【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
ガングニールのファウストローブを纏った響。
バイザー越しにはその表情は窺い知れない。
だが──彼女の仲間達は、痛い程視えた……響が泣いているのを。
勝ち誇った錬金術師達が何か言っているが──何も聞こえない。
あるのはただ──怒りのみ。
大切な仲間を操ったアダムに対して。そして彼女を物のように扱う彼らに対して。
だからこそこれは当然の展開であった
この場に居る四人の錬金術師は──瞬く間に意識を失う。
『――!』
何故か精神的に動揺している調以外が、アカシアの力を解放する。
そして、雷速で動く奏と飛翔能力を得た翼がギアを手に一人の錬金術師に接近し――一閃。
「がっ……!?」
「残念ながら峰打ちだ」
「死にはしねぇ――その代わり、死ぬ程痛ぇぞ」
奏と翼の言葉は当然ながら彼の耳には届いておらず、しかし彼女達はその事を全く気にしない――言葉を伝えたいのは彼では無いのだから。
「――っ」
クリスもまた、怒りを炎に変え、それを弾丸に込めて放つ。
狙われた錬金術師は障壁を展開するが――。
「甘いデース!」
草の力を付与したイガリマの斬撃が障壁に叩きつけられ――根を張る。それも、障壁の魔力を吸い取って。
「なに!?」
動揺する錬金術師に――クリスの弾丸が直撃。
彼女の炎は草をよく燃やし、しかし錬金術師は切歌の治癒する草の力で死ぬ事ができず――激痛で精神が限界を迎えるまで燃え続け、火が消えた頃には意識が燃え尽きていた。
「――動けん!?」
セレナは不可視のリボンで錬金術師を拘束していた。
そして。
「え、ちょ、まっ――」
――グシャリ、とそのまま意識が消え、体がギリギリ潰れない力で締め付けた。
ドサリ、と落ちた錬金術師は口から泡を拭いて時折ビクンビクンと痙攣するのみ。
そして、最後は。
「はあああああああ!!」
「はや――」
一息で、響を召喚した錬金術師に肉薄すると、全身の波導を瞬間的に拳に集束させる。
それを見た錬金術師は己の死を悟り全力で障壁を展開し――呆気なく打ち抜かれる。
顔面が陥没する程の力でぶん殴られ、吹き飛び――木々や山を貫通し、1000キロ先で止まる。死んでいないのが奇跡だった。
――3秒。
パヴァリア光明結社の錬金術師が全滅するまでの時間だ。それを見たカリオストロとプレラーティは唖然とし、サンジェルマンは冷や汗を掻く。
「ブイ!」
敵が居なくなり、コマチが駆け寄ろうとして――。
「――っ!」
響がコマチに向かって跳び、そのまま拳を振り抜くのと、波導でその動きを察知し、マリアが彼を守るために回り込んだのは同時だった。
響の拳がマリアの腕に激突し、衝撃波が発生する。ギリギリと受け止めながら、マリアは憎々しげに呟く。
「アイツらを倒しても意味無いのか――やはり、お前を倒さないとダメなんだな……!」
――アダム・ヴァイスハウプト。
マリアは、フロンティア事変の際に操られ暴走した響を思い出し――その身から波導を滾らせた。
絶対に、その顔面をぶん殴る、と。
第三話「呪詛蔓延」
「はああああ!!」
「……っ」
波導を用いて常に最善手を選ぶマリア。
片や、操られて何処か機会的な動きを見せる響。
「――やっぱり」
「? 調?」
そして、その光景を見ている調が表情をさらに険しくさせて、隣に立つ切歌が首を傾げる。
一方戦局はマリアに優勢だった。
一番優しく、一番強く、そして一番間違えないマリアは、確実に響を追い詰め傷付ける事なく抑え込み――。
「此処――!」
彼女を直接操っている頭部のギアに触れようとして――。
「っ、ダメえええええ!!」
それを、調がドローンロボでマリアを突き飛ばす事で妨害した。
それによりマリアは態勢を崩し、響は距離を取る。
「調!? なにをしているデスか!?」
「何で姉さんの邪魔を!?」
切歌とセレナが問い詰める。
そんななか、調は――認めたく無いと思いながらも、響を傷付け無い為に、まるで罪を告白するかのように言った。
「あのギアを――ダイレクトフィードバックシステムを無理矢理外したら、脳と接続されている端末が、響を傷付ける!」
『――!?』
装者達の間に激震が走る。
響を傷付けてしまう事もそうだが――それ以上に動揺したのは……ダイレクトフィードバックシステム。
それを使えるのは、扱うのは、作ったのは――。
「――話は後だシンフォギアども!」
そんな彼女達に、サンジェルマンが警告する。
「何かするみたいだぞ!」
そう言われ、全員が響を見れば――彼女は赤い宝石を手に持っていた。
その宝石には不思議な力が宿っていた。
戦場に居る誰もがその力の波導に既視感を覚え――一番初めに気づいたのは
「あれは、まさか――」
響が持つその宝石は、アカシア・クローンを作る際に生まれた副産物。単体ではアカシア・クローンにもなれないただのエネルギー源でしかないが――響が使う事で真価を発揮する。
「――掌握」
響が赤い宝石を握り砕く。
「――変換」
炎の力が彼女を包み込む。
「この手に燃え盛る情熱を……!」
そして、顕現するのは全て焼き尽くす灼熱の力。
――ガングニール・アカシッククロニクル。
――タイプ・ブレイズスマッシュ。
「ブイ!?」
「あれは、まさか……!?」
「アカシッククロニクルの力まで使えるの……!?」
コマチはあり得ないと泣きそうになり。
その力を訓練でよく知っているマリアが険しい顔をし。
クリスは敵の力に慄いた。
今響が使っているのは、本来コマチと融合して初めて使える力。
しかし、ガングニールのファウストローブとジュエルの力により再現されてしまった。
こうなると、装者達も油断できない。
響のこの力はラストシンフォニー程万能では無いが――。
「っ!」
「――が!?」
――それでも、十分強い。
炎の噴出で加速した響は、最も近くに居たプレラーティを殴り飛ばす。
障壁を張っていたようだが、それでも突破されてしまった。
「プレラーティ!」
「ダネダネ!」
彼女の心配をするサンジェルマンとジルだが、プレラーティはすぐに起き上がる。
「大丈夫なワケだ――それよりも!」
口から垂れる血を拭いながら、プレラーティが叫ぶ。
「この爆発力は侮れないワケだ──一気に決めた方が良いワケだ!」
そう言って彼女はボール型制御装置を取り出す。
「そのようね!」
カリオストロもまた制御装置を取り出し、二人は魔力を込める。
「ジル──」
「カメちゃん──」
『進化!』
プレラーティとカリオストロがそれぞれ相棒に光を放つ。
「ダァァァアアネェェエエエエ!!」
「ゼェェェエエ二ィィイイイイ!!」
ジルとカメちゃんの体が光り輝き、イグニスのように体を一回り大きくさせ、進化させる。
「ッソウ!!!」
「メェェェエエル!!」
ジルはフシギソウへと、カメちゃんはカメールへと進化した。
プレラーティ、カリオストロ、ジル、カメちゃんはサンジェルマン、イグニスの元へと跳ぶ。
そして、三人の魔力を掛け合わせて相棒達に譲与し、強化する。
「行くぞ!」
──三位一体!!
イグニスは大文字を連射し、ジルがソーラービームを発射、カメちゃんはハイドロポンプを放出した。
三つの技が合わさり、一つの切り札へと昇華されたその技は、響に直撃する。
「……!」
受け止める響だが、勢いそのままに地面を削りながら後ろへと押されていき――炎を纏った拳で打ち消した。
『――!!』
それを見たサンジェルマン達は驚きの表情を浮かべる。どうやら先ほどの技は彼女達によって上位に位置する威力だったようで、簡単に掻き消されて動揺が大きいようだ。
「……」
尚も戦おうとする響。そんな彼女に、コマチが駆け寄る。
「ブイブーイ!」
「っ、迂闊に近づくな!」
サンジェルマンが警告するが、コマチは止まらず。
そして彼女の前に立ち、何度も訴えかける。
戻って来て響ちゃん。一緒に帰ろう、と。
しかし操られている響は応えず、そのまま拳を握り締めてコマチに殴りかかり──。
「コマチ!」
クリスが悲鳴を上げ──しかし直前で響の拳が止まる。
「――こ、ま……ち……」
響の拳は、体は……震えていた。
しかしコマチはそれ以上に――そのバイザー越しにある彼女の目から、涙が流れているのを感じ取っていた。
響は、抗っていた。
「……た、すけ――」
そして、拳を開きコマチに手を必死に伸ばし――。
「ブイ!」
その手を握ろうとコマチが飛んだ瞬間。
響は、テレポートジェムによりこの場から転移して姿を消し。
コマチは伸ばされた手を掴むことが出来ず。
「――ブイ……!」
虚空を切り、コマチは一人項垂れ――SONGも錬金術師協会達も、彼女を救う事ができなかった。
◆
「――っ、はぁはぁ……」
テレポートジェムにより帰還させられた響は、ファウストローブが解除されると同時に荒く息をする。
「――コマチ、みんな……!」
――響は確かに戦闘中その身体を操られていた。
しかし、精神は操られておらず、戦場での出来事を全て覚えていた。
当然、自分がコマチを殴ろうとした事も。
「……っ」
それが辛くて、響が顔を歪め。
「お疲れ様です、響さま……」
「お、お召し物を変えさせて頂きます」
そんな彼女に酷く怯えた様子で接する少女達が居た。
全員老婆のように髪が白く、顔も窶れ、娼婦のような服を着せられた体は痩せ細っていた。
彼女達は、かつて響の故郷で、響を迫害し、響が暴走した際に殺してしまいそうになり、コマチに救われた元クラスメイト達だ。
あの事件の後、行方不明になっていたのだが……。
「――どうだい? 新しい力の感想は?」
「――っ」
その声を聞き、響が鋭い目つきで声がした方向へと視線を向ける。
元クラスメイト達は体をガクガクと震わせて怯えたように顔を伏せる。
「最悪だよ――このヒトデナシ」
「そうか、気にいると思ったんだげどね。君への特注品だったのだが」
現れたのはアダム・ヴァイスハウプト。
パヴァリア光明結社のトップであり、響の自由を奪った張本人。
「見せてもらったよ先ほどの戦い、君の瞳から。あんなものじゃないだろう、槍の力は」
「……」
「――どうなっても良いのかな、君の家族が」
「――っ」
アダムの言葉に、響がギリッと奥歯を噛み締める。
――響は、体の自由を奪われた状態で戦っている。しかし、戦意を持って動けばガングニールのファウストローブは力を発揮する。
しかし先ほどの戦いではその兆候が見られず、故にアダムは脅す。
「でも仕方ないか、力を出せないのも。だから少し条件を緩めることにした。君の為にね」
そう言って彼は指を指した。響の側に居る元クラスメイト達に向けて。
「――次、装者の誰かを殺さなければ殺そう。そのどれかを」
アダムの言葉は衝撃的で、思わず元クラスメイトが叫ぶ。
「は、話が違う! コイツの世話をすれば助けてくれるって――」
「――道具風情が。遮るのかい、僕らの会話を」
しかしアダムは冷たい目で彼女を見て。
「別に良いか、此処で死んでも」
「っ、い、いや! 死にたくない!」
そう言って彼女は土下座をし、みっともなく無様にアダムに許しを乞う。
「お、お願いします殺さないでください、どうか……どうか……!」
「……」
そんな彼女を響は見ていられず目を逸らしてしまう。自分を害した存在が、今では――。
「別に良いんだ、どうでも。ただ、そうだね――」
アダムは本当に興味なさそうにし、響に告げる。
「この中から殺すのはキミの嫌いな者からしよう、装者たちを殺せなかった時は」
「――」
「だから、そうだね。四回までだよ、君がサボれるのは」
そう言うとアダムは背を向けてこの場を立ち去った。
それを確認した元クラスメイト達は一斉に響に媚を売り始める。生き残る為に。
「響さま、食事の用意をしております! わたしが作りましたのでぜひ!」
「っ、それよりも湯浴みにしましょう! 私が綺麗にします!」
「それよりもマッサージをしましょうか! 疲れているでしょう!」
「そんな事より響様、気分は大丈夫ですか? 仲間と戦い気分が優れないでしょう? 話を聞きますよ?」
そして彼女達は、横にいる邪魔者を睨み付ける。自分が生き残る為に邪魔な存在を。自分よりも先に死んで貰うための生贄を。
「ちょっと邪魔しないでよ! アンタ達性格悪いわよ!」
「普通に考えてお風呂でしょ! 生きる価値ないでしょアンタ達!」
「脳味噌ないでしょアンタら! いい加減にして!」
「自分のことしか考えてない馬鹿ばっかり! 響様、こんなやつら放っておいて――どうか、私を」
醜い争いを続ける彼女達を――響は目を閉じて見ないようにする。
自分を虐める時はあんなに仲良さそうにしていたのに、今では助かる為に蹴落とし合っている。
ああ――なんて醜いのだろうか。
そしてそれを強要しているのは――あのヒトデナシ。
(――コマチ)
響は――地獄に居る。
そう、あの時――響の故郷がアダムにより蒸発させられてから。
今まで出てきたグループでどれが好き?
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雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
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翳り寄り添う日陰(響コマチ)
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先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
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愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
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波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)