【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第十八話「戦姫絶唱」

(コマチ)

 

 響は、コマチにより全てを教えられた。

 彼女は誰も殺しておらず、ウェルが助ける為に奮闘していた事。装者達の響への想い。家族は助けられた事。

 

 そして──コマチがどれだけ響の事を愛しているのか、という事を。

 

(……コマチ)

 

 コマチは謝っていた。響が目覚めた時に、既に自分は居ない事を。

 だからせめて夢の中で触れ合おうと彼の力が、響の心を優しく、温かく包み込む。

 しかし──響はちっとも嬉しくなかった。

 

(──コマチ)

 

 もう大丈夫だから。これからもみんなと暮らせるから。

 だから、生きる事を諦めないで。

 これからもっと幸せになって、と。

 

(コマチ!)

 

 だがそれは、響にとって何よりも辛い事だった。

 自分は仲間を殺した。死んでいないだけで、殺したのだ。

 ウェルのおかげで死なせる事はなかったが、それでも最後に選んだのは自分だ。

 そんな自分を救う為に仲間達が命を賭けて、コマチが己を犠牲にするのは──許せない事だった。

 

 故に、響は──。

 

 

 ◆

 

 

 反応兵器が抑え込まれ──日本を包んでいたバリアーが消える。

 すなわちそれはコマチの消滅──死を意味し、装者達の心に亀裂が走る。

 

 呆気なく、唐突に、大切なものが奪われた。

 その喪失感は──とてつもなく重い。

 

 対してアダムは──怒りにより逆に活気漲っていた。

 

「──こうなれば仕方ない……付与させる、この体に!」

 

 空に漂う神の力が、アダムの肉体へと入っていく。

 神に造られた人形は、ついに創造主と同じ力を手にした──友を犠牲にして。

 体の奥底からアカシアの存在を感じながら、アダムは目の前に佇むサンジェルマンに言った。

 

「──貴様らの相手をしている暇はない、正直ね。今すぐにでも破壊尽くしたいんだ、米国を……!」

「……っ」

 

 アダムは自分を何度も邪魔をするサンジェルマンや、神の力を壊す力を持つ装者達の相手を一度止め──友の仇打ちをしたいと言い出す。

 いずれ来るカストディアン──アヌンナキに対抗する為の力を手にしても、アダムは笑わない。笑うことができない。

 この力で人を殺し尽くすと言っている。

 

「もし復讐を成したとして、その後はどうする!?」

「決まっているだろう、やる事は。実行させていただくよ、当初の予定通り」

「そんな事──」

「──見ていただろうが! 君も! 彼が殺されるところを!」

 

 サンジェルマンの言葉が詰まる。

 

「いつだって人間なんだ、アカシアを殺すのは! ならばするしか無いだろう、この星から、人を、奇跡に群がる害虫を──消すには!」

 

 アダムのした事は、彼女達からすれば到底許せる事ではない。

 しかしアダムからすれば、人間こそが存在する事自体許せない事だった。

 

 かと言って、彼がしてきた事が正当化される訳ではない。

 それでも──人の作り出した物で、人の行いで、目の前でアカシアが死んだ光景を見せられては……否定できない。

 彼女達は、アカシアの事を愛していたから、大切だったから──。

 

「……だと、しても」

 

 故に、その声に。

 

「──だとしても!!」

 

 その言葉に、皆が驚きを顕にする。

 

「──アイツは、コマチは……そんな事を望んでいない!」

 

 立ち上がった響が、アダムの言葉を、これからの行いを否定した。

 誰よりもコマチを愛し、助けたくて、殺した米国を許せない筈の響が──アダムに共感できる筈の彼女が否定した。

 

「──お前は! 大切だったのではないのか、彼の事を!」

「大切に決まっている! でも──」

 

 ギュッと握り締めた己の拳を見て、響は紡ぐ。

 

「無駄にしたくないんだ……!」

「なに?」

「アイツは、わたしに未来を託した──すごく悲しい。寂しい。辛い──でも、次に会った時に胸を張って出会いたい」

「生き返るから諦めるのか、今回は? 貴様も他の人間と同じなのか、結局」

 

 アカシアは己の命を犠牲にし、人を救う。その際に記憶を失うが──蘇る。

 それを知った者はこう考えるのではないか? 

 

 確かに死んで悲しい、忘れられて悲しい。それでも蘇ってくれるのならそれで──と。

 

 アダムはそう思わない。何故なら彼は知っている。アカシアは人を救った回数よりも多く命を落としている。殺されている。尊厳を陵辱されている。

 そして、そんな彼の犠牲を──人は奇跡と呼ぶ。

 

 だからこそ響の言葉を聞いたアダムは彼女を心底見損なった。

 コマチにとって特別な存在である彼女ならば──自分と同じ気持ちだと思っていたのに、と。

 

「違う」

 

 しかし──響はアダムの言葉を否定する。

 

「忘れてほしくない。死んでほしくない──自分を犠牲に、人を救ってほしくない! ──だとしても!」

「……」

「わたしは、わたしであり続ける──アイツの大好きな立花響として」

「──エゴだよ、それは」

「分かっている──それでもわたしは!」

 

 響がガングニールのペンダントを握り締めて──胸の歌を歌った。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

 そして、最も繋ぎたい人と繋げなくても、誰かと手を繋ぐ……未来へと続く力──ガングニールのシンフォギアを纏った。

 

 握り締めた拳をアダムに向けて──。

 

「コマチの想いを無駄にしない──その為に」

 

 最期に託されたコマチの想いを紡ぐ。

 

「アダム──アンタを救う」

 

 

 第十八話「戦姫絶唱」

 

 

「救う? この僕を? ──大概にするんだな、でかい口は」

 

 アダムの肉体が、変質する。

 

「僕を救えるのは彼だけさ、唯一。キミは模擬でもするつもりか? アカシアの」

 

 彼が取り込んだ神の力──アカシアの力が、アダムを次の段階へと進化させる。

 

「できる訳がない。人を、世界を救えない癖に。英雄でも奇跡の体現者でも神でもない、愚かな人間である貴様が!」

 

 アダムの肉体が巨大化し──人の姿を捨てる。まるで、怨敵とは違うと言わんばかりに。さらに神の力で高められた力が黄金となり、金色の輝く鎧が形成される。

 

 これが、アダムの神としての姿。

 

『倒せるか? 怪物である僕を! ヒトデナシを! そう容易くは行かないけどね、よくある英雄譚のようには!』

「──わたしは、大切なモノを守れなかった」

 

 しかし、響はアダムを真っ直ぐ見据える。

 

「そんなわたしに……英雄でないわたしに世界なんて守れやしない」

 

 でも。

 

「わたしは──わたし達は一人じゃないんだ」

 

 響の言葉を受けて、彼女の隣に装者達が、錬金術師達が、アカシア・クローン達が並ぶ。

 彼女を、響を助ける為に手を差し伸ばせ続けた者達が──集う。

 

「──これで終わりにしよう……アダム」

「──いいや、これから始まるのさ……立花響!」

 

 ──最後の戦いを、アダムとの因縁を、今ここで決着をつける為に両者が激突した。

 

 

 ◆

 

 

 アダムが大量のアルカノイズとアカシア・クローンを召喚する。中にはウェルが治療し延命させていたキュレムも居るが、どうやら奪われて洗脳されているらしく目が血走っている。

 

 それを見た響以外の装者達は、まずアルカノイズ達の相手をする事にした。

 響は、皆とアイコンタクトを取り、アダムへと突っ込んでいく。

 

「どうして、皆争ってしまうデスか。どうしてあの子を恐れてしまうデスか!」

 

 アカシアの力を使い、地面から生やした蔓でノイズ、クローン達を縛り上げる切歌。

 

「もっと皆が優しくなれれば、争いは無くなる──そう、考えてしまう」

 

 切歌に向かって遠距離攻撃を仕掛けるクローン達。それを流動する銀で受け止め、衝撃を流す調。

 

「原因は──月。バラルの呪詛……!」

 

 その隙にクリスが炎の弾丸を放ち、蔓毎焼き払っていく。

 

「それがあるから、リッくん先輩はずっと傷付く……」

 

 難を逃れたノイズ、クローン達を不可視のリボンで拘束し、動きを封じるセレナ。

 

「それさえ無くなれば──アイツは、光彦はもう犠牲にならないで済むのか!?」

 

 セレナが封じた敵を落雷で消し炭にしていく奏。

 

「少なくとも、この世界はアイツにとって優しくないのは確かだ!」

 

 耐久のあるクローン達をすれ違いざまに斬り楽にしていく翼。

 

「相互理解──それさえあれば、皆がリッくん先輩の事を……」

 

 錬金術師と共にキュレムと相対するマリアだが、しかし自分の言葉に疑問を抱く。

 

「そんなもの実際に分からないワケダ!」

 

 プレラーティの巨大なけん玉がキュレムの氷柱と激突し、氷のカケラが空を舞う。

 

「人にはそれぞれ考えがある。もちろんあーしにもね」

 

 カリオストロの光線がキュレムを穿ち、後退させる。

 

「だとしても。理不尽な支配から解き放つ為に──私達は前に進まないといけない」

 

 サンジェルマンの弾丸がさらにキュレムを追い詰め、イグニス達もそれぞれの技を放ちダメージを重ねていく。

 

 

 そして、少し離れた戦場では神殺しの拳を振るう響と神の力を振るうアダムが激突していた。

 

『救うと言ったね、この僕を。だけどできるかな、人であるキミに!』

「何が言いたい!」

『──キミのクラスメイト』

「──っ」

 

 響の脳裏に、かつて自分を貶める言葉を吐き、そして化け物を見る目で自分を見ていた少女達の姿が過ぎる。

 その一瞬の隙を見逃さず、アダムの拳が彼女を吹き飛ばした。

 

「ガ──ッ」

『やはり憎んでいるんだね、許せないんだね、心の奥底では。しかし当然だ、人間故に』

「……!」

『そして恐れている、許すことができない自分を──ヒトデナシと言われる事を!』

 

 倒れ伏している響の上から、アダムの巨大な拳が叩きつけられる。

 

「だと、しても……!」

『まさか許すのかい、彼女達を?』

「──だとしても!」

 

 響が、アダムの拳を振り払って叫ぶ。

 

「だとしても! 彼女達が──死んで良い存在である筈がない!」

『……!』

「確かに酷い事をした! 許したくないって思う──恨みもした! でも、それで見捨てるのは間違っている!」

『──手を取り合うのか、理解できない相手と』

「違う。理解する為に手を繋ぐんだ」

 

 響は──拒絶された事により人と手を繋ぐ事を恐れていた。

 そんな彼女に手を差し伸ばしたのがコマチだ。

 彼は響が拒絶しても諦めず何度でも手を伸ばし──彼女にとって大切な人となった。そして大切な人を思い出した。

 

 そしてそれは誰だって同じだ。

 響を拒絶した彼女達にも大切な人が居る。それを否定する事は──誰だってできやしない。

 

 孤独は、喪失は──ヒトを狂わせる。

 

「そしてそれは──アダム、アンタも同じだ」

『──違う』

「違わない」

『違う!!!!』

 

 強い否定の言葉と共にアダムの拳が振るわれ、響に受け止められ、ヒビが入る。

 神の摂理によりダメージをなかった事にしようとするが──神殺しの力でそれも阻害される。

 

『僕は違う! ヒトなんか──』

「──でもアダム」

 

 響はアダムに決定的な事を言った。

 

「アンタは──ヒトに嫉妬してるんだ」

『──』

「だって、アイツが寄り添うのはいつもヒトで……だからこそアンタは憎んだ。奇跡で助けられるヒトを」

『──僕は』

「アダム──もうやめて。こんな事してもコマチは喜ばない」

『──』

 

 その言葉は、アダムの心に強く叩き付けられた。

 彼がずっと目を逸らし続けていた事実。彼を助けると言いつつアダムは──八つ当たりに近い復讐をしていただけだった。

 

『──黙れええええええええ!!』

 

 アダムが叫び、飛び上がる。そしツングースカ級の火球を作り出し、それを響に投げつけた。

 響は両手を翳し──閃光に呑まれ、大爆発が起きる。

 

『認めてなるものか、そんな事を。してしまえば、僕は──』

 

 まるで恐るようにアダムが呟き──火球の中で虹色に輝く光を見る。

 なんだアレは? 

 目を凝らして見れば──響は耐え切っていた。しかしそれはあり得ない。アカシッククロニクルを使う為にはコマチとの融合が必要で──そこで彼は気付いた。

 

 響に向かって、手を差し伸ばす7人の装者を。

 全員が最低限戦える程度のギアを残して、その身に纏う力を響へと送っていた。

 

 シンフォギアを形成する聖遺物とアカシアの力。それが響一人に集束し──顕現するのは最高の力。

 

『その姿は──』

 

 ガングニール・アカシッククロニクル。

 タイプ・ラストシンフォニー。

 

「はぁぁぁぁあああああ!!」

 

 アダムの黄金錬成を打ち消し、跳躍する響。近づけさせまいとアダムが錬金術を行使するが、響はそれをアカシアの幻影を作り出し「まもる」で打ち消す。

 

 そして、そのままコメットパンチを叩き込んだ。

 

『グ──』

「うおおおおおおおお!」

 

 さらにほのおのパンチ、れいとうパンチ、かみなりパンチ──様々なパンチ系統の技を叩き込み続ける。

 アダムは両腕で防ごうとするが──響のラッシュにより防御していた腕が千切れ胴体に叩き込まれる。

 

『それでも──』

 

 腕を再生させて半ば強引に響の拳を掴み、ラッシュを止める。

 しかしそれ以上は動く事ができなかった。響に7人分のシンフォギア、アカシアの力が宿った事でスペックに差が無くなり、さらに神殺しによりアダムのダメージは蓄積されていく。

 

「アダム──これだけは言わせて」

 

 口を開いた響が紡ぐ言葉は──。

 

「ありがとう」

 

 感謝の言葉だった。

 

「コマチを愛してくれて。アイツを助けようとしてくれて──アンタが取った選択は最低でヒトデナシで許されない事だたけど──その想いは本物だった」

『──』

「だから──もうこんな事しなくて良い。こんな事をしなくて良い世界にしていくから。だから──」

 

 アダムの力が解け、響の光り輝く拳が──叩き込まれる。

 

「アンタは一度──反省しろ!!」

 

 奇跡の力が込められた一撃はアダムから神の力を引き剥がし──そして彼は……かつての親友と同じ言葉を紡ぐ少女を見て……疲れたように息を吐き出して倒れ伏した。

 

 

 ◆

 

 

 響がアダムを倒した事によりアカシア・クローンは沈黙。アルカノイズは殲滅された。

 そして荒野で全裸で倒れ伏すアダムの周囲に響たちが集っていた。

 拘束はしていない。

 何故なら──アダムから覇気を感じなかったからだ。

 

「──後悔はしていないよ、僕は。反省もしないさ、今更」

 

 その言葉に響以外の皆が眉を顰める。

 しかし、一番の被害者である響が何も言わない為行動はしなかった。

 正直、彼女が苦しんだ分だけ殴ってやりたい。しかし──響を尊重する為に、耐えた。

 その事に響は感謝しつつ──アダムを見据える。

 

「アダム……」

「……救えなかった、僕は。そして人形だからできないんだ、彼に生きてくれと……そう祈る事が」

 

 何度もそう願った。祈った。

 ヒトに殺される時も。救う時も。命を犠牲に世界を救った時も。

 しかし──アカシアは、アダムの嘆きに気付かず、奇跡を起こし続ける。

 

「……言ったな、この世界を良くすると」

「……うん」

「──だったら、足掻くと良い。愚かな人類よ。地獄の底で嗤わせてもらう。その醜態を」

 

 そして。

 

「──せいぜい心折れない事を願うよ、立花響」

「え?」

 

 そう言ってアダムは──空中に漂う神の力を再び吸収し──己の心臓部を自ら引き抜いた。

 

「アダム・ヴァイスハウプト、何を!?」

「駄賃さ、茨の道を歩く彼女への──いや,違うな」

 

 錬金術を使い──反転。

 命を犠牲に皆を守り神の力として霧散したその透明な力に、自分の膨大な魔力、神が作り出した人形の心臓を素材に──呼び起こす。

 

 天でもなく、地でもなく──人を使った神出づる門を用いた召喚儀式。

 

 呼び出す神は──決まっている。

 力が集束し、ひとつの小さな影となり──呆然としている響の前に現れる。

 

「──ブイ?」

 

 それを見届けたアダムは──。

 

「アカシア……僕は、ただ君ともう一度──」

 

 しかし、最後の言葉が紡がれる事なくアダムは消え。

 その場に残ったのは──。

 

「──コマチ!」

 

 想いを引き継ぎ、覚悟を決めるも──やはり日陰を手放せず泣き崩れる戦姫。

 

 そして。

 

「ブイ」

 

 ごめんね。そしてただいま──と日常で紡がれる言葉を口にする小さな神様。

 

 それを涙を流したり、笑顔を浮かべたりと様々な表情を浮かべ、しかし胸に抱く想いは同じの──少女達が見守っていた。

 

 ──今日は九月十三日。

 

 この日、立花響は奪還され──そして生まれた事を祝福される特別な日となった。

 

 

今まで出てきたグループでどれが好き?

  • 雷光のフリューゲル(奏翼光彦)
  • 翳り寄り添う日陰(響コマチ)
  • 先史文明期コンビ(フィーネアカシア)
  • 愛娘に挟まる陰獣(クリスキリカコマチ)
  • 波導と姉妹(リッくん先輩マリアセレナ)
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