【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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死を灯す永遠の輝き


第六部 戦姫絶唱シンフォギア 神殺英雄戦姫ヴァルキュリア編
第一話「錬金術師」


「--モニターに反応あり!」

 

バルベルデ前線基地では、緊張状態が続いていた。

国連軍がこちらに近づいているという情報を得て、撃退指示が出されていた為に。

防衛ラインを超えられれば、バルベルデは瞬く間に拘束されてしまう。

ゆえに、モニターに反応が出たと同時に、兵士たちは武器を構える。

オペレートをする兵士も顔に緊張が表れておりーーしかし、モニターに映る反応を動きを見て顔色を変える。

 

「ちょっと待ってください! なんだこの反応……速い!?」

 

 車両にしては、現存する移動手段として用いられる乗用車にしては速い。

 故に、彼はすぐに気づき警告を発した。

 

「これは、間違いありません! シンフォギアです!」

 

 --彼の叫び声が響くと同時に、前線に展開されていたアルカ・ノイズが爆発と共に蹴散らされた。

 それを為したシンフォギア装者ーー天羽奏は、雷槍を振り払い爆煙を晴らす。

 

 --ガングニール・サンダーマグニフィセント。

 

 雷速で戦場に到着した彼女の視線の先には、武器を構え対空砲を守ろうとするバルベルデの兵士たちが。

 しかし……。

 

「普通の人間が、雷の速さに反応できる訳ないだろ!」

 

 そう叫んで、対空砲を雷速で移動し破壊する奏。兵士たちは突如背後の対空砲が壊されたことに驚き、そしていつの間にか移動していた奏に悲鳴を上げる。

 

「ひぃ!?」

「この野郎、よくも!」

 

 彼女に向けて銃、戦車の砲身が向けられーー空からの正確無比な狙撃が全て撃ち抜く。

 手に持った武器が壊れ、彼らが空を見上げるとーーそこには、翼の操るボードに乗りライフルを構えるクリスの姿が。

 あそこから全部狙い撃ったのかと動揺する彼らを、背後に回った翼が当身をして気絶させていく。

 その隙に奏とクリスがアルカ・ノイズを殲滅していき、それをモニター越しに見ていた兵士が司令官に伝えた。

 

「このままでは前線が崩壊します!」

「仕方ないーーアレを使え!」

「……っ、了解!」

 

 兵士が前線の仲間に通信で何か伝えるとーー戦場に変化が表れた。

 

「--なんだ?」

 

 戦車を廃車に次々と変えていった奏が、気配を感じてそちらを見ればーー召喚反応。そして、表れたのはーー鋼と大地の力を持つ鉄蛇のアカシア・クローン。

 アルカ・ノイズと同じく兵器として軍事政権に流出された異端技術。

 

「--■■■■!!」

 

 キャロルの作ったアカシア・クローンとは違い理性も感情もなく、兵器として作られたこのアカシア・クローンは、躊躇なく装者たちに襲い掛かる。

 三人は鉄蛇の攻撃を回避し、しかしその顔は苛立ちに染まっていた。

 ただでさえ虫の居所が悪いのに、家族の尊厳を汚す行為をされている。

 許せなかった。作ったあの組織も、そして使っている目の前の敵も。

 

「翼!」

「ああ!」

 

 翼とクリスがギアに宿る力を解放する。

 

 --アメノハバキリ・フリューゲル。

 --イチイバル・レイジングフレア。

 

 鉄蛇が尾を地面に叩きつけて地震を起こすが、衝撃が伝わる前に翼がクリスと奏を回収して空へと退避する。

 それを鉄蛇は顔を上げて咆哮を上げーー。

 

「--ごめんね」

 

 --FLAME RADIATION

 

 クリスの放った炎が鉄蛇を焼き尽くしーーそしてそのまま自壊した。

 それを見て三人は悲しそうな顔をする。

 先日起きたアレキサンドリア号事件で覚悟していた事だがーー兵器運用されたアカシア・クローンを救う方法が倒す事だけというのは、彼女たちには酷だった。

 

 しかし、敵は彼女たちが感傷に浸っている時間を与えてくれない。待ってくれない。

 アカシア・クローンがあっさりやられたのを見た司令官は、虎の子を呼び起こした。

 光が天に上り、空に現れるのは鉄の船。

 フローティングキャリア・正式名称SFC2番艦エスペランザ。

 異端技術によりありえない兵器ーーあってはならない兵器となり果てたモノ。

 人を殺すことしかできない悲しきモンスターはーー奇跡を起こすシンフォニーで鎮めよう。

 

 翼が空へと駆け、奏もまた雷光を纏い天高く舞う。

 

「させるか! 狙うぜ狂い咲き!」

 

 艦内にいる司令官は爆弾を二人に向かって落としーーしかし、全て斬り裂かれて無力化される。それを見た司令官はさらに無数のミサイルを放ち、己を害そうとする敵を撃ち落とそうとする。

 しかしーー。

 

「くそ! くそ! 何故落ちない!」

 

 翼と奏は、一羽の鳥のようにミサイルを避け、優雅に飛び続ける。

 焦りに焦った司令官は悪態を吐くことしかできずーー。

 

「--捉えた」

 

 地上で狙い定めていたクリスに気付かなかった。

 クリスは、スコープ越しに司令官を見てーー狙撃。

 弾丸は彼女の狙い通りに突き進み、艦の鉄壁を貫き、そしてーー。

 

「--へあ?」

 

 司令官に当たると同時に、炎の牢獄が形成されーーそのまま天井を彼を連れ込んだまま突き進んでいく。

 

「おおおおおおお!?!?」

 

 司令官は炎の牢獄の中から、何が起きているのか理解できずそのまま外へと放り出されてーー自分の横でとてつもないエネルギーを纏い、巨大化させた槍と剣を掲げる奏と翼の間に挟み込まれる。

 

「喰らいな」

「消し飛ばす」

 

 強い眼力で司令官を睨み付けながら、二人はアームドギアを振り下ろしーーそれを見た司令官は失禁しながら気絶し、フローティングキャリアは二つの刃で四分割され、大爆発を起こして消滅した。

 

 奏と翼は、それを見下ろしながら呟く。

 

「あとは国連軍に任せるか」

「……ああ」

 

 しかし、二人の表情は暗いまま。

 そしてそれは地上にいるクリスも同様だった。

 

 無理もない。何故ならーー響もウェルも、未だに見つかっていないのだから。

 

 

 第一話「錬金術師」

 

 

「パヴァリア光明結社。間違いなく彼らの仕業でしょう」

 

 千葉が半分消し飛び、多くの人たちが行方不明となった事件から三日後。

 調査の結果、マリアは集まった装者たちにそう断言した。

 それに補足するように、藤尭が発言する。

 

「事件当時、現場から10メガトン級のーーツングースカ級のエネルギーが検知されていました。また、同時にガングニールデルタ……響さんのギアの反応も検知されましたがーー」

 

 その後、反応は途絶し今日まで行方知れず。

 また、ウェルの端末の反応もその日に途絶えておりーーキリカの墓の前に破壊された状態で発見されていた。

 

「パヴァリア光明結社……私たちが起こしたフロンティア事変にて、FISを武装蜂起させた組織」

「それだけではありません。その組織はキャロルに支援活動を行っていました。チフォージュ・シャトーの建造。そしてアカシア・クローンの……」

 

 ナスターシャとエルフナインが、当時を思い出しながら付け加えた。

 

「それだけでは無いな。かつて、響くんの背後に居たのもまたこの組織だ」

「おそらく了子さんを消すために、当時復讐に囚われていた響さんを利用したのでしょう」

 

 どちらにしろ危険な組織だ。

 響を闇に落とし暴走させる程度には、行動が非道だ。

 人を人として思っていない事が行動の節々から伝わる。

 

「そしてーー響に執着しているわ」

 

 マリアの言葉に、皆が反応を示す。

 

「それって……姉さん、もしかして」

「ええ。状況は最悪だけどーー彼女は生きている」

 

 だから。

 

「諦めず手を伸ばしましょうーーそして必ず救ってみせる」

 

 マリアの言葉に、皆頷いた。

 

 

 

 

「--この先ね」

 

 ボードに乗り、新たに発見されたバルベルデの軍事拠点にマリア、セレナ、そしてコマチが向かっていた。

 彼女たちが向かうのは化学兵器が製造されているプラント。

 被害を抑えつつ制圧するのが彼女たちの仕事だ。

 奏たちは別任務に就いている為、戦力は分散しているが……問題は無いだろう。

 問題があるとすればーー。

 

「……」

 

 コマチは、あの日から笑顔を浮かべる事ができなくなっていた。

 響の事が心配なのだろう。

 その事を二人は察しており、だからこそ叱咤の言葉をマリアは送る。

 

「しっかりしなさい、リッくん先輩」

「ブイ……」

「確かに心配かもしれないけど、今は前をーー」

 

 彼女の言葉はそれ以上続かなかった。

 ボードに乗る彼女たちに向かってライトが照らされ、兵士たちが銃弾を放ち始めたから。

 それにより三人とも意識を切り替え、マリアとセレナはシンフォギアを纏いーー作戦が開始される。

 

 防衛システムがアルカ・ノイズを召喚するが、三人の敵ではなくあっさりと殲滅されていく。

 兵士たちも銃でもって応戦するがーー相手が悪かった。

 

「なんだあの幼女!?」

「銃弾が当たらないんだけどマジで!?」

「結構可愛いじゃねえか!」

 

 銃弾の雨の中を波導で見切り、回避するマリアに動揺する兵士たち。

 そんな彼らにマリアは近づき、全員に掌底を叩き込み沈めて……。

 

「可愛いって言うな」

 

 冷たい目で見下して、次の敵に向かう。

 なお、この際意識があった者は新しい扉を開いて気絶した。

 

「わが軍が押されているだと? ならば」

 

 諸共吹き飛ばしてやる。

 そう言ってこの工場の責任者である男は、大型のアルカ・ノイズを召喚。そして大量のアルカ・ノイズを呼び出し、兵士、捉えられた民間人関係なく暴れさせようとしーー。

 

「ブイ!!」

 

 させない、とコマチが力を使う。

 かみなり。サイコキネシス。きあいだま。マジカルリーフ。だいもんじ。みずのはどうーーありとあらゆる技を繰り出してアルカ・ノイズを殲滅し、人への被害をゼロにする。

 その隙に、マリアとセレナが大型の対処を行う。

 

「我が心に答えよ奇跡の石ーー進化を超えろメガシンカ!」

「リッくん先輩、力お借りします」

 

 --アガートラム・マジカルベール。

 

 不可視のリボンを身に纏ったセレナと波導にて黒きガングニールを纏ったマリアが、空へと飛ぶ。

 

「はっ!」

 

 まずセレナがリボンを伸ばし、大型アルカ・ノイズを拘束する。

 身動きができなくなった所を、マリアが手を掲げてーー巨大な波導弾を形成し、そのままーーぶちかました。

 

 姉妹の連携であっさりと大型アルカ・ノイズは撃沈したが、それは隠れ蓑だったようで、兵士が空を見上げて叫んだ。

 

「あれは! まさかこの工場に突っ込むつもりなのか!?」

 

 先ほどと同じくらい大きなアルカ・ノイズがプラントに突っ込もうとしている。そんな事をすれば、周囲一帯は汚染されてしまう。

 それをコマチ達が黙って見ている訳がなかった。

 

「──ブゥゥゥゥゥイ!」

「──っ、リッくん先輩!」

 

コマチに呼ばれたセレナが、マリアをリボンで包んで彼の元に飛ぶ。

彼女は、コマチの前に立つと、彼の指示に頷いてリボンで自分とコマチを繋ぐ。

 

「──はぁああ!」

 

そして、アガートラムの力で、アカシアの力の流れを制御し──コマチの身に奇跡の力が顕現する。

 

「ブゥゥゥゥゥゥ──イッ!!」

 

その状態で彼はとっておきの中のとっておき──ナインエボルブーストを発動。コマチの潜在能力が解放され、彼はそのままマリアに手を差し出す。

 

「ブイ!」

 

マリア!とコマチが彼女の名を呼び。

 

「ええ、分かったわ!」

 

それに彼女は疑う事なく応える。

二人の手が触れ合い、コマチの身に宿っていた力が全てマリアへと譲渡される。

漲る力を拳に溜め込み、マリアは落ちてくる大型ノイズに向かって跳ぶ。

 

「おおおおおおおお!!」

 

 そして、そのまま拳を突き出しーー大型ノイズを赤い塵に変え貫いた。

 その圧倒的な力を見せつけられ、それどころか命を救われたバルベルデの兵士たちは、銃を捨ててその場に膝を付き両手を挙げた。

 降伏の姿勢である。

 それを確認したマリア達は、工場を見る。

 

「後はここの責任者をーー」

「貴方達のお目当ての人物なら、此処に」

 

 マリアは、突然聞こえた声に警戒しながら振り返り、セレナとコマチを庇うように立ち塞がる。それに続いてセレナとコマチも、彼女に倣って視線を向ける。

 その先には、此処の工場長と思われる男を縛ってこの場に引き摺ってきた一人の女性が居た。

 

「こいつは、形勢不利だと察すると近くの村へ逃げようとしていた。放って置けば、無用な被害が出ると思って拘束させて貰った」

「--貴方は?」

 

 マリアの問いに、女性は答える。

 そんななか、コマチは視線が釘付けだった。

 彼女が男装をしているから? 違う。

 傍らにアカシア・クローンーーヒトカゲを連れているから? 違う。

 彼が見惚れたのはーー。

 

「私はサンジェルマン。話がある」

 

 彼女の真っすぐな強い瞳だった。

 

 

今まで出てきたグループでどれが好き?

  • 雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
  • 翳り寄り添う日陰(響コマチ)
  • 先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
  • 愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
  • 波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)
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