【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第五話「伝い紡ぐコドウを詩にした」

──NIRVANA GEDON

 

 フィーネは初っ端から大技を繰り出す。鞭の先にエネルギーが溜まり、球状となってヴァネッサに向けて投げ付ける。

 それをヴァネッサは腕を変形させ、砲撃を放ち相殺する。爆煙と爆風が二人の肌を撫で付ける。

 

「この程度なのかし──」

 

 挑発の言葉を吐こうとしたヴァネッサだが、途中て中断させられる。

 

──NIRVANA GEDON

 

──NIRVANA GEDON

 

──NIRVANA GEDON

 

「──あらあら?」

 

 フィーネはエネルギー弾を次から次へとヴァネッサに向けて投げ付ける。その光景に流石の彼女も呆気に取られた。本来ならこの様な事をすればエネルギーの枯渇により、ネフシュタンに侵食されて食い尽くされる──しかし。

 

「サクリクトD──不滅不朽の剣デュランダル」

 

 フィーネは起動させたデュランダルにより、エネルギー問題を解決させてネフシュタンの鎧の力を最大限引き出していた。

 

「はぁ!」

「っ!」

 

 さらに、稼働炉として使っているデュランダルでも攻撃手段へと転じる。莫大なエネルギーをそのまま斬撃にして振り下ろし、ヴァネッサは険しい表情を浮かべて回避する。

 かつて響達と戦う際に使った完全聖遺物──あの時よりも巧みに使いこなしていた。

 

 しかし。

 

「負けられないのよ、私達は!!」

 

 ヴァネッサに授けられた力は、完全聖遺物に劣らない神の力。

 彼女は己の肉体を変形させて──数多のミサイルを構える。そしてそのまま──空間の歪みに撃ち込む。すると彼女の放ったミサイルが消え……フィーネを囲む様に空間に歪みが生じ、そこからミサイルが飛び出す。

 

「──っ」

 

 鞭を自分を囲う様に走らせ、紋様を作り上げる。

 

── ASGARD

 

 周囲からの攻撃を防ぐ為の障壁を展開する。しかし障壁が足りず隙間からミサイルが入り込み、爆発。ASGARDが内側から砕かれ、次々と送り込まれたミサイルが彼女の肉体を破壊し尽くす。

 

「これで終われば苦労しないのだけど……」

 

 煙が晴れるとヴァネッサは呆れた様にため息を吐いた。

 体が穴だらけになっていたフィーネは瞬く間にネフシュタンの鎧にて肉体を再生させる。その再生速度からネフシュタンの鎧を纏っているのでは無く、融合しているのだとアタリをつける。

 過去の立花響のデータを基に行ったのだろうが──それだけの執念が彼女にはあった。

 

「これは、面倒ね」

 

 ヴァネッサは確実に倒す為の準備を行う。その間邪魔をされない様にとアルカ・ノイズを召喚し、突撃する様に指示を出す。

 対してフィーネはもう一つの完全聖遺物を取り出す。

 その名はソロモンの杖。バビロニア宝物庫に繋ぐ鍵であり、人類の天敵ノイズを召喚する聖遺物。

 フィーネはノイズを召喚するとアルカ・ノイズにぶつけ、彼女達の間に赤と黒の煤が撒き散らされる。

 

「模造品がっ」

 

 そう吐き捨てるとフィーネは前へと突っ込み──ヴァネッサが放ったレーザーを寸前の所で回避する。

 掠った頬がジュッと溶ける。

 

「このレーザー、特別性なの」

 

 彼女が今放ったレーザーは時間が経てば経つ程速度と破壊力を向上させる能力を持つ。しかし直線しか走らず、射線を把握すれば回避は容易──だが。

 

「でもね、こうやって空間と空間を繋げれば無限に、多角的に撃ち抜けるの」

 

 ヴァネッサの空間を操る能力により、レーザーは彼女の思いのままに加速し続け、フィーネを狙い続ける事ができる。

 レーザーがフィーネの周囲を走り回り、彼女の肩、足、腹部、頭部と貫き、その度に再生していくが──このまま加速すればいずれネフシュタンの再生を上回る。

 

「──小賢しい!」

 

 しかしフィーネはこれを強引に突破する。

 デュランダルの無限なエネルギーをネフシュタンの鞭に収束させ、鎧にヒビが入る程のエネルギーをレーザーにぶつける。レーザーとエネルギー弾は拮抗するが……すぐにエネルギー弾がレーザーを飲み込む。拮抗した時点でレーザーは停止してしまった。故に威力が大幅に下がり、打ち負ける。

 

 それでもヴァネッサは微笑みを絶やさなかった。

 

「嫌がらせ完了ね」

「──ちっ」

 

 彼女の言葉にフィーネが忌々しそうに舌打ちを吐くと同時に──。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

 戦場に、歌が響き渡った。

 

 

 第五話「伝い紡ぐコドウを詩にした」

 

 

 アルカ・ノイズの反応を検知したSONGは、先行部隊としてマルチに対応できる響とコマチ、マリアを選んだ。

 しかし、奏がそれに同行するように願い出て──ガングニールの装者三人が向かった。

 そして戦場に降り立った三人は──あり得ない再会を果たす。

 

「──キリカ?」

 

 驚きで目を見開く響。しかし、誰よりも驚いているのは──本部に残っている調、切歌。そして──。

 

「──キリ……カ、さん?」

 

 彼女の事を最高傑作だと、愛を注いだウェルだろう。

 

「っ!」

 

 調は、踵を返して発令室を出ようとして──ナスターシャに阻まれる。

 

「何処に行かれるのですか?」

「……決まっている。現場に。あそこにキリちゃんが──」

「──落ち着いてください、調さん」

 

 落ち着き払ったウェルの言葉に、調はキッと振り返って彼を睨む。

 

「何を言っているの!? あそこにキリちゃんが──」

「落ち着いてくださいと言っているのです! 調さん!」

 

 しかし、ウェルの感情を顕に、動揺し切った彼の怒声に思わず肩を震わせる。

 発令室に居る誰もが彼を見た。

 普段のイマイチ信じ切れない胡散臭いウェル博士はそこに無く、キリカの生存に心を乱されているただのウェルが居た。

 

「落ち着くのはウェル博士もデスよ」

 

 調にそっと寄り添って切歌が優しく彼に言った。

 

「あれが本当にキリカなのか。だとしたら何故生きているのか──冷静に、観察して、分析するデスよ」

 

 今までのように──。

 彼女の言葉に幾分か落ち着いたウェルは。

 

「すみません、冷静ではありませんでした」

「わたしも、ゴメン……」

 

 ウェルと調は改めてモニターを見る。

 彼女の事を知る為には──現場の響達の働きに掛かっている。

 

「──あなた」

 

 そして──波導を扱うマリアは、目の前の少女の正体に気づいた。

 

「フィーネね」

「!?」

 

 マリアの言葉に響と通信越しに戦場を見ている元二課の職員達が驚き。

 

「──フィーネ」

 

 クリスは、ギュッとペンダントを握り締めて愛しきもう一人の母の名を呟いた。

 

「なるほど。キリカはレセプターチルドレンである切歌のクローン。確かにリインカーネーションの条件に合致しているわ」

「マリア・カデンツヴァ・イヴ……やはり貴様は厄介だな」

 

 一目見て大方を察するマリアに、フィーネはゲンナリした顔をする。櫻井了子の時にもマリアと相対した事があるが──当時、絶対に敵に回したくないと思う程の存在だった。

 

「そして、その二つの完全聖遺物で何とか生き永らえている」

「──ホント貴様は厄介だな」

 

 心の底からフィーネが呟き、一つの影がピョンッと彼女に飛びつく。

 

「──ブイ!」

「──アカシア様……」

 

 彼は笑顔で再会を喜んだ。

 彼は笑顔で生きていてくれた事を喜んだ。

 しかし、フィーネは──そんな彼を見て、心底辛そうに表情を歪めた。

 

「アカシア様……アナタは──」

「──ゆっくり話している暇は無いわよ?」

 

 そこに、空間転移でフィーネの背後に跳んだヴァネッサが、手刀でフィーネを──その先にいるコマチを殺そうと突き出した。

 

 しかし、ガキンっと甲高い音が鳴り響き、彼女の刺突は阻まれる。

 フィーネとコマチを守ったのは──奏だった。

 奏は、槍でヴァネッサの手刀を受け止めながら、彼女を強く睨み付けた。

 

「──テメェ……!」

「あら、随分と怖い顔ね」

「抜かせ!」

 

 振り払い、追撃にてヴァネッサを刺し貫こうとする奏だが、簡単に避けられ距離を取られる。

 

「その額の紋様、アイツと同じだ──無関係とは言わせねーぞ!」

「随分とミラアルクちゃんの事を恨んでいるのね──そう、我らはノーブルレッド」

「ミラアルク! それがあの腐れ野郎の名前か!」

「あら、酷いわね。私の家族にそんな言い方──ちょっと怒っちゃう」

 

 目付きを鋭くさせ、低い声でそう言ったヴァネッサは身体中からミサイルを撃ち出す。そして自分は空間転移にて奏の背後に周り手刀を叩き込もうとし。

 

「はぁ!」

「せい!」

 

 ヴァネッサの手刀を割り込んだマリアが槍で受け止め、響は奏と共に飛来するミサイルを拳撃にて爆発させる。

 

「マリア・カデンツヴァ・イヴ……アナタのことはよく知っているわ。我らが主人が警戒する特異な存在」

「主人……!?」

 

 彼女の言葉にマリアが怪訝な顔をし、しかしすぐに意識を切り替えるとヴァネッサを空へと弾く。するとフィーネが鞭にて追撃。しかし彼女の攻撃は当たらず、ヴァネッサは空間転移にて回避し、響達から距離を取る。

 

「ブイブイ!」

 

 フィーネから離れたコマチが響の肩に乗り、いつでも融合できる様にする。自分から離れた彼を名残惜しく思いながらも、フィーネはキッとヴァネッサを睨み付けた。

 

「ノーブルレッド、何が目的なの?」

 

 拳を構えた響の問いには、フィーネが答える。

 

「ソイツの、ノーブルレッドの目的は──アカシア様の抹殺」

『──』

 

 それを聞いた装者達は目の色を変え、濃厚な怒りの感情がヴァネッサに向けられる。ギシリ、と空間が軋むと錯覚する程の激情にヴァネッサは微笑み返し。

 

「そう、それが──そのお方の救済なの」

「──戯言を」

 

 しかし響は聞く耳を持たず、拳を握り締める。

 

「コマチの死が救済? そんな馬鹿げた事があるか。──本当にいい加減にしてよ」

 

 響は思い出す。過去の戦いを。

 記憶を消されて戦う為だけの存在にさせられ苦しい戦いを強いられ。

 自分を庇った為に一度死に、その後も利用され犠牲になりかけ。

 コマチを苦しめる為に世界を壊そうとする奴もいた。

 そして、自分が操られたせいで悲しみ、アメリカの反応兵器から身を挺して日本を、響達を守り──想像を絶する痛みを以って死んだ。

 

「何でコイツがこんな目にばかり遭うんだ──ふざけるな! 人を救い続けて来たコイツが何をした!?」

「──無知とは罪ね」

 

 しかしヴァネッサは、響の怒りを冷たく見下す。

 

「本当に、何も知らないから──そんな戯言を言える」

 

 ヴァネッサの腕に空間を切り裂く力が収束する。それを見たフィーネとマリアはすぐ様動いた。フィーネは響を、マリアは奏を抱えて横へと大きく跳ぶ。

 その一瞬の後に、ヴァネッサは空間を切り裂いた。地面が真っ二つに裂かれ、衝撃が彼女達を襲う。

 

「今日の所は逃げさせて貰うわ」

 

 たった今、ヴァネッサの元に通信が入った。ミラアルクとエルザは無事に訃堂を送り届ける事に成功。時間稼ぎは終わり。

 

「待て!」

「待たないわ──私達も止まれないもの」

 

 空間の穴に入る直前、ヴァネッサはコマチを見て。

 

「またねアカシア──いつか絶対に殺してあげる」

 

 その言葉を最後にヴァネッサは戦場を後にし、残ったのは暴れるアルカ・ノイズと。

 

「……」

「ブイ」

 

 今のいままで暗躍していたフィーネのみ。

 コマチが彼女に声を掛け近寄るが……その分だけ距離を取る。

 

「フィーネ。あなたにはわたし達に同行して貰うわ」

 

 そんな中、マリアが毅然とした態度でフィーネに言い放つ。

 

「あなたが所持している三つの完全聖遺物は本来日本政府と国連が管理している物──しかしある時に奪われてしまった」

「……」

「わたしの言いたい事は分かるわね?」

 

 マリアの問い掛けに対するフィーネの答えは──鞭による一撃。

 つまり敵対行動──マリア達の元には行かないという明確な意思。

 マリアは槍で薙ぎ払うと、視線を厳しいものにして呟く。

 

「何か理由があるのね。そしてそれをわたし達には言えない」

「ああ──すまないが退かせて貰うぞ」

 

 そう言って彼女はテレポートジェムを持ち出し、砕く。

 マリアはそれを追わない。深追いしない。

 フィーネ程の相手にそれは愚策だと判断し──何より敵だと思えなかった。

 

「ブイ!」

「──申し訳ありません、アカシア様。どうか……あの子をよろしくお願いします」

 

 その言葉を最後に──フィーネはその場を立ち去った。

 彼女達に大きな謎を残して。

 

今まで出てきたグループでどれが好き?パート2

  • 博士と最高傑作(ウェルキリカ)
  • 死を灯す永遠の輝き(錬金術師組と相棒達)
  • 陽だまりと太陽(響未来)
  • 雪解けの太陽(響クリス)
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