【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
「──此処は」
眠らされていたエルフナイン。ふと彼女は目を覚まし、自分がSONG本部ではなく、別の場所に移動させられている事を把握した。
何も覚えていない。部屋を案内されて、そこから先の記憶が無かった。
しかし──この場所は知っている。此処は……。
「チフォージュ・シャトー……?」
かつてキャロル達──家族と共に同じ時間を過ごした想い出の場所。
忘れる筈がなかった。あの金色に輝く日常を。
「お、ようやく目を覚ましたみたいだゼ」
「貴方達は……!」
後ろから声がし、振り返るとそこにはノーブルレッドが居た。
三人ともエルフナインを見据え、とてもではないがエルフナイン一人で此処を脱出するのは不可能。
「悪いけど拐わせて貰ったわ」
そう微笑みを浮かべながらヴァネッサは言い、エルフナインは一連の出来事を察した。
ヴァネッサは空間を自由に移動する力を持っている。その力で一人になったエルフナインを拐ったのだろう。錬金術師協会を襲撃したようにセキュリティを無視して。
「な、何が目的ですか!?」
「まずはこちらを見て欲しいであります」
エルフナインの問い掛けに、エルザが二つの映像を見せる。
一つは完全には起動していないシェムハの腕輪。
そしてもう一つは──。
「未来さん!?」
「貴方にはわたくしめらに協力して貰うであります」
「──まさか、バラルの呪詛から解放された未来さんを……!」
エルフナインの推測は当たっており、ノーブルレッドの返答は無くとも、笑みを浮かべて返した。
「キャロルのホムンクルスなら、これを動かせると踏んだんだゼ」
そう言って証明が起動し、エルフナインの目に飛び込んで来たのは未来を神にする為のジェネレーター。
「本来ならご本人に協力して貰いたいだけど、でも仕方ないわよね。彼女、強いもの」
故に、非戦闘員でありキャロルと深い繋がりのあるエルフナインが使われる。
「それじゃあ、ミラアルクちゃん。お願──」
ふと、ヴァネッサの言葉が止まる。警戒区域に解き放っていた彼女のドローンが何かを見つけたようだ。
「どうやら、私達と訃堂の繋がりの証拠を確保したみたいね」
「どうするでありますか?」
「──此処まで来たらもう関係無いわね。捨ておきましょう」
それはさておき。
「さぁ、神様を呼び起こしましょうか」
ヴァネッサの言葉に従い、ミラアルクはエルフナインの瞳を覗き込み。
「刻印──侵略──バイオパターンを称号。さぁ、認証を突破して貰うゼ」
操られたエルフナインは、ノーブルレッドの言われた通りに言葉を紡ぎ──ジェネレーターを起動させる。
すると、未来を神にする為の装置が彼女達の思惑通りに動き出した。
「稼働確認──成功であります!」
「という事はだ。コイツは用済みという訳だゼ」
何処かぼんやりと虚空を見るエルフナインを見ながらミラアルクは笑みを浮かべる。まるで悪役のように。
「待って。後始末はお姉ちゃんが──」
「その申し出は断らせて貰うゼ。……なるべくこういうのはウチがしといた方が良い」
「ミラアルクちゃん……」
ミラアルクは再びエルフナインの瞳を覗き込む。そして刻印を用いて精神を破壊しようとし──。
『──オレの家族に手を出して、ただで済むと思うなよ』
「──!?」
──逆に、ミラアルクは覗き込んだ瞳から精神にダメージを負った。
思わずエルフナインを突き飛ばし、頭痛に顔を歪めながら倒れ伏す。
「ミラアルク!」
「ミラアルクちゃん!」
そんな彼女に二人が駆け寄る中、刻印の支配から解放されたエルフナインは起き上がり、己の両手を見る。
──今のは……?
「──っ! ヴァネッサ!」
「どうしたのエルザちゃ──これは」
エルザの声にヴァネッサが視線を向けると、そこには膨れ上がる神の力。どうやら、彼の神はもう待つ気が無いようだ。
溢れ出す膨大なエネルギーが外へと飛び出し、形を成す。まるで、かつてアダムが神出づる門より得たエネルギーで作り上げたヴァルキュリアのように。
「このままだとシンフォギアに此処を嗅ぎ付けられるわね──計画通りに」
「……!」
ヴァネッサの言葉を聞いて、エルフナインは察した。
これは、罠だ。
彼女達はシンフォギアを相手にしても尚、自分たちの目的が達成できるように準備をしていた。
このままでは、不味い。
「っ……」
「あらあら、何処へ行くのかしら?」
「ヴァネッサ……」
「此処は任せてちょうだいミラアルクちゃん。たまにはお姉ちゃんらしい事させて貰おうかしら」
どうやら、ヴァネッサが直接物理的にエルフナインの存在を消すつもりなようだ。
彼女は、手刀を掲げて超振動を発動させる。
「逃げなきゃ──約束したんです。もっと世界を識るって……!」
「残念だけど、その約束は今ここで潰えるわ」
ヴァネッサが跳躍し、勢い良くエルフナインへと手を突き出した。
「死になさい!」
そして、ヴァネッサの手刀はエルフナインを貫く──事は無かった。
カツンっとヒールが床を鳴らす音が響き、エルフナインとヴァネッサの間に剣が差し込まれる。
ガキンっと音が鳴り響き、ヴァネッサの腕が弾かれた。
「──ソードブレイカー。アナタがそれを剣と定義するのなら、私には敵わない」
「──くっ」
ヴァネッサの腕が砕かれる。
エルフナインは、驚きを露わにしながら自分を助けた家族の名を叫ぶ。
「──ファラ!?」
「お久しぶりですねエルフナイン──よくぞご無事で」
そして、駆け付けたのは──家族の危機に目を覚ましたのは、彼女だけでは無かった。
ジェネレーターに繋がれた棺桶が破壊され、そこから飛び出すのはレイア。
「先手必勝! 派手に行く!」
手に持ったコインを鋭く速くノーブルレッド達に向けて射出した。
それをエルザがアタッチメントを用いて弾くが──。
「──キャハハ! ちゃぶ台をひっくり返すのは何時だってアタシなんだゾ!」
背後に回っていたミカがファイアーロッドにて三人を叩き飛ばす。
戦闘用オートスコアラーの力は凄まじく、怪物と称される彼女達も不意打ちによりダメージを負った。
その隙を突き、エルフナインを抱えて離脱するのはガリィ。
彼女に続くようにして他のオートスコアラー達もその場を後にする。
「あ、アナタ達は……!」
「あまり喋らないでくださいまし。舌を噛みますよ?」
そう皮肉を溢すガリィの頬はヒビが入っていた。彼女だけではなく、他のオートスコアラー達もその躯体は半壊──つまり廃棄躯体であった。
廃棄躯体では、かつての力を発揮できない。それでも今こうして目覚めたのは──家族を守る為。
「みんな……!」
「感動するのは後! 今は逃げるのが先です」
「ガリィ照れてるゾ」
「うっさい!」
しかし、敵は空間を操る力に加え、時すら操る。彼女達の気分次第ですぐに全滅させられる。
故にエルフナインは考える。どうすれば生き残れるかを。
未来を助け出す事ができるのかを。
「とりあえず、外と連絡を!」
『そうか。それでは未来くんもそこに……』
「はい。ですのでボクはオートスコアラー達の力を借りて、未来さんを助けに行こうと思います!」
エルフナインはSONGに通信を繋げ、事の顛末を説明。
そして未来を助けにいくと伝える。当然弦十郎が止めようとするが──。
「無茶は承知の上です。だから、援軍をお願いします!」
エルフナインは一人で戦おうとしない。仲間を頼る事をしっかりと考えていた。
外に出現している神の力は、ガングニールの装者である響達で対処可能。ならば、他の装者の力を借りれば──。
「ボクはそれまで、精一杯生き抜いてみせます!」
『──無茶だけはするな』
通信を終えたエルフナインはゆっくりと振り返る。
そこにはノーブルレッドが追い付いていた。
オートスコアラー達は油断無く構え──瞬きする間も無く、背後に現れたミラアルクに殴り飛ばされた。
「な……!?」
「これは……!」
背面部分が砕け、破片が飛ぶ。
握り締めた拳を掲げて、ミラアルクは叫んだ。
「いい加減やめようゼ──無駄で無駄な無駄過ぎる抵抗はなァ!」
再びミラアルクの姿が消え──ミカとガリィが叩き潰される。
「みんな!」
「コイツらチョロいゼ──エルザ、ヴァネッサ!」
エルフナインが叫ぶ中、戦力差を実感したミラアルクは傍観していた二人に叫ぶ。
「コイツらはウチが引き受ける! お前達はシンフォギアを!」
「……その方が良さそうね」
ミラアルクの提案に頷いたヴァネッサは、空間を操り外へと繋がる穴を空ける。
それを見てエルフナインが歯噛みする。
このままでは相手の思う壺。舐めていた訳では無いが──このままでは足手纏い。それは──イヤだった。
家族を助けたい。
友達を助けたい。
仲間を助けたい。
もう──何もできず、失うのはイヤだった。
「さぁ──此処で尽き果てて貰うゼ!」
「ボクは……ボクは!」
──まだ、世界を見続けるんだ。
ミラアルクの肥大化した腕が叩き込まれ。
「エルフナイン!」
殴り倒されたガリィが悲鳴を上げる中、エルフナインは土煙に飲み込まれ──竪琴の音色が響き渡る。
「──これは!」
土煙の向こうの感触から何かが起きたと感じ取ったミラアルクは、次の瞬間片腕を絡み取られ投げ飛ばされる。
「くっ!」
明らかに何かが変わった。油断無く構えるミラアルクの視線の先には、先ほどまでの非力な少女では無く、戦う力を持った錬金術師が居た。
煙が晴れる。
果たしてそこに居たのは──かつて呪いに犯され、世界を壊す為に暴れ回った一人のホムンクルスが居た。
ダウルダブラのファウストローブ。
それはキャロルが保有している決戦兵器であり──今この瞬間、エルフナインを守る為に、彼女が
「──キャロルに言われませんでしたか? 僕たちの家族に手を出してタダで済むと思うな、と」
「お前は……!?」
姿形はエルフナインそのまま。
しかしその瞳に宿る人格は──。
「僕はノエル……かつて過ちを犯した半端者です」
『ノエル!』
誰よりも彼女を大切に想う兄だった
第八話「暖かいよこの温もり 絶対離さない」
「ノエル、ですって? そんなのあり得ないわ」
ヴァネッサは、ミラアルクと対峙する者の言葉を否定した。
かつてノエルが引き起こした事件をパヴァリア光明結社は深く把握していた。ヴァネッサもその情報は得ており、ノエルがダインスレイフとネフィリムの侵食により衰弱し、最期はエルフナインとキャロルに看取られた事も知っている。
だからあり得ないのだ。彼が此処にいるのは。
「キャロルは強欲でして。自分の頭の中にある僕の想い出をコピペして構築と再構成を繰り返し、エルフナインの元へ転送」
キャロル、エルフナイン、そしてノエルが同じ躯体のホムンクルスだから可能だった荒技。
家族を救う為、家族を守る為──家族を取り戻す為に続けて来た研鑽が、エルフナインを窮地から救った。
オートスコアラー達がノエルの元に集う。
「みんな……」
「また会えて嬉しいゾ、ノエル!」
「派手な再会だな」
「流石は我がマスター。そして家族」
「まぁ? 反省しているようですし? あの時の事は水に流して差し上げましょう」
再会を喜ぶ彼女達に向けて、ミラアルクが叫ぶ。
「はっ! たった一人増えた所で! ウチらの敵じゃないんだゼ!」
「ええそうね。ミラアルクちゃんの言う通り──でも」
外に繋がる穴に掛けていた手を離し、ヴァネッサはエルザと共にノエルへと体を向ける。
「厄介なのは変わりないから、三人でちゃっちゃっと片付けしまいましょう」
「ガンス!」
「ああ!」
ノーブルレッドはそれぞれ神の力をその身に宿し──しかし、此処で起きた奇跡はノエルの復活だけでは無い。
「──察しの悪い奴らだな」
ヴァネッサが空けた空間が歪み、別の空間へと繋がる。
分割、弱体化しているとはいえ、神の力に干渉された事にヴァネッサは驚きの表情を浮かべて振り返り。
「二人とも逃げて!」
『!!』
叫び、跳ぶと同時にチフォージュ・シャトーが揺れる。空間の歪みから現れた彼女が、感情を爆発させるかの様に錬金術を行使したからだ。
白金の石を胸に、戦場に降り立つのは奇跡の完遂者。
その姿を見て、のえるの中にいるエルフナインが歓喜の声を上げる。
『キャロル!』
「オレの領域を犯したんだ──覚悟は出来ているんだろうなノーブルレッド」
こうしてキャロル達家族は──かつて過ごした家に再び集まった。
自分達の大切な世界を、家族を、友を守る為に。
穴の奥からレイア妹も覗き込んでたりします。
今まで出てきたグループでどれが好き?パート2
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