赤神町にある高級ホテル『ホテル・アカガミ』にて魔術師の名家であるワイルド家のヴィクター・ワイルドはワインを飲んでいた。
「聖杯戦争…か。冬木で行われた聖杯と同一な物で有れば“根源への到達”という悲願を達成出来るだろう。」
「だが、贋作もしくは劣化版の聖杯だろう。それに千年樹の負の遺産だ。あまり期待は出来ない…そうは思わないか?ライダー?」と 自分が座っているソファーの後ろに向けて声をかけた。
「さぁ、俺にはわかりかねる話だ。」と言うとライダーは霊体化を解いた。
「贋作であろうが劣化版であろうが聖杯は聖杯だ。魔力リソースとしての使用程度は見込めるだろう。」とヴィクターはライダーの言葉を無視して朗々と話した。
ふぅ、とライダーは溜息を吐き、カーボーイハットから鋭い眼孔を光らせながら「で、マスター。俺は何をすれば良い?」と尋ねた。
「ライダー。君の魔弾は非常に有用だ。弾丸から魔弾を生成出来るし、宝具も1級品…素晴らしい。」
「・・・」
「ライダー。君の仕事は遠距離での英霊もしくはマスターの狙撃だ。理解したかね?」
ライダーはハットを目深く被り直し短息しながら「ソイツは無理だ。」と言った。
「何故だ?君の魔弾はどんな獲物でも捕らえる弾だろう?」とヴィクターは不機嫌そうな声を出した。
「理由は3つほどある。第一に俺は狙撃手ではない、故に遠くのターゲットを殺す技術はない。次に俺の真価は一騎討ちで発揮されるものだ、宝具からもわかるようにな。」と軽く笑いながらライダーは言った。
「最後に…俺が【現界する前に対策を打たれてる】ことだ。」
「そう…か…ならばライダー、君はどう動くのが最適解だと思っている?」ヴィクターはワイングラスをテーブルに置いた。
「それは依頼者のアンタが考えることだマスター。俺は仕事をこなすタダそれだけだ。」とライダーは笑いながら放った。
「チッ…なら、一騎討ちだ。もしくは起動力を生かした強襲だ。」
「・・・イエス、マスター。」と言うとライダーは霊体化し部屋を出て行った。
「・・・現界する前に対策されているとはどう言うことだ?」ライダーが放った言葉にヴィクターは引っかかりを覚えていた。
(ライダー…真名をワイアットアープ、本来の該当クラスはアーチャーの筈だ…)
ライダーの言葉が出るまでヴィクターは疑念を感じることはなかった。『何故、彼はライダーなのかと?』本来はアーチャーのはずだ亜種聖杯戦争でも銃を扱うサーヴァントはアーチャーとして召喚されてきた。
(ライダーから申告があったが“幻霊ザミエル”が霊基に含まれていると言っていたが…それが原因なのか?)
ヴィクターはライダーに対する疑念が尽きないのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コツコツと革靴を鳴らし、ライダーは薄暗い廊下を歩いていた。
(ふむ…マスターは暫く俺の言葉が頭から離れず色々と思案するだろうな。)
ライダーは多くを語らない無口な男だと生前は言われていたが彼自身は無駄なことを喋らない、それが実情であった。
(暫くは自由に行動出来そうだな。)
ライダーはヴィクターを雇い主としては三流と思っており、金払いは良いがロクな命令はしない金持ちと同じだと判断している。
ライダーの読み通り、ヴィクターは魔術師の名家であると言うことの驕りから来る油断や実戦経験の少なさが如実に現れていた。
(何より、俺を道具としてしか見ていない…待遇の改善を望む訳では無いがいかんせんマスターは人を使うのは下手そうだ…)などとライダーが考えながら歩いていると自分の部屋に着いた。
中に入り、銃や周辺の地図へと目を向け準備を始めた。
「だが…今回の聖杯戦争はキナ臭い。幻霊か、、俺とは生前縁が無かった存在だ。それこそザミエルもな。」とライダー ワイアット・アープが呟いた。直後風が吹き、彼の背後に巨大な白い馬が立っていた。白馬はライダーの方を向くと足を曲げ、座りだした。そんな白馬の頭をライダーは撫でていた。
「お前のことは唯のホラ話だと思っていた、まぁコレも何かの縁だ頼むぜ相棒。」
ライダーがそう言うと白馬は呼応するように鼻息を強くした。
「仮に、だ。マスターよりも俺と合う奴が居たとしよう。ソイツは聖杯に願う望みが有りどんな手を使ってでも勝利を掴み取ろうとする…そんな奴が突然俺の令呪を手に入れ、聖杯を手に入れる…そんな『どんでん返し』が起きるかもな…」とワイアット・アープは夜空に輝く月を見てニヤリと笑うのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ライダーの召喚をホテル・アカガミにて確認。
ーーー真名 ワイアット・アープ
情報取得完了
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E- 幸運D
ーーー幻霊ザミエルにより英霊として召喚に成功。
計画通りである。
ーー否定、ライダーでの現界及びもう1体の幻霊を確認。幻霊 ウィドウメーカー
計画に支障をきたすだろうか?
ーー未知数である。
アーチャーの存在は異質である故に今後の展開が予測不能。
・・・我々の計画をサーヴァントは逸脱してきている。
『英霊であるが故に無意識化でも我々の思い通りにならないのだろう、そのような存在だ』《我々はまだ知られる訳にはいかない》
【肯定】“肯定”『肯定』《肯定》[肯定]
須らく聖杯戦争を遂行させよ。
我らが使命を果たせ。
聖杯は我々の手に