【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第二話「翳りと可能性と」

 ──気が付いたら、イーブイになっていた件について。

 

 いやはや参った参った。寝て起きたらこんなところにいて、しかもポケモンになっていた。

 さらに()()()()()()()()()()()()()ウルトラビーストが表れて、俺を襲うものだから困った。

 必死に逃げて、隠れて、やり過ごして。

 空腹に耐え、ゴミを漁って食い繋いで。

 なんか目がやばそうなホームレスに食われそうになったりして。

 

 そんな生活を一週間ほど続けて、警報と共に現れるウルトラビーストに捕まりかけて──彼女と出会った。

 変身ヒーローみたいな子で、実際俺を助けてくれたヒーロー。いやヒロインか? 

 とにかく嬉しかった。

 イーブイになってから碌な事無かったし、なんか黒服のお兄さん方が俺を捕えようとするし、かと思えばその黒服を薙ぎ払う物騒な白髪の女の子がまたもや俺を捕まえようとするしで。

 

 正直辛かった。

 

 だから、助けてくれた事が嬉しかった! 

 もっと保護してほしいなと思った! 

 あわよくば俺のご主人になって欲しいと思った! 

 俺が帰るまで、守ってほしい。

 

 だから俺は決めた。

 この愛くるしいイーブイボディをもふもふできる権利を対価に、この少女のペットになる事を! 

 

「ブイブイブ~イ」

 

 肩に乗りすり寄ってかわいい声を出す。

 ふふふ。女の子ならメロメロに違いない。

 現に女の子の手が俺に伸びて──。

 

「わたしに触れないで」

 

 その言葉と共にむんずと掴まれて、ポイッと不良が空き缶を捨てる如く俺を放り投げた。

 ……えええええええええええええ!? 

 

「ブイ!?」

 

 そのまま立ち去ろうとする女の子に、俺は必死になって追いかける! 

 なんで!? なんでイーブイボディにメロメロにならないの!? 

 というか見捨てないで! お願いします! 

 女の子の足元をウロチョロしながら抗議し続けると、女の子は立ち止まってため息を吐き、冷たい声で吐き捨てた。

 

「二つ、言うことがある。

 わたしは独りが良い。アンタが普通の動物と違うってのは何となくわかる」

 

 なんでか鳴き声で言いたいこと分かるし、と付け加える女の子。

 そーいえば普通に会話してますね。

 

「だからこそ、わたしはアンタのご主人にはならない」

 

 そして二つ目は、と言ってギロリとこちらを見る。

 おおん……怖い……。

 

「その声で、あざとい事しないで……!」

 

 その言葉を最後に、女の子は早足で歩き去っていく。

 俺は、女の子の「あざとい」にショックを受けて、真っ白に灰色になっていた……。

 

 なんかその言葉、胸に来るってばよ……。

 

 

 第二話「翳りと可能性と」

 

 

「もう……! 着いて来ないでって言ったでしょ……!」

 

 そんな事言われてもー。

 

 あの後結局俺は、諦めきれず女の子の後を追い続けた。

 最初は無視していた女の子だったが、次第にイライラし始めて俺に向かって何度も拒絶の言葉を投げかけている。

 怒鳴り散らすようなことはなかったが、ひんやりと冷たい眼差しが俺を射抜く。

 正直怖い。

 でも、何故か俺はこの子から離れる気がなかった。

 打算はもちろんある。

 しかし、それ以上に放っておけないんだよな……。

 怪我しているのを我慢しているツンデレ猫みたいなイメージ。

 そこまで考えたところで、ジトッと見られた。す、鋭い……! 

 

「だいたい、わたしは──」

 

 ──ジリリリリリリリ──ン……! 

 

「……!」

「ブイ!?」

 

 路地裏で電話の音!? 

 驚いてそちらを見てみれば、今時珍しい古風な固定電話がそこにあった。

 え??? どういう事??? 

 しかし女の子は何か知っているのか、初めは驚いた様子を見せたが、すぐに受話器を手に取った。

 ……なんだか凄く嫌そうな顔をしていたけど。

 

「……こっち使うって事は、聞かれたくない事?」

『その通りだよ、察しが良いね。聞かれる訳にはいかないからね、終わりの名を持つ巫女に』

 

 電話先の相手と話していた女の子の顔が険しくなり、感情を顕にする。

 

「まさか……見つけたのか!?」

『ある訳ないだろう、そんなおいしい話が。しかし君は運がいい、奴に辿り着くチャンスを得たのだから』

「チャンス……それって──」

 

 お、こっちを見た。

 いっえーい☆ かわいいイーブイちゃんですよー! 

 パチンとウインクして可愛い声で鳴いてみる。

 

 舌打ちされて視線切られた。

 つら。

 

『執着しているんだよ、フィーネは()()に。だから傍に置いておくと良い。復讐相手が来るまで』

「……」

『大事にするんだな、くれぐれも』

 

 話が終わったのか、女の子が受話器を置く。すると固定電話はサラサラと砂となって消えた。

 うーん……携帯電話の利便性に殺された固定電話の魂か何かだったのか? 携帯ができて公衆電話とかなくなったしな……。

 つまりあの女の子は成仏させた……? 

 変身ヒロインでありながら退魔師だったのか? 属性盛り過ぎ! 

 

「……なんか変な事考えているでしょ」

 

 ひょいっと俺を持ち上げて、またもやジトッとこちらに目を向ける女の子。

 や、やだなー。気のせいっすよ。

 口笛を吹いて(吹けてない)誤魔化す。

 

「とりあえず、アンタのご主人にはならないけど、わたしの家に来てもらうから」

 

 マジか。

 なんでいきなり言ってること変わっているの? 

 でもいっかー! 

 やったー! これでホームレスに食べられる恐怖から脱却できるぞー! 

 

「……なにそれ」

 

 知らん。でもあいつら煮込めばいけるって言ってたよ。

 おー、こわいこわい。

 何はともあれよろしく! えっと、名前は……。

 

「……響」

 

 響ちゃんね! オッケー覚えた! 

 可愛い名前だ! 

 

「っ……それで、アンタの名前は?」

 

 ……? 今一瞬響ちゃんの顔が──って、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!? 

 持っている所グニグニしないで!? ジッとこっち見て無言で擽らないで!? 

 

 しばらくして擽るのをやめてくれた。死ぬかと思った。こうげきとぼうぎょ下がったわ。

 さって、名前だけど……イーブイは種族名だとして、俺の名前は──分かんね。

 

「分からない」

 

 うむ。この体になる前は人間だったことは覚えているけどそれだけだ。

 どんな生活をしていたのか。仕事をしていた社会人なのか。学生だったのか。

 恋人はいたのか。家族はいたのか。

 そのあたりの事がごっそりと抜け落ちている。

 でも、「帰らなくてはいけない」という事は覚えている。

 

「……」

 

 その事を伝えると、響ちゃんは黙り込んでしまった。

 というか通じている? 大丈夫? 

 心配しているとグアッと視界が上がり、クルリと回り、スッポリと何かに収まる。

 これは……響ちゃんのパーカーのフードに入れられた。

 前足で響ちゃんの肩に掴まり、落ちないようにする。

 

「……名前が無いなら、適当に決めて。あと、アンタが見られたら色々と面倒そうだからジッとしていて」

 

 そうすれば、アンタに似合わなそうなその顔見なくて済む。

 その言葉を最後に彼女は何も言わず、歩き始めた。

 ……そっか。自分では気づいていなかったけど、俺色々と限界だったのか……。

 

「……雨、よく降っている。こんなに雨降っていると、パーカーの中まで濡れちゃうな──わたしは気にしないけど」

 

 前からそんなそっけなくて、でも優しい言葉が聞こえて──雨が零れ落ちた。

 胸が晴れるまで、雨は降り続けた。

 

「……」

 

 

 

 ……む、響ちゃんって結構甘い匂──。

 

「……淫獣っ」

 

 首のところガッてされた。

 痛い……。

 

 

 

 

 響ちゃんの家に帰る途中、コンビニに寄る事になった。

 元々買い物に出掛けた際に、ノイズが現れて(どうやらUBじゃないみたい)、俺を見つけてさっき電話で話した協力者の指示で引き取ることになったとの事。

 その人はいい人だね! と言ったら即答で否定されてあいつは人でなしだと断言された。

 ご主人の……交友関係が……こおりタイプです。

 何を協力しているの? って聞いたけど答えてくれなかった。

 あまり深追いすると傷つけそうだから、それ以上は聞かない事にした。

 

 立ち寄ったコンビニでどんな物が食べられるのか聞かれたので、感覚に従って人と同じものだと答える。犬猫の缶詰はどうか? と聞かれた際は全力で断った。……なんでだろう? 

 そしてケチャップを見て、何故か悲しい気持ちになった。……なんでだろう? 

 

 響ちゃんが適当に買い物かごに入れていく中、ふと響ちゃんがあるものをジッと見つめていた。

 どうしたんだろう? と思っていると珍しく響ちゃんから話しかけてきた。

 周りの目を気にしてか、基本俺に話しかけてこず、俺が話しかけて嫌々会話してたからね! へっ、なつき度稼ぎに難航しそうだぁ! 

 

「アンタの名前、今思いついたんだけど」

 

 と思ったらそうでもなさそうだ。

 へへへ……! ツンツングレグレしていて「あれ? イーブイの可愛さ通じてない?」って思っていたけど、響ちゃんもなんだかんだ女の子だな~。このイーブイボディにデレデレじゃないか~。

 

「……」

 

 んで、俺の名前思いついたって話だけど何ですか? 俺ちん気になるなー。

 

「……コマチ」

 

 こ、コマチ……? 

 

「なに? 文句あるの?」

 

 い、いえ文句ある訳ではないのですが……。

 

「じゃあ、決定ね。アンタは今日からコマチ」

 

 わ、分かりました……。

 コマチかー。イーブイのボディでコマチかー。

 いや、別に嫌じゃないけど気になるっていうか──ってあれ? 

 ふと響ちゃんの買い物かごを見て首を傾げた。

 ごはんが好きなのか、お米をたくさん買っている。それはまあ、良いとして。

 そのお米の名前が問題なのだ。

 秋□小町、と書かれていた……。

 ……。

 ……響ちゃん、一つ質問があるのですが。

 

「……」

 

 俺の名前、何を見て思いついたの……? 

 

「……」

「いらっしゃせー」

 

 ちょっと響ちゃん聞こえてる!? 

 ねえ響ちゃん聞こえてる? ねえ! 

 いやポイントカードありますじゃなくてさ! 

 レシートいらないですじゃなくてさ! 

 箸一つで良いですって、俺のは!? 

 あ! 今イーブイだから要らないね! 四足歩行だし! コマチ四足だし! ってやかましいわ! 

 響ちゃん! 響ちゃ────ん!! 

 

 

 結局、家に帰るまで響ちゃんに無視され続けて、俺の名前は【コマチ】に決定された。

 

 

 

 ……この決め方、コマチ的にポイント低い! 

 

 やはり俺の名前の決め方は間違っている。

 そう思ってしまう俺だった。目が濁りそう。

 

 

 

 

 家に帰って響ちゃんの握ったおにぎり食べたらどうでもよくなった。

 おにぎりうめえ! ごはん&ごはん!! 

 銀皿に映った俺の目はキラキラしていた。ごはん美味しいから仕方ないよね! 

 

「単純……」

 

 あーーーー、きこえないきこえないー。

 

 

 

 

 

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