【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第十四話「世界を壊すための歌」

「ねぇ、◾️◾️◾️。何故アナタはお父さんと仲良くしているの?」

 

 幼き日のキャロルの問いに、彼は答えあぐねた。

 故に彼は質問に質問で返した。何故、そんな事を聞くのかと。

 

「だって、◾️◾️◾️は人間を嫌いって言っているのに、お父さんとは仲良くしているから」

 

 そう言われて、影は確かに当然の疑問だと頷く。しかし答える気はないと伝え、キャロルはムッと頬を膨らませる。

 それならば、と影の友達について尋ねた。

 

「その人はどんな人だったの?」

 

 彼女の問いに、影は遠い過去を思い出し、そして痛みを堪えるようにして、こう答えた。

 

 ──キミがイザークに対する想いと同じくらいには大切だったさ、唯一の友だからね。

 

 

 ◆

 

 

「今のは……」

 

 目を覚ました時、キャロルは夢を見ていた。

 それは、父の友人──知り合いと交わした日の出来事。

 しかし、想い出の焼却により消えてしまったのか、誰と話していたのか思い出せない。

 額を抑えて胸にシコリを覚えているキャロルに──声が掛かる。

 

「ようやく目を覚ましましたかキャロル」

「っ! ノエル……」

 

 顔を上げるとそこには、黒騎士を伴ったノエルが居た。

 さらに彼だけではなく、離れた場所には──。

 

「レイア、ファラ、ガリィ、ミカ……」

『……』

 

 オートスコアラー達は、表情を変えずキャロルを見ていた。

 逃げ出した際に捕らえる為? 

 それにしては──表情が固く感じる。それこそ人形以上に。

 

「アナタをこの黒騎士で斬り、オートスコアラーを壊せば──歌は完成される。世界を破壊する為の歌が」

「やはり、そうか──」

 

 ──元々、キャロルの計画では、シンフォギア装者に魔剣ダインスレイフを与え、その呪われた旋律をオートスコアラーに刻み込むつもりだった。

 

 しかし、ノエルは別の方法は取った。

 

「カケラを集め、ネフィリムで補強したダインスレイフならば、シンフォギアに頼らずとも呪いの旋律は奏られる」

 

 その為には膨大なエネルギーが必要だが──それはアカシア・クローンにより解消された。

 レイラインのエネルギーも用いれば、問題なく事を進められる。

 さらに、黒騎士のネフィリムでチフォージュ・シャトーを起動させ、ダインスレイフと共鳴させれる事で、歌は世界を包み込む。

 

 キャロルが此処に居る時点で全ての準備は整っていた。

 ノエルが、倒れ伏すキャロルに問い掛ける。

 

「さて、死に行く元オリジナルよ。何か言い残す事は?」

「──オレは、まだ諦めていないぞ! お前を、あいつらを救う事を!」

 

 その言葉にノエルが目を細め、オートスコアラー達がピクリと体を反応させ──それを振り払うように黒騎士がキャロルを斬った。

 

「ぐはっ!?」

「奇跡の殺戮者ともあろうものが──最期の言葉がソレとは、ガッカリです」

 

 黒騎士がさらに斬り付ける。

 

「ああ!?」

「……」

 

 ガリィが酷く詰まらなそうに見ている。

 

「っ……!」

「……」

 

 ミカがソワソワと体を動かし、落ち着かなそうにしている。

 

「うっ……!」

「……」

 

 レイアが眉間に皺を寄せてコインを握り締める。

 

「……!」

「……」

 

 ファラが表情を歪ませて体を震わせた。

 

「……薄っすらと障壁を展開。まだ抗うのですか」

「──とう、ぜんだ……」

 

 血を大量に流しながらも、キャロルは目が死んでいなかった。

 必ず助ける。

 絶対に諦めない。

 ──そう、家族に誓ったのだから。

 

「そうですか──やりなさい黒騎士」

【──!】

 

 ノエルの言葉に従い、黒騎士がトドメを刺そうとし──割り込んだ剣を見てピタリと止める。

 そして振るわれる斬撃を紙一重で回避し、ノエルを掴んで距離を取った。

 

「──ファラ?」

「──申し訳ありません、マスター」

 

 キャロルの前にはファラが立っていた。

 ソードブレイカーで魔剣ダインスレイフを砕き、キャロルを──今まで彼女を殺そうとしていたのが嘘のように、彼女を守った。

 

「派手に鬱憤を晴らす!」

「イライラをぶつけてやるぞ!」

 

 さらに、ミカとレイアがカーボンロッドと大量のコインをノエル達に向けて射出。

 ガードするが砂塵が舞い、しかし黒騎士がすぐに斬り払い、キャロルを守っているファラ事、炎の竜巻をぶちかました──しかし、ファラとキャロルは水となって蒸発して消えた。

 

「ガリィか! ──という事は」

 

 ノエルが視線の先には、穴が開けられた壁があった。

 

 

 第十四話「世界を壊すための歌」

 

 

「お前たち……!」

 

 息を切らし、意識を失いかけているキャロルは、ガリィの腕の中でオートスコアラー達を見る。

 彼女達の表情には──マスターであるキャロルに対する敬愛の情がしっかりと戻っていた。

 どうやら、ノエルの洗脳が解けたみたいだ。

 しかし、何故このタイミングで? 

 

「予兆はありました──彼女達が、我々を呼び起こしたのです」

 

 ファラは、ファラ達は思い出す。アカシア・クローン達が傷付けられた際に感じた不快な感情を。家族が血を流し、悲鳴を上げる光景を。

 

「これは後でシアちゃんとシャワちゃんに怒られちゃいますね」

「ブー太郎にまた髪チリチリにされるのはゴメンだゾ!」

「リーお姉様に叱られてしまいますね」

「私も我が弟に雷を落とされそうだ。妹はフィア嬢に地味ネチネチ言われるな」

 

 全員思い出していた──あの日の温かい記憶を。

 キャロルが俯く。

 頬に何かが流れるが──オートスコアラー達は気付かないフリをしていた。

 

「とりあえず、何とか外に出て──」

 

 レイアは言葉の途中に三人を突き飛ばす。

 それと同時に雷光が迸り──次の瞬間、レイアは黒騎士に魔剣で串刺しにされていた。

 

「レイア!!」

 

 キャロルが叫び──レイアはゴミを捨てるようにして地面に転がされる。

 彼女に駆け寄ろうとし──キャロルは胸を抑えて倒れ込む。

 

「ぐっ──ああああああ!?!?」

「マスター!?」

「これは──まさか!?」

 

 マスターの異変に、ファラ達は察してしまう。

 

「ええ、そうです。儀式は充分だったようで」

「──ノエル!」

 

 忌々しそうにファラが叫び、ノエルはゆっくりと黒騎士の側に寄る。

 ダインスレイフの呪いの力により、キャロルの体の中で呪いの歌が錬成され具現化されようとしていた。

 さらに、レイアが斬られたことにより──世界の破壊は加速した。

 

「お前ら、此処から逃げろ……!」

「そうしたいのは山々なんですけど、そう簡単に逃げさせてくれそうにないですよ」

 

 ガリィの言う通り、黒騎士はその目を怪しく光らせて──にじり寄って来ていた。

 それを見たミカは──一人突貫する。

 

「ファラ! ガリィ! 後は頼んだゾ!」

「ミカ!?」

 

 ミカは、自身の想い出を、駆体を燃え上がらせる。

 バーニングハート・メカニクス。彼女の切り札であり──捨て身の力。

 

「──っ。行きますよマスター!」

「だが、ガリィ!」

「──あの普段何も考えていないミカが! 覚悟を決めているのです! ……無駄にさせたくないのです」

 

 そう告げると、ガリィはキャロルを抱えてファラと共に逃げる。

 それを追おうとする黒騎士の前にミカが立ち塞がる。

 

「お前の相手はあたしだゾ!」

 

 ミカは、皆とは違う腕を振りかざして黒騎士に立ち向かう。

 

「ごめんだゾ、ブー太郎! もう会えないと思う──大好きだったゾ!」

 

 ──ミカは黒騎士と戦い、そして燃え尽き……呪いの旋律を奏でた。

 

 

 

「ちょこまかとアルカ・ノイズ風情が!」

「時間が無いというのに!」

 

 ガリィ達はアルカ・ノイズによって足止めされていた。ミカが時間を稼いでいる間にテレポートジェムを手に入れて脱出する算段だった。

 しかし防衛システムにより思うように進めず、そして。

 

 どさりと三人の前にある物が投げ捨てられる。

 それは、変わり果てたレイアとミカだった。

 

「レイア! ミカ!」

 

 叫ぶキャロル。しかし、敵は待ってくれない。

 

「──っ!」

 

 咄嗟にファラが割り込み、キャロルに斬りかかった黒騎士の魔剣を受け止める。

 ギリギリと音が鳴りつば競り合いになる。

 しかしこの状況は、ファラにとっては好都合だった。

 

「私のソードブレイカーは、剣なら必ず打ち砕く──それは、魔剣ダインスレイフも同じ事……!」

 

 ファラが哲学兵装の力を持ってダインスレイフを砕こうとするが──折れない。

 

「何故……!?」

 

 ソードブレイカーが効かず、狼狽するファラ。

 そんな彼女に構わず、黒騎士は──その身にあるドス黒い呪いで以てファラを剣ごと真っ二つに裂いた。

 その瞬間、ファラは風鳴翼との戦いを思い出した。

 彼女は自分の剣を翼だと評し、彼女のソードブレイカーを打ち破った。

 ──似ているのだ、あの時と。

 

「──まさか」

 

 剣ではなく、呪いを、怒りを、憎悪こそが己の武器だと定義つけたのか? 

 だからこそ、剣を砕く力が作用しなかった。

 狙ったのか? もしくは初めから──。

 

「ファラ!」

 

 地に落ちた彼女の名を叫ぶキャロル。

 キッと黒騎士を睨み、錬金術を行使する。しかし、黒騎士は蓄積させているアカシアの力で相殺し、逆にキャロルを吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

「マスター!」

 

 彼女を追おうとして──ガリィの前に黒騎士が立ち塞がる。

 ガリィはそれにより──自分は助からないと悟った。

 だからこそ──性根の腐った彼女らしく、一つだけ……一人だけ逃す事ができるジェムを躊躇なく使う──キャロルに。

 人数分を確保しないとキャロルは絶対に使わせないと思っていた故に、使えなかったジェム。その使いどき。

 投げたジェムがキャロルに当たり発動する。

 

「──ガリィ」

「──凛としてくださいまし。あなたは……私達のマスターは何時だってそうだったじゃないですか」

「──ガリィイイイイイ!!」

 

 キャロルの叫び虚しく彼女は転移し──呪いの旋律が奏られ、世界を壊すための歌が起動した。

 

 

 ◆

 

 

「──ブイ!」

 

 キャロルちゃん! 

 

 俺達は、以前ノエルと戦った場所にチフォージュ・シャトーが現れた為に、現場に急行した。

 これが現れたという事は、全ての準備が整ったという意味だと、あの子達が教えてくれた。

 そして実際、チフォージュ・シャトーが現れた場所には、血だらけのキャロルちゃんが倒れていた。

 響ちゃんが助け起こすと、キャロルちゃんが言う。

 

「──止めろ、ノエルを……アイツを……!」

 

 意識を朦朧とさえながらもそう呟くキャロルちゃん。

 

「ブイ……!」

 

 うん、絶対に止めてみせる。

 そう答えると、響ちゃんが俺を止めた。

 

「アンタはキャロルを守っていなさい」

 

 え、でも……。

 

「──今のアンタは、体調が良く無いでしょう。無理ばかりして」

 

 でも! だとしても! 

 キャロルちゃんが助けを求めている! 泣いている! だったら手を差し伸べないと──。

 

「──必要ないですよ。そんな世界、無くなりますから」

 

 しかし、俺の言葉を遮って、拒絶して現れたのは──ノエルだった。

 

「ノエル!」

「無事だったんですねマリアさん」

「ええ、おかげ様でね」

 

 ノエルの瞳が一瞬揺れるが──すぐに鋭く俺達を見る。

 

「もう少しで万象黙示録が完遂する──邪魔をしないで頂きたい」

「そういう訳には、いかない……!」

「オレはまだまだ歌っていたいんでな。全力で邪魔させて貰うぜ」

 

 クリスちゃんと翼さんがそう返し──世界が揺れる。

 

 城内に居る黒騎士のネフィリムの心臓がシャトーを動かし、ダインスレイフが共鳴し、エネルギー波がせかいを巡り──ぶんかいを始めさせた。

 

「不味いデスよ!?」

「止めないと!」

 

 世界の滅亡を前に調と切歌が焦り。

 

「──させる訳にないだろう」

 

 立ち塞がるノエルが取り出したのは──堅琴・ダウルダブラ。

 そして、ノエルがひと撫で奏でると──彼は、否、完全なる肉体である女性の体へと再構築。インストールされた思い出から奇跡の殺戮者であるキャロルを呼び起こし──ファウストローブを身に纏う。

 

「貴様ノエル、ダウルダブラまで……!」

「──体に力が漲る……! この力があれば、パパの命題を完遂できる!」

 

 ノエルは、音を奏でて糸を装者たちに向けて振るう。

 その力は凄まじく──エクスドライブしたシンフォギアのそれ以上。

 そんな彼を倒してシャトーを止めるのは容易ではないと誰もが思った。

 故に──判断は一瞬だった。

 

「二手に分かれるぞ!」

 

 マリアの言葉に全員が頷き──奏、響以外はギアの力を解放した。

 

「我が心に応えよ奇跡の石──進化を超えろメガシンカ!」

 

 マリアの肉体が進化を超え──その身に波導を滾らせる。

 さらに。

 

 

──アメノハバキリ・フリューゲル

──イチイバル・レイジングフレア

──アガートラム・マジカルベール

──シュルシャガナ・バリエーションシルバー。

──イガリマ・グリーンソウル。

 

 全員、初めから全開だ。

 五人は、アカシアの力を持ってノエルに叩き込む。

 

 ──羽踊・幻惑剣。

 ──FLARE TORNADO。

 ──α式・百輪改。

 ──草切・呪りeッTぉ。

 

 羽が、炎が、銀色のノコが、緑の刃がノエルを包み込む。

 しかしノエルは大量のフォニックゲインを解放し──目前にセレナの力で透明化したマリア、奏、響の拳で地面に叩き落とされた。

 

「チーム分けは!?」

 

 響がマリアに聞くと、彼女はすぐに応えた。

 

「わたし、奏、切歌と調博士で行くわ!」

『了解!』

 

 全員がその指示に従い、走る。

 

「させるか……!」

 

 それを止めようとノエルが瓦礫の中から起き上がるが……。

 

「テメェの相手はオレだ!」

「アナタを助ける為に、アナタを倒す!」

「それが姉さんの願いだから!」

 

「ちっ……!」

 

 ノエルは立ち塞がる装者に舌打ちし──しかし止められないと確信していた。

 何故ならシャトーには──。

 

 

 ◆

 

 

 シャトーに潜入し、制御室に向かう四人。

 そこに黒騎士が居るとマリアの波導が感知していた。

 出てくる敵はアルカ・ノイズのみ。このまま行けば──。

 

「っ!」

 

 その道中、マリアは背後から気配を感じマントで攻撃を受け止める。

 だが。

 

「──これは」

 

 その攻撃に目を見開き──爆煙に包まれる。

 

「マリア!」

「くそ!」

 

 それを見た切歌と奏が援護しようと駆け出そうとし。

 

「──! 二人とも!」

 

 飛び出した二つの影に反応した調が、シュルシャガナの流動する銀で二人を守る。

 ギャリギャリと斬り付ける二つの音が響き、影は煙の向こうへと撤退し、マリアも奏達のところへ退いた。

 だが、様子が変だった。

 マリアの顔が青ざめていた。

 

「マリア?」

 

 調が彼女の名を呼ぶと共に──煙が晴れ、敵が現れた。

 

 

 彼女達にとっての最悪の敵が。

 何故なら彼らは──。

 

「──リッくん、先輩……?」

『──久しぶりだな、マリア』

 

「──キリちゃん?」

「──もう一人のアタシ?」

『──また会えるとは思わなかったデスよ、調。そして初めましてデス切歌』

 

「──光彦?」

『──ピッ、ピカッチュウ!』

 

 彼女達にとって忘れることのできない大切な──そして何より、失ってしまい、もう取り戻す事ができない家族なのだから。

 

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