアが深く斬り付けられて吹き飛び、サンダースはかすり傷を負いながら距離を取る。

 

「ダース……!」

 

 どうだ、とサンダースが笑い。

 

「……」

 

 しかし黒騎士はその挑発に乗らず、倒れ伏せているニンフィアに向けて剣を掲げた。

 

 ──もう動けないのに、さらに刺すつもりか!? 

 そんな事、させるか! 

 

「ブイ!」

 

 俺は、テレポートで黒騎士の前に出て「まもる」を発動させる。

 遠くでセレナたちの悲鳴が聞こえるが、それどころじゃない。

 こいつ……この前よりもパワーが増している! 

 耐え切れず膝を着き、まもるの発動が途切れそうになる。

 

「フィ……フィア……」

 

 後ろのニンフィアが何か言っているが、正直聞き取る余裕も無い。

 バチバチと障壁から音がなり──ついにはパリンと音が鳴る。

 そして黒騎士は俺ごとニンフィアを突き刺そうと剣を振り被り、せめてこの身で受け止めようと踏ん張り──横からの突進で弾き飛ばされた。

 横を見る。そこには──。

 

「──ダース!」

 

 サンダースが、ふざけんなと俺に対して怒りの視線と、そして──ちょっぴりの感謝を込めた感情が乗っており……そのまま、剣に刺されて地面に串刺しにされた。

 

「──ブウウウウイ!!」

 

 ──くそ! くそ! くそ! 

 守れなかった! 

 しかし、俺に悔やむ時間は与えられない。

 黒騎士はさらにサンダースを傷付けようと剣を構える。

 

 ──させるか! 

 

 俺はニンフィア達をテレポートで逃した。

 送り先は──二人を大事に思っている人の場所! 

 黒騎士の剣が砂浜に埋まり、そしてジロリとこちらを見る。

 

「──ブイ……!」

 

 ──やる気なら、相手をしてやる。

 今の俺は──怒っているんだ……! 

 黒騎士と強く睨み合い、場がピリピリするなか──戦いを沈めたのはレイアだった。

 

「退くぞ。マスターも仕事は済んだと言っている」

「……」

「この場に用は無い──もう一度言う。退くぞ」

 

 そう言ってレイアはテレポートジェムを使い、黒騎士を何処かに消した。

 巨人も海の中に潜り去っていく。

 レイアもその後を追おうとするが──そのまま行かせる訳には行かない。

 

「ブイブイ!」

 

 何で、黒騎士を止めなかったんだ! 

 俺は見てたぞ。お前が、ニンフィア達が斬られた時一歩踏み出したのを! 

 それを! 何で! 

 

「──派手に勘違いしているな。そんな事はあり得ない」

 

 ──何故なら、アイツらはただの餌だからだ。

 

 その一言を残してレイアは去り──俺は、悲しくて、悔しくて、何も言えなかった。

 

 

 ◆

 

 

「ブーイ……」

「まだ落ち込んでいるの?」

 

 戦闘が終わった頃になり、響達もセレナ達と合流を果たした。

 さらにエルフナインもその場に現れ、セレナ達が見た出来事を聞くと思案顔になり。

 

『オートスコアラーはともかく、アカシア・クローンの追跡はできるかもしれません。そこから事件の全貌が明らかになるかと』

 

 それにより、装者たちは手分けしてアカシア・クローンの捜索に乗り出した。

 コマチは響と一緒に居る。その方がメンタル的な回復に努める事ができると判断したからだ。

 そしてマリアはエルフナインと行動を共にすると名乗り出た。その事に誰も文句を言わなかった。

 

「ほら、元気出して。早く見つけて手当てして話を聞こう?」

「……ブイ」

 

 珍しく慰めてくれる彼女に、コマチは感謝の意味を込めてペロリと頬を舐め、それに響が気恥ずかしそうに頬を染め──。

 

「──響?」

 

 ──その声に、体を硬直させた。

 そして声がした方向へ視線を向け……声が、漏れた。

 

「──お、父さん……?」

 

 ──突然起きた親子の邂逅。

 過去の出来事が、響のトラウマを刺激し、体を震わせるなか……さらなる衝撃が、彼女を襲う。

 

「おい、アキラ。どこをほっつき歩いて──」

 

 響の父の名を呼びながら現れたのは──キャロルだった。

 

「……ブイ?」

 

 ──どういう、事? 

 混沌とした場のなか、コマチの困惑しきった声だけが……響き渡った。

 




フェアリータイプのセレナ
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