【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
「──アガートラームの装者が……」
遅れて到着したサンジェルマン達に伝えられたのは──セレナが行方不明になったという情報と新たに錬金術師を捕らえたという報告だった。
サンジェルマンは思わず顔を顰める。
──状況が悪過ぎる。
響を取り戻せず、どんどんこちら側の戦力が削がれていっている。このままでは後手に回り続け──最悪の事態もあり得る。
「バルベルデドキュメントの解析も難航しています。それに……」
エルフナインがその先の言葉を言い淀む。
──先ほど、鎌倉から連絡があった。
弦十郎に放たれた言葉はどれも厳しいもので、その怒りの大きさが窺える。加えて──。
「日本政府が保有、封印していた完全聖遺物──ネフシュタンの鎧、デュランダルが何者かによって強奪……」
「それだけではありません。国連が管理していたソロモンの杖も──」
錬金術師の襲撃に合わせるかのように、三つの完全聖遺物が盗まれた。
どれもSONGと因縁深いもので──何かしらの作為を感じる。
それもあり風鳴本部の空気はピリピリしていた。
「装者達も精神的にダメージが大きい──どうにかせねば」
弦十郎が唸り声を上げたその時──警報が鳴り響く。
検知したのはアルカ・ノイズ、アカシア・クローン……そしてガングニールの反応。
パヴァリアが攻めてきた。
「風鳴帰還から距離1キロ、東北にて反応あり!」
「装者一同、防衛地点に移動開始!」
「──我々も行こう」
忙しなくオペレーター達が情報を整理していくなか、サンジェルマン達は戦場に赴く。
「頼む……!」
「言われるまでもないワケだ」
「ようやく、新ドレスのお披露目って訳ね」
勇しく歩む彼女達の手には──赤く光る石があった。
第七話「黄金錬成」
「はああああああ!!」
翼の一閃がアルカ・ノイズを斬り裂いていく。
彼女は既にアカシアの力を解放し、その背に翼を広げ一人空を舞い敵を殲滅していた。
「っ……」
クリスもまた、遠くからライフルで翼の援護をし、時折切歌、調の様子を見ながら撃ち続けていた。
しかし、装者たちの顔は暗い。
何故なら──セレナは居らず、響がこの戦場に居るのだから……。
「……」
響は、錬金術師達を守ようにして佇んでおり、自分から仕掛けては来なかった。
アルカ・ノイズの数が多く、装者達は攻めあぐねていた。加えて──。
「ギュオオオオオオオ!!」
「ブイ……!」
コマチは、アカシア・クローンと戦っていた。
鉄の鎧を着込んだ怪獣のようなアカシア・クローン。コマチは記憶からその名前を知っている。
ボスゴドラ。その身にある鋼と岩の力は──生半可な力では崩せない。
「ギュウ──ガアアアア!!」
「ブイ!?」
突如、ボスゴドラが苦しみ出し──目を赤くさせて口から破壊光線を出す。
それを避けるコマチだが、威力は凄まじくダメージを負ってしまう。
「ブイ……」
それでも何とか立ち上がろうとし──ふと、影が差し込む。
「ギャア……!」
ボスゴドラの腕にエネルギーが収束される。
「──コマチ!」
それを見た翼が助けに行こうとし──それをフェアリースカイの力で空を飛ぶ響が立ち塞がる。
「どけ! 響!」
「……」
アメノハバキリの一閃を叩き込むも、無表情で受け止められる。
焦る翼。銃口を向けるも間に合わないと理解してしまったクリス。調と切歌が駆けるも間に合わず──。
『──コマチ!』
誰かの叫び声が響き──。
「──リザァアアアア!」
割り込んだ炎が、ボスゴドラを殴り飛ばした。
「ギャア!?」
巨体を揺らして倒れるボスゴドラ。
そして、コマチを守るようにして立つのは──リザードへと進化したイグニスだった。
「ソウ!!」
「カメ!!」
「──!」
さらに、水の砲撃と日光を収束させた光線が響を牽制し、翼から距離を取らせる。
カメちゃんとジルもまた進化して戦場に駆け付けていた。
「間に合ったようだな」
「ブイ……」
そして、それぞれの相棒の隣に協会の錬金術師達が集う。
「さて、これから反撃というワケだ」
「私たちの力、見せてあげる」
そう言って三人が取り出したのは──ラピス・フィロソフィカス、賢者の石。
彼女達は、石に込められたエネルギーを用いて──その身に纏う叡智の結晶。
「あれは──まさか!」
「キャロルと同じ──ファウストローブ!?」
その輝きを装者達は知っていた。
ありとあらゆる呪いを払う清浄なる輝石。
ラピス・フィロソフィカスのファウストローブ。
「二代目の狸爺が手に入れた世界構造を利用──いや、応用したファウストローブ」
「その力は──今までの比じゃないわよ?」
そう言ってカリオストロとプレラーティは、その力でアルカ・ノイズを殲滅する。
まるでノイズを蹴散らすシンフォギアのようで──装者達は、アカシア・クローンの後ろから指示をするだけではないのかと驚いていた。
「──キミを助ける事ができない事を、許してくれ」
一方、サンジェルマンは手に持った銃型のスペルキャスターで弾丸を放つ。
しかしボスゴドラの体に当たっても軽い音を響かせるのみで……。
「無駄な事を! ソレの硬度はアカシア・クローンの中でも折り紙付き! そう易々と──」
得意げに叫ぶ錬金術師だが──次の瞬間、ボスゴドラはその体から黄色の鉱物を生えさせて倒れ伏した。
「な!? そんな馬鹿な──!」
あり得ないと叫ぶ錬金術師を無視して、サンジェルマンはボスゴドラを見る。
サンジェルマンの技で彼は悲鳴を上げなかった。痛くなかった──のではなく、既に感じないという事。そうなるまで能力を引き上げたのだと考えると──彼女は反吐が出る想いだった。
「安らかに眠れ」
放たれた龍型の炎がボスゴドラを包み込み──そのまま消し去った。
「──75431……また、救えなかったな」
彼女のみが知る数を口にし、それをイグニスが心配そうに見つめ──気にするなと強く頭を撫でるサンジェルマン。
そしてすぐに強く鋭い目を錬金術師達に向ける。
「立花響を返してもらおう」
「……させると思っているのか!?」
「ああ、思っている──その為のラピスだ」
ラピス・フィロソフィカスはサンジェルマン達に力を授けるだけでは無い──響を助ける力を有している。
「その少女を操っているのはダイレクトフィードバックシステムだけではないワケだ──つまり!」
「つまり、このラピスでその子に課せられている呪いを払えば良いって訳」
「私の台詞を取るんじゃない! ──とにかく、その後はSONGが拘束を解いてくれるワケだ」
彼女達の言葉を聞いて、コマチ達は光明を見出す。
響を助ける事ができる、と。
「投降しろ──貴様らでは勝てない」
「ぐ──」
サンジェルマン達に錬金術師達が怯み──。
「──嫌われるぞ、賢しい人間は」
──空から、全てを見下しているような冷たい声が響いた。
その声を聞いたサンジェルマン達はまさかと目を見開き、装者達は新手かと警戒し、錬金術師達は喜び──響は絶望する。
「貴様は──」
「アダム様!」
サンジェルマンが睨み付け、錬金術師達が叫ぶ。
そして、その名を聞いた装者達は──一気に臨界点を超えた。
翼が駆け、クリスがトリガーを引き、調がレーザーを放ち、切歌が斬撃を放つ。
『お前が、響を!!!!!』
「ふむ──鬱陶しいね、羽虫の声は」
彼女達の怒りの一撃は──アダムが魔力を込めた腕の一払いで掻き消された。
「な──」
そして、最も近くに居た翼の頭を掴み地面に叩き付ける。陥没する程に。
それを何度も何度も何度も何度も──。
「──やめろおおおおおおお!」
「──いい加減に……!」
それを見たクリスと調がそれぞれ遠距離攻撃を放とうとし──。
「ふん」
アダムは、パチンッと指を鳴らすと──それぞれの銃口の先に障壁を展開。
『な──』
放たれた高エネルギーは障壁に激突し──大爆発。自分たちの力で傷付き、自滅した彼女達は気を失う。
「調! クリス!」
二人がやられた事に切歌が動揺し。
「返すよ、要らないからね」
そんな彼女に顔面を血だらけにし白目を剥いている翼を、切歌に向かって投げ。
「あ──」
それを受け止めようと切歌が両手を広げ。
「受け取ると良い、これも」
一跳びで切歌の上に移動したアダムの蹴りが、切歌の首を捉え、『ゴギッ』と嫌な音を立てて吹き飛ぶ。
それに一呼吸おいて翼も地面に落ち──シンフォギア装者は全滅した。
「──」
それを響は見ている事しかできず。
「殺していないさ、安心すると良い。僕じゃないからね、殺すのは」
そんな響にアダムがそう言い──彼に向けてシャドーボールがぶつけられた。
しかしダメージは無く、アダムは無表情で自分に攻撃した相手──コマチを見る。
「フー……! フー……!」
「──悲しいね、君にそんな目で見られると」
「──ブイ」
何でこんな事を、とコマチが問い掛ける。
「──ブイ!!!!」
何で響ちゃんに、みんなに酷い事をするんだ! とコマチは叫んだ。
彼は、かつてない程に怒っていた。アダムに対して。普段温厚でどんな人にも優しいコマチらしくないその姿に、サンジェルマンは目を見開く。
対して、アダムは静かに答えた。
「同じ事を人間に聞いた事がある、昔にね。彼らはこう答えたのさ、それに対して」
アダムは──何かを思い出していた。
「──忌み嫌う存在だからだと答えたよ、恩知らずに。それと同じさ、僕の答えは」
「ブイ!!」
訳のわからない事を! とコマチが叫び。
「ああ──分からないさ、キミには!」
アダムもまた叫び返し──空に飛ぶと掲げた腕に膨大なエネルギーを生成した。
そのエネルギーにより、彼の服が消し飛ぶ。
「何を見せつけてくれるワケだ!!」
「金を錬成するのさ、錬金術師だからね!」
アダムの馬鹿魔力で起きるこの力は──ツングースカ級の力を持つ。
先日、千葉の半分を消し飛ばしたのと同じ威力。
力を解放する彼の隣に、響が舞い寄る。
それを見た錬金術師達は、焦りを含んだ顔で叫ぶ。
「アダム様! お待ちください! このままでは我々も──」
「──だから?」
「──!?」
「その程度なのさ、お前らの価値は」
「お待ちください、アダム様! アダ──」
しかし、アダムは彼らの言葉を聞く事なく──その手の爆弾とも言うべき力を地表に向かってぶん投げた。
瞬間、起こる大爆発。
そして被害は広がり──そこでアダムが眉を潜める。
「──なんだ?」
アダムの視線の先には──爆発を抑え込む三体のアカシア・クローンとコマチが居た。
◆
「リイイイイイイイイイ!!」
「ソウウウウウウウウウ!!」
「カアアアアメエエエエ!!」
「ブウウウウウウイイイ!!」
四匹は、自分たちの力を使って結界を形成しアダムの黄金錬成を抑え込んでいた。
しかしツングースカ級。そう易々と抑え込めれる力ではなく──故にイグニス達は相棒に叫ぶ。
「リザアアアアアア!!」
さらなる力を──さらに進化を、と。
「──分かった」
彼の覚悟を見たサンジェルマンはファウストローブを解き、ボールにラピスを翳す。
「本気なのかサンジェルマン!?」
「あれはまだ負担が──」
プレラーティとカリオストロが抗議しようとし。
「カメエエエエ!!」
「ソウ!!!!!!」
相棒達が「早く!」と叫んだ為──彼女達も覚悟を決めた。
「もう、分かったわよ!」
「世話の焼ける友を持つと苦労するワケだ!」
二人もファウストローブを解き、ボールにラピスを翳す。
そして──。
「イグニス!」
「カメちゃん!」
「ジル!」
『──超進化!!』
イグニスが、カメちゃんが、ジルが──さらなる進化を遂げる。
翼を広げ雄叫びを上げる──リザードンとなったイグニス。
肩に大筒を備え鋭い目付きで敵を見る──カメックスとなったカメちゃん。
蕾が花開き、新緑の力を解放した──フシギバナとなったジル。
彼らの姿を見て──サンジェルマン達は笑みを浮かべた。
乗り越えたのだと。遂に至ったのだと。
「ブイブイ!」
頼もしいけど、そろそろ限界だとコマチが叫ぶ。
それに対して、イグニス達は──究極の技で応える。サンジェルマン達も、相棒の要望に応えた。
「唸れ、燃え盛る猛火──ブラストバーン!!」
「轟け、荒れ狂う激流──ハイドロカノン!!」
「穿て、大地埋め尽くす新緑──ハードプラント!!」
三つの力が解き放たれ──そして。
◆
「──相殺されたか、だが」
アダムの視線の先には、消えた風鳴機関があった。
イグニス達の力はサンジェルマン達と装者達の命を確かに守った。
だが、助ける事ができなかった命もあった。
「──やはり安いな、人の命は!」
アダムの手には──鐚一文程度の黄金しか無かった。
「──」
響は──また人が死んだ事に悲しむと同時に、何処か自分にホッとしている……殺さなくて良かったと、知っている人が死ななくて良かったと思い。
(──わたしは)
生きる価値が無い、と深く絶望していた。
今まで出てきたグループでどれが好き?
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雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
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翳り寄り添う日陰(響コマチ)
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先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
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愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
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波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)