【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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今後は毎日更新できそうにないのでタグ外しときますね


メガシンカできないシンフォギア
後日談的なの


 

「……本当に行くの?」

「ああ。オレにはやる事があるからな」

 

 響の問い掛けに、キャロルは胸元の白金のペンダントに触れながら答える。

 

「エルフナインの事はよろしく頼む」

 

 唯一の気掛かりを口にしながら、キャロルはテレポートジェムでその場を後にした。

 あまりにもあっさりと、そそくさと立ち去る彼女に、響は一人ため息を吐く。

 ……そもそも、出迎える事が出来たのは響だけだ。彼女が追いついた時もキャロルは驚き、それと同時に少しだけ嬉しそうにしていた。

 

 ──後に、黒騎士事変と呼ばれる事件から三日後。

 キャロルは大きな別れと再会を果たした。

 

 

 ◆

 

 

「──お礼を言いますよ、ウェル博士。あなたのおかげで、エルフナインは助かりました」

「……」

 

 緊急治療室のベッドで横になっているノエルが、傍らに居るウェルに対して礼を言う。

 

 ──助けられたエルフナインだが、魔剣ダインスレイフの呪いにより寿命が削られていた。

 しかし、ウェルがかつてフロンティアで得た延命技術により、彼女は普通の人と同じ時間だけの自由を得た。

 

 ──それでも、ウェルの表情は優れない。何故なら……。

 

「賞賛は要りません──僕は、君を救う事ができないのだから」

 

 ──ノエルは、とうの昔に限界を超えていた。

 魔剣ダインスレイフ、ネフィリムの怨念を長く、濃くその身に蓄積させてしまったが為に魂はボロボロ、さらにダウルダブラを無理矢理使う為に肉体の分解、再構築した為にいつ朽ち果ててもおかしくない状態。

 

 それでもこうして意識を保っているのは──。

 

「ノエル!」

「……っ」

 

 入ってきたのは、元気に走り回る事ができるようになったエルフナインと、ノエルが目覚めたと聞いて駆け付けたキャロルだった。

 ノエルは、二人を見て──。

 

「すみませんでした二人とも──僕が愚かでした」

 

 ──ノエルは、二人に謝りたかった。

 その為だけに、意地だけでこうして生き永らえている。

 エルフナインは、その言葉を聞いて涙を流しながら彼に駆け寄る。

 

「そんな! ノエルは悪くない! 悪く、ない……!」

「それでも……家族を傷付けてしまった。パパの命題を間違えてしまった」

 

 ノエルは──酷く後悔していた。

 あれほど抱いていた恨みが、怒りが、憎しみが偽りのもので、それなのに家族を失う痛みをキャロルに強いて、エルフナインも巻き込んでしまった。

 

「エルフナイン、お願いだ」

「……何?」

「たくさん学んで欲しい。僕が目を逸らし、見ようとしなかった世界を。……SONGの人達は良い人ばかりだから」

 

 特にマリアは、敵だったノエルを救おうとしていた。故に、ノエルの話を聞き──一人涙を流していた。

 彼女だけではない。騙された筈のSONGの職員達全員が、彼が助からない事を聞いて悲しんでいる。少しの間、共に過ごした……ただそれだけで。

 

 だから、彼はエルフナインを預けることに迷いは無く、キャロルも賛同した。

 エルフナインは、ノエルの願いに──涙を流しながら強く頷いた。

 それが、自分にはない強さだと思った。

 

 ノエルは、次にキャロルを見る。

 

「キャロル、どうでしたか? 間違った自分を見るのは……?」

 

 ノエルは、キャロルにとっての鏡だった。

 

 父を失った事で世界を憎み、命題を完遂する為に誤った道を歩いたキャロル自身。

 彼に問いに、彼女は答えた。

 

「最悪だ」

「……そう、ですか」

 

 飾りも無い彼女の本音に、ノエルは納得し──。

 

「──だが、家族を失うのは……それ以上に最悪だ」

「──」

 

 キャロルの言葉に、ノエルの瞳が強く揺れる。

 

「アナタは……こんな僕を、家族だと、失うのは悲しいと──そう言ってくれるのですか」

「当然だ」

 

 簡潔に、即答で、迷い無く断言する。

 ノエルは、それが堪らなく嬉しくて──。

 

「──ありがとう」

 

 彼の未練を払うには十分で──ノエルは二度と目を開く事なく、安らかに眠った。

 

 

 ◆

 

 

「……」

 

 キャロルは、レイアの妹の頭の上に乗り海を渡っていた。

 唯一生き残った家族の一人だ。

 ……彼女は、姉が居なくなって寂しそうだが──それでもキャロルに着いて来てくれた。それが嬉しいと彼女は思う。

 

 キャロルは、記憶の中で気になる事があった。

 父と会話していた謎の影。

 その男を、キャロルは知っている。思い出した。

 

 しかし──どうにも腑に落ちない。

 記憶の中の彼と、今現在の彼は──あまりにも存在が隔離している。

 

 キャロルの知らない間に、何かがあった。

 そう判断した彼女は──姿を晦ましているあの男を探し出すためにも世界へと飛び出した。

 

「……そういえば」

 

 キャロルは、ふと思い出した。

 立花洸の事を──そして、立花響の事を。

 

 

 ◆

 

 

「正直、まだお父さんに対しては……許せない気持ちもある」

「響……」

 

 洸が目を覚まし、体調が回復したところで……親娘は向かい合って話し合っていた。

 傍にはキャロルとコマチがおり、二人を見守っていた。

 洸は、響の言葉を受けて仕方ない事だと受け入れる。

 が──。

 

「でも、助けられた時昔を思い出して嬉しかった。そして、その時の思い出があったから──わたしは、お父さんを許したいと思った」

「──」

「お父さんは……どう思っているの?」

「……オレは」

 

 洸が、胸の内に燻っていた思いを告白した。

 

「仕事を失って人生が無茶苦茶になって……オレは辛かった」

「……」

「でもそれ以上に、逃げ出したオレの事が……今は一番許せない。辛い。……後悔している」

 

 ギュッと拳が力強く握り締められる。

 

「やり直したい……! みんなに謝りたい……! もう、逃げたくない!」

「──お父さん」

「響、こんな情けない父親だけど……許してくれるか?」

 

 彼の問いに、響は。

 

「許さない」

「……っ」

「戻って来て、わたしと一緒にお母さんたちに謝らないと……許さない。──わたしも、逃げたから」

 

 響がギュッと握り締められた洸の拳に触れる。

 

「だから、一緒に頑張ろうお父さん。そして元に戻りたい、わたしも……!」

 

 響は、涙を流しながらそう言って。

 

「──響!」

 

 洸の腕の中で、泣き続けた。

 まだ完全には取り戻していない。父と母達の間には、響と母親達の間には溝があるだろう。

 それでも響は、洸は「へいき、へっちゃら」だと歩み寄るのを恐れない。

 

 繋ぐ事がもうできないと思われた手と手が繋がれたのだから。

 

 コマチはその光景を号泣しながら眺め、キャロルは一人笑っていた。

 

 

 ◆

 

 

「今日はここで休もう」

 

 そう言ってキャロルとレイアの妹は、無人の島に上陸した。

 食事の後、錬金術で寝床を整えて睡眠を取り。

 そして、キャロルは──優しい夢を見る。

 

 

「──マスター」

 

 聞き慣れた声に、キャロルが目を開けると──そこには、失った筈の家族がいた。

 

「ここは……」

 

 周りを見渡すと、そこに映る景色は無人島のソレではなく、シャトー内の……大切な想い出、楽しき日々を過ごした場所であった。

 そして、目の前にはガリィが居た。

 こちらを見て性根の腐った笑顔を浮かべていた。

 

「まだ寝ぼけているようですねマスター? そんなんだと、イタズラされちゃいますよ?」

 

 クスクスとそう述べるガリィ──に、水がぶっかけられ、さらに吹雪が彼女を凍らせる。

 

「ギャ!? な、何しやがるこの鰻野郎! パッツン氷!」

「シャワー(マスターに近寄る邪悪を冷凍保存しようかと)」

「シア(というかイタズラするのアンタくらいじゃん)」

「くそ……! 良いから溶かせこのブリッ子ども!」

「シャワ!! (お前には言われたくないわ!)」

「シア!! (鏡見ろ性悪人形!)」

 

 そう言って二匹は凍って動けないガリィの体を転がしてキッチンに向かう。どうやら冷凍庫に入れるつもりらしい。

 ガリィの怒号を聞きながら、キャロルは呆然とする。

 そして、そんなガリィ達と入れ違うようにしてファラとリーフィアが入って来た。

 

「何だったのでしょう、今のは」

「リー(某達には預かり知らぬ事。放っておけば良い)」

「そう、ですか」

 

 困惑し切ったファラに、やれやれと呆れ顔を浮かべるリーフィア。

 早々に先ほどの記憶を忘却の彼方に送ると、ファラ達はキャロルを見て首を傾げた。

 

「マスター、如何なさいました?」

「リー? (まさか、先程の問題児達が何かやらかしたので……? もしそうなら彼奴らに腹を切らせましょう。介錯は某が)」

「リーお姉さま、過激でごさいます」

 

 忠誠心が強く暴走しがちなリーフィアを、まぁまぁと落ち着かせる。

 このまま放置すると本当に実行に移しかねないからだ。

 

「リー……(しかしだなファラよ)」

「それよりも、ほら例の件が」

「……っ。リー! (! そうだったな!)」

 

 では失礼します! 

 そう言ってリーフィアは部屋の奥へと駆け出して行った。その後をファラが可愛らしいなと微笑みながら着いて行った

 視線を辿ると、どうやら武器庫に用があるらしい。……物騒な事はしないでくれよ、とキャロルは思う。

 

「あー……ガリィ何処に居るんだ〜……お腹ペコペコだゾ〜」

「ブー(頑張れミカ)」

 

「地味に暇だな……」

「ダース……(ホンマ頼むから妙な事はすんなよ? フリやないで?)」

 

 次に入って来たのは頭にブースターを乗せたミカと、サンダースを連れて思案顔を浮かべているレイアだった。

 

 まず先に、ミカがキャロルに尋ねた。

 

「マスター、ガリィを見なかったか? 見つからないんだゾ……」

「……シャワーズとグレイシアにキッチンに連れて行かれたな」

「キッチンか! 分かったゾ!」

「スタァ……? (なんでキッチン……?)」

 

 ミカが元気良く走り出し、彼女の頭の上でブースターが首を傾げる。

 それを見送ったレイアが、そう言えばと自分の妹とその傍に居るニンフィアへと映像通信を繋げる。

 

「ニンフィア、仕上がりはどうだ?」

「フィア! (完璧よ!)」

『──!?』

 

 それを見たサンダースとキャロルはギョッとした。何故なら、レイアの妹に巻き付けられているリボンがピンク色に変わり、さらに光を灯していたからだ。

 心なしかレイアの妹は疲弊し切っていた。

 

「ダース(なんて酷い事を)」

「む、この派手さが分からないとは地味にナンセンスな奴」

「フィ〜(ナンセンス〜)」

「ダース??? (お前らシバいたろか???)」

 

 サンダースが額に青筋を浮かべていると──二つの爆音と共にシャトーが揺れた。

 あわや襲撃かとサンダースとレイアがキャロルを守る位置に着くと、しばらくして……キレているノエルにロープでぐるぐる巻きにされ、引き摺られているガリィ、シャワーズ、グレイシア、ミカ、ブースターと、その後に続く呆れ返ったブラッキーが。

 反対からはこちらもまたキレているエーフィが、ファラ、リーフィア、エルフナインをサイコキネシスで拘束して運んできた。

 罪人のようにキャロルの前に座らせられた彼女達は──ノエルとエーフィがそれぞれ何があったのかを確認し合い、それから説教を始める。

 

「キッチンは遊ぶ場所ではありません! 料理をする場所です! 何で凍ったガリィを保管したり、爆発する必要があるんですか!?」

「フィー! (テンション上がったからって武器庫で戦わないでください! 案の定爆発してるじゃないですか!)」

「ブラ……(今日はまた一段と凄い日だな)」

 

 怒り心頭の二人に、ブラッキーはため息を吐いた。だいたいエーフィかノエルがやらかしたメンツに説教をするのだが、二人同時は珍しい。

 キャロルの前で罪を白日の元に晒されるので、何気にダメージもデカい。

 

「あの、何でボクまで?」

「フィー? (何徹?)」

「……」

「フィー(有罪)」

「弁護の機会は!?」

 

 当然そのような物は認められず、彼女達は延々と説教され続けた。

 そんな、見慣れた光景の──しかし、もう二度と見る事ができない愛しき日常にキャロルは──。

 

「──ヴイ」

 

 ポスンと膝の上に重さと温もりを感じた。

 キャロルは、視線を下げて──ソッと自分の甘えてくる家族に触れた。

 

「イヴ……」

「ヴイ?」

 

 ──なぁに、キャロルちゃん? 

 白い体毛をキャロルに撫でられ気持ちよさそうにしながら、その宝石のように綺麗な瞳を向けて首を傾げるイヴ。

 そんな彼女にキャロルは微笑みかけ。

 

「いや、何でもないよ。ただ──」

 

 もう少し、このまま。

 この優しき夢を。

 どうか、どうか……眠っている間だけでも浸らせてくれ。

 

 キャロルはしばらくの間──想い出の中で家族との日常を過ごした。

 その存在をしっかりと感じるように、刻むように。

 

今まで出てきたグループでどれが好き?

  • 雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
  • 翳り寄り添う日陰(響コマチ)
  • 先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
  • 愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
  • 波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)
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