【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
後日談的なの
「──ここは?」
死んだ筈のアダムは──何故か地球の裏側、砂漠地帯に居た。
彼がテレポートジェムで逃げたのではない。何者かがアダムが死ぬ前に呼び寄せたのだ。
しかし、サンジェルマン達凄腕の錬金術師達に気付かれない様に呼び出すには、それ相応の腕が必要であり、それができる錬金術師は限られている。
「──久しいな、アダム」
「……君は、キャロル」
倒れて動けないアダムを見下ろすのは、奇跡の完遂者キャロル・マールス・ディーンハイム。
アダムは、つい彼女から視線を逸らした。それを見てキャロルは納得の表情を浮かべる。
「やはりな。貴様……オレから逃げていただろう」
「……」
「それも日本の情報を隠蔽してまで」
キャロルは、ノエルとの戦いの後、アダムを探す旅に出ていた。
彼女の記憶にある、父と親しかった男は──アダムだった。
故に彼女は疑問に思った。
何故彼が──響を、人間を苦しめる様な事をしていたのかを。
「お前は……人を嫌っていた。だが憎んではいなかった」
記憶の中のアダムと、今のアダムには隔たりがある。それこそだと別人だと言われれば納得してしまう程に。
「何があった──いや、何を知った?」
「……」
しかしアダムは沈黙を貫く。その態度にキャロルが苛立ちを覚えると──。
「──もう良いのではありませんか?」
「──君は……」
「お久しゅうございます……アダム様」
現れたのは一人の老人だった。
老人はアダムを視界に入れると涙を流し始める。
彼は──何千年も前のアダムに心酔し、そしてかつての憧れをずっと守って来た……錬金術師協会二代目局長だ。
二代目は、普段の模擬した口調ではなく己の口調でアダムに訴えかける。
「全てを話したくないのなら、それはそれでよろしいのです。ただ、彼女はずっと貴方様の事を探しておられた……その心を少しだけでも汲んで頂けないでしょうか?」
「──語れば良いのだろう、君が。どうせ知っているんだろう、全てを」
「いえ──彼女は、アダム様の口から聞きたいのです」
「ああ、そうだ。第三者からの又聞きで納得する程、オレはできていない──話せ」
「……」
アダムは暫し黙っていたが──口を開く。
「──無下にできないね、彼の娘の頼みとあっては」
「……」
「そう、あれは──僕が捨てられたあの日に遡る」
アダムは語り始めた。
かつて完全な存在として創られ──失敗だと言われ廃棄されかけるも、当時のアカシアに救われ友になった事を。
そしてそこから始まるアカシアの長い長い旅路と──アダムが人を見限った結末。
時間をかけてゆっくりとキャロルに語り続けた。
◆
「じゃあね、クリス元気でね」
「うん。ソーニャお姉ちゃんも、ステファンも」
アダムとの戦いの最中、巻き込まれたソーニャとステファンは無事に解放された。と言っても協会の元で暫しの間匿われていただけだが……。
それでも巻き込んでしまった事は事実で、クリスは申し訳なく思うも……取り戻した絆は強く、気にするなと鼻にデコピンを食らった。
そして、バルベルデに帰る二人を見送りに来たクリスだが。
「そういえば、此処にいて良いのか?」
「え?」
「ほら、あの……ヒビキって人」
ステファンが気にしているのは響の事であった。
彼女は現在、ある決着を付けるべく故郷に戻っている。
二代目がアダムスフィアで地形を戻し、しかしそれだけではない。実は黄金錬成で殺される前にアダムスフィアで性能拡張したテレポートジェムにて、そこに居た人々を助けていた。
つまり、かつて響を苦しめてアダムに屈した人達は生きている。
そして今、響はその人達と会っているのだ。
ステファンは問う。側に居なくて良いのかと。
その問いにクリスは──笑顔で答えた。
「大丈夫。だって響の側には」
頼りになる子が居るから。
◆
「わたし達家族は此処を出て行きます──もう会う事もないでしょう」
『……』
集められた人達の前で、響は真っ直ぐな目で彼らに言った。
しかし、反応はなく俯いたまま黙っている。無理もないだろう──彼らの醜悪な行いは、普通の人なら罪悪感を抱く行為。そして彼らはどこまでも普通な人達だった。
そんな彼らに、響は言う。
「わたしはあなた達を恨んでます。憎んでます。……許したくありません」
それは、当然の感情だ。
それだけの事を彼らはしてきたし、響はされて来た。
結果、逃げ出して、人を信じる事が出来なくなって──。
「でも──一つだけ感謝してます」
「感謝……?」
「はい。──あの時の過去があったから、私はこの子と出会えた」
そう言って響は、腕の中に居るコマチをギュッと抱きしめた。
「この子だけじゃない。他にもたくさんの人と出会った。許せない人。優しい人。不器用な人。好きになった人。嫌いになった人。──色々な人と出会った」
思い浮かべるのは敵として戦った人達。共に戦い友情を育んだ人達。
大切なモノの為に全てを捧げた人達。
そして──自分を助ける為に命を賭けた人達。
「だからわたしはもう過去を呪う事をやめました。だから許す──いや訣別します。訣別して、仲間達と未来に行く為に……」
それは、果たして本当に許しなのだろうか。本当はまだ恨んでいるのでは無いのだろうか?
そう考えてしまい──しかし、響の、響の後ろにいる家族達の顔を見て、街の人達は理解した。
もう彼女達は振り返らない。捨てる、とも言う。逃げると捉える者もいる。
だが、少なくとも。
過去の行いに怯え、後悔し、アダムに屈した人達よりは──強いと思った。
「──わたしからは以上です。今までありがとうございました。……さよなら」
その言葉を最後に立花家の人達は、彼らに背を向けて歩き出す。
街の人達は何も言わずに、その背中を見つめていた。
しかし、人波から飛び出す少女達が居た。
「待って!」
「……」
彼女達は、アダムに捕らえられていた元クラスメイト達。
錬金術師協会に救助され、治療を受けて肉体的にも精神的にも回復し元の姿に戻っている。
彼女達は立ち止まった響を前に、口を開こうとして、しかし閉じる。
それでも決心して言葉を吐き出そうとし。
「何も言わないで」
その直前に、響の言葉で静止させられる。
「わたしは、あなた達を許す。でも謝罪の言葉を受け取らない。言わせない」
「──やっぱり許せないんじゃん」
ギリッと奥歯を噛み締めるのは、パヴァリアの基地にて響を罵倒した少女。
「わたしの友達は見せしめとして殺された! わたし達の目の前で」
救えなかった命がある。
「アンタのせいだ……」
逆恨みに等しい感情が向けられる。
「アンタが居たから、あの子は!」
「うん。知ってる」
「──は?」
「わたしを苦しめた子が殺された事を知っている──名前も覚えてる。わたしに何をしたのかも、何を言ったのかも覚えてる」
振り返った響の瞳は──どこまでも澄んでいた。
「彼女の事は忘れない。わたしが救えなかった命だ」
「──なんで」
その瞳を見て彼女は──限界を超えた。
無様だから、醜いからと隠していた自分を曝け出し、響に向かって叫ぶ。
「なんで私たちを恨んでくれないの!? 憎んでくれないの!? じゃないと、私たちは──このまま醜いままじゃない!」
「……」
「助かっただけのアンタが悪くない事なんて、みんな分かってる! 助からなかった人達への喪失感をアンタにぶつけていただけという事も分かってる! だから怖かった。間違いだと攻められるのが! 今度は自分たちがアンタと同じ目に、それ以上の酷い目に合うんじゃないかって!」
「……」
「だから、他でもないアンタに攻められて、裁いて貰えば──」
「許して貰えると?」
「……そうよ」
しかし響はそれをしなかった。
これが彼女の復讐なのかと、元クラスメイトは怖くて震えていた。このままでは一生この罪悪感を抱えたまま生きていく事になる。
「──罪だと、感じているんだ」
「……」
「だったらその想いがアナタの罰となる。そして──もう同じ過ちは繰り返さないよね?」
「──」
「だからわたしは──アナタ達を許します」
故にどうか……どうか、少しだけでも人に優しくなって欲しい。
もうあのような想いをする人を生み出さず、できれば手を差し伸ばして欲しい。
「──なによ、それ」
少女の頬に、涙が伝う。
「──それじゃあ、謝れないじゃない……!」
響は彼女達に手を伸ばし、許す事でその胸に罪の意識を植え付けた。
今後少しでも苦しんでいる人たちを、彼らが救えるように。苦しんでいる人が居なくなるように。
コマチは、響の決めた事に何も言わなかった。
ただ腕の中で温もりを与え続けた。
そして。
響の前に一人の少女が現れる。
その少女に向かって響は一言伝える。
「──ただいま」
「──おかえり」
少女──未来は優しく響を抱き締めた。
◆
「──そうか」
キャロルは、アダムから全ての話を聞き──ため息を吐いた。
「拗らせすぎだ、全く。だが、アカシアはお前にとってそれだけの存在だったんだな」
「……」
「アカシアと触れ合い、人を歴史の裏から見守る事を決めた守護者が、友の陵辱に耐えられず人を見限った。そして支配しようとし──」
アカシアの罪を知り、絶望し──人間を人間では無い存在へと変えようとした。
「……驚かないんだな、これを聞いても」
「……生憎三度目でな」
キャロルが思い浮かべるのは、アカシアの罪を神の審判だと神聖視し勧誘してきた宗教組織と。
アカシアを救うために暗躍し、今もなおもがいている一人の女。
キャロルの言葉を受け、アダムはこれからの未来を察し──彼女に尋ねる。
「それでどうするんだい、この僕を。彼女は僕を使う為に送ったのだろう、君を」
「──違う」
キャロルが此処に来たのは。
「昔にした約束を果たしに来た」
「──」
「すまないなアダム。もし、もっと早くオレがお前の事に気付いてやれば……三人で貴様の趣味の悪い酒でも飲み交わしただろうに」
この瞬間だけは、キャロルは──アダムとの約束を、友となる約束を果たす為にやって来た。
響を傷付けた事は許せない。人に対して行った所業も認められるものではないと思っている。
だが、この時だけは。
ただのキャロルとして、ひとりぼっちで寂しがっているこの男の手を繋ぎたいと思っていた。
その言葉にアダムは──。
「──ああ」
ゆっくりと目を閉じる。
「キャロル──僕はしないよ、これまでして来た行いに。反省など。後悔など。ただ、そうだな……」
そして、優しい目で彼女を見て──。
「もっと早く、もっとたくさん──君に僕の友達の事を話したかったなぁ」
魂が満足したのか、アダムの肉体は──塵となって消えた。
人類の敵アダム・ヴァイスハウプトはこの世から姿を消した。
かつての親友に大事な人を奪った敵だと認識され、親友であった事を知られぬままに。
当然の報いだろう。キャロルもそう思っている。だが──。
「さらばだ、我が友アダムよ──」
その死を慈しむ者が一人だけ此処に居ても──罰は当たらないだろう。
風がキャロルの頬を撫で──彼女の目的は果たされた。
「──礼を言わせてもらいます、キャロル殿」
「ふん。これはオレがしたかった事だ。──だが、依頼は依頼だ」
キャロルは、二代目からアダムを弔うように頼まれた。
人格が変わっても彼を慕っていた彼は、唯一アダムに心を許されていた彼女に、アダムが穏やかに逝くようにと……。
しかし、キャロルはその言葉を切って捨て二代目を厳しい目で見る。
「さて報酬を頂こう」
そしてキャロルは──彼を問い詰める。
「──奴は、フィーネは何処にいる?」
その問いに二代目は。
「──日本。今はそちらに」
ただ簡潔にそう答えた。
死んだ筈の彼女があたかもこの世に存在するかのように。
◆
SONGの本部を眺める一人の少女が居た。
風が吹き、銀髪が揺れる。
右目から涙が流れ、その少女は言葉を紡ぐ。
「──全く無茶をしすぎデスよ」
呆れたようにそう呟いた彼女は、ふと虚空を見て誰かと話し出す。
「む? 良いじゃないデスか。久しぶりのシャバなのデスから──分かった、分かったデス! 全く……幾千年分の癇癪は聞くに耐えないデス……」
余計な事を言い、その少女に向かって怒気を放つ者が居るが姿は見えず。
少女は、その場から飛び降りると闇夜に姿を消す。
「さて、果たしてあるのデスかね」
コマチを救う方法は。
そして──博士達の未来は。
本編で書かなかった蛇足。
初期アダム・完全なる自分が捨てられて納得いかず
しばらくしてアカシアに「友達になろう!」と言われて愚痴をこぼし、なんで完全なる自分が、あんな不完全な存在に…と
完全なのにわからないの?と煽られて喧嘩して
その後アカシアに見守ってみたら?そしたら見えてくる物もあると言われてXDアダム化
しかし時が経ち、アカシアが魔女狩りとかで何度も殺され自分の事も忘れられて、アニメアダム化する。この時に錬金術師協会を抜け、パヴァリアを作る。
その後イザークと出会い、しかしイザークも殺され、さらにそこにとある真実を知り、本編アダム化。
ちなみにイザークの元にアカシアが現れて助けなかったのは、その前に殺されていた為。親しき者を連続で短期間で殺され、キャロルも行方不明。アダムの憎しみは止まらず、気付いた時にはどうしようもなくなっていた。
もし側に友が居れば、彼は変われたのかもしれない。戻れたのかもしれない。
ちなみに響がアダムをヒトデナシと呼ぶのは拾った後に表せて家に全裸で置いて
「見られても困らないだろう?」
ととても乙女に言うことではない事を言った事と、人と同じ扱いをされたくない為に自らヒトデナシ──人ではないと言い聞かせる為。
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