【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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前話のラストで「救った」と書いてましたが、感想の指摘により救ってないと判断して修正しました。
また、今回の内容に納得いかないと思いますがご了承ください


第十六話「謳魂連聖」

「──そうか。アダムが神の力を」

 

 アメリカにて、米国大統領は日本に潜伏している工作員からの情報に──眉を顰めた。

 

「やはり危険だ、神の力は」

 

 彼は──彼の国は、かつてアカシアを研究していた。神秘の時代から続く超常の力の塊であり、誰もが手に入れたいと願う危険な力。

 現に、一度その力で手痛い被害を負わされた事がある。

 その力を危険対象として見ていたアダムが手に入れようとしていると聞いた彼は──。

 

「これは──神からの脱却。そして未来に進む為の人類の一歩だ」

 

 人類の為と強く言葉にし──一つの決断をした。

 

 

 第十六話「謳魂連聖」

 

 

 コマチは確かに響の手を握る事ができた──しかし。

 

「そう簡単に行かないよ──アカシア」

 

 響の服の中に仕込まれていたテレポートジェムが砕け散り、コマチの腕の中から響が消える。

 そして、神の力を取り込み続けているティキの隣にアダムが現れ、さらにその腕の中に意識を失った響が転移。

 

 また、奪われた。

 

 だが、コマチは──諦めない。 

 

「──グオオオオオ!」

 

 翼を広げ、蒼き炎を散らしながらアダムへと向かう。

 響を取り戻す為に。

 もう手放さない為に。

 

 しかし。

 

「──なんで」

 

 神の力をその身に宿したティキが、叫ぶ。

 

「なんでアダムの邪魔をするのぉおおおおお!!?」

 

 そして権限する神の力。兵器として完成されたティキ。

 ディバインウェポン。

 アダムと仲良しの筈の友人が、そのアダムを、大好きなアダムに害を為そうとしている。

 それは──許せない話だった。

 ディバインウェポンの口が大きく開き──光線を発射。神の力により、並行世界を生贄にし放たれたその一撃は──容易く地形を変える。

 

「グ──」

「っ──」

 

 コマチは「まもる」を、サンジェルマンはバリアフィールドを展開してティキの一撃を防ぐ。

 しかし、流石は神の力。

 二人は完全に防ぐ事ができず──そのまま吹き飛ばされた。

 

 一瞬で荒野となった戦場で、倒れ伏すサンジェルマン達を見下ろすアダム。その腕の中には響が、隣にはディバインウェポンとなったティキが。

 

「アダム……ホメテ……アタヂ……アダムノヤクニタヂタクテ」

「嬉しいね、そこまで想われると」

「ダカラハグシテ……アイヂテ……」

「──報いないとね、頑張ったティキの為に。だから、そうだね、とりあえず……」

 

 アダムは、懐から何かのスイッチを取り出した。

 そして、それを──思いっきり押した。

 

「さっさと手放して貰おうか、神の力を」

「──エ?」

 

 ボン……ッとディバインウェポン胸部から煙が出る。そこはティキがおり──内部で爆発が起きていた。

 光の粒子となって分解されていくディバインウェポンと、機能停止に陥りながら堕ちていくティキ。

 

「アダム──ナンデ」

「もう必要なくなったのさ、入れ物は。そして付与する先は──決まっている」

 

 ガシャンと音を立てて地に堕ちたティキは──動かなくなった。

 しかしアダムはそれに気にした様子を見せる事なく、腕の中の響を掲げた。

 

「神力顕現──完成だ、ヴァルキュリアの!」

 

 光が響に集まり──その姿が変わる。

 アダムの手から離れた響は力に取り込まれその姿が見えなくなり、先程のティキと似た姿へと変わる。

 

「──神殺しの力を宿した神。まさに英雄だ──これで、復活するアヌンナキを殺せる! そして──ようやく彼を救える!」

 

 神殺英雄戦姫ヴァルキュリア。

 それは、神を殺す力を持ち、神の力を持つ──最強の存在。

 アダムが千年掛けて用意した対抗手段であり、救済装置。

 

「──グルル……」

 

 ダメージを引き摺りながらも何とか起き上がるコマチだが──次の瞬間体が光り、イグニスとの融合が解ける。

 

「ブイ……」

「カゲ……」

 

 負担が大きかったのか、二体はその場から起き上がる事がなかなかできなかった。

 

「くそ……!」

 

 そしてそれはサンジェルマンも同じで、ファウストローブが解け、苦々しい表情でアダムを睨み付けた。

 

「さて……」

 

 アダムが大地に降り立ち、コマチの元へと歩み寄る。そしてコマチを抱え、イグニスはサンジェルマンの方へと蹴り飛ばす。

 

「カゲッ!?」

「イグニス! ……アダム・ヴァイスハウプト、貴様!」

「邪魔だからね,君たちは」

「ブイ……ブイ!?」

 

 錬金術で拘束されるコマチ。もがくが拘束から脱する事ができず。

 

「もう用済みな存在は消すに限る、特にその偽物は」

「……っ」

 

 アダムがスッと手を出す。

 それを見たサンジェルマンが何とか立ち上がり、スペルキャスターを構える。

 

「だとしても、私は──」

 

 そんな彼女を無駄な足掻きだとアダムは冷たく見放す。

 彼からすれば──もう自分に勝てる者は、神の力を得た響を倒せる者はもう居ない。

 神殺しは、既に手中にある。

 

「消えてなくなれ錬金術師。理想に溺死しながら」

 

 アダムが響に指示を出す。すると口を大きく開けて──アダムに向かって解き放った。

 

「──なに!?」

 

 急いで回避するアダム。

 それを響は追いかけ、巨大な手を何度も何度も振り下ろし叩き潰そうとする。

 そんな彼女の単調な、しかし激しい攻撃を避けながらアダムは気付く。

 

「まさか復讐なのか? 今までの。だとすれば、なんて浅はかだろうか」

 

 空を飛び、アダムを見上げて睨み付ける響。それをアダムは見下す。

 

「もう戻らないよ、殺した人間は。むしろ考えないのかい? 此処で僕に手を出して起きる悲劇を」

 

 ピタリと響の手が止まる。

 

「次は家族かい? 死ぬのは。懲りたんじゃなかったのか? 仲間を殺した事も、復讐する事も」

「──ブイ!」

 

 アイアンテールを発動させて自分を拘束していた錬金術を破壊し、響の前に立つコマチ。

 コマチは、アダムから響を守るようにして、彼に向けて吠える。

 

「ブイ、ブイ!」

「──やはり特別なのか、彼女は」

 

 アダムは目を細め──テレポートジェムを取り出す。

 

「ならば証明してあげよう──己の行動の愚かさを!」

 

 そう言ってジェムを砕こうとして──遠方からの炎の狙撃がジェムを溶かした。

 それにアダムは驚き──それ以上にコマチが驚いた。

 

「ブイ……!?」

 

 先ほどの狙撃。それは──隣でよく見ていた赤い軌跡。

 あり得ない筈だった──しかし、現実だった。

 

「──まさか」

 

 アダムもまたコマチ同様の結論に至り──。

 

「──ご名答。でも一足遅かったわね」

「な──」

 

 背後からの声に振り返ると同時に──波導を纏った拳が深々と突き刺さり、勢いよく殴り飛ばした。

 アダムは地面を削りながら吹き飛んでいき、倒壊したビルに突っ込んだ。

 

「──」

 

 それを見た響は──復讐の相手を見失った事で、アダムへの恨みで浮き上がった自我が消失し、暴走を始める。

 

「ブイ!?」

 

 足元に居たコマチは踏み潰されそうになり──それを背に翼を生やした誰かが救い上げた。

 

「──遅れて済まない、光彦」

「──ブイ?」

 

 コマチは言葉を失った──もう会えないと思っていた人と出会えた事で。

 そしてそれはサンジェルマンも同じだった。戦場に現れた彼女達に驚き──アダム・スフィアで己を回復させる二人の同志に、目を見開く。

 

「随分とボロボロなワケダ」

「そんな泥だらけじゃ女が廃ると言うものよ?」

 

 サンジェルマンは二人に抱え起こされ、イグニスもまた二体の仲間に起こされる。

 

「貴女たち……!」

 

 そして。

 暴走する響の前に立ち、コマチを守るのは──7人の戦姫。

 

 瓦礫の中から飛び出したアダムは──叫んだ。

 

「あり得ない──あり得ないぞ! 確かに僕は!」

「──響の視界、そして感覚越しに殺したのを確認した……と?」

 

 アダムの言葉に、彼女──マリアが答える。

 

「確かにそれは現実だったのでしょう。少なくとも響と貴方にとっては」

「──なんだと?」

 

 アダムが怪訝な顔をし、それに対してこの中で誰よりもソレを知っている少女、調が答える。

 

「ダイレクトフィードバックシステム。あのバカ助手は、アンタから響を助ける為に偽りの情報を響に見せて、アンタを欺いた」

 

 常に付けていたバイザーにより視覚情報を騙し、ダイレクトフィードバックシステムであたかも装者達を殺したように見せつけた。

 それによりアダムは響が仲間を殺したと思い込み、装者達は殺される前に救出されていた。

 

 カリオストロと錬金術師協会によって。

 

「本当大変だったんだから。装者達の説得とか〜。SONGを騙すのとか〜」

 

 カリオストロは、マリアから協力要請を受けていた。マリアが死んだと見せかけたあの戦場で。

 

 

『──女の子は優しく扱ってくださいね?』

『──っ、その声は!?』

『──説明する時間がありません。ですが、響さんを助ける為に協力してください』

『──分かった』

 

 響のギアから聞こえたウェルの言葉に、マリアは疑う事なく了承した。

 それに申し出たウェルの方が戸惑いを見せる。

 

『……僕が言うのもなんですが、もう少し罠とか考えないんですか?』

 

 ウェルの問い掛けは至極マトモな物で、しかしマリアは迷いなく答える。

 

『アナタが理由なくそちらに居る訳が無いでしょう? それで、どうすれば良いの?』

『……全く。そうですね、先ずは──』

 

 その後、アダムを欺く為に死んだフリをするように頼んだウェルだったが、マリア「疑われない為に本当に死にかける」と言って腕を切断、腹部に風穴を開け、カリオストロの協力で海中内で鮫に喰われて死んだように偽装して協会に身を潜めた。

 その後、ダメージが癒えるまで安静にし──後日再会した妹に説教された。

 

 

 

『──という事は、マリアは生きているんだな』

『ええ、そうよ。申し訳ないけどアナタにも協力して貰うわ』

 

 奏を一人にした後、響の動きを止めてダイレクトフィードバックシステムで偽の情報を見せている間に、カリオストロが奏に全てを伝えた。

 

『気乗りしないが──仕方ない、か』

 

 残される翼達の事を想い、渋々ながら了承した奏は、カリオストロの偽装により黒焦げの姿になる。

 そして──。

 

『──よぉ、早かったな』

 

 黒焦げになり、槍を支えに立つ奏と。

 空に浮かび、空一帯を埋め尽くす雷を轟かせている響が居た。

 

『ちょっと待ってな──今、話が終わった所だ』

『話って──奏、何を!?』

(すまねぇな──翼)

 

 こうして、雷光で翼達の視界から見えなくした奏は、カリオストロが転移で彼女を連れ去り、あたかも蒸発して死んだように見せかけた。

 

 

『それでは、姉さんは生きているんですか……!?』

『ああ。これも響を助けるためだ……心苦しいがな』

 

 セレナが墜落した際に、地面は潰れたトマトにより赤く染まっていた。

 そんな畑の真ん中でセレナは奏から説明を受けていた。

 

『辛いだろうが──耐えてくれ』

『……響さん。絶対に助けます!』

 

 その後、響の手刀がカカシの頭を撥ね飛ばし、セレナはその後に合流したカリオストロの手引により行方をくらませた。

 

 

『な、何で、奏が此処に……!?』

『今から説明する』

 

 戦艦の甲板に降りた翼は、奏とウェルから説明を受けていた。

 その間響には外界の情報をシャットダウンし、偽の情報を流した。アダムに気取らないように。

 

『なるほど……協会もグルだった訳か』

 

 この時、戦艦を動かしていた錬金術師は、パヴァリア所属の者達ではなく、協会所属の者達だった。

 普通なら気付かれるが──アダムは有象無象に興味を示さない。人間を嫌っているから。

 

『──ったく、気乗りしないな』

『あたしも同じだ──だが、響を助ける為なんだ』

『……分かったよ』

 

 その後、戦艦が爆発すると同時に転移してあたかも死んだように見せかける。死体が残らなかったと思わせる為に。

 

 

『──此処は?』

『目が覚めたか?』

『──!? 翼さん!? それに奏さんやセレナ、マリアまで!』

 

 

 切歌の際には、空間の隔離とワイルドビーストの眠らせた相手に悪夢を見せる力による効果で魂を回収、その後錬金術師協会で蘇生させた。

 蘇らせた後に全てを話し、彼女もまた来たる日まで協会に身を潜める事となった。

 

『それにしても、良かったデス。皆が無事で……でも』

 

 切歌は、辛そうな顔で言った。

 

『響さん──辛いと思うのデス。それに、博士も……』

『それは、わたし達も同じ気持ちよ。だから』

 

 絶対に助けましょう。

 マリアの言葉に切歌は──強く頷いた。

 

 

『──皆、生きている?』

『ええ、そうよ。立花響を助ける為にちょっとね』

 

 クリスの際には、カリオストロが三人を回収した後、肉の塊にてクリスの死を偽装した。その際に近くに居たソーニャ達も死んだ事にしたのは、アダムに改めて装者が死んだ事を印象付ける為だ。

 響が無関係の者を殺したと思わせれば、彼は信じ込むだろう。実際、潜伏していた錬金術師からの報告ではアダムはその事に笑い声を上げていたとの事。

 誤算はクリスが途中で目を覚ましてしまった事だろうか。説明を受けた彼女はカリオストロに掴みかかり、二代目を思い切り殴り飛ばした。

 

『響の心は──どうなるの!?』

 

 その問い掛けに答えたのは──調達が、凍らされて砕かれたように見せかけ、回収された際に語られる。

 

『記憶を消します』

『──!?』

『そして記録上では、僕とアダムが彼女を操っていた……そうすれば上の者も認めざるを得ないでしょう』

 

 ウェルの言葉に聞かされたクリスと調が言葉を失う。

 それでは、彼はどうなる? 

 もっと他にやり方は無かったのか? 

 何故──響がこんな目に遭わなくてはならない? 

 

『──彼女はアダムと常に感覚情報をリンクさせられています。気取られれば人質である家族が殺されます。そうなれば、彼女は……ようやく家族と元に戻ろうとしていた彼女は耐えられない』

 

 実際、アダムは風鳴機関を消し飛ばした。響に戦わなければ、大切な人を、無関係な人を殺すと。

 だから──。

 

『……でも、彼女に罪の意識を植え付けたのは僕の所為です。謝っても許されません。それでも──助けたかった』

 

 ──ウェルが響を操り、カリオストロが仲間を騙しながら救助。それによりようやくアダムを最後まで騙し切った。

 

 そして今。

 アダムが最後の計画を実行している隙に──人質を救出。

 もう響を縛る物は何もない。

 それを聞いたアダムは──叫んだ。

 

「ふざけるな! あり得るかそんな事! あって良いはずがない、そんな良すぎる都合が!」

「都合が良い、だと? そんな訳があるか!!」

 

 しかし、マリアがアダムの言葉を強く否定した。

 

「ウェルが汚名を被ってでも成し遂げた! 響の心に傷を残すからと──全ての責任を負うのを覚悟して!」

 

 例え嘘だとしても、響は自分が仲間を殺したという実感がある。ウェルはそれを覚悟し、彼女を裏切っていると、酷いことをしていると自覚し──全てが終わった時にはどのような罰も受けるつもりで、響を騙し続けた。

 

 アダムに殺されるであろう事も理解しながら。

 

 故にマリアはアダムを許さない。

 響とウェルを傷付けた彼を。

 自ら切り落とした片腕の痛みすら安いと思う程の怒りを彼女は抱いていた。

 さらに──響の心を踏み躙った事を悲しく思っている。そしてそれは──他の装者達もそうだった。

 

「響──今から助けるからな」

 

 雷を纏い、槍を構える奏。

 

「そしてたくさん謝らせてくれ」

 

 両翼を広げて剣を握る翼。

 

「でも響……わたし達の想いは本当だから」

 

 決意の炎を燃やしてライフルを向けるクリス。

 

「恨みよりも憎しみよりも、アナタの事が大切だから」

 

 妖精のベールを纏い、白銀の刃を携えるセレナ。

 

「響さんになら殺されても良いと思ったデース!」

 

 新緑の力を漲らせながら鎌を構える切歌。

 

「それと同じくらい、アナタを助けたい」

 

 流動する銀に乗りながら、調が真っ直ぐと見て。

 

「終わったらたくさん謝らせて──だから!」

 

 波導を全開にしたマリアが威風堂々と立ち。

 

『もう少し待ってて。今──助けるから!』

 

 囚われた魂に謳い、連なる聖なる者。

 さぁ、飛び立て! 声を翳して。

 沈黙を、暗闇を切り裂く稲妻と化せ。

 ──友を救う為に。

 




謳魂連聖。読みはおうごんれんせい。
身内の適合者から頂きました。いわゆる造語です。

今まで出てきたグループでどれが好き?

  • 雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
  • 翳り寄り添う日陰(響コマチ)
  • 先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
  • 愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
  • 波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)
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