呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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更新遅め。


廻逅
第1話 邂逅


ーーーー独白ーーーー

 

 

 

「百鬼夜行を見た」

 

 

 

去年のクリスマス前日、12月24日のことだ。

朝から新宿に出かけ、夜に帰ってきた母は、まるで何かに取り憑かれたかのようにそう繰り返した。

 

ここにいてはいけない。

化け物が襲ってくる。

 

ご近所にもそう言って回る母は勿論、僕も妹も白い目で見られて。

あの家の子とは遊んじゃいけません、なんて、実際に言われるものなんだと感心すらした。

妹は学校でもいじめられていたようで、毎日泣いて帰ってくる。

……まぁ、僕も似たようなものだった。

 

 

 

田舎のばあちゃんが声をかけてくれたのは今年の3月。

どうやら妹が電話をしたらしく、心配して母に電話をかけてきた。

 

そして、結局3月中に引っ越しが決まり、4月から母の実家……ばあちゃん家に僕と母、妹の3人で暮らすことになったのだった。

 

 

 

 

ーーーーF県 5月某日 菅谷家ーーーー

 

 

 

「それで長月(ながつき)

 

「なに? ばあちゃん」

 

(かすみ)の様子はどうだい?」

 

 

畳の匂いがする菅谷家の居間にて。

ばあちゃんが僕にそう尋ねた。

 

 

「どうって……」

 

 

変わらないよ。

僕はそれだけを伝える。

 

そう簡単に変わるわけがない。

おかしくなっていたとは言え、女手ひとつで育ててくれた母親を亡くしたのだ。

それも『あんな形』で。

中学生である霞にとっては辛くないはずもない。

 

 

「そうかい……」

 

「こっちに越してきた時には何ともなかったのにね」

 

 

4月の頭にはピンピンしてて、あの妄言を繰り返してたのだ。

それが……。

 

 

「長月、お前は大丈夫かい?」

 

「…………大丈夫だよ」

 

 

そう。

僕は、大丈夫。

 

ポツリとそう返して、僕は左側から目を背けた。

 

 

 

 

ーーーーF県 5月 石木高校ーーーー

 

 

 

チャイムが一日の終わりを告げた。

と同時に、僕は席を立つ。

授業さえ終わってしまえば、僕はこの教室に用はない。

 

転校してきて1ヶ月。

誰とも積極的に関わってこなかった僕に話しかける人物なんてーー

 

 

 

「菅谷さん」

 

 

 

ーーいた。

物好きな人が一人。

 

この1ヶ月間、ずっと僕に話しかけてくる人物。

常にとろんとしたタレ目にも関わらずどこか品のある整った顔立ち。

腰まで伸びる艶やかな黒髪。

胸も、まぁ、ある。

ただ、それ以上に目を引くのは、右手には火傷で負ったという傷を隠すための黒い手袋。

 

思わずそちらへ向いてしまう視線をどうにか隠しながら、その娘の呼びかけに答える。

 

 

「なんですか、いーー」

 

「名字は止めてください。私のことは(つむぎ)とそう呼んでください」

 

 

彼女はそう言って微笑む。

品のいい微笑み、だけど、どこか圧を感じてしまう。

 

 

「紡さん」

 

「つむぎ、ですよ?」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

「紡ちゃん」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 

 

それで妥協してくれたようで、彼女はにこりと笑った。

可愛らしい、けど……。

 

 

「僕、帰ろうと思ったんだけどさ」

 

「はい」

 

「……ええと」

 

「どうかしましたか?」

 

 

 

「…………手、離してもらっていいかな」

 

 

 

なぜか僕の制服の裾をちょこんと掴む彼女の右手。

 

 

「あら、すみません」

 

「それじゃーー」

 

 

 

「これならいいでしょうか?」

 

 

え、と反応するよりも速く、彼女は僕の右腕に自分の左腕を絡めてきた。

いわゆる腕組みというやつである。

 

 

「は? え?」

 

「それでは帰りましょうか」

 

 

有無を言わさぬ雰囲気に、僕は黙ってされるがままになるしかなかった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

高校からの帰り道。

 

腕を組んだまま、僕たちは歩く。

商店街を抜けて、住宅街を通り抜けて。

正直、周りからの目は痛かった。

やっと郊外に入ったから、その目からは解放されたんだけどね。

 

それに、

 

 

「…………」

 

 

やはり左側が気になる。

この1ヶ月間、ずっと『こう』だから。

害はないとはいえ、こうもつきまとわれると……。

 

 

 

「菅谷さん」

 

「っ」

 

 

 

急に声をかけられて、思わず身体が跳ねた。

 

 

「どうしたの、紡ちゃん」

 

「いえ、そろそろいいかと思いまして」

 

 

彼女はそう言うと、パッと腕を離した。

そして、彼女は右手の手袋を外して……あれ?

 

見ると、その手には火傷の跡なんてない。

その代わりに、妙な幾何学模様が刻まれている。

2つの二重丸とそこから伸びた線。

 

 

「火傷……って話は」

 

「? あぁ、あれは嘘です」

 

「うそ……? なんでそんなーー」

 

 

 

 

 

ーーバシュッーー

 

『キィィィィィッ!?』

 

 

 

 

僕がそれを聞くよりも速く。

彼女は、僕の左側に張りついていた『それ』をーー3つの眼と5つの腕で僕を捕まえていた『それ』を消し去った。

 

 

「っ!?」

 

「ふぅ、低級の呪いで助かりました」

 

 

彼女のついていた嘘なんてどうでもよくなるくらいの衝撃。

母が死んでからずっと僕を左側から見つめていた異形の化け物を簡単に消し去った彼女という存在。

転校してからずっとつきまとわれていた物好きなクラスメイト、のはずだったのに……。

 

少しの間、呆然として。

その後で、僕は彼女に聞いた。

 

 

君は何者なんだ、と。

 

それに、彼女はまた微笑み、答える。

 

 

 

 

「私は狗巻紡(いぬまきつむぎ)

 

「貴女を監視するために派遣された呪術師(じゅじゅつし)ですよ」

 

「菅谷長月ちゃん」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

これは僕が彼女に殺されるまでの物語。

 

 

 

ーーーーーーーー




2021.0702追記
完全未経験者によるデフォ絵
雰囲気で感じ取ってください。

菅谷長月

【挿絵表示】

狗巻紡

【挿絵表示】

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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