時は少し遡りホテル・アカガミの駐車場にハンスはいた。
「さて、聖堂教会から伝えられた場所はココか。」
眞姫那に教えられたヴィクターが拠点とされるホテル・アカガミを訪れていた。
「おうおう…人払いの魔術やら強固な結界を張って、城築いてやがる。」
ハンスは口端を吊り上げた。
「ま、安全だと思うのが命取り、ってな。
幾らでも漬け込む隙はあるのさ。お邪魔しますよ、っと。」
そう言うと彼は堂々と正面玄関より中へと侵入するのであった。
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「侵入者か…人払いの魔術が効果がないとすれば、他の陣営のマスターで相違ないだろう。」とヴィクターは思案する。
「私の城に入るとは傲慢不遜。余程の愚者か命知らずか…どちらであろうが土足で踏み入れた場所がなんなのかそれをわからせた上で殺してやろう。」
彼は怒りを露わにしながらワイングラスを床に落とした。灰色の絨毯の上には赤い染みがじわりと広がる。ヴィクターはそれを足で踏み付け、侵入者を排除するために部屋を出ていくのであった。
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ハンスは結界が張ってある所に軽く手を触れると結界はバリンと音を立てて崩壊した。
コキコキと首を鳴らしながらハンスは結界を壊し、ロビーに侵入する。
「名家の魔術師と聞いていたが大したことないな…俺でも突破出来る。」
「貴様か。我が居城を荒らす羽虫は‼︎」
靴を鳴らし、奥から銀色の球体と共にヴィクターは姿を現しハンスを睨む。
「このヴィクター・ワイルドの前で頭も垂れぬ狼藉者が・・・」
ヴィクターが朗々と1人話す中、ハンスは意も介さず背中にかけたマシンガンを取り出し、ヴィクターに向けて連射した。
ギャリギャリギャギャリ‼︎
硝煙が舞い、火薬の匂いがロビーに広がる。
数分程経ち、撃ち尽くしたのかガチャリガチャリと音を立てたマシンガンを確認する。
煙が収まるとヴィクターの横にいた、銀色の球体は姿を変え、壁のようにヴィクターの前に出で立っていた。無傷の彼は額に青筋を立て、激昂した。
「貴様…!銃器を扱うなど…魔術を扱う物としては言語道断!外道が・・・」
バン、と音を出し、ハンスはハンドガンを撃ちヴィクターの言葉を遮った。
「頭を垂れさせるんじゃなかったのか?」
とせせら嗤った。
顔は赤く点滅し、青筋はヒクヒクと動いている。
「黙れ!我が銀糸礼装よ!奴を貫け!」
銀糸礼装と呼ばれた壁はドプリと音を立て、球体へと姿を戻し、全身を雲丹のように尖らせハンスに覆い被さるように跳躍した。
ハンスはキャスターより受け取った試験管を礼装に投げつける。すると青白い煙を上げ、礼装はべチャリと水銀と化す。
(効果は…5分だったか。コイツを殺すには十分な時間だ。)
ハンスは事前に眞姫那よりワイルド家は結界術で名を挙げた名家ではあるがその本質、所謂奥の手は水銀による魔術であるのを知らされていた。
故に自分と対峙した際に使用するのは攻撃的な水銀魔術であると仮定したうえで対策を講じたのである。
「あばよ、ヴィクター・ワイルド。」
ハンスはそう言うとヴィクターの脳天を狙い引き金を引いた。
間一髪彼は結界を張ることに成功し、銃弾は弾かれる。背中に冷や汗をかきながらもヴィクターは自分が生き残るための術を思考する。
「令呪を持って命ずる!ライダーよ、我が元に現れよ!」
令呪を一画使用し、ライダーを呼び出す。
眩い光を放ち、ライダーはヴィクターの目の前に現れた。ハンスは舌打ちをしながらもハンドガンを2発撃ち込む。
ライダーは服の内側に隠した鞭を取り出し、2発の弾丸を叩き落とす。
「クソッ…サーヴァント相手だと俺1人じゃ、無理だな。」
「逃すと思うか?ライダー!この爺を殺せ!」
「・・・了解だ、マスター。」ライダーは音を置き去りにし、銃弾を放つ。
銃弾はハンスの左腕に着弾し、呻き、ハンドガンが手から零れ落ちる。
「あぁ…コレは引くしかないな。」
ハンスはそう言うと試験管を地面に叩きつける。白煙がロビーに充満し、視界を奪う。
白煙が霧消する頃にはハンスの姿をは消えていた。
「ライダー、奴を仕留め損ねたのか?」とヴィクターは尋ねた。
「・・・そうだ。俺は負傷をし、マスターの身の安全を確保しなければならない。ここで追撃をするのは愚か者のすることだ。」
「チッ…まぁ、いい。傷を治せ。」ヴィクターはそう言うとライダーを見向きもせず自室へと戻っていく。
「人使いの荒い所じゃないな…バーサーカーとの戦闘が結構響いている。後は…任せた、ぞ…相棒…」ライダーはそう言うと床に崩れ落ち意識を沈めた。虚空より白馬は現れ、ライダーを背に乗せると蹄の音を響かせながら奥へと戻っていく。
朝日が昇り、激闘の一夜はひとまず鳴りを潜めることとなる。