アリシアが目を開けると薄暗い歌劇場の真ん中の席に自分は座っていた。
「おや?目が覚めましたかな?」
隣の席には黒いもやがいた。それはまるでインクが歩き出したのかと思うほど黒いが人の形をしていた。
「誰よ⁈ここはどこ?」
「はっはっはっ…我輩は貴方に危害を加えられません。ご安心を。此処は現実と空想の狭間と言ったところでしょうか?夢?幻?ふーむ…此処は何か?難しい質問ですな!」と影は笑う。
「それより?貴方誰?人間?」
「我輩は“シェイクスピア”ですぞ。アリシア嬢。」影の表情は見えないため、読み取れないが恐らく微笑んでいるのだろう。
「ランサー?とは別人ね。彼が自分はアルターエゴ、別側面だと言っていたけれども。」
「彼が…?ふむ…ナルホド。隠し事はよくないですな!まぁ、説明が面倒くさいのでしょうな。騙すのなら味方から、とはよく言ったものです。」
アリシアは首を傾げ、影に問う。
「ランサーは“シェイクスピア”であり、“シェイクスピア”ではないと言っていたわ。貴方は彼が“シェイクスピア”である理由を知ってるのね?教えて欲しいわ。」
影は困っているのか少々沈黙し、口を開いた。
「我輩は今回傍観者ですし、余り介入すべきではないのですが…そう睨まないで。」
「彼は“シェイクスピア”です。ですが本来の『シェイクスピア』ではありません。彼自身不本意なんでしょうが…」と影は言った。
「どういうこと?」
「おや、そろそろ時間のようです。さようなら、アリシア嬢。」
「ちょっと⁈一体どういう事?」そう言うがアリシアが瞬きをする度に歌劇場の風景は霞み、意識は深層へ落ちていく。
意識が落ちる手前『道化』がポツリと呟くのを聞いた気がした。「少なくとも…彼は貴方を信用していると我輩は思っていますがね。」
しばらくすると彼女の姿は歌劇場からふっと消えた。道化はその光景を満足そうに見届けると颯爽と椅子から立ち上がり舞台へと昇っていく。
「
道化の言葉が歌劇場に響いた。
「悲劇、憐憫、…実に、実に面白い!!我輩は貴方に興味がそそられますよ…さて、貴方は| 彼女の願いを叶えられるのですか?『ルーラー』!」
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「お、起きたかアリシア。それコーヒーだ。」
眠たげな眼を擦りコーヒーを受け取ったアリシアはランサーに夢のことについて話始めた。
「・・・ということがあってね。ランサー、アナタ何か隠してない?」
「英国紳士たる者秘密の一つや二つ…アリシア、コーヒーを置こうか。魔術の詠唱をするな、私が悪かった。」
「早く話しなさいよ、ちょび髭。」
ランサーはコーヒーを一口啜り、苦い顔を浮かべた。「まぁ…アレだ。抑止力って奴だ。お陰でぐちゃぐちゃに混ぜ合わされた。夢の中の奴が言うように私は“シェイクスピア”ではないが『シェイクスピア』となった。」
そう、とアリシアは呟きコーヒーを眺める。
「ねぇ、ランサー。抑止力が介入するレベルの事態がこの聖杯戦争で起きようとしているの?」
「いや、もう“起きている”だろうな。だがアリシア、君が気にする必要はない。私は抑止力によって遣わされたのは事実だ。だが、それ以前に君のサーヴァント。君に勝利をもたらそう。」
神妙な面持ちであったがランサーはパンと手を叩くと「さて、昨夜のサーヴァントの真名予想といこうか。」とカラリと言った。
「え?ランサー、真名とかわかるの?」
「ふははは!見直したか?アリシア!」
満足そうに笑うランサーを尻目にアリシアは昨夜使い魔が映し出した映像を流していた。
ランサーはニヤリと口角を吊り上げながら朗々と自らの予想を語っていく。
「先ずはカウボーイハットを被ったサーヴァント。クラスはアーチャーかライダーだろうな。私としては2:8と言った所か…白馬が出てくる辺りライダーだろうからな。西部開拓時代の英霊と予想出来る。」
「誰かしら?やっぱりビリー・ザ・キッド?」
「そうだな、少年悪漢王が最有力候補と見ていいだろう。だが、ワイルドパンチ強盗団、ジェシー・ジェイムズなど多くの該当する人物がいる…それにだ。」
ランサーは指を鳴らすとチリンと鈴の音が聞こえる。虚空よりテディベアほどの大きさの猫が現れた。太々しくキセルを手に持ち、甚平柄の着物を着ている。
「・・・吾輩は猫である。」
「ランサー、何よこの珍妙な生物。」
「彼は“ケット・シー”妖精であり、猫の王だ。彼は私の霊基に複合されている。英霊に満たない『ロア』それを幻霊と呼ぶらしい。彼らは所謂礼装であり、我々が本来持たない・持ち得ない力を与えてくれる。恐らくだが召喚された全てのサーヴァントが幻霊と複合していると考えていいと思われる。そうでもしなければサーヴァントとして私を呼ぶのはそれなりに難しいからな。」
「そうだにゃ。お前さんらも気をつけろ、にゃ。」ケット・シーはそういうとぷかぷかとキセルを吸いながら、ランサーの頭の上に座り胡座をかいている。
「アナタ喋るのね…まぁいいわ。つまり幻霊とはワイルドカード。読めない切り札と言うわけね。」
「ま、そんな所だ。だからコイツらは私の知らない能力ぶっ放してくるかもな。」とランサーとケット・シーは笑いながら先日のサーヴァント達を指した。
「マスターアリシア安心するにゃ。大将…ランサーは三騎士の癖に弱い。だが情報収集は他の陣営以上に行なっている、にゃ。安心するべし。」
「私の知らない所でそんなことしてたのね…」とアリシアは意外そうに呟いた。彼女が見てる限りではランサーはテレビや新聞、スマートフォンを弄るぐらいでゴロゴロしていたからだ。
「“知は力なり”だ。さて、考察を始めよう。アリシア、君は日本という国の文学・歴史にどれぐらい精通している?まぁ私は英国出身だからな、ザックリとしか知らなんだ。」
「私も同じぐらいだと考えてくれていいわ。観光サイトとかで見たぐらいよ。それとこの都市についてとか。」
「そうだな、わかりやすいのは…剣を持った少女のサーヴァント。彼女はセイバーで確実だろう。そして真名の当たりはついている。『桃太郎』だ。」
アリシアはふっ、と鼻で笑いながら「ランサー、私でも知っているわよ。タローは日本では男性名よ。セイバーは女性、該当する訳ないじゃない。」
「ケット・シー。例の物を…」ランサーがそう言うとケット・シーは和服の内側をガサゴソと漁り、自分より大きい本を取り出した。
ランサーはそれを受け取るとパラパラとページをめくり、指で指した。
「ここの記述だ。『あまりに可愛いので鬼にさらわれないよう桃太郎と名づけ育てた』つまり女性である可能性はある訳だ。セイバーが桃太郎であることはそれなりに信用出来ると思うがね。」
「それに彼女は負傷した時に団子のような物を食べていたからな…日本、甲冑、団子で上がるのは話としては桃太郎が有力ではないだろうか?」
「そうかしら…まぁ、日本のサムライの可能性も否定出来ないと私は思うわ。そう言えば、バーサーカーも日本人のような顔をしていたけど当たりはついてるの?」
ランサーは悪童のように顔を歪めて笑った。
「ーーー全くわからん。」
「口から炎を吐くなんぞ奇術師か何かか?巨漢。後はなんだ?特筆すべき事項は特に私は挙げられん。」
「と言うか。私に真名を伏せるわ、スキルも伏せるわ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」とアリシアは呟いた。
ランサーは片眉を上げ、ポリポリと頭を掻きながら数秒思案した。
「真名はすまない…明かせない。スキルの開示はしよう。アリシア、君を信用していない訳では無いんだ。“シェイクスピア”と言う概念を前提に私はランサーと言うクラスに収まっているんだ。」と彼は語る。先程の威勢も無くば、一言一言に力がない。
「不本意だが、それが無ければサーヴァントとしての現界も出来なかった。故に私は“シェイクスピア”でなければいけない。その為に真名は伏せたいんだ。」
男はそう微笑んだ。
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真名:シェイクスピア?
クラス:ランサー
性別:男性
属性:中立・中庸
ステータス: 筋力D 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運C
宝具:秘密
【クラススキル】
道具作成E:ペンとか紙とか小物作れる
対魔力C: 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【固有スキル】
知識は力なりA+++
物事に対する理解を深めることによりそれを力へと変換する能力。
知れば知るほど有力になるのは当然だろう、本人談。
人間観察B
人々を観察し、理解する技術。
ただ観察するだけではなく、名前も知らない人々の生活、好み、人生までを想定し、これを忘れない記憶力が重要。
妖精劇団員EX
シェイクスピアの著作「夏の夜の夢」とスキル:国王一座を混ぜ合わせ生み出したスキル。戦闘員は3名。
・パック:遠距離から弓を撃つ。変なところに飛んでいく。
・オーベロン:剣で近距離を対応、ランサー曰くコイツに任せとく方が自分より強い。
・ティターニア:取り替えっ子による物や人の交換を行える。物は重量制限があるが大体の物は場所の交換が可能。人は基本的に彼女のお眼鏡に合う子供でなければ交換しない。(場合によっては例外もある)