【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第十四話「花咲勇気」

「──そうか、プレラーティまでもが。悲しいね、仲間を失うのは」

「……はい」

 

 サンジェルマンは二代目に報告を行っていた。自分の仲間が殉職した事を。

 報告を聞いた二代目は帽子を深く被り目元を隠し、サンジェルマンに表情が見えないようにする。

 

「君はどうなんだ、彼女を失って」

「──尊い犠牲だと」

「……感心しないね、その答えは。隠さなくて良いんだよ、私の前では」

「……」

 

 しかしサンジェルマンは何も語らない──カリオストロが死んだ時と同じように。

 別に何も感じていない訳ではない。むしろ……胸の内に荒れ狂う感情を抑えるのに必死なくらいだ。

 

「しかしこれで三人だけだね、残ったのは」

「はい」

「そろそろ覚悟を決めて欲しい、あの方と向き合う事を。でなければ死ぬよ──あの方が」

「──」

 

 サンジェルマンは、答える事ができなかった。

 このような事態になっても尚、彼女は──過去を乗り越える事ができないでいる。カタカタと腰元に付けているボールが揺れ、イグニスが心配そうに見上げていた。

 

「分かっています」

「だと良いのだけど」

 

 報告が終わった為、サンジェルマンはSONG本部へと戻ろうとする。

 そんな彼女の背中に、二代目が一つ忠告をする。

 

「それと気をつけて欲しい、米国には。最近また怪しい動きを見せている、日本に向けて」

「分かりました」

「SONGにも伝えているけどね、念の為に」

 

 話が終わり、サンジェルマンは協会本部から立ち去った。

 

 

 ◆

 

 

「──」

 

 コマチは──響の部屋で丸くなり……何も考えないようにしていた。

 

 調が死んだ。プレラーティも死んだ。……身近な人がどんどん死んでいった。そしてそれを殺したのは──大切な家族、という事になっている。

 

 SONGは既に響を敵として認識している。……そう上から指示が出された。

 装者の喪失は流石に不味かったのか、事件収束後SONGは解体され、司令官の弦十郎は責任を負う事になっている。

 

 仕方の無い事だと弦十郎は言っていた。

 

 そしてコマチの処遇だが、国連が管理する事となった。

 特異戦力として認識されているコマチだが、国連の反応を見るに彼が完全聖遺物と認識されていた過去を知っているのかもしれない。もしかすれば、彼は実験施設へと送られる可能性がある。

 

 だが、コマチはもうどうでも良かった。

 

「……」

 

 ──響ちゃん……。

 

 コマチは、ただただ響と会いたかった。

 彼女を攻めたい訳ではない。

 救いたい気持ちは当然ある。

 ただ──彼もどうすれば良いのか分からない。

 

 時間を巻き戻したかった。

 しかし、時間を操るとなると伝説の力が必要で──今の彼にそれだけの力は残っていない。

 

 死者を蘇らせる力も無かった。

 生命を造る力も無かった。

 かつて奏を救った様に、己の命を犠牲に誰かを救う力も無かった。

 

 残っているのは相手を傷付ける力のみ。

 

「──っ」

 

 コマチは、己の無力さに怒りを覚えていた。

 大好きな女の子一人助ける事ができなくて──何が奇跡だ。

 

 彼は、何もできない。

 

 そうやって、コマチが自分を責めていると部屋の扉が開く。

 

「入るぞ」

「カゲ!」

 

 入ってきたのは協会から戻って来たサンジェルマンとイグニスだった。

 イグニスは布団に包まり、顔を出さないコマチを心配そうにする。

 

「カゲ? カゲ!」

 

 大丈夫? と問い掛けても返答が無く、イグニスは少し悲しそうにする。

 しかしサンジェルマンはその姿を見て苛立ち──つい、厳しい言葉を掛けてしまう。

 

「いつまでそうしているつもりだ──失われた命はもう戻らない」

「……」

「お前なら、その事をよく知っている筈だ」

 

 しかしコマチは反応を示さず、それを見たサンジェルマンはため息を吐き、彼が塞ぎ込んでいるベッドに腰掛ける。

 イグニスがサンジェルマンの膝に乗って体を丸め、そんな彼を優しく撫でながら、彼女は口を開いた。

 

「少し、昔話をしよう」

「……」

「遠い昔に、一人の少女が居た──そして、その隣には温かい炎があった」

 

 ──その炎は、ある日突然少女の前に現れた。

 炎は、どういう訳か死にかけており、それを救ったのが少女だった。

 炎と少女は瞬く間に仲良くなった。

 日々を必死に生きていた彼女に初めて友ができた瞬間だった。

 炎はその力で食べる物を取りに行き少女とその母に分け与えていた。

 寒い日は尾の先にある炎で暖を取り、暑い日は隅で薄っすらと涙を浮かべる炎を、少女が苦笑しながら抱き寄せる。

 そんな、温かい日々を過ごしていた。

 少女はその炎が大好きで、炎も少女が好きで、病弱な彼女の母を助けようとしていた。必ず治すと誓っていた。

 

「だが、それもあっさりと終わった」

 

 少女の母が死んだ。

 炎は少女の母を助ける事ができなかった。

 少女は悲しみに暮れ──感情のままに叫んでしまった。

 

 嘘つきと。大嫌いだと──死んでしまえと。

 

「その愚かな少女は後悔した──それこそ永遠に」

 

 炎は少女の前から姿を消し──時が経った。

 相変わらず苦しい日々を過ごしていた少女はある日、自分を支配する大人によって人気の無い森に捨てられる。

 

 ただの戯れだった。次の日に生きているかどうかの、貴族達の賭け事。

 当然、少女は何もできず死にかけ、森の獣に食われそうになったその時──炎が現れた。

 

 少女の死を温かい炎で灯し、穴だらけになった翼で優しく少女を包み込み命を守った。

 

「諦めなかったんだ。嫌われても、死ねと言われても──少女を救う事を諦めなかった」

 

 それこそ自分の命を犠牲にしてまで。

 

 少女が意識を取り戻した時、炎は消えていた。

 残っているのは温かなぬくもりと、心に刻み込まれた後悔のみ。

 

 少女は、自分を救った……胸の奥で灯し続ける永遠の輝きに誓った。

 この世界を正すと。自分のような者を生み出さない世界を作ると。悲劇を消し去ると。

 

 そして、いつの日か──彼がゆっくりと昼寝をできる日陰に案内したい。そう、思った。

 

「……話は以上だ」

「……ブイ」

 

 布団から顔を出したコマチが、サンジェルマンを見上げる。

 彼女は目を閉じて、彼に言った。

 

「なぁアカシア──もう良いのではないか?」

 

 サンジェルマンは、語る。

 

「お前が何を想ってそこまでして、何先年も人に寄り添い、己を犠牲にしてまで救っているのかは知らないが──少しだけ我がままになっても良いのでは無いか?」

「ブイ……?」

「人を救う奇跡であるアカシアなら、立花響を倒し、アダムを止め、残された人を救うのだろう」

「……」

「だが、立花響の家族であるただのコマチなら──奇跡よりも優しい笑顔で彼女を救えば良い」

 

 サンジェルマンの言葉にコマチは──。

 

 

 ◆

 

 

 アダムがレイラインを用いて神出づる門を開き、ティキに神の力を注ぎ込む。

 それを読んでいたSONGは、要石を用いてレイラインを遮断。地上に描かれた神出づる門を閉じた──しかし。

 

「──ならば描くのみだ、彼方にある星の海で」

 

 アダムは、己の膨大な魔力で天のレイラインでもう一つの神出づる門を作り上げる。再び神の力がティキに流れ込み──駆け付けたサンジェルマン、コマチ、イグニスがそれを目撃する。

 

「アダム!」

「遅かったね、来るのが。しかし貴様らでどうなる、この状況を」

 

 宙に浮くティキの側に居たアダムが地に降り立ち、沈黙し続けている響の隣に立つと……彼女に触りながら言い放つ。

 

「詰んでいるんだよ、君達人類は。もう存在しないからね、対抗手段は」

「──対抗手段。神殺しの槍、ガングニールの事か?」

「……気取られていたか、いつの間にか」

 

 サンジェルマンの言葉を聞いたアダムは、浮かべていた薄ら笑みを引っ込めた。

 

「風鳴機関での黄金錬成。いの一番にガングニールの装者であるマリア・カデンツヴァ・イヴ、天羽奏を始末したのはその為なのだろう?」

「嫌われるよ、賢しいと」

「賢しい? それは隠す素振りをしてから言え」

 

 スペルキャスターを突きつけて──彼女は言い放った。

 

「アダム──貴様の目的は人類の支配、ではないのだろう。何が目的だ」

「──決まっている、千年前から」

 

 アダムの瞳に──昏くドス黒い炎が浮かび上がる。

 その炎は──命あるものを死へと導く為の灯火──復讐の炎だ。

 

「人間を人間では無くするんだよ──二度と奇跡に縋らないように。その為に僕の端末として使い潰すのさ、神の力で」

「──二代目の予想通りか」

 

 かつて、アダムは歴史の裏から人類を見守っていた。

 しかし、ある日を境に人類を支配しようとした。

 そして、今は──人間という種を神の力で書き換え滅ぼそうとしている。

 

「そんな事はさせない──させるものか!」

 

 サンジェルマンは──屈しない。

 

「我が友に、己に誓ったのだ! 止まらないのだと。今日よりも少しだけ幸せな明日を作る為に!」

「その為に犠牲になっても良いと? 仲間の錬金術師が」

「──良い訳が無いだろう!」

 

 サンジェルマンが、仲間を想い叫んだ。

 

「失いたくなかった。生きていて欲しかった──彼女達の死を犠牲だと片付けたくなかった!」

「ならばこれ以上は無意味だ、戦うのは。僕に抗うから失うのさ、大切なものを」

「──だとしても!」

 

 サンジェルマンの想いを受けて、イグニスがヒトカゲからリザードンへと進化する。

 

「私は──進み続ける! 己に、彼女達に恥じないように!」

「──グオオオオオオオオオオ!!」

 

 サンジェルマンの決意は固かった。人間嫌いのアダムをして強いと思える程に。

 だが──。

 

「……」

 

 コマチは、まだ迷っていた。

 彼は──響を救いたいと思っている──例え仲間を殺していても。

 しかし戦いたくないと思っている──例え仲間を何人殺していても。

 

「……」

 

 それを見たアダムは──サンジェルマンを殺す為に利用する事にした。

 コマチを、アカシアを救う為に。

 

「行け、我が英雄よ──あの錬金術師を殺せ」

 

 そう言って紫色の宝石を響に投げ渡し──響は力を解放する。

 

「──掌握」

 

 宝石を握り砕く。

 

「──変換」

 

 ギアと髪が、彼女の体が紫色へと染まっていく。

 

「──この手に明日に続く未来を」

 

 そして、得るのは絶望への片道切符。

 

 ──ガングニール・アカシッククロニクル。

 ──タイプ・サイキックフューチャー。

 

 何処か神獣鏡を纏った未来のギアと似た色合いのファウストローブを身に纏う響。

 サンジェルマン達も響から感じる力の異質さに気付いたのか、警戒する。

 武器を構え、警戒する彼女達──の背後に突如現れる響。

 

「──っ!」

「……」

 

 振り返り迎撃を試みるサンジェルマンだが、未来予知を発動させた響が掻い潜り、そっと胸に手を翳し──念力で吹き飛ばす。

 

「く──」

「グオ!?」

 

 それを見たイグニスが戸惑い。

 

「──」

「グオ!」

 

 フワリと浮いた響が、そのまま鋭い蹴りを放ち、イグニスは両腕を掲げて防御する。

 しかし──今の彼女に触れてはいけない。

 テレポートで逆さに転移され、体を捻り、無防備な腹部に思いっきり足を突き刺した。

 

「!?!?」

 

 サンジェルマンを追いかけるように、イグニスはその巨体を弾き飛ばされる。

 いきなり手痛いダメージを負い、倒れ伏すサンジェルマンとイグニス。追撃するべくゆっくりと歩みを進める響の前に──コマチが飛び出す。

 

「ブイ!」

 

 やめてくれ響ちゃん! と叫び──響はテレポートでコマチの前からサンジェルマンの近くに転移する。

 どうやら響の奥底の本能が、コマチを傷付けたくないと思っているらしい。

 

 サンジェルマンの元へと跳んだ響は、再び彼女に向けて拳を振るう。

 

「グオオ!!」

 

 それを庇うべくイグニスが立ち塞がり拳を受け止め──サイコキネシスで体を拘束され、何度も地面に叩きつけられる。

 

「……!」

「イグニス!」

 

 痛みつけられ苦悶の表情を浮かべるイグニスを、サンジェルマンが救うべくスペルキャスターを構え──彼女に向かってイグニスを投げる響。

 相棒を撃つわけにはいかず、受け止める。

 その結果──二人まとめて加重力で沈められる。

 

「カ……!」

「く……!」

 

 ミチミチと嫌な音が体の奥から響き、肌が裂け血が舞う。

 イグニスはダメージにより力が霧散し、リザードンからヒトカゲへと戻ってしまった。

 このままではミンチにされてしまう──。

 

「──」

 

 その光景を見ていたコマチは──呆然としていた。

 次は、彼女達なのか? 

 このまま、また響が人を殺すのか? 

 それを自分は止めることができない。何故? 

 

 ──響を傷付ける事を恐れているから。

 

 その結果、他の仲間を救う事ができなかった。

 

 響を救いたい。殺させたくない。

 サンジェルマンとイグニスを助けたい。死なせたくない。

 

 コマチは考えて考えて、答えが出なくて、苦しくて──それ以上に彼女達の方が苦しんでいる。

 

「──ブイ!」

 

 コマチは、力を行使し──響にたいあたりした。

 背中を押された響はつんのめって思わず重力を解除した。

 

「──」

 

 ──否。

 響は──ショックを受けていた。

 

 コマチに攻撃された事に。

 つまり──コマチにすら敵だと認識された。

 そう思った響は──光の無い瞳でコマチを見て涙を流した。

 苦しい。辛い──でも、自業自得だと、己を恨み──。

 

「──ブイ!」

 

 そんな彼女に、コマチが呼び掛ける。

 

「ブイ! ブイブイブイブイ──ブイ!」

 

 そして、必死に語り掛けた。

 もう、君を助ける事に躊躇しないと。死んだ人達を想い、君を諦めないと。

 ずっと前に約束をしていた──立花響を助けると。ずっと側に居ると。

 その約束をたがえない為に──いや、違う。

 

 コマチは、ただ響を助けたい。

 たったそれだけの、シンプルな想いがそこにあった。

 

「それは、貴様がアカシアだからか?」

 

 加重力から助け出されたサンジェルマンが、コマチの隣に立ち問い掛ける。

 それに対して、コマチは答えた。

 見ず知らずの誰かではなく──たった一人の大切な者の為に戦うと。

 それは彼の我がままだ──だが! 

 

「そうか──我がままなら仕方ないな」

 

 コマチの言葉を聞いたサンジェルマンは──嬉しそうに微笑んだ。

 そして、キッと目の前を見据える。

 

「敵は強大──」

 

 こちらは消耗し、三人しかいない──とコマチが続け。

 

 ──だとしても、と彼らは諦める様子を見せなかった。

 

「カゲ!」

 

 ダメージを負ったイグニスが、コマチに手を差し伸べる。

 そして、一緒に戦おうと笑顔で言った。

 

「……ブイ」

 

 コマチはその手を握り──問いかけた。

 何故君は会った時から、俺の事を助けてくれるんだ? と。

 それに対してイグニスはこう答える。

 

 かつて、君がイグニスだった頃にサンジェルマンを救ってくれたから、今こうして出逢う事ができた。

 これは、そのお礼のほんの一部だと。

 だから、イグニスはコマチを助ける。大好きなサンジェルマンと一緒に居られる明日をくれた彼に。

 

「余計な事を……」

 

 サンジェルマンが呟き──イグニスと視線を交わす。

 

「救うぞ──お前の大事なものを」

 

 サンジェルマンが、スペルキャスターとイグニスのボールを構える。

 

 ──取り返そう、この手の花咲く勇気で。

 

 手を取り合っているコマチとイグニスが、胸の内にある力を解放し──三人は光に包まれた。

 

 立花響を助ける。同じ想いを抱いて。

 

 

 第十四話「花咲勇気」

 

 

「なんだ──この光は!?」

 

 三人の発する光──力に戸惑いを見せるアダム。

 この力は──マズイ。かつて、自身が挑みなす術もなく倒したあの日の彼女を思い出す程の脅威。

 そして何より──とても温かく、眩しかった。

 見ていられない程に、触れる事ができない程に。

 

「──これは」

 

 サンジェルマンは、自分の姿を見て戸惑いを含んだ声を漏らす。

 彼女が纏っているファウストローブが──変わった。

 姿形だけではなく、その力の強さが、本質が。

 

(感じる──アカシアの、イグニスの想いが)

 

 ファウストローブ・typeⅡ。それが、サンジェルマンがイグニスと育んできた絆と、新たに築いたコマチとの絆で得た──呪いを払う力。

 

「──グオオオオオオオオオオ!!」

 

 そして、イグニスとコマチも──新しい力を手に入れていた。

 サンジェルマンの視線の先には、蒼い炎を吐き漆黒の体を持つメガリザードンXへと至ったイグニス──否、イグニスとコマチが居た。

 

 二体は、絆を紡ぎ、融合を果たし、清浄なる炎を手に入れ──魔を焼き払う聖竜の姿となった。

 

「──グオオオオオオオオオオ!!」

 

 待っていてね、響ちゃんと叫び──サンジェルマンとイグニス、そしてコマチは暗闇を切り裂く稲妻の如く、突っ込んだ。

 

 

 ◆

 

 

♪ 敵でも仇でも 何かのわけがあって♪ 

 

「グオオオオオ!!」

 

 コマチの青いだいもんじが放たれ、それを響は回避する。

 先ほどと違い遠慮が無いのは──響を絶対に救うという覚悟があるからだろうか。

 

♪ 決意を食い縛りブっ込む──大義を♪ 

 

 さらに、サンジェルマンが呪いを浄化する弾丸を放ち、牽制。

 一発でも当たれば祓われると認識しているからか、響を蝕む呪いは必死になって避けようとする。

 

♪ 一撃必愛に 善もなく悪もなく♪ 

 

「これは……マズイね、放っておくと」

 

 サンジェルマン達の力を認識したアダムが、動きを見せる。

 

♪ 重い──覚悟が 魂に変わる!♪ 

 

 被っていた帽子を投げつけ、サンジェルマンへと攻撃する。

 それを大剣へと形態変化させたスペルキャスターで受け止め、弾き返すサンジェルマン。

 

♪ 運命の♪ 

 

「救えると思うのか? あの咎人を」

 

 アダムが囁き掛ける。

 

♪ 歯車が♪ 

 

「彼女は殺し尽くしたぞ──仲間を」

 

 彼女の罪を。

 

♪ 少しだけ♪ 

 

「血に染まっているぞ──彼女の手は」

 

 彼女の行いを。

 

♪ ズレてたら♪ 

 

「彼女は願っているよ──己の死を」

 

 彼女の想いを。

 

♪ 友だった気がしたんだ──絶対♪ 

♪ Wow Wow Wow♪ 

 

「彼女は求めていないよ──救いを」

 

 彼女の──罰を。

 

 しかし──二人は諦めない。

 

♪ 譲れない♪ 

 

「だとしても──」

 

 サンジェルマンが、アダムを青い龍の弾丸で吹き飛ばす。

 

♪ 譲れない♪ 

 

「──グオオオオオ!!」

 

 だとしても、とコマチが響の拳を受け止めながら叫び。

 

♪ 交差した手と手に♪ 

 

「この花咲く勇気で!」

 

♪ 他の出会いでならばと──咽ぶ ♪ 

 

 ──響ちゃんを救うことを諦めはしない!! 

 

♪ I trust! ♪ 

 

 二人は、叫ぶと同時に目の前の相手に掴み掛かる。

 響もアダムも勢いに押され振り解けず、宙へと投げ飛ばされた。

 

♪ だけどハートは♪ 

 

「ぐ!?」

「……!」

 

 そして空中で二人はぶつかり合い──サンジェルマンとコマチの射程に入った。

 

♪ 目に見えない絆が♪ 

 

 サンジェルマンが錬金術を込めた弾丸を放ち、円状の紋様が道を作る。

 

♪ 離──さない! 鼓動のデュエットは♪ 

 

 その道をコマチが通り、拳に青い炎を纏わせる。

 

♪ I believe!  引き裂かないで♪ 

 

 そして、その拳を──思いっきりアダムの顔にぶち込んだ。

 

「ぐあ!?」

 

♪ 宿命は たがえども♪ 

 

 勢いよく地上に向かって吹き飛ぶアダムを尻目に、コマチはガッシリと響を抱き寄せた。

 

♪ さあ 今 ならばどうするか……?♪ 

 

 呪いに操られた響は、触れている所からサイコキネシスでコマチの体を拘束し、引き剥がそうとする──が。

 

♪ だとしても! の続きへ!♪ 

 

『──響ちゃん!』

「──!」

 

 それこそが──コマチの狙いだった。

 

♪ 手を掴み──握ってと♪ 

 

『響ちゃん! 返事して!』

「──コマチ」

 

 肉体接触し、エスパーの技を使っている時を狙い、コマチはイグニスのメガシンカのエネルギーでテレパシーを強化。そしてそのまま響の心の奥底へと踏み込んだ。

 

♪ 空を切る──悲しみの涙♪ 

 

 響の心の中は──とても冷たかった。

 死にたいと、消えてなくなりたいと──強く願っていた。

 

「ごめん、コマチ──わたしもう……嫌なんだ」

 

♪ 残酷は──戯れ笑うように♪ 

 

「家族を助ける為。見殺しにしたくないって思って──大切な仲間を、大事な友達を殺した」

 

 だから響は手を差し伸ばさない。

 握った拳を開かない。

 

 日向と日陰から離れ、地平線の彼方へと消え去ろうとする。

 

♪ ──それでも歌い繋げと……!♪ 

 

「お願い、コマチ──」

 

 響の心からの言葉に、コマチは──。

 

♪ I trust! ♪ 

 

『──イヤだ!』

 

 キッパリと断った。

 

♪ 花咲く 勇気♪ 

 

「──っ!」

 

 響がコマチを振り払い、テレポートをし距離を取ろうとする。まるで拒絶する様に。

 

 しかしコマチは一度繋いだ手を絶対に離さない。

 テレパシーで響を感じ取りながら追い掛ける。

 

♪ 握るだけじゃないんだ ♪ 

 

『例え響ちゃんが死にたいと言っても生かす! 助けて欲しくないと言っても、絶対に助ける!』

「……!」

 

♪ こぶ しを 開いて繋ぎたい……! ♪ 

 

『これは、俺の我がままだ! 響ちゃんが大好きで、取り戻したいって思った──俺の我がままだ!』

 

♪ I believe! 花咲く勇気♪ 

 

 それでも尚逃げようとする響だが──突如動きが止まる。

 サンジェルマンの放った弾丸に当たり、動きを止められたのだ。

 何とか逃げようとする響に、追い付いたコマチがソッと触れる。

 

♪ 信念はたがえども♪ 

 

『──絶対に、助けるから』

「──」

 

 ──響の動きが止まった。

 そして──。

 

「コマチ──助けて」

 

 ようやく響は──本心を口にした。

 それに対してコマチは。

 

 

『──もちろん』

 

 当然の事だと言わんばかりに笑顔を浮かべ、ブイ! とVサインをしながら答えた。

 

♪ さあ 今 目前の天に♪ 

 

 そして空高く舞い──響に向かって急降下。その身に呪いを焼き払う美しい炎を纏わせて。

 

 サンジェルマンも不浄を払う光を手に、響に向かって勢いよく跳んだ。

 

 そして、二人の炎と光が響へと迫り。

 

♪ だとしても! を貫け!!♪ 

 

──シュピーゲルフンケルン

 

 二つの花咲く勇気が交わり──呪いを打ち消し、響のファウストローブが消え去り。

 

 

 

 コマチはようやく、彼女に手が届いた。

 




今作のサンジェルマンを主人公に見立てて番外編を書いた場合
タイトル・アルケミックストーリー
序章・死を灯す温かい炎
第一章・不屈の錬金術師サンジェルマン
第二章・快楽の申し子プレラーティ
第三章・完全なる世界アダム
第四章・終末の巫女フィーネ
第五章・虚構の城カリオストロ
第六章・アルケミックオーダー『アカシア』
第七章・神殺英雄戦姫ヴァルキュリア
と,なります。書けませんけどね。

ちなみに作中の花咲く勇気ですが、VER.AMALGAMならぬVER.ACACIAだな、ブヘヘヘと妄想してたりします。
尚、翳り歩む日陰編で出てきた花咲く勇気はVER.KOMACHIもしくはEVかな……。

今まで出てきたグループでどれが好き?

  • 雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
  • 翳り寄り添う日陰(響コマチ)
  • 先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
  • 愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
  • 波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)
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