【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
「ブイ……」
あの事件の後、翼さんは力尽きるようにして気絶し──今も目覚めていない。まるで辛い現実を受け入れられず、否定するかのように。
奏さんは目を覚ましている──でも。
『悪い……少し一人にしてくれ』
流石に堪えたのか、暗い表情でそう言って部屋に引き篭もっている。緒川さんは大丈夫だといってくれたけど、やっぱり心配だ。
……それに、あの事も気になる。
「ぬあー! 何なんデスかこいつらは!」
突如パソコンの前で切歌ちゃんが吼えた。
この様子だと、また検索したらしい。
ウェルさんも察したのか、呆れた様子で口を開く。
「切歌さん。時間の無駄なので見ない事をオススメしますよ」
「デスけど……!」
バンっとパソコンを叩いて、彼女は叫ぶ。
「何で皆ツヴァイウィングが悪いって言うのデスか! 悪いのはパヴァリアの残党なのに!」
──そう、現在世間ではツヴァイウィングに対する一つの風潮が流れている。
ツヴァイウィングのライブに行くと、ノイズに襲われて死ぬ。
あの事件をきっかけに、一部の人間がネットで騒ぎ出し──炎上。
生き残った二人を槍玉に上げ、悲しみや怒りをぶつけているのが現状だ。
まるで、かつての響ちゃんの時のように。
「一般の人はパヴァリアを知らない。だからツヴァイウィングが責められる」
「ですけど調!」
「それに──ツヴァイウィングのライブでノイズの襲撃が起きて、人が死んでいるのは……事実ではあるの」
「っ……!」
──だからこそ、やり切れない。
それにパヴァリアがあのライブを襲ったのも二人を狙ってのもの……でも、それでも──。
「そういえば、マリアさんやセレナさん、クリスさん。響さんは?」
空気を変える為か、ウェルさんが訪ねてくる。
えっと、イヴ姉妹はクリスちゃんと待機している。
響ちゃんは確か──。
◆
「そっか……ニュースを見て心配だったんだ。無事で何よりだ」
「ありがとう、お父さん」
現在、響は未来と共に両親の元を訪ねていた。
あの日、響たちもツヴァイウィングのライブに行く予定で、その事を両親に伝えていた。だから、あのような事が起きて彼女の身を心配していたのだ。
響の無事を確認した洸は、ホッと息を吐く。隣に座る響の母も、祖母も安心した表情を浮かべる。
それに響は少しだけ表情を和らげて、話題を変える。
「そっちはどう? 上手く行ってる?」
現在、洸達は一緒に暮らしている。前のように。
アダムの一件により、皮肉にも家族の絆を再確認したのだろうか。洸達はお互いに歩み寄る姿勢を見せていた。
「響の職場の人たちのおかげで社会復帰できたからな。それに……」
洸はチラリと己の妻を見て、鼻の下を伸ばしてダラシない顔をする。
それを見た響の母は頬を赤く染めてプイッと顔を背ける。
その光景に響と未来は首を傾げ、祖母はやれやれと頭を振る。
しばらく世間話をしていると、ふと洸が響に尋ねる。
「響」
「ん?」
「──大丈夫か?」
彼の言葉に、響がピタリと動きを止める。
心配させまいとなるべく明るくしていた響だが──やはり父親。娘の心情を察していたようだ。
響は、ツヴァイウィングのライブ事件により人生が狂わせられた。
そして今回同じ事が起き──響を蝕んだあの苦しみをツヴァイウィングが今まさに受けようとしている。
彼女達は仕方ないと、自分たちの咎だと受け入れるだろう。
だが──響はそれを許容できない。
だから──。
「大丈夫だよ、お父さん」
響は誓った。あの二人を守ると。
そして。
「へいき、へっちゃら」
──絶対に許さない、とも。
あの惨劇を起こしたミラアルクを必ず捕まえると胸に誓っていた。
「……」
そして、そんな響を──未来が辛そうな表情で見つめていた。
◆
「どうだい? 傷の具合は」
「ああ。ほとんど治った。次の戦いには参加できるだろう」
錬金術師協会本部にて──キャロルはノーブルレッドから受けていた傷を癒していた。彼女を匿っていた二代目はキャロルの言葉にホッと息を吐き、そんな彼にキャロルが聞き返す。
「奴から逃げる際、アイツはオレを庇って死にかけた……完全聖遺物の力で再生するとはいえ──」
「まだ目覚めていないよ、今はね」
二代目の言葉に、キャロルは苦々しい表情を浮かべる。
責任を感じているのだろう。
その表情は暗い。
「時期に目覚めるだろう、彼女は。損傷自体は治っているんだ、肉体のね」
「後は意識が戻るのを待つのみ、か……」
沈黙が続く。二代目の表情も険しい。
それだけ状況が悪いという事だ。
ノーブルレッドを動かしている者が厄介だと彼女達は認識していた。
風鳴訃堂ではない。もっと根本的に彼女達を従えている──神の力を持ったローブの人物。
それがキャロル達の敵であり、アカシアを害す存在。
「サンジェルマン達には話さないのか?」
「伝えない事にしている、ギリギリまでね。芋づる式にバレてしまうからね、SONGに、彼女の存在を」
「なら、オレは隠れていよう。確か今日は定期報告で此処に──」
──キャロルの言葉を遮る様に、本部の警報が鳴り響く。
二代目は直ぐさま部下と通信を繋げ、状況の確認を行う。
「何があった」
『し、侵入者です! 相手はパヴァリア光明結社の残党──ノーブルレッド!』
「──!」
「──!」
敵が撃って出てきた。
二代目が驚く中、報告は続く。
『敵の狙いは……宝物庫? いったい何を──』
そこで通信が途絶えた。直前に何かを壊す音が響いたが……おそらくノーブルレッドの誰かに殺されたのだろう。
二代目は応戦するべく歩き出す。
「オレも──」
「いや、残るんだ君は。此処で」
迎撃にキャロルも同行しようとするが、二代目がそれを断る。
「限らないからね、此処にきたのが彼女達だけとは。奴が現れた時に頼むよ、君には」
「だが」
「それにそろそろ辿り着く頃さ、サンジェルマン達が。手伝って貰うさ、彼女達に」
「──分かった」
二代目の考えを聞いたキャロルは素直に従い──二代目はテレポートジェムにてノーブルレッドの元へと跳んだ。
「いきなりトップのお出まし──局長!?」
「いえ……姿形が似ているだけで別者であります!」
二代目の見た目にミラアルクが一瞬動揺するが、エルザの指摘によりすぐに持ち直す。
彼女達は、既に事切れた錬金術師を放り投げて構える。
二代目はそれを見て目を細める。
「──何が目的だい?」
「ちょっと欲しいものがありまして」
「できればそれを譲ってくれると有り難いんだゼ」
「できないね、その相談は」
ノーブルレッドの言葉を切って捨て、二代目は錬金術を行使する。
風と炎により、燃焼能力が増した暴風が二人に襲いかかる。
「へ」
「ガンス!」
しかし二人は──一瞬でその場から消え、二代目の攻撃を回避。
錬金術は廊下を焼くのみだった。
どこに行ったのだと二代目が視線を辺りに走らせ──衝撃が走る。
背後からゴキンッと音が鳴り、振り返るとそこには異形の腕を肥大化させ突き出しているミラアルクが居た。
(なんだ、この曼荼羅のような防護壁は……!?)
しかし、ミラアルクの拳は二代目に届いていなかった。
彼の常時展開している多重展開された防御壁が彼女の拳を止めていた。
アダム・スフィアを使った出鱈目な障壁。それを突破するには──並大抵の攻撃では話にならない。
(──見えなかったね、動きが)
一方、二代目もまた内心彼女に対して違和感を覚えていた。
彼の感知能力は音速を捉える。
しかし、彼を以てしてもミラアルクの動きを追えなかった。突然消えて、いきなり背後に現れたかのように。
指先に魔力を集め、圧縮し、ミラアルクに照射しながら彼が呟く。
「追わないとね、君を倒した後に。もう一人を」
どういうカラクリかは知らないが、エルザは既に宝物庫に辿り着いていた。何か異能の力だろうか。術式で隠されている協会本部を見つけたのも、此処に転移したのも彼女の力だろうか、と二代目が当たりを付ける。
『局長!』
「サンジェルマンか」
そこに、協会に戻って来たであろうサンジェルマンから念話が届く。
『今すぐ我々も加勢に──』
「いや、君たちは宝物庫に向かってくれ。もう一人の敵を倒す為に」
彼女の申し出を断り、指示を出す二代目。
敵の力を見誤っていたと言っても良い。
ノーブルレッドにはアカシアの力以外にも何かがある。
「──ふ」
石柱を創り出し、それを投擲する二代目。
それをミラアルクは拳で砕き──砕かれた石が再錬成され、槍と変わる。
ミラアルクを全方位から囲うように。
「どうだい、これなら?」
槍が彼女に殺到し──直撃する寸前にミラアルクの姿が消え、槍が衝突し合う音だけが響く。
そして、再び背後に衝撃が走り、ミラアルクが二代目の障壁を殴りつけていた。
「超加速? いや、違う──これは」
「うざったい障壁だゼ!」
後ろに退く二代目をミラアルクがラッシュを叩き込みながら追い縋る。
一枚また一枚と障壁が砕かれ、その度にアダム・スフィアが作り直していく。その隙を突いて錬金術で攻撃するが──ミラアルクは知覚できない動きで回避する。
二代目はミラアルクを捉えられず、ミラアルクは二代目の防壁を突破できない。
完全なるイタチごっこだが──。
「頼むぜ、エルザ」
ミラアルクにとっては、それで良かった。
◆
「ダブルブッキングだゼ……」
ノーブルレッドに二つの指令が入った。
一つは、訃堂によるシェムハの腕輪の強奪。
もう一つは、ある組織からの錬金術師協会からアカシア・クローンのテレポートジェムを奪う指令。
錬金術師協会は、パヴァリア光明結社が壊滅した後、結社が所有していたアカシア・クローンを保護、治療の為に保管していた。
しかしそれを面白くないと、彼の神の力の一部を独占するとは何事だと不満を持つ者達が居た。
ノーブルレッドはその組織からも支援されており、無碍にする事はできない。故に、二手に分かれる必要があるのだが──。
「サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ……さらにその相棒達」
「加えて今はキャロル達も居るであります。一筋縄では……」
「……」
ミラアルクとエルザが協会の戦力に眉を顰め、ヴァネッサは悩む素振りを見せる。三人が揃えば何とかなるかもしれないが、人数を削れば一気に不利になる。
どうしたものかとノーブルレッドが打開策を考える中──彼女達の主人が、強硬策を出す。
「彼奴等の力の断片を与える」
『──!?』
「それを使えば──恐るに足らず」
彼女達の主人が、ノーブルレッドに与えた力。
それは──。
◆
(流石はカミサマの力! おかげでこの化け物と対等に渡り合えているゼ! だが──)
コフっとミラアルクの口から血が吐き出される。
どうやら彼女に与えられた力は、そう何度も使えるものでは無いらしい。
時間をかければ二代目が押し切るだろうが──神の力を与えられたのは、ミラアルクだけではない。
『局長! そちらに──』
「任務完了であります」
宝物庫でエルザを捕らえに行っていたサンジェルマンから、念話が届くと同時に、ミラアルクの背後の空間が──破れる。
そしてそこから姿を出したのはエルザ。
どうやらサンジェルマンに追い付かれる前に仕事を終えたらしい。
エルザの報告にミラアルクがニヤリと笑みを浮かべる。
「そういう訳で──ズラかせてもらうゼ!」
「! させるか!」
速度のある雷の錬金術を放つ二代目だが──ミラアルクとエルザは破れた空間の先に引っ込み、逃げ切る。
直ぐさま感知領域を広げる二代目だが──既に居なかった。
「ちっ……サンジェルマン、確認してくれ。彼女達が何を盗んだのかを」
『は!』
──この日、錬金術師協会はノーブルレッドに敗北。
また、同時刻にヴァネッサがシェムハの腕輪を強奪し──ノーブルレッドに神の力が集い始めた。
まるで、そうなる事が決まっていたかのように。
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