【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第十三話「取り戻す為の戦い」

 

「ブイ!」

 

 コマチがテレポートを使い、非戦闘員を遠くへと、SONGのスタッフ達が居る場所へと飛ばす。

 そんな中、未来は響に言った。

 

「響、お父さんは任せて。だから──」

「うん、ありがとう──」

 

 短いやり取りの後、戦場に残ったのは響、キャロル、コマチ、エーフィのみ。

 相対するのは災厄の呪いを撒き散らす黒騎士と、それを操る奇跡の破壊者と成り果てたノエル。

 ノエルの錬金術が発動し、黒騎士に力が注ぎ込まれる。

 目が怪しく光り──黒騎士は一飛びでエーフィの目の前に立ち、魔剣を振り下ろした。

 

「──!」

 

 しかしそれを、コマチがサイドチェンジで場所を入れ替わり、まもるを使って受け止める! 

 

「ブイ!」

 

 コマチが叫び。

 

「はあああああああ!!」

 

 響が素早く反応し、黒騎士の背後から殴り飛ばす。

 ビルを三つほど貫通して黒騎士は瓦礫の山に埋め尽くされる。

 

「ノエル!」

 

 一方キャロルは、錬金術を行使しノエルを捕らえようと試みる。

 それにエーフィのサイコキネシスが加わる。

 黒騎士と引き離した今がチャンスだと、彼女は考えている。

 しかし、それは──黒騎士がテレポートジェムでノエルの前に現れる事で覆される。

 魔剣の一振りでキャロルの錬金術を振り払い、身に余る悪意でサイコキネシスを無効化する。

 

「そのアカシア・クローンで最後なのです──大人しく斬られなさい」

「誰が!」

「させはしない!」

「ブイ!」

 

 戻ってきた響たちがキャロル達の隣に立つ。

 それを見たノエルは内心歯噛みする。

 アカシアとシンフォギア装者に、キャロルとアカシア・クローン。

 なかなかどうして切り崩せない。

 ノエルの奥の手を使えば彼女達を倒す事ができるが、後の事を考えると今は使えない、と彼は考えた。

 

 故に──少しだけ妥協する事にした。

 

「黒騎士、少しだけなら許可します──蹂躙しなさい」

【──】

 

 ノエルの許しを得た黒騎士は──魔剣に炎を纏わせて、そのまま振り下ろした。

 すると、炎を孕んだ竜巻が響達に襲い掛かる。

 それを見たキャロルが叫んだ。

 

「まさか、吸収したブースターの力を!」

 

 前に出て障壁を作り出し受け止めるキャロルの顔は、苦し気に、しかし何より怒りで満ち溢れていた。

 自分を支えてきた優しい家族の力が、利用されている。それだけで頭が沸騰しそうだった。

 コマチとエーフィもそれぞれの力で炎を受け止める。

 

「──ハッ」

 

 その隙を突いて、響が拳圧で炎を掻き消す。

 そして突撃し、黒騎士に向かって腕を振り下ろし。

 

【──】

「! ブイブイ!」

 

 黒騎士が剣を下げるという妙な行動をし、それを見たコマチが危険を察知し、響に警告の声を出す。

 しかし、一歩遅く彼女の拳が叩き込まれ──そのダメージが魔剣に吸い寄せられていく。

 

【──】

「しま──」

 

 そしてそのまま受けたダメージを倍にして、響に叩き込んだ。

 手痛いしっぺ返し。

 鮮血が飛び、ギアの破片が舞う。

 

「ブイブイ!」

「──大丈夫、擦り傷」

 

 駆け寄ってくるコマチにそう返し、響は黒騎士を睨み付ける。

 此処に来て押され始めた。時間が経てば援軍が来るが──それまで持つか。

 

「使うか──」

 

 響は、コマチとの日々を思い出し、新たな力を行使しようとして。

 

「──え?」

「無駄ですよ」

 

 ──何も、沸き起こらなかった。

 どうしてと戸惑うなか、ノエルは言う。

 

「アナタが謹慎されている間に、ギアからアカシアの力は抜き取っておきました。ウェル博士やナスターシャ教授が気が付かないように器だけ残していますが──中身が無いのなら意味がない」

「……っ」

「感謝してくださいね。アナタだけは最後までその力を忌避していましたから」

 

 彼女のガングニールにはアカシアの記憶が無い。

 だから響は孵化する事ができない。

 戦う為の想いを──盗られてしまっている。

 その事にギリッと奥歯を噛み締める響をノエルが嘲笑し──。

 

「随分と警戒しているんだな、立花響を」

「──なに?」

「奴はフロンティア事変の際に、アカシアの力を失った──にも関わらずお前は奴を警戒していた」

「……」

「──恐れているのだろう立花響の可能性に。

 そして、それと同じくらいオレは賭けている!」

 

 キャロルの錬金術が発動し、エーフィが彼女に向かってシグナルビームを放った。

 

「何を」

 

 ノエルが怪訝な表情を浮かべ──黒騎士の背後に現れた紋様からシグナルビームが射出される。

 

「な──」

【……!】

 

 ギチギチと嫌な音を立て、黒騎士が吹き飛ぶ。

 貫通させる事はできなかったが、しっぺ返しを行った後の、悪意に囚われている黒騎士になら、この技は効く筈だった。

 

「終わらせるぞ、ノエル!」

 

 手に力を溜めてエーフィと駆け出すキャロルだったが。

 

「! フィー!」

「っ! お前、何を──」

 

 途中、エーフィに体当たりされて態勢を崩し──パタッと赤いナニカが彼女の頬に触れた。

 エーフィの血だった──キャロルを庇い、飛来する魔剣に貫かれた為に。

 

「エーフィ!」

 

 キャロルが叫ぶなか、魔剣から腕が、鎧が、呪いが形成されていく。

 見た目で誤解されがちだが、黒騎士の本体は魔剣ダインスレイフ。逆再生のように黒騎士が現れ、血濡れのエーフィから剣を抜き──再び突き刺す。

 エーフィの悲鳴が上がった。もう、エネルギーは吸収したというのに。

 

「エーフィ! この!」

「っ……!」

「ブイ……!」

 

 黒騎士に向かって、三人が攻勢に出る。

 それを見たノエルが言った。

 

「全てのアカシア・クローンを吸収したのです──良いのですか? 無警戒に近付いて」

 

 黒騎士から八つの光が溢れ出し──炎が、水が、雷が、吹雪が、草刃が、妖しい風が、念力が、悪意が解き放たれた。

 世界を壊す為のエネルギーが彼女達を襲い──倒れ伏した。

 

 

 ◆

 

 

「ブ、ブイ……」

 

 い、いてえ……まもるを使い過ぎて自分で防ぐ事ができなかった。

 それに響ちゃんとキャロルちゃんへのダメージも……。

 

 でも、この子は守る事はできた。

 

「フィー……」

 

 なんで助けたか? って。

 そんなの、君の事を助けたいって、大事だって言って泣いている人が居たからだ。

 

「──」

 

 今は回復に努めてくれ。消えたらキャロルちゃんが──。

 

「うるさいですね」

 

 ──グサっと刺される感触が、俺の体に走る。

 痛いと思う前に──苦しいと思った。

 どんどんどんどん体の力が吸われていく──これ、が……! 

 

「……流石はオリジナルですね。アカシア・クローンの九匹分はあります。おかげで消費した分は賄えました」

「コ、マチ……!」

 

 響ちゃんの声が聞こえるが、応える事ができない。

 それどころか、剣を抜かれて血がダクダクと流れ出ている。

 

【──】

 

 さらに、黒騎士が俺に剣を振り被っているのを感じる。

 それを止めようと響ちゃんが必死に起き上がろうとしているのを感じる。

 どうにか、しないと──。

 

「──もう、十分でしょう」

 

 しかしその前に、ノエルが黒騎士を消した事で、斬られる事はなかった。

 ノエルは魔剣を持つと、倒れているキャロルを抱える。

 

「フィー……」

「無駄ですよ。もう万象黙示録は止まりません──世界が壊れるのを静かに待っていると良い」

 

 それだけ伝えるとノエルはジェムを地面に叩きつけ──。

 

「ちっ……お前らだけでも……!」

 

 その前にキャロルちゃんが、七つのジェムを放り投げ──ダメージを負って動けないあの子達を逃した。

 

「……アカシア。こいつらの事をたのん──」

 

 そして、最後に俺に向かって言葉を紡ぎ──その途中で消え去った。

 

「ブー……スタァ」

 

 何でオレ達を置いて行ったんだ、と声がする。

 

「シャワ……」

 

 ボク達は、君の役に立てないの? と声がする。

 

「ダ……ース……!」

 

 ワイの力が足りひんのか? と声がする。

 

「リー……」

 

 何という体たらく。武士として情けない……! と声がする。

 

「シア……」

 

 キャロルちゃん、死なないで、と声がする。

 

「フィア……」

 

 ウチ、こんな結末嫌だよ、と声がする。

 

「ブラ……」

 

 一人で背負いこむつもりか、と声がする。

 

「──フィー」

 

 守れなかった、と声がする。

 

 声がする。声がする。……声がする。

 痛いくらいに、悲しいくらいに、耳を塞ぎたくなるほどに──悔やんだ声が。

 

 俺達は、敗北した。

 

 

 第十三話「取り戻す為の戦い」

 

 

「エルフナイン……いや、ノエルは元々キャロルの補佐として彼女の計画を手伝っていたとの事です」

 

 アカシア・クローンから聞いた話をコマチが聞き、それを響に伝えて文章化された報告書をオペレーターの二人が読み上げる。

 

「しかし、魔剣ダインスレイフに触れた事で呪いに犯され様子が可笑しくなり──キャロルと対立」

「そして、秘密裏に準備をしキャロルからありとあらゆる権限を剥奪し──今に至ります」

『……』

 

 エルフナインが、ノエルが裏切り者──否、そもそも仲間と思っていないのなら、裏切りとは言えず。

 彼が黒幕だと知った装者たちのショックは大きかった。

 利用されていたと思うと、怒り、悲しみ、悔しさが募る。

 だが、それ以上に──。

 

「マリア姉さんを刺したのは、ノエルさん?」

 

 セレナの呟きに皆神妙な顔をし──。

 

「彼ではないわ」

「姉さん!?」

『マリア!!』

 

 それを当の本人であるマリアが否定した。

 現れた彼女に皆驚き、セレナは駆け寄り彼女を抱き締めた。

 

「姉さん! 姉さん!」

「ごめんなさいね、セレナ。またアナタに心配を掛けた」

 

 セレナを慰めながら、マリアは他の装者達にも笑顔を向ける。

 

「遅れてごめんなさい。でもこの通り、ピンシャンしてるから」

 

 そのいつもと変わらない姿に皆がホッとする。

 

「それで、さっきの話の続きなのだけど──」

 

 マリアは、自分が刺された日の事を思い出しながら語った。

 

 

 

「ねぇ、エルフナイン」

「はい、なんですか?」

「──アナタの本当の名前を教えてくれる?」

「──っ!」

 

 その言葉にエルフナイン──否、ノエルは心底驚き、誤魔化そうとし……マリアの真っ直ぐとして目を見て諦めた。

 

「……いつから気付いていたんですか?」

「初めからよ」

 

 彼女の言葉に、エルフナインは言葉を失う。

 

「アナタが名前を呼ばれる度に波導が揺らいでいるのが見えた。それ以外は本当の事を言っているのに。それに、アナタの波導とは別の淀んだ波導が見えて何かあると思っていたの」

「……なるほど。それで僕を泳がせていた訳ですか」

「……ごめんなさいね。本当はこんな事したくなかったの」

 

 でも。

 

「誰かを強く想うアナタを、その呪いから助けたかったから」

「──え?」

 

 彼女の言葉に、ノエルは理解できないと頭が真っ白になる。

 

「エルフナインと呼ばれる度にアナタは苦しそうに、そしてその人に対する強い想いが溢れているのを感じた。そして、キャロルに対する怒りと謝罪と悲しみと──たくさんの感情を抱いてその名を呼んでいる事も、全て感じている」

「──」

「ねぇ、教えてちょうだいアナタの本当の名前。そしてできたら、わたしにアナタを救わせて欲しいの」

 

 理解できなかった。敵であるノエルを救おうとするマリアに。

 ……いや、そもそもノエルの事を敵として見ていない。救うべき対象として、手を差し伸べる相手として見ている。

 そんな彼女が眩しく見えて。

 

「──僕は」

 

 ノエルは──突如、マリアに突き飛ばされた。

 

「なに、を──」

 

 そして目の前に広がる光景に──言葉を失った。

 ノエルの背後から現れたのであろう黒騎士が、マリアをその剣で突き刺していた。

 ジンワリと血が滲み、苦悶の表情を浮かべるマリア。

 

【何を絆されている人形】

「──! お前は……」

【やはり所詮は人形。心が移ろいやすく、脆い】

 

 ──ネフィリムだ。

 彼は、ノエルが呪いから解放されるのを嫌って襲撃したようだ。それも、マリアを確実に刺す為にノエルを狙って。

 

「随分、と恐れているのね……わたしの事を」

【ああ、そうとも。その忌々しき波導──感じるだけでイラつく】

 

 魔剣を引き抜き、マリアの腹部から血が吹き出す。

 そしてトドメを刺すべく、剣を構えた。

 しかし、それをノエルが止めた。

 

「よせ、此処で殺したら──」

【人形風情がオレに指図するな】

「ぐあ!」

「ノエル!」

 

 ノエルもまた魔剣で斬られ、そして呪いが蝕んでいく。

 

「あ、が、ああああ……!」

【お前は破壊者としてあり続ければ良い。さもなくば──苦しんで死ね】

「あ、あ、ああああああ!!」

 

 苦しみ悶えるノエルに──マリアがそっと触れる。そして波導を使って呪いを消し……しかし吐血をして途中で止まる。

 

「全ては払えないか……」

【……何のつもりだ】

 

 しかし、マリアはその問いには答えず、黒騎士に近付く。

 それに対し黒騎士は剣を突き付け──マリアは自らの心臓が貫かれるのも気にせず、前に出る。

 

【──!?】

「これで満足でしょう? わたしが死ねば、この事がバレないで済む。この子が苦しまないで済む」

【貴様、正気か!?】

 

 マリアは、ノエルを助ける為に命を賭けていた。

 それが理解できない黒騎士が後退り、しかしその分マリアが前に出る。

 

「だが、忘れるなネフィリム。わたしは死なない」

【──!】

「仲間を助ける為なら、わたしは不死鳥の如く蘇ってみせる。そして、この手でこの子を救ってみせる──貴様のちっぽけな呪いと怒りなど、どうという事はない!!」

【……!】

 

 ──次に相見えるその時まで、その安い心臓守り通してみろ。

 

 その言葉を最後にマリアは──立ったまま気絶をした。

 

「──マリア、さん」

 

 その背中をノエルが見つめて──しかし呪いにより上書きされる。

 

 

 

「と、いう訳よ」

『いや無理し過ぎ!?』

「そうね、ちょっと痛かったわ」

「おい、誰かハリセン持ってこい。痛みってものを教えるから」

 

 マリアの言葉に翼がブチ切れるなか、マリアはコテンと首を傾げる。

 

「でも、絶対に助けてくれると信じてたから」

『──』

「それに、わたしが居なくても負けても立ち上がる──そして救ってくれるって思っていたから。だから無茶もできた」

『……』

「だから、ありがとう」

 

 マリアの言葉に、信頼に、皆が顔を赤くさせて目を逸らした。

 このスタイル以外完璧超人、人誑しの才能もあるらしい。

 

「そう言えば、リッくん先輩は?」

「アイツなら──」

 

 マリアの問いに、響が答える。

 

 アカシア・クローン達の所、だと。

 

 

 ◆

 

 

 ありがとうウェルさん。おかげで元通り! 

 

「アナタのことは調べ尽くしていますからね。そのデータからアナタ専用の回復薬は出来ています」

 

 なるほど〜。

 

「まぁ、劇薬で使えるのは限られますが」

 

 ちょっと???? 

 

「大丈夫ですよ。副作用は絶対ありません」

 

 ……本当ですか? 

 

「ええ──キリカくんに使っていましたから」

 

 ──そっか。それなら大丈夫だな。

 でも……彼らには。

 

「……アナタを基にして造られたとはいえクローン。錬金術は畑違いの為、そう易々と使えません」

 

 じゃあ、体を癒すには。

 

「ええ。自然に治癒するのを待つしか無いですね」

 

 そうか……あ、でもウェルさん。あの方法なら……。

 

「却下です」

 

 なんでー。

 

「そんなの、アナタの負担が大きいからに決まっています。それに、その方法だと回復薬が効きません。今度はアナタが倒れますよ」

 

 でもな──この子達を助けたいんだ。

 

「……はぁ」

 

 ウェルさんはため息を吐いて──部屋を出て行った。

 お、怒らせたかな? 

 そう思っていると、何かが動く気配がした。

 

 あ、起きた? まだ寝てて──聞いてたんだ。

 えっと、それは──で、──を、──するんだ。

 ──ん? うんうん。分かった。

 

 

 ──ああ、約束だ。絶対に君達のご主人様を助けよう。

 

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