【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~   作:カンさん

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第七話「すべては夢と共に」

「──まさか本当に本部が制圧されているとはね」

「制圧ぅ? チミぃ、言葉には気をつけたまえよ」

 

 戦闘の最中、作戦行動を中止させられ帰還した装者達は──日本政府により、行動制限をかけられている弦十郎達。そして、拘束されているサンジェルマン達が居た。

 

 その光景を見たマリアが吐き捨てるように呟くと、目敏く査察官の男が彼女の言葉に指摘を入れる。

 

「幼き子どもはこれだから……言葉を知らない」

「──」

 

 ビキリとマリアの額に青筋が浮かび、セレナがどうどうと落ち着かせる。

 

「護国災害派遣法第六条──日本政府は、日本国内におけるあらゆる特異災害に対して優先的に介入する事ができる……だったか」

「ふふ」

 

 弦十郎の言葉に査察官は得意げな笑みを浮かべて一つの書類を見せつける。それは自分達は正当な手続きをして此処に居ると言わんばかりに。

 

 「そうそうその通ぉりぃ! 我々は日本政府代表としてSONGに査察を申し込んでいるのダァ! ──不可解な事が多いのでねぇ」

 

 そう言って男はサンジェルマン達、アカシア・クローン……そしてコマチを見た。

 

「ふむ、これが報告にあった例の……」

「ブイ……」

 

 査察官はジロジロとコマチを見た後、無遠慮にコマチを掴み上げる。乱暴に、まるで物を持つように。

 それに響がブチギレ査察官に掴み掛かろうとし、切歌と調が急いで羽交い締めにし、口元を抑える。

 

「ん──!!」

「抑えて響……!」

「此処で感情的になるのは不味いデス……!」

 

 その光景を鼻で笑いながら見て、不遜な態度で弦十郎に言葉を吐き捨てる。

 

「これは通告通り押収させて貰おう。そこの三色キラキラもな!」

 

 そう言ってサンジェルマン達のアカシア・クローンもまた、査察官の部下達が取り押さえる。流石に看破できないのか、サンジェルマン達が目つきを鋭くさせる。

 それは弦十郎も同じなのか、声を荒げて抗議する。

 

「そもそも! 何故今更! 彼らの事は報告し、政府から認可されている筈!」

「分からないのかね? 今のいままでが特別だったのだよ。そもそも、未知の力を持つコレらを使わせて来たのが間違いだったのさ!」

「ぐ……!」

「なに、我々も意地悪では無い。しっかりと調べさせて貰えれば、これからの未来を守るための戦力としての使用許可は降りるさ」

 

 空気が重く凍っていく。

 全員が目の前の男の言動に、怒りを覚えていた。

 そんななか、ウェルが口を開く。

 

「長々と語るのは良いんですけどねぇ、今は敵と戦っている最中。まさか装者からギアを奪う、みたいな事はしませんよね?」

「何を言う。ギアにもコレらの力が──」

「ええ!? ではその査察で民衆に被害が出た際には、責任を取ってくれると!? ならば結構ですよ」

「──ちっ」

 

 査察官の男が舌打ちする。

 

「まぁ、この辺が落とし所か。その代わり、妙な事をすればギアは取り上げさせて貰う。そしてしっかりと査察も行わせて貰おう」

 

 男はそう言い──SONGは特別待機命令と言う名の、拘束が言い付けられた。

 

 

 第七話「すべては夢と共に」

 

 

 ずっと、モヤモヤしていた。

 響を救う事ができて、記憶を取り戻して。

 でもその後も響は戦い続けて、この前なんて凄く辛い目にあって……。

 いつも思う。何で響が戦わないといけないの? と。

 もう戦って欲しく無いと思う。何で戦っているのと思う。

 

 隣にあの子が居るからだ。

 だから戦える。戦えてしまう。

 わたしは──コマチに嫉妬している。

 ただ帰ってくる場所で居続ける事が苦しい。隣で温もりを与えているあの子と代わりたいと思ってしまう。

 

 それと同時に、コマチに無理をして欲しくないと思う。

 あの子も辛い目に何度も遭っている。その度に響が怒り、涙を流し──わたしも胸が苦しくなる。

 

 ああ──何でわたしには力が無いんだろう。

 力が欲しい──大切な人達を守れる力を。

 

 そう願ってしまったからか。わたしは──。

 

「──ようやく会えたな、小日向未来」

 

 彼女を拒絶する事ができず、受け入れてしまった──。

 

 

 ◆

 

 

「──ふぅ……」

 

 訓練室にて、模擬刀を手に汗を流す翼。

 どれだけの時間此処に居たのか、彼女の足元は汗で濡れていた。しかし、翼は満足していないのか──否、納得していないのか、再び模擬刀を構え……虚空に憎き敵を思い浮かべて斬り掛かる。

 

(オレは弱い)

 

 幻影は容易く避ける。

 

(何故弱い? 防人から逃げたからだ)

 

 幻影に回り込まれ、背中を蹴られたたらを踏む。

 

(歌で世界を救えると宣い、見返す事だけを考えた)

 

 しかし地面をしっかりと踏み直し、振り向き様に一閃。

 

(力だ。この国を守れる力が──防人の力が必要だ)

 

 幻影の腕を斬り飛ばし、その隙を突いて翼の蓮撃が叩き込まれる。

 

(それを得ればオレは──もう、あんな無様な醜態を晒さなくて済む)

 

 最後に相手の首を刎ねて──模擬刀を降ろす。

 

(その為には、オレももっと──)

「──翼」

「──っ!」

 

 背後からの声掛けに、翼の体が反応し、模擬刀を思いっきり横薙ぎに振るった。

 

「うわ!?」

「──奏?」

 

 しかしその一太刀は虚空を払い、打ち込めず。

 翼の一閃を避けた奏は驚きながらその場に尻餅を着いた。そこで初めて翼は奏のことを認識し、奏は尻を抑えながら翼を睨み付ける。

 

「あぶねーじゃねぇか。怪我したらどうするんだ」

 

 普段と変わらないやりとり。

 しかし──何故か翼は、彼女の物言いが癪に触った。

 

「──訓練中に後ろから話しかけてくるからだろうが」

「ぐっ。まぁ、それは確かに……ごめんな」

 

 奏もそれは流石に翼の言い分が正しいと思ったのか、素直に謝る。

 しかし、何故か翼の怒りは収まらず、それどころかどんどん膨れ上がっていく。

 

「それに奏、お前何してんだ?」

「何って、お前を飯に誘いに──」

「──あのライブの事、何とも思っていないのか?」

 

 普段の翼では考えられない言葉が吐き出される。

 

「アイツに無茶苦茶にされて悔しくないのか? 何でそうしてヘラヘラしていられる」

「──している訳ねぇだろ」

「だったらオレに時間を割く前に、己の技を磨けよ。もう歌っている暇は無いんだ。この国を守る為には力が居る。誰にも負けない力が……!」

「──翼?」

 

 そこで初めて──奏は違和感に気づいた。

 翼がいつもと違う。

 彼女が歌に対してその様な物言いをするはずが無い。

 だって自分たちの夢は──ツヴァイウィングは。

 

「おい、翼。どうしたんだよお前。なんかおかしいぞ」

「──いや、今までがおかしかったんだ。オレは──」

 

 歌っている暇があれば、強くなる努力をすれば良かった。

 

「本当に、無駄な時間を──」

「──おい!」

 

 奏は、それ以上の言葉を聞きたくなくて、翼の胸元を強く掴み掛かる。

 

「本気で言っているのか? あたし達ツヴァイウィングの事を、そんな風に言うなんて──許せねぇぞ!」

「──何でだ?」

「何でって。それは光彦との──」

 

 しかし、奏の言葉は突如遮られる。

 本部内にて警報が鳴り響き、発令室から通信が入る。

 市街地にアルカ・ノイズが出現。奏と翼は直ちに出撃。他の装者は待機命令を出される。

 

 

 ◆

 

 

 奏と翼が出動させられている最中、響達は一つの部屋に集められ待機命令を出されていた。まるで厄介者払いだ。

 その扱いに切歌が不満を漏らす。

 

「まったく。横暴な奴らデス!」

「本当にね」

 

 調も同様の反応を示し、扉前で銃火器を手に持ち自分たちを監視する男達を睨み付ける。

 この男達、響達にイヤらしい視線を送っていた。装者達は見た目が整い、スタイルもそこら辺のグラビアアイドル顔負けな為、目の保養なのだろう。見られている彼女達からしたら勘弁して欲しいだろうが。

 

「最悪なのは、片方がペド野郎って事ね……」

 

 中でもマリアは吐きそうな程顔を青くさせて吐き捨てた。なまじ波導で色々と分かるからか、自分を見る男の視線に堪えているらしい。

 セレナは、自分の体を使って男の視線からマリアを守る様にする。舌打ちされた。セレナはいつか闇討ちしてやろうと心に決めた。

 

「他のみんなは別室に?」

 

 響の問いにはクリスが答える。

 

「うん。そうみたい。ただ、エルフナインは錬金術師だからって一人だけさらに隔離されている」

「エルフナインが?」

 

 クリスの言葉に違和感を覚える響。

 隔離する人間を増やしてしまえば監視の目を増やす必要がある。何か監視以外の目的を持っているのではないか、と思考を巡らせた。

 

 そもそもサンジェルマン達を拘束したのも話がおかしい。もし彼女達が暴れて協会に帰り完全に敵対してしまえばデメリットでしかない。それだけ協会の力は強大だ。

 アカシア・クローン達やコマチを連れて行った事も気になる。

 

(──やっぱり、何か)

 

 モヤモヤとした気持ち悪さを抱えながらも、響はどうする事もできなかった。

 

「──そう言えば、後で未来に連絡しないと」

 

 ──しかしその後、響は未来と連絡を取る事はできなかった。

 

 

 ◆

 

 

 査察官の部下の指示の元、アルカ・ノイズを駆逐していく奏と翼。

 しかし奏もまた違和感を抱いていた。

 

「やっぱり変だ。意味もなく街にアルカ・ノイズが出るなんて」

 

 アルカ・ノイズは錬金術師が使用する兵器。自然発生していた特異災害ノイズとは違う。

 先ほど本部にその事を伝えても真面に取り合って貰えなかった。それどころか……。

 

「奏! まだ無駄な事を考えているのか! オレ達の仕事はコイツらを駆逐する事! 違うか!」

「違わねーけど……!」

 

 翼すら奏にがなり立てる始末。

 奏の中で違和感がどんどん大きくなっていく。それは何れ取り返しの付かない事態を引き起こしそうで──。

 

『──奏さん』

「この声、友里さん!? 今、別室に……」

『悪いが査察は中止させて貰った──一足遅かったが』

 

 どうやら、弦十郎もまた今回の査察に違和感を覚えており、緒川と共に迅速に動いた様だが──。

 

『──エルフナイン君が拐われた』

「な!?」

『加えて、先ほどから未来くんと連絡が付かない。響くんが連絡を取ろうとした所繋がらず、親御さんもまだ見ていないとの事だ』

「何処かで遊んでいるんじゃねーのか!?」

 

 弦十郎の言葉に翼が反論するが、弦十郎は断言した。

 

『いや、未来くんにはある理由から狙われる可能性があるんだ──後で話す。今は』

「──ああ。まずはコイツらを片付ける!」

 

 翼! と奏が呼び掛けようとして──かのじょの様子がおかしい事に気付く。

 先程まで斬り倒していたノイズを他所に遠くを呆然と見て、呟く。

 

「──そこに居たか、クソ野郎」

「翼?」

「よく見たら、こんなにたくさん居るじゃねえか──だったら」

「翼……おい翼!」

 

 瞳から色を失わせた翼が、フワリと空を飛ぶ。そしてその身にアカシアの力を顕現させると大きな翼を広げてアメノハバキリを天空へと掲げる。そして剣先に空間が軋む程のエネルギーを溜め始めた。アルカ・ノイズ相手には過剰なほどに。

 

「翼──翼ぁぁああああ!!」

「神の裁きを受けるが良い──ノーブルレッド!」

 

 そして翼は──奏が居るにも関わらず、アメノハバキリを思いっきり振り下ろした。

 

──神撃・ゴッドバード

 

 神の名を持つ鳥は、空から堕ち──地上をアルカ・ノイズ事吹き飛ばした。

 先ほどまで人が居たとは到底思えない程に蹂躙して。

 そして。

 

「翼……」

 

 何とか難を逃れた奏は──翼を悲しそうに見つめていた。

 

 

 ◆

 

 

「──ブイ?」

 

 ふと目覚めると俺は何処かの屋敷に居た。

 此処は武家屋敷? そんな感じがする……。

 

「──起きたかモノノケよ」

 

 周りをキョロキョロ見渡していると声がして、振り返るとそこには。

 

「ふん、間抜け面を晒しおって──本当に、間抜けよのぉ……」

 

 こちらを見下ろす、ただならぬ雰囲気を纏ったお爺さんが居た。

 

 何故か茶碗一杯のご飯とおにぎりが乗ったお盆を手に持って。

 

 ……どういう事なの? 

 

 

今まで出てきたグループでどれが好き?パート2

  • 博士と最高傑作(ウェルキリカ)
  • 死を灯す永遠の輝き(錬金術師組と相棒達)
  • 陽だまりと太陽(響未来)
  • 雪解けの太陽(響クリス)
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