【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
「──まさか、協会が襲われるとは」
『私達も想定外だったよ、彼女達の動きには。シェムハの腕輪だけを狙っていると思っていたからね、神の力を得る為には』
SONG本部の発令室にて、弦十郎、八紘、二代目が通信にて事の経緯の情報共有を行っていた。
原作協会では、サンジェルマン達が主導となって協会の立て直しを行なっている。ノーブルレッドの襲撃により少なくない人材を失い、少し混乱しているのだ。
さらにアカシア・クローンを収納したテレポートジェム、そしてかつて響に使わされていたジュエルが盗まれていた。
加えて同時刻にアメリカのロスアラモス研究所が襲撃され、シェムハの腕輪を奪われる。これによりノーブルレッドの背後にアメリカが居るのでは? という可能性が限りなく無くなる。
『用心するんだ、敵の動きに。時空間を一瞬で移動する力がある、それも凄まじい精度の』
「ふむ……本部の警護強化も視野に入れるか」
弦十郎は、二代目の話からSONGが襲撃された時の事を想定する。
単純な腕力なら彼が何とかできるが、絡め手を使われれば……。
『サンジェルマン達を派遣するよ、そちらが心配だからね』
もちろん立て直しが終わってからの話になるが──。
「ああ。協力感謝する」
通信を終え、一息つき、しばらくして弦十郎は装者達を集めて情報を伝達する。
そして、その中には──目を覚ました翼が居た。傍には自分の中で整理がついたのか、もしくは翼を心配してか奏も居た。
話を終えた所で、セレナが翼に問いかける。
「翼さん大丈夫ですか? 奏さんも」
「ああ、大丈夫だ」
奏はいつもの笑みを浮かべて答える。
対して翼は……。
「……悪りぃ、みんな迷惑をかけたな」
「翼……」
普段の軽快な様子とは打って変わって、暗く、深刻そうに表情を沈めていた。そんな彼女に奏は心情を察し、痛ましげに見る。
それに気づいた翼がハッとし、笑顔を浮かべていつものように言葉を紡ぐ。
「大丈夫大丈夫! オレはこの通り元気だからさ!」
空元気なのは誰の目から見ても明らかだが、それを指摘するのは憚れ──発令室の照明が落ちる。
突如暗くなり、皆が驚く中──通信が入る。
『果敢無き哉』
「──テメェは……!」
モニターに映し出されたのは、風鳴訃堂。
翼は、憎き相手を目にし、表情を険しく変化させる。
そんな彼女を見下し、訃堂は言葉を吐いた。
『無様鳴り。防人を否定し、家を飛び出し──挙げ句の果てに歌で世界を守るだと? 片腹痛し』
「何だと!?」
それは、翼にとって言われたくない言葉だった。それがいつか見返すと誓った相手なら尚更だ。
加えて、彼女の夢は奏や家族と想い、そして描いてきた夢。
そんな大切な夢を、訃堂に土足で踏み躙られるのは我慢ならなかった。
『なら──己が取り零した命の前で、同じ言の葉を紡げるか?』
「──」
しかし、訃堂の言葉でその勢いも止まる。
頭から冷水を掛けられたような気持ちだった。
『忘れるな、歌で国を救えぬ。忘れるな、目を逸らしたその瞬間、人は死ぬと。己の流れる血を汚すな──防人の血を貶めるな』
「……!」
『目を覚ます時は既に過ぎておる──夢見のまま戦場に立つな未熟者』
その言葉を最後に、訃堂からの通信は途絶え、しかし重い空気が場を包み込む。
沈黙が続き、俯く翼の肩を奏の手がそっと触れる。
「翼……」
「──何辛気臭い顔してんだよっ」
しかし意外にも翼は明るい顔で、心配そうな奏に、皆に笑いかけた。
「今更あんなクソジジイの言葉で揺らぐオレじゃないぜ」
にしし、と笑い。
「──ちょっと部屋に戻るな。嫌な物見て気分悪いからよ」
それだけ行って彼女は飛び出し──奏は追いかけようとして……やめた。
他の装者たちも同様だ。
気にしていないと翼は言っていた。訃堂の言葉なんて知らないと言っていた。
しかし──。
「──歌で世界は救えない、か」
今回の惨劇の爪痕に、心に傷を負っている事を、そしてまだ立ち直っていない事を察していた。
「──ああ、そうだな」
故に、見落とす。
「要るのは──力だ」
彼女の──翼の変化に。
第四話「逃げ出したくなったら 宇宙を見上げよう」
「聖遺物の軌道には通常、フォニックゲインが必要だけど──錬金術でも可能」
七つの音階。時代と共に変化しても根幹は同じ──。
ヴァネッサはシェムハの腕輪を無事に起動させた。
訃堂の指示通りに。
「これが、時世代の抑止力……!」
神の力を前に、訃堂の目が狂喜で染まる。
それをノーブルレッド達は冷めた目で見ていた。
まるで──お前では無理だと言わんばかりに。
「さて──神の力、如何程か」
訃堂はそう言って……黒服の部下に命じて一人の少女を連れて来る。
何処にでもいる普通の女の子で──事実、街にいる何の変哲も無い女の子だ。
ノーブルレッドは、訃堂が連れてきた少女に怪訝な顔をする。
「アイツは?」
「ただの贄よ」
「……何かしたのか」
「防人の力の一部となるのだ──ありがたく思えば良い」
──外道。
つまり神の力を試す為に、何の罪もない少女を使っている、という事だ。
少女は顔を青くさせてガタガタと震え、何故自分が此処に連れて来られたのか分からず、時折「おかあさん」と呟くだけ。
ノーブルレッドはその光景を苦虫を噛んだ様な顔をして眺め、しかし助けず。
黒服に引き摺られ、腕輪の前に投げ出される少女。そして、男達によって今まさに腕輪を着けられ──。
「──外道共が」
暗闇の空間から、茨の鞭が伸び、少女を掴んでいた黒服の腕を打った。
「ぐっ」
「え?」
そしてその鞭はそのまま少女を絡め取り、鞭の持ち主へと引き寄せられる。
ノーブルレッド達は突然現れた敵を見て、驚きの表情を浮かべる。
「結界は張っていた筈……何故此処に!?」
「貴様らが協会から逃げる際に、付けさせて貰っただけだ──発信機をな」
そう言われて、咄嗟にミラアルクが体を弄り──見つける。
「くそ!」
してやられたと付けられた発信機を壊すが、もう意味は無い。
「貴様は……」
「こうして顔を合わせるのは初めてだな風鳴訃堂」
「……身の丈に合わぬその禍気。何者だ貴様」
訃堂の問いに彼女──完全聖遺物ネフシュタンの鎧を纏った白髪の少女は、一言だけ簡潔に言った。
「なに──ただの亡霊さ」
その言葉を最後に──白髪の少女は、アジトを結界ごとぶち壊した。
◆
アジトを脱出して少女は、直ぐに外で待機していた仲間──キャロルに抱えた少女を押し付ける。
「その子をお願い」
「腕輪はどうした!?」
本来なら、シェムハの腕輪を強奪するのが目的だったのだが、白髪の少女の独断によりそれは断念され、人身救助へと割り当てられた。
白髪の少女が一言忘れたと言うと、キャロルが苛立った表情を浮かべ、しかし不満を口にする事なく、白髪の少女に問いかける。
「どうする? すぐに装者達が来るぞ」
「あの子達が来る前に終わらせるわ──幸い、あの女は居ないようだし」
白髪の少女が辺りを見渡し、自分とキャロルを捩じ伏せたローブの人物を警戒する。彼女の口振りから察するに女性のようだ。
「……分かった。コイツを協会に預けたら加勢する。それまでに精々成仏するなよ亡霊」
「相変わらず舐めた口を聞くな、錬金術師」
その言葉を最後にキャロルはテレポートジェムで離脱し、白髪の少女は──四方から飛んで来るミサイルを鞭を振るって迎撃する。
「あらあら、避けられちゃった」
そう言って彼女の前に降り立つのはヴァネッサ。
ミラアルクとエルザは、訃堂を逃す為に動いているらしい。
ヴァネッサはアルカ・ノイズを召喚するとアジトを破壊させて証拠隠滅に掛かる。それを白髪の少女は眺めるだけで妨害しなかった。それを見たヴァネッサがある提案をする。
「提案なんだけど見逃してくれないかしら?」
「それはできない相談だ。貴様らノーブルレッドも、そして貴様らの主人も──この世に存在させる訳にはいかない」
「それは──アカシアに知られたくない事を知られるから?」
「──」
図星を突かれた──故に白髪の少女は、言葉ではなく行動で返答をする。
茨の鞭が槍のように解き放たれ、ヴァネッサの腹部を貫こうと差し迫る。
しかし、彼女の腹部に直撃する前に空間に揺らぎが生じ、茨の鞭はヴァネッサを通り過ぎ、彼女の背後の地面を抉った。
それを見た白髪の少女は忌々しげに吐き捨てた。
「アカシア様の残された手記には、四つの神の名があった。
時を操る神ディアルガ。空間を操る神パルキア。この世の裏側にあると言われる破れた世界の神ギラティナ。
そして、創造の神──アルセウス」
「……」
「お前達のその力は、その異界の神の力をアカシア様の力で再現した物だろう──だが」
押し黙るヴァネッサだが、尚も白髪の少女は続ける。
自分の言葉に信じられない、信じたくないと思っている。そのような表情を浮かべていた。
「あの方は──その神の力だけは使えないと言っていた」
「……」
「それなのに、何故貴様らが神の力を扱っている? ──居るのだろう。貴様の裏にアヌンナキが」
そして、そのアヌンナキは──。
「流石ね──幾千年も亡霊のように生き続けただけはあるわ。でも」
あなたは知り過ぎた。
ヴァネッサが冷たい声で呟き、凍てつく瞳で目の前の少女を見据える。
それと同時に彼女の主人が与えた神の力──パルキアの力が、ヴァネッサの体を巡り、それは彼女の右腕に収束し。
「死んでもらうわ」
そのまま振りかぶって、目の前の少女に向かって──空間を切り裂いた。
「くっ……!」
白髪の少女はその場から跳んで回避行動を取るが──左腕を切られる。
亜空を切断する力は、ネフシュタンの鎧の防御を無効化する。
しかし少女は鞭で切り落とされた腕を回収し、そのまま傷口に──再生の力でくっ付ける。
「あら。あなたも私たち同様ヒトを辞めているのね」
「とうの昔にな」
「ふふふ……それに、随分と不安定な体を使ってる」
ヴァネッサの瞳には、目の前の彼女の体組織がよく見えた。
正直言って──ネフシュタンの鎧が無ければ既に朽ちていてもおかしくない程にボロボロだった。
とてつもなく生命力が低く、寿命は既に尽きている。それを完全聖遺物で無理矢理動かしているのが見て取れた。
まるで、かつて半端な存在だった故に、稀血で命を繋ぎ止めていた彼女たちと同じように。
「……」
ヴァネッサの言葉を受けて、白髪の少女の目つきが鋭くなる。
使わせて貰っている彼女からすれば──大切な人を守るために、救うために、命を賭けたこの体の持ち主を侮辱するヴァネッサの言葉は癪に触った。
「とことん気が合わないな」
「それも仕方ないでしょう。だって──私達の目的は逆なのだから」
──そう、彼女達が敵対するのは根本的な部分で違えている為。
「難儀なものね。私もあなたもアカシアを救いたい。でも、その方法が真反対。あなたは、アカシアを生かして救う」
そして、ノーブルレッドは──。
「私達は、アカシアを殺して救う」
奇跡を殺す。それが彼女達が神の力を得て、己の命を賭けてでも成し遂げたい目的。
「それがアカシアが望んでいるのだから」
そして、それは──かつてアカシアが唯一持った願い。
「──認めてなるものか!」
「──認めなさい!」
そして、お互いに全てを知っているが故に──相手の考えを認められない。認めてはならない。
アカシアを、彼を救いたい。
その想いが強いが故に──。
「ノーブルレッドォオオオオ!!」
少女の慟哭が響き渡り。
「──フィーネェェエエエエ!!」
そしてヴァネッサは怨敵の名を──終末の巫女の名を叫んだ。
かつて、フロンティアにて命を散らした──キリカの肉体を経て復活したフィーネの名を。
「私はもう──間違えない」
ネフシュタンの鎧。デュランダル。ソロモンの杖を携えて、フィーネは吠えた。
フロンティアで見た恐ろしい未来を変える為に。
以下、フィーネ復活の示唆を示した箇所一覧
第三章 戦姫絶唱シンフォギア 波導・ガングニール編
第十六話「浮上──決戦の地バトルフロンティア」より。
ウェルも調もキリカも真剣な表情で次々と膨大な情報を閲覧していく。
そんななか──。
(え──?)
それを見た彼女は、金色の瞳を動揺で大いに揺らした。
(これって、アカシア様の──)
「──あった!!」
(──っ!)
第十七話「奇跡──それは残酷な軌跡」より
「ダメ──行ったらダメ!」
「クリス……」
「そんな事しても、残された方は辛いだけ! だから──」
「──行かせて」
それをキリカは──彼女は、クリスを落ち着かせる声で、そっと手に触れた。
「大切な者の為なら命は惜しくない──確かにそれはエゴだけど、体が勝手に動いてしまうもの」
「──」
「でも、二度もそんな思いをさせるのは、本当に申し訳ない」
実は此処で話してるのはフィーネ。
クリスを落ち着かせる声、つまり母の声。
進化しないシンフォギア
前日談的なのより。
ヒトデナシは、その場を去り──。
「……」
それをジッと見ている者が居た。
此処で見ていたのはフィーネ。
ノエルはソロモンの杖で転移したので、彼ではない。
また、フロンティアで見たアカシアに関する情報が消えた事を確認していた。
第五章 戦姫絶唱シンフォギア 神殺英雄戦姫ヴァルキュリア編
第七話「黄金錬成」より。
「日本政府が保有、封印していた完全聖遺物──ネフシュタンの鎧、デュランダルが何者かによって強奪……」
「それだけではありません。国連が管理していたソロモンの杖も──」
錬金術師の襲撃に合わせるかのように、三つの完全聖遺物が盗まれた。
パヴァリアを隠れ蓑に完全聖遺物を盗んで、復活する神に備えていた。
フィーネについては以上です。
キリカについては後ほど……。
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