【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第八話「伝説進撃」

 アダムにより風鳴機関が消滅し、破棄される事が決定されて数分後。

 弦十郎は、兄の八紘と共に鎌倉に招致が掛かった。

 そして、二人は通された部屋で正座し──上座に居る男、風鳴訃堂にただただ姿勢を低くして報告していた。

 

「──して、無様にも異国の敵にしてやられたと?」

「申し開きありません。今回の出来事はこちらの落ち度──」

「聞くに耐えぬ」

 

 弦十郎の言葉を途中で遮り、切って捨てる訃堂。

 彼は立ち上がると襖へと歩き出し──しかし足を止めて、弦十郎を睨み付ける。

 

「知っておるぞ。余所の犬の力を借り受けているとな」

「……!」

 

 ──SONGと錬金術師協会が手を組んでいる事は隠されている。

 元々錬金術師協会が裏社会に存在しているというのもあるが、別組織が秘密裏に力を貸している状況は、それだけSONGの組織としての能力の価値が問われてしまう。また、戦力が過剰に増えてしまえば、国連から調査が入ってしまう。

 

 それを訃堂は知っている。タラリと弦十郎の額に汗が垂れる。

 

「だが、それはもはやどうでも良い」

 

 しかし訃堂が今一番腹立だしく思っているのは──。

 

「何故早急に立花響を殺さない?」

「──っ!」

 

 敵となった彼女を相手にSONGが力を出し切れず、戦力をどんどん削がれて行っている現状が──彼の琴線に触れていた。

 

「立花響は敵なのであろう? 何故手を抜く必要がある?」

「──恐れながら! 彼女はアダムなる者に操られており、故に立花響本人は」

「有事に手温い。即刻首を跳ね──」

 

 訃堂の言葉はそれ以上続かなかった。

 彼のすぐ側の襖が破壊され、そこから人影が突っ込んできた。

 そしてその人影──翼は、瞳に敵意を強く抱かせて、握り締めた拳を訃堂に向けて解き放ち──。

 

「果敢なき哉」

 

 しかし、訃堂が右手を少し動かすだけで、翼は投げ飛ばされ──部屋の奥へと叩きつけられた。

 

「か──」

「翼!」

 

 八紘が駆け付け抱き起こす中、翼は訃堂を睨みつけて叫んだ。

 

「響は敵じゃない! アイツは、オレが助ける!」

「貴様では無理だ、翼」

 

 吠える翼に対して、訃堂は冷たく言い放つ。

 

「歌では国も、人も護れぬ──風鳴の血を拒み、防人から逃げ出した貴様なら尚更」

「っ……!」

 

 その言葉を最後に、訃堂は翼に睨み付けられながら部屋を後にした。

 

「──絶対、証明してやる……!」

 

 そして翼は一人覚悟を口にし、そんな彼女を八紘と弦十郎を見据えていた。

 

 

 第八話「伝説進撃」

 

 

「ホントあり得ない! アダムの手を煩わせるなんて!」

 

 甲高い声でプリプリと怒るのは、オートスコアラー、アンティキティラ──通称ティキ。

 ティキはつい先日ようやく錬金術師たちの手で復活した。

 彼女はアダムとの再会を喜ぶのも束の間、響の体たらくに不満を持っているようであった。

 

「……」

「あ! 何その態度!」

「そう怒るんじゃ無いよ、ティキ」

 

 しかし響はそっぽ向いて相手にせず、それにティキがさらに憤慨する。

 アダムはそれを宥めながら口を開いた。

 

「既にノルマを果たしていたからね、彼女は。だから殺す必要が無かったのさ、仲間を」

「……!」

 

 今度は響がアダムの言葉に憤慨し、ギロリと睨み付ける。だが、アダムは彼女の視線を受けても薄ら笑いを浮かべるのみ。

 

「しかし理解しただろう、君もね。戦場に出ねば増えるよ? 無辜の民の犠牲が」

「──ヒトデナシ」

 

 そう吐き捨てると、響はアダムの前から去り自室へと戻った。それを世話係の元クラスメイトが追って行き──ティキがまた怒り出す。

 

「もう! ティキあいつ嫌い!」

「そう言わないでくれよ、ティキ。切り札なんだ、彼女は」

 

 そう言ってアダムは微笑む。

 しかしその笑みは何処までも悪辣で──。

 

「……」

 

 傍でその光景を見ていた男は、掛けている眼鏡を押し上げ息を吐いた。

 

 

 ◆

 

 

「此処が……」

「そう、此処が我らが錬金術師協会の本部だ」

 

 クリス、切歌、そしてコマチはサンジェルマン達に連れられて錬金術師協会本部へと招待されていた。

 何でも、二代目統制局長なる者が協力者であるシンフォギア装者、そしてアカシアに会いたいと申し出た為だ。

 元々、協力関係を築いていた為、顔見せを行う予定だったのだが──パヴァリアにより仲間が次々と殺されていた為、時間が取れずにいた。

 

 しかし今回こうして時間を取り、彼女達は此処へとやって来た。

 ちなみに翼と調は日本に残っている。防衛の観点からも……そして敵の標的を散らす、という意味もある。

 

「ブイ……?」

 

 ふと、コマチがある一室に違和感を覚え首を傾げる。

 

「カゲ?」

「ブイブイブイ」

「カーゲ」

 

 それに気付いたイグニスがどうしたのかと尋ね、コマチが訴える。しかしイグニスはコマチの違和感が分からずコマチ同様首を傾げ……。

 

「ほらほら。あまりウロチョロしないの」

「ブイ」

「カゲ」

 

 しかし後ろを歩いていたカリオストロに促され、二体はサンジェルマン達の後を追った。

 

「……」

 

 そして先ほどの光景をサンジェルマンはこっそりと見ており、しかしすぐに視線を前に戻す。まるで過去は振り返らないと言わんばかりに。

 

 

「二代目、連れて来ました」

 

 厳格そうな扉を超えて局長室へと通されたクリスと切歌。

 しかし中に入り、そこに居た人物を見て切歌が叫んだ。

 

「あああああ! あの時のトマトお婆ちゃん!? 何故此処に居るデスか!?」

 

 先日助けた人物が、あり得ない場所に居る事に切歌が戸惑い、混乱する。

 対して年配の女性は笑みを浮かべるだけで何も答えず、サンジェルマンがため息を吐いた。

 

「二代目……あの現場に居た事はこの際良いとして、その変装を解いてください」

「──仕方ないね、そう言われると」

 

 二代目と呼ばれた女性──否、男は姿形を変える。

 骨格が変わり、髪の色も青くなり、成人男性のソレと同じで──その姿を見た切歌とクリス、そしてコマチは驚いた。

 何故なら、サンジェルマン達が二代目統制局長と呼ぶその男の姿は──先日相対したアダムと全く同じ姿なのだから。

 

「やはり落ち着くね、この姿が」

 

 さらに口調と声色も同じで──クリスはサンジェルマンに詰め寄った。

 

「どういう事? もしかしてわたし達を騙して──」

「勘違いするな。アレは二代目の真の姿ではない」

「え……?」

「落ち着くんだ、この姿が」

 

 人違いだと言われ、コマチ達はよくよく二代目を見る。

 ……確かに言われてみると、何処となく目つきが穏やかで、あの時感じた圧倒的な威圧感を感じなかった。

 

「醜いからね、私の真の姿は。晒したくないのさ、衆目の目に」

「でもだからって、何故わざわざその姿なのデスか?」

 

 切歌に問い掛けに、二代目は──瞠目して答える。

 

「──私にとって理想だったのさ、かつてのアダム様は」

「……アダム」

「……理解しているよ、君たちの思い。そして当然の事だ、彼を許せない気持ちは」

 

 ──仲間が操られている。

 ──仲間が殺された。

 ──そして、仲間に仲間殺しをさせている。

 

 アダムがやってきた事は、やっている事は、そしてこれからやる事は──許してはならない事。

 

「どうか止めて欲しい、あの人を。そして取り戻すんだ、君達の仲間を。その為なら惜しまないつもりさ、君達への協力をね」

「……相変わらずお人好しなワケだ」

 

 二代目の言葉にプレラーティが呆れた様にため息を吐き、サンジェルマンとカリオストロも同様の表情を浮かべる。

 どうやら彼女達にとってはいつもの事らしい。

 しかしサンジェルマン達は不満を持っている訳ではなく──志は同じな様だ。

 

「ありがとうございます……!」

「約束するデスよ! 響さんを取り戻して、あいつを倒してやるデス!」

 

 二人の言葉に二代目は嬉しそうに笑みを浮かべ、視線をコマチへと向ける。

 

「貴方もどうか──しないでください、絶望を」

「ブイ……」

「ただ──どうか己を犠牲にはしないでください、何があっても。残される人は辛いのです、だからあの方は──」

「ブイ……?」

 

 二代目の意味深な言葉にコマチは首を傾げ、サンジェルマンもまた内心疑問を抱いていた。

 

(二代目がアダム・ヴァイスハウプトに執心していたのは知っていたが──アカシアも? いやそれよりも、先ほどの言いよう……もしや)

 

 サンジェルマンは、ある一つの可能性にたどり着いた。

 過去に二代目から聞かされたとある話と照らし合わせると、アダムがヒトに対して過剰とも言える悪辣な行為をしているのは──。

 

「──し、失礼します!!」

「騒々しいね、全く。あったのかい、何かが?」

 

 局長室に入ってきた協会の人間は、二代目に咎められながらも報告を行った。

 それだけの事態が──起きたのだから。

 

「──日本に向かい、三体のアカシア・クローンが進軍中との事! 過去のデータから参照するに──個体名カイオーガ! ルギア! イベルタル!」

「ブイ!?」

 

 伝説級じゃん!? とコマチが叫ぶ。

 実際、過去にその姿だったアカシアは災害を止めるためにその力を行使し──文献にも載っている程だ。

 それが三体現れ、日本に進軍しているとあってはクリス達も穏やかで居られない。

 

「急いで戻らないと!」

「送っていこう。局長、よろしいですね?」

「勿論さ、君たちも力を貸してあげると良い」

 

 二代目はそう言いつつ、ある物を取り出した。

 

「それとこれを持って行くと良い、役に立つだろう」

「! これは……!」

 

 二代目が渡したのは──かつてアダムが過剰な魔力で作り出したアダム・スフィア。

 これがあれば大抵のことはできる。町を復元したり、大量の人間をテレポートさせたり、と。

 受け取ったサンジェルマンは、敵の力を使わなければならない事に複雑に思いながらも胸元にしまう。

 

「では、失礼します」

「くれぐれも気を付けるように──そろそろ本腰を入れて来たからね、あの方も」

 

 二代目の言葉を背に──サンジェルマン達はテレポートジェムにて日本へと跳んだ。

 

 

 ◆

 

 

 レプリカタイプのアカシア・クローンを媒体に、アダムの膨大な魔力で拡張、魔改造し再現された──伝説の力。 

 かつて人々を救った力が、今は逆に人々を害そうと振るわれようとしている。

 三方向から進撃する三体。一体でも日本に上陸し、その力を使わられればどうなるか──それが分からない彼女達ではなかった。

 故に、三チームに分かれて対処する事となる。

 

 カイオーガには、翼、プレラーティ、ジル、コマチ。

 ルギアには、調、切歌、カリオストロ、カメちゃん。

 イベルタルには、クリス、サンジェルマン、イグニス。

 

 何れも厳しい戦い──だが、彼女たちは負けるわけにはいかない。

 

「──デカいな」

「ブイ……」

 

 ブレードボードに乗り空からカイオーガを見下ろした翼が思わず呟き、彼女の肩に乗っているコマチもまた同意するかのように頷いた。

 

「カイオーガ……文献によると、雨を降らす力で海を作った伝説があるワケだ」

 

 プレラーティがそう言うと同時に、ポツポツと水滴が降り──大雨となる。

 

「っ……天候を変えるとか有りか!?」

「文句を言っている暇はないワケだ! 来るぞ!」

 

 プレラーティの警告と共に、カイオーガは口を大きく開き──水の砲撃を翼たち目掛けて放った。それを翼はボード捌きで回避し、プレラーティはジルのまもるの力で防ぐ。

 

「くそ! 次はこっちの──」

「──上だ!」

 

 反撃をしようとした翼だが──プレラーティの叫び声と同時に、途轍もない衝撃が彼女を襲う。

 肩に居るコマチが咄嗟にまもるを使った事でダメージは無かったが──アメノハバキリに宿るアカシアの力が警告していた。

 

「──落雷!?」

「それも絶対に当たるタイプだ!」

 

 錬金術で空を飛んでいるプレラーティは、翼の隣に寄ると文献に書いてあった伝承を伝える。

 

「カイオーガは雨雲を操り雨を降らし無辜の民を救うと同時に、あの雷で災害を打ち消したとある」

「そんなの有りか!?」

「有りだから使っているワケだ!」

 

 自分の得意なフィールドを作り出し、力自体も強い。

 かつてない強敵に、翼は生唾を飲み込む。

 

 

 

「デデデース!?」

「っ、巨体に似合わず速い……!」

 

 調たちもまた苦戦していた。

 既にアカシアの力を解放し、シルバーバージョンの力を駆使し切歌の足場の形成と拘束を行おうとしている調だが──相手が悪すぎた。

 

「──!」

「ぐ、また……!」

 

 流体化しルギアに巻き付いた調の銀が、ルギアがサイコキネシスを使い主導権を強奪。

 そしてそのまま彼女たちを襲おうとし──直前に銀を消して難を逃れる。

 

「あらら……海の力だけかと思ったら、意外と器用なのね」

「ゼニ!」

 

 相棒を肩に乗せ、海面に立つカリオストロ。

 ルギアにはカイオーガのように天候を意のままに操る特性は無いが、その力はやはり伝説級。

 特に、すべてを切り刻み塵と化す大技は、真面に食らえば命はない。

 調は器用に立ち回っているが、相手の力がそれ以上に万能だ。

 切歌も攻めあぐねて、できる事といえば調の援護くらい。

 

「これはちょーと不味いかもね……」

 

 

 

「はぁ!!」

「──!」

 

 イベルタルの赤黒いレーザーとサンジェルマンの錬金術が激突する。

 ラピスの力で何とか相殺できているが──自力が桁違い。

 クリスも狙撃をするが、イベルタルは脅威と見ていないのか見向きもしない。現にクリスの弾は弾かれダメージを与えることができないでいた。

 

「厄介だな……ラピスの力を叩き込めば、相性上有利なのだが……」

「カゲェ」

 

 どういうわけか、イベルタルが攻撃をする度にイグニスの体力が吸われている。

 サンジェルマンの肩の上で気怠げにしていた。

 

「──?」

「どうした?」

「何か、違和感が……」

 

 さらにクリスもギアに違和感を覚えていた。

 アカシアの力が弱まっているような……。

 

「……思っていたより、厄介だな」

 

 他の戦場の様子を顧みて、思わず呟くサンジェルマン。

 伝説と呼ばれる力は、彼女たちの予想以上だった。

 このままでは戦線が崩され突破されてしまう可能性がある。

 

「──仕方ない」

 

 故にサンジェルマンは──切り札を使う。

 

 

 

 そして、それを見ている者が居た。

 

「──ほう。案外早く手を切って来るんですね」

「……」

 

 光学迷彩で姿を消している戦艦の甲板には、ガングニールのファウストローブを着た響が居た。

 そして、その隣には黒い宝石を手に持つ──白衣を着た男。

 

「アダム・スフィア──その力、見せて貰いましょう……ねぇ? 響さん」

 

 そう言って男──ウェルは響に笑いかける。

 

 自分が開発したダイレクトフィードバックシステムにより、沈黙している彼女に向かって。

 

今まで出てきたグループでどれが好き?

  • 雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
  • 翳り寄り添う日陰(響コマチ)
  • 先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
  • 愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
  • 波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)
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