【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
「──よし、今日はこれまでにしましょう」
マリアのその言葉を聞いて、俺と響ちゃんは融合を解いた。
お疲れ様響ちゃん! 大丈夫? 疲れていない?
「……ん、大丈夫」
響ちゃんはいつもと変わらない様子で頷いて、俺はそれにホッとする。
響ちゃんの……いや、俺たちの新しい力はまだ分からない事があるからね。色々と心配しちゃうのさ。
かつてガングニールと融合していた響ちゃんは、後もう少しで人で無くなる所だった。だから、俺と融合する事でその時と同じ事が起きる──そう危惧したのだけれど、杞憂に終わりそうで良かった。
ウェル博士とナスターシャ教授が調べ尽くした結果、ガングニールの時みたいな事は起きないとお墨付き。
後は使いこなせと言われて、マリアに訓練相手として手伝って貰っている。
「それにしても凄いわね、その能力の多彩さはは」
マリアが俺達の新しい力に対して、感心したように言う。
アカシッククロニクル、タイプ・ラストシンフォニーは確かに強力だけど、フォニックゲインが大量に必要でそう簡単に使えない。
でもその代わりの力がある事が判明し、日夜鍛えている。
……あの子達が残してくれたおかげだ。
「でも今日は疲れたでしょうから、しっかり休みなさい。そして何か不調があればすぐにミスターウェルに報告するように」
「うん、分かった」
オッケー!
俺達はマリアの言葉に素直に従い、その後はお風呂入ってご飯食べて布団で眠って、そして──。
◆
──ん。
ふと、目が覚めて体を起こす。二課に所属してから健康的な生活を続けた結果、目覚まし無しで起きる事ができるようになった。反対にコマチはぐっすりと眠っていて、わたしが起こさないと起きない。
だからいつものように起こそうとして──目の前の光景に固まった。
「すう……すう……うへへ、もう食べられないよぉ」
そこに居たのは、だらしない顔をしたわたしで。
「ブ──!?」
そして、自分の口から漏れ出たのはコマチの物で。
わたしは急いで備え付けられている鏡に向かい──そこに映るコマチ、いやわたしに……思わず叫んでしまった。
「ブウウウウイ!?」
何がどうなっているの!?
何でわたしがコマチに!?
そんな風に混乱していると──ヒョイっと抱えられる。
誰だと振り返ると……。
「響ちゃ〜ん。朝からそんなに騒いじゃダメだよ〜」
わたしを抱えたのは、多分わたしの体と入れ替わったコマチで。
そして寝惚けてるのかそのままわたしごと布団の中に入り──。
「──ブイ!? ブイブイブイ!」
いやいや! 寝ている場合じゃないって!
起きてコマチ! コマチ!
「うへへへ……ご飯&ごは〜〜ん」
コマチィィィィィィイイイイイ!!
◇
「どーしてこうなったんだろうね?」
「ブイ……」
そんなの、わたしが聞きたいんだけど……。
あの後、何とかコマチの目を覚まさせて、コイツにも現状を理解して貰い、落ち着くのに時間が掛かった。
思わずため息が出る。
「それにしても……」
「?」
コマチはジッと自分の、というよりわたしの体を見て。
「いやー、その……良い体してますなー」
「ブイ!!!!!」
ふんっ!!!!! っと尻尾を使って目の前のダラけ切った顔をぶっ叩く。
「いったい目がぁぁぁあああ!?!?」
「ブイブイ! ブイ!」
次にそういうことを言ったら、本気で叩くから!
悶絶しているコマチに思わず怒鳴った。
まったく……どうしてコイツは、その、え、えっちなんだ。
「とりあえず皆に報告しようか」
「ブイ……ブイ?」
コマチの提案に賛同しようとし──ふと思い直す。
今コマチはわたしの体に入っている。その状態で皆の前に出る? こんなアホ面しているコイツを?
──ない。ないわ。絶対ないわ。
「ブイ」
コマチ、この事は司令とミスターウェル、そしてマリア以外にはバレないように。
「え? なんで?」
──良いから!!
「わ、分かった……」
コマチの了承を得て。
「じゃあ、着替えるね」
そう言ってグイッとパジャマを脱いだこの獣畜生に、デリカシーを叩き込む事から始めた。
◇
「俺……じゃなくてわたし、わたし、わたし──うん、良し!」
「……ブイ」
とりあえず言動とか一人称、そして仕草を矯正した。これで何とかバレない筈……。
現在わたし達は食堂に向かっている。できれば、そこに誰も居なければと思うけど……どうやらそうも言っていられないらしい。
翼さんと奏さんが食事を摂っていた。
「ブイブイ!」
わたしはコマチに釘を刺すことにした。
良い? コマチ? いつも通りに接してよ?
「いつも通り? うん? 分かった?」
首を傾げながらもコマチは自信満々にそう返し。
「──翼さぁあああん! 奏さぁあああん! おはようございまぁああああす!」
『──!?!?』
太陽のようにキラキラと輝く笑顔を浮かべて、元気に挨拶するわたしの体を持つコマチ。
そしてそれを見た奏さんと翼さんは、信じられない物を見たと目を見開いて固まっていた。
「──ブイ!」
ちょっとこっち来い。
「え? 何どうしたのひび──うわ!?」
コマチを物陰に引き摺り込み、問い詰める。
わたしは! 普段のわたしと同じように接してと言った筈なんだけど!?
「あ、そっか。ごめんね響ちゃん」
そう言って叱られた仔犬のようにしゅんとするコマチ。
あああああああ! わたしの体でそんな顔しないでええええええええ!!
発狂しそうになって悶えていると、先程の衝撃から立ち直ったのか、奏さんと翼さんが駆け付けてきた。
「どうした響! 何か悪い物でも食べたのか!?」
「いや、奏。光彦じゃあるまいし、それはあり得ない。多分、疲れているんだ……」
「心外な。落ちている物を食べたりしませんよ。あ、でも5秒ルールは適応されます?」
かなり酷い事を言っていたツヴァイウィングの二人だったが、コマチの言動を見て再び固まった。
あーあ。もう無理だこれ。どうにでもなーれ。
「なるほど、精神が入れ替わったのか……」
「ブイ」
司令とマリアには既に報告済みです。
本当はメディカルチェックを受ける予定だったんですけど、コマチがご飯食べたいと駄々を捏ねて。
「なるほど──それにしても」
奏さんの視線の先には、朝食を勢い良く食べているコマチの姿が。
わたしの体だからか、食欲がいつもより凄いらしい。でも、乙女の体でそんな食べ方やめてくれないかなー。
「それにしても、さっきの響には驚いたぜ」
しみじみと翼がそう言って、そっとコマチの口元にある米粒をヒョイっと取り。
「だが──それはそれで魅力的だ」
いつものキメ顔でコマチを口説くように目を見つめ。
「あむ」
「は!?!?!?!?!?」
しかし次の瞬間、コマチは翼さんの取った米粒をパクリと食べ、ペロリと舐めとる。
そして──。
「ん──翼さんの味がする」
「──」
無意識に、わたしから見ても艶やかな表情でそう言って──翼さんは顔を真っ赤にさせて倒れた。
「あれ? 翼さん?」
「あー、大丈夫だ。それよりも」
「ブイ」
チラリと奏さんが、頬を赤く染めながらこちらを見る。
ええ、そうですね。今のコマチを見て確信しました。
──コイツ、人の体でいつも通りの動作するから、威力が高い。
これは、しっかりと見ておかないと。
「じゃあ、あたし達はこれで」
そう言って奏さんは立ち去り──って。
「ブイブイ!?」
見捨てるんですか奏さん!?
わたしがそう訴えると、ピタリと彼女は止まり。
「響──生きるのを、諦めるな」
それだけ言い残し、ダッシュで逃げた。
あの人、自分の名言使って乗り切ったつもりなの???
「えっと──分かりました、奏さん!」
いや、アンタじゃないから!
はぁ、先が思いやられる。
そう思っていると、新たな犠牲者が現れた。
「おはよう二人とも」
──げ。クリス。
どうする? 隠すか? でもさっきのでそれは無理だと分かったし、ここは事情を説明して……この際わたしの羞恥心は良い。被害が広がる前に──。
「クリスちゃぁあああん! おっはよおおお!」
「きゃっ。ひ、響……!?」
「ブゥウウウウイ!?」
ちょ、何してんのぁおおおお!?
わたしの叫びが聞こえていないのか、コマチはダラけ切った顔でクリスの胸の中に飛び込み、ギュッと抱き締めている。
「あわわわわわ……!」
「んー……やっぱりクリスちゃんは柔らかくて良い匂い」
「にお!?」
コマチの発言でクリスの顔が真っ赤になり、目がグルグルと回る。
あーもう。ダメだこれ。わたし明日からどんな顔してクリスと会えば──。
「──良いよ」
──ん?
「響なら──良いよ?」
そう言ってクリスは瞳を揺らして──って。
何が!? 良い!!? んですか!?!?
「……良く分からないけど、わーい!」
「はぅ」
コマチがさらにギュッとクリスを抱き締めて──彼女はそのまま気絶した。
……ほんっっっっっっっとに、明日からどういう顔して会えば良いんだ……!
◇
「いやはや、愉快ですね。こんな事象見たことありません」
眼鏡破るぞこの野郎。
「響ちゃん。女の子がそんな汚い言葉使ったらメ!」
そう言ってわたしを抱き締めるコマチ。
くそ、普段と逆転しているから何も出来ない。
「それにしても、何故入れ替わったのかしら」
マリアが思案顔で呟くと、ナスターシャ教授がその疑問に応えた。
「かつて響さんはガングニールとの融合症例でした。そしてあの力も本質は同じです」
まぁ、融合してるからね……。
「溶け合って分離を繰り返している内に、精神の境界線があやふやになってしまった。そう考えると妥当でしょう」
「それじゃあ、もうこの力は」
……あの力を使えなくなるのは寂しい。
わたしもコマチもそう思ってしまった。
手を繋いで、明日に向かうあの力を──そんな目で見たくない。
「安心してください。ダイレクトフィードバックシステムの応用で何とかなります」
「え? 本当!?」
コマチがウェル博士に詰め寄り、彼は仰け反りながら頷く。
「はい。それに、響くんのガングニールのメンテもしないといけなかったですから丁度良かったです」
マリアに引き離されながら、コマチはホッとした顔を浮かべる。
かく言うわたしも安心した。
……あの力は、温かいから。
それにしても。
「ブイブイ」
「ふむ……? すみません、通訳を」
「えっと、ガングニールのメンテって多くない? って言ってる」
コマチがわたしの言葉をウェル博士に伝えると、彼は「ああ」と眼鏡のズレを直しながら答える。
「やはり気になりますからね。託した僕が言うのもなんですが」
わたしのガングニールは、ウェル博士から未来に、未来からわたし……いや、神獣鏡の光からコマチの紫電が守った事を考えると、未来とコマチからわたしに渡ってきた歌だ。
だから彼には感謝している。それと同時に思う。何をそんなに気にしているのかと。
「いえ……キリカくんの為に集めた聖遺物ですが、全てが全てフィーネから手に入れた物では無いのですよ」
そう言って、彼は──ウェルは苦虫を噛んだような顔をして言った。
「かつて、我々を支援していた組織が居まして、そのトップから押し付けられたのが──このガングニールと神獣鏡」
そして、と彼は続けた。
「響くん。君を利用して企んでいるヒトデナシ──その男こそが」
「──ブイ」
まさか──。
「……あの時、響くんを救ったのは間違い無く未来くんの愛だと、今でも思っています。
しかし、その愛を利用した不埒者が居る。だから僕は、あの輝かしき愛を汚したくないのです」
そう言って、ウェルはコマチからガングニールを受け取った。
……本当に、此処にいる大人は。
「やっぱり優しいですねウェル博士」
「博士ではありません。……ところで」
ウェルの視線が、部屋の隅に向かう。
それに全員が見ないようにしていた物を見なくてはならなくて、微妙な顔をする。
「あのもう一人の不埒者はどうします」
「不埒者なんて失礼な。わたしの何処が不埒なんですか?」
「存在、ですかねぇ」
呆れ返ったウェルの視線の先には、セレナが居た。
それも、なんかコスプレ用の服を手に取って。
そしてサイズ的に……マリアと今のコマチに着せるつもりのようで。
「セレナ。わたし、悲しいわ」
「待ってください姉さん! その台詞はこの服を着てからで! リッくん先輩も! ほら!」
「えっと、響ちゃん?」
キタラ、ゴハン、ヌキ。
「──ごめん、セレナ。俺では君を救えない!」
「なんでそんな事言うんですか!」
「本当に救えないわよセレナ……」
そう言ってマリアの頬に涙が伝う。
うわー……アイツのあんな顔、早々見ないのに……。
そう思っていると、コマチは何か思いついた顔をし。
「セレナ、その服を着る事はできないけど」
そう言ってコマチは、マリアの背後に回り。
「こうやって、眼福な光景を見せてあげる事はできる」
「──!?!?」
「どうだ、響ちゃんとマリアのツーショットだ」
その光景にセレナは。
「──アナタが神か」
いや、神だけど。
感涙して涙を流すセレナに呆れ、わたしはマリアを見て──さらにため息を吐いた。
取り敢えずコマチ、程々にしてあげて。
「程々? ……うわ!?」
コマチの腕の中にいるマリアは、顔を真っ赤にさせてカチンコチンに固まり、しかし乙女の表情を浮かべて気絶していた。
「マリアァアアアアア!?」
「まったく、騒がしいですね」
ウェル博士のぼやきに、全くその通りだと頷いた。
◇
「──ここが天国か」
ごめん未来。その反応既にセレナがしている。
「え、本当? それにしても──」
ギューっと未来がわたしとコマチを抱き締めて幸せそうにしている。
「あの日の元気な響が大きくなった響と、いつものグレグレな響みたいなコマチ──最高……」
「あはは。未来ちゃんは甘えん坊だなぁ。よしよし」
「〜〜〜〜」
物凄く幸せそうな顔をする未来に、わたしもコマチも苦笑している。
そんなわたし達を調と切歌が見ていた。
「ほへー。昔の響さんってコマチみたいだったんデスね」
「科学でも説明できない突然変異」
……二人とも、今度訓練してあげるよ。
実戦形式で。
「デデデデース!?」
「うあ、藪蛇だった。怠い」
まったく。失礼な後輩にため息を吐いていると、切歌が聞いてくる。
「そういえば、いつ戻るのデスか」
「ブイ」
ウェル博士曰く、反応から見るに明日の朝には直るらしい。
それを聞いた未来が葛藤している。
「う……戻っちゃうのか。でも、普段の二人も大好きだし」
わたしは未来が楽しそうで何よりだよ。
それに。
このままだと、コマチが戦わなくちゃいけないからね。だから戻らないといけないんだ。
「──本当に大切なんだね、その子の事」
それはお互い様でしょう?
調の言葉に、そう返すと彼女はキョトンとして……そうだね、と笑った。
「あ〜〜〜〜。わたしったらどうしたら」
……未来は落ち着いて、ね?
◆
「お、戻ってる」
朝になり、響ちゃんが自分の体を確認する。
俺もいつものプリチーなイーブイボディになっていた。
いやー、昨日は楽しかったな。
「あ、コマチ」
何? 響ちゃん?
「──昨日、好き勝手してくれたね」
──あ。
「──おしおき!」
ちょ、やめ、擽りは──あああ……。
次入れ替わった時は自重しようと思いました、まる。
今まで出てきたグループでどれが好き?
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雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
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翳り寄り添う日陰(響コマチ)
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先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
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愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
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波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)