「クソッ…クソッ!何で俺がこんな目に!」
神経質そうな針金のように細い男。マグナス=ユグドミレニアは罵倒をしながらヨタヨタと下水道を歩いていた。
「“八枚舌”のダーニックがなんだ…クソッ!しくじりやがって!お陰でユグドミレニアは没落したッ!」と苛立ちを隠さず頭を掻く。
「だが、だが…俺には令呪があるんだ。」と自らの右手の甲に浮かぶ令呪をウットリと眺める。
「俺には!才能が!あるんだ!」と叫びながら召喚の準備をし始める。
「ーーー告げる!
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
詠唱を終え、下水道内を光が眩く照らす。
マグナスの前には1人の男が立っていた。
身長は180ぐらいと大柄で和装の男だ。背中には大きな瓢箪を背負っている。
「お前が俺のサーヴァントだな?真名はなんだ?どんな英霊だ?」と興奮気味に話しかけるが彼が反応する要素もない。
「クソッ…無視してる訳じゃねぇな…そもそも認識してねぇのか?」と愚痴を零しながら自らのサーヴァントのステータスを確認する為に魔術を使用する。
「クラスはバーサーカーか…魔力が足りない俺では心許ないな…真名とパラメータを…」
バーサーカーの情報を見たマグナスは驚愕の余り、一時呼吸をするのを忘れていた。
ワナワナと震えながら自らのサーヴァントを見ながら思わず声を零した。
「なんだコイツ…正規の英霊なのか?」
「筋力A 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運E…⁈バーサーカーは本来弱い英霊を強化するためだろ…」
(ーーコイツなら勝てる)
マグナスはそう確信しほくそ笑んだ。
「ふはは…はははは!俺がユグドミレニアの次期当主だ!」とマグナスはヒステリックに笑った。
バーサーカーは虚ろな目で虚空を見上げながら背中に背負った瓢箪の掴み、中に入った酒をぐびぐびと呑んでいた。
「魔力が問題か…ふふ、ふふふ…一杯いるじゃないかこの町に…」
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集いしサーヴァントは7騎。
これより聖杯戦争を開始する。
全ては我々の計画通り。
主の願いを達成するのだ。
全ては神のみぞ知る。
ーー否定。
我らがシナリオこそ物語の結末なり。
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[赤神町 逢仁高校屋上]
教員である絹川昭博は職員室でこっくり、こっくりと舵を漕いでいた。7月の終わり、夏休みのため生徒達は学校にはいない。今夜の夜勤の担当は彼だけであり、他の教員もいないのだ。がくりと崩れ、机に額をぶつける。
「あぁ…痛え。夜勤は俺だけだしサッサとクーラーをかけて、布団に潜り込むか。」
時計を見ると7時であり、陽はそろそろ落ちようとしている。生徒もこんな時間には来ないだろう。サッサッと夏にやるべき仕事を今のうちに終わらせてしまおう。そう思い仕事は再開する。
彼が床に着いたのは9時ごろであった。
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0時を回った頃、校庭にはカウボーイハットを被った人影が佇んでいた。ライダーである。彼はヴィクターの指示により自ら校庭に姿を晒すことで敵のサーヴァントと一騎討ちをさせようと言うからである。
(一騎討ちか…愚作だな。騎士道などはよくわからないが場合によっては引くのもアリ、か。)
ライダーは一騎討ちを行うにしても必ず横槍が入ると考えていた。その為、混乱に乗じて逃走。敵のサーヴァントの情報さえ手に入れば御の字だと考えていた。
(どうにも俺とマスターの相性は悪いらしい)
月を見つめながら煙草を吸っていた。
「おや誰だい、アンタ?」
ライダーが声を投げかけたのはバーサーカーであった。ライダーと向かい合うように立っている。あいも変わらず虚構を見つめている。
「・・・俺のことを認識していない、か。」
ライダーはそう呟きつつ、2本目の煙草を吸い始めるがいつでも行動出来るようにバーサーカーから目を離さない。
《さぁ!バーサーカー!お前の力を見せつけろ!》とマグナスは念話でバーサーカーに命令をくだした瞬間、彼はライダーに向かって躍りかかった。
ーー今宵、聖杯戦争の幕が上がる!