【完結】戦姫絶唱シンフォギア ~キミに決めた!~ 作:カンさん
──キャロルがエルフナインを助けに行く少し前。
「ダメだ。行くな」
キャロルは、フィーネに腕を掴まれ止められていた。
彼女は、家族に手を出されて怒っている。本来なら、エルフナインが誘拐された時点でノーブルレッド達を八つ裂きにしようと考えていた程に。
しかし今のいままでフィーネに説得され踏み止まり──今限界を迎えた。
「放せ」
「よく考えろ! 今お前が出ていけば、今までの苦労が……!」
「ああ、そうだな。SONGの奴らにオレの存在を認知され、何れはオレとお前、そしてそこの狸との繋がりがバレるだろう」
そうしない為にも暗躍してきたのだが──。
「理解しているのなら──」
「だがな、お前も忘れているだろう? オレはエルフナインに世界を識って欲しくて、お前達に協力したと──今家族が害されるのなら、オレは抜ける」
「貴様……!」
「それに、神の力が具現化した今、もう悠長にしていられる時間は無い──アイツらにも協力を仰ぐべきだ」
「……」
キャロルの言葉に、フィーネは押し黙る。
彼女も分かっているのだ。
自分たちのしてきた事は実を結ばず、全て敵の思惑通りに進んでいる、と。
もう自分達だけでは限界だと。
「それとお前も思い出せ。何故この世界を救いたいのか。誰を守りたいのか」
その言葉を最後にキャロルはラピス・フィロソフィカスのファウストローブを身に纏い、ヴァネッサの力に干渉してシャトーへと跳んだ。
それをフィーネは黙って見送る事しかできず。
「潮時では無いかね、我々も」
二代目の言葉に返す事もできなかった。
第九話「神話の一つのように紡いだ」
シンフォギア装者達はエルフナインを、そして未来を助ける為にシャトーへとやって来た。
そして目視するのは神の力。
ヘリから飛び降りた彼女達はギアを展開し、神殺しの槍を携えて走り出す。
「あれが、神の力──あれがあればこの国は……」
「翼?」
隣で並走する翼の言葉に奏が疑問を抱き──しかし、神の力が攻撃を開始した事でそれも遮られる。
神の力は高質量のエネルギーを解き放ち、シンフォギアを一掃しようとする。
各々回避行動を取るが──一発放たれただけで、シャトー周辺の半壊していた建造物が溶かされ、破壊尽くされる。
「なんてデタラメ……!」
「なんて暴君デスか!」
それでも彼女達は足を止める事はできない。
仲間を、友を助ける為に。
「未来……!」
走りながら響はギュッと拳を握り締め、親友の名を呟いた。
陽だまりを取り戻す為に。
◆
シャトー内では、戦闘が激化していた。
ノエルが弦を操り部屋中に張り巡らせる。その光景を見てミラアルクは悪態を吐いた。
「用意周到な奴だゼ」
もしミラアルクが時を止め移動してもどうしても弦に阻まれる。ならば切って無理矢理進めば良いが、そうすると移動先をノエルに把握され──感覚器官をリンクしているキャロルがそれを察知し、一瞬で迎撃されるだろう。
ミラアルクには、ノエルが常時展開している障壁を、ダウルダブラの装甲を貫く拳を持っていない。故に慎重にならざるを得ない。
ならば、エルザとヴァネッサの空間を操る力を使えば良いのだが──。
「──ノエル!」
「はい!」
エルザが力を使おうとした瞬間、それを察知したキャロルがノエルの名を呼び、ノエルは弦を走らせエルザに攻撃。エルザは破れた世界への道を一度閉じ防御する。いや、させられる。
ビリビリと体にくる衝撃に眉を顰めながら、エルザは言った。
「キャロル……まさか神の力を解析して……!」
「ああ何度も見せられてはな──強い力には予兆がある。厄介な力なら、使わせる前に潰せば良い」
火、水、風、岩の錬金術を行使し、解き放つ。
それをヴァネッサが銃火器で応射し、相殺する。
しかし、この場にいる錬金術師は彼女だけではない。
竪琴の音色が響き渡り、ノエルも同じように錬金術を行使する。
「ヴァネッサ! ──くそ!」
避けられないと判断したミラアルクは時を止める力を使う。
そしてヴァネッサの元へ向かい、彼女を担ぐとノエルの錬金術の射程範囲から逃れ、そこで力を解除し──。
ガチリッと拘束される。
「──っ!?」
「言っただろう。予兆があると」
キャロルのファウストローブにて使用された虹色に輝くエネルギー拘束。ミラアルクはヴァネッサ共々捕まり、身動きができなくなった。
「ヴァネッサ! ミラアルク!」
エルザが叫び、助けようとして──ノエルの弦で絡み取られる。
「っ!」
「さぁ、ご案内しましょう──奈落の底へ」
弦でぐるぐる巻きにされたエルザは、勢い良くヴァネッサ達に叩き付けられ、痛みに顔を歪める。
さらに弦で三人纏めて簡単には身動きが出来ないようにし、弦による捕縛結界を形成。
「これで終わりだ」
キャロルが天に錬金術の紋様を描き、ノエルが床に錬金術の紋様を描く。二つの紋様は共鳴し、バチバチとエネルギーを高まらせる。
「これは、まさか!?」
高質量の雷による攻撃。
全てを破壊する神殺しの雷。
そしてノーブルレッドは結界により脱出不可能。
「──堕ちろ!」
閃光と轟音がシャトーを揺らし──収まったその先には大穴が空いていた。
それを見たファラが思わず呟く。
「凄い……これでは一溜まりも」
「いや、逃げられた」
しかしキャロルが彼女の言葉を否定した。
ノエルも彼女の言葉に頷く。
「ええ。何か外部から強引に干渉された様な……」
結界を張った本人である為、キャロル以上にその力を感じ取れた。
兎にも角にもノーブルレッドには逃げられた。今後不意打ちをされる可能性がある。
「とりあえず今は小日向未来だ。アイツを救出するぞ」
「あらマスター。まるで正義の味方みたい」
ニヤニヤと笑いなガリィがそう言えば、キャロルはやかましいと返しつつ、オートスコアラー達を一瞬で直す。どうやらアダムスフィアを渡されていたらしい。
「適材適所という奴だ。外はアイツらに任せる」
それに。
「奴もいい加減、自分に素直になっている頃だろう」
◆
外では、響達が神の力と戦っていた。
しかし──攻めあぐねていた。
ガングニールの神殺しの力で確実にダメージを与える事はできているが、苛烈な攻撃に決定打を欠く状態。
加えて、神の力が時間が経過する程に何かに共鳴しているかのように、段々と力を増している。
「だったら、私の弾丸で道を……!」
イチイバルを構えたクリスが、7つの旋律にて強化された弾丸を放つ。神の力は触手で弾こうとするが、神の摂理をぶち抜いて弾丸が神の力に直撃──しかし。
「──また、再生を!」
どういう訳か、神の力は傷を癒す。
神の力によるダメージを無かった事にする力ではない。まるで、時間が巻き戻っているかのように、7つの旋律も、神殺しも耐え凌ぐ。
「何か、別の敵が──っ!」
クリスが違和感を元に、周囲を索敵しようとして──狙われている事に気づく。
神の力の中央クリスタル部分にエネルギーを集束させ──。
「──クリス!」
(油断した訳じゃ無いけど……!)
狙撃する為に遠方に位置取ったせいか、他の装者の援護が間に合わない。響が叫び、クリスが移動しようとするが──その前に蹂躙される。
翼と奏がアカシアの力を解放して、高速で駆けつけようとして──彼女達の周囲がゆっくりとなる。
『──!?』
──時間干渉。潜む敵はとことんシンフォギア達を邪魔にする。
そして、誰も駆けつける事が出来ぬまま、神の力はその牙をクリスへと向け、レーザーが解き放たれ──。
──ASGARD。
クリスの前に現れた人物が、己と融合した完全聖遺物の力で盾を形成し、受け止める。端から削られていくが、無限のエネルギーで無理矢理レーザーを受け止め続け……収まった頃には体をボロボロにさせながらも、クリスを守り切った。
「──全く。相変わらず無茶をする」
「──ぁ」
体を再生させながら彼女は──フィーネは振り返り、こちらを呆然と見上げるクリスに微笑みかける。
「フィー……ネ……?」
「……本当は貴方達の前に顔を見せるつもりは無かった」
クリスの手を取り、立ち上がらせるフィーネ。
そんな彼女達の元に響達が集い、彼女を見る。
仲間なのか? そんな視線を……誰も向けていなかった。
その事にフィーネは呆れつつも嬉しく思い、自分もキャロルの事を言えないと苦笑する。
「このような状況でも、私の目的は言えない──が、あの力をどうにかしたいと思っている。……貴方達を助けたいと思っている」
「了子さん」
「まだ、その名で呼んでくれるのね──アレは、神の力だけではない。ノーブルレッドに力を与えた黒幕も一枚噛んでいる」
「ノーブルレッドの?」
「ああ。潜んで油断している今のうちに、一気にアレを壊したい──どうか力を貸してくれ」
フィーネが頭を下げて頼むと、クリスが彼女の手をギュッと握り返して言う。
「わたしは、あの時から変わっていない──フィーネ」
「クリス……」
「キリちゃんが貴方に力を貸したという事は悪い事をしようとしている訳じゃないんだと思う──だったら、わたしに断る理由はない」
「月読調……」
クリスと調の言葉にフィーネが瞳を揺らし、他の装者達も笑みを浮かべて頷く。
そんな中、響が一歩前に出て、かつて復讐相手だと恨み続け、最後にはその愛の深さに考えさせられ──今は理解できるようになった彼女がはっきりと言う。
「わたしは、どうしても大切な人を助けたい──フィーネ、かつての貴方と同じように」
バッと振り返り、拳を握り締め、神の力を見据える。
「未来を取り戻す──わたしはそれだけだ」
「──お前も変わらないな」
フィーネが響の隣に立つ。クリスもそれに続き、皆が前に出て改めて神の力を見据える。
「さぁ、神殺しと行こうか!」
かつてシンフォギアを作った巫女と、それを纏う歌姫達が、取り戻す戦いに身を投じる。
神の力の周囲の空間が歪み、そこから刺々しい触手が生える。触手は響達に襲いかかるが、それをフィーネがネフシュタンの鞭で応対。
さらにセレナとクリスが短剣と弾丸で撃ち落としていき、マリアの波導と翼の斬撃が斬り開く。
「弱点は分かり易いあの中央クリスタル! あそこに全戦力を叩き込む!」
「だったら、わたしが行く!」
フィーネの言葉に響が即座に返し、他の装者達は言葉なく援護する為に動く。
切歌のイガリマの斬撃が、調のシュルシュガナのレーザーが牽制を行う。
「未来……!」
破れた世界が展開され、神の力を覆い近寄らせない様にしようとするが、奏の槍が切り払い、神殺しの力で以って無効化させる。
「未来!」
クリスとフィーネのエネルギー状の砲弾が、神の力に直撃し、その巨体を傾かせる。
時間の巻き戻しでダメージを回復させていくが──それこそがフィーネの狙い。
「やはりな。一つの神の力を使っている間は、他の神の力を使えない……!」
そうなると、神の力が今使えるのは本来備えている触手による攻撃、神の摂理のみ。
しかし、それだけなら──響の拳が当たれば全てが終わる。
故に、神の力の抵抗は激しさを増す。
鱗粉のようにばら撒かれた光が、響を囲い、そして爆発。
「やらせないわよ……!」
「マリア!」
「響さん、行って!」
「セレナ!」
しかし、マリアのマントとセレナのエネルギーシールドが響を守り通した。
おかげで響は無傷だが、マリアとセレナは満身創痍。落下していく彼女達に響が手を伸ばそうとするが──。
「今、手を伸ばすべき相手を間違えるな!」
「──っ!」
「行け──立花響!」
マリアの激励に、響は前を向いて──走り出す。
そんな彼女達の背中を見ながら、マリアは叫んだ。
「──全員! 希望を守り通せぇえええっ!!」
その言葉に呼応するかの様に、翼達のギアにアカシアの力が顕現する。
そして、それを見た神の力は全ての攻撃を響へと集中させた。
彼女達が、響を守ると理解した為に。
だが──関係ない。
「ぐっ……!」
「ちっ……!」
「翼さん! 奏さん!」
殺到した触手の前にツヴァイウィングが立ち塞がり、受け止め、血を吐きながら響を守る。
それを響が乗り越えながら突き進む。
神の力がレーザーを響に向かって撃ち、その射線状にフィーネ、切歌、調が躍り出て、それぞれASGARD、銀の盾、草の壁で受け止める。
「響さん!」
「跳んで!」
「道はあの子が!」
三人の言葉に従い、響は思いっきりジャンプした。
神の力はほとんど無防備だ。しかし、距離がある。普通に走って行っても直前に対応されてしまう。
故に、ここで必要なのは爆発的な突進力。
それを付与させる為に、クリスがスコープ越しに覗くのは響。
「行って響!」
放たれたその弾丸には、相手を穿つ力では無く、響の背中を押す為の力──アカシアの力。
飛来した赤き弾丸を響が後ろ手に掴む。
「融合──進化!」
そして、空を蹴り神の力に向かって飛び込みながら、響が手にするのは──。
「この手に燃え盛る炎をぉおおおおお!!」
コマチが居ない為、展開は一瞬。負荷も大きい。
しかし、その一瞬があれば──。
「「「最速で!」」」
「「「最短で!」」」
「「真っ直ぐに!」」
──未来に手が届く!
「──一直線にぃぃぃぃぃいいいいい!!!」
真っ赤に燃える腕を突き出し、神の力が苦し紛れに放ったレーザーを、そして本体を突き破り、響の拳は全てを貫いた──。
◆
「よくやった神殺し。これで我も完全体になれる」
◆
──かに、思えた。
響は、ギアが強制的に解除される中、信じられないものを見た。
そしてそれは、祭壇で未来を解放しようと儀式の中断に取り掛かっていたキャロル達も同じだった。
「バカな! これは……!」
「未来さんに神の力を付与させるのではなく、神の力に未来さんを溶け込ませて……!?」
祭壇の上に居る未来が光の粒子となって消え、そして外にいる神の力と結び付き──響の前に現れた。
しかし、それは未来ではない。
ソレは、備え付けらた聖遺物──神獣鏡のファウストローブを身に纏い、口を開く。
「遺憾である──我はシェム・ハ。ヒトが仰ぎ見るこの星の神が、我と覚えよ」
そこに──彼女の陽だまりは無かった。
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