ーーーー氷川市 廃校跡ーーーー
僕が『毒蟲』を取り込んでから約10日。
もうすぐ6月になる。
この10日の間に呪霊狩りをしたり、呪力のコントロールを紡ちゃんから教わったりして過ごした。
勿論、杭葉から取り込んだ『毒蟲』の操作の訓練も行った。
今だってーー
「隙あり」
「っ!」
軽い足払いで転がされる。
「まだまだだねぇ、長月ちゃん」
そう言って僕を見下ろしながら笑う針倉術師。
彼の側には僕が出した蟲も数匹飛び回っている。
「昨日よりはよくなったけれど、まだまだだよ。蟲の操作に集中しすぎて、近づいてきた私に対応できていなかった」
「分かってる」
「『毒蟲』を取り込んだことで君の術式は目を覚ましたようだね。ただまだ実戦では通用しないかな」
そう言って、針倉術師は僕に手を差し出した。
その手は取らず、立ち上がる。
精一杯の抵抗、というわけではないけれど……。
まぁ、確かに彼の言う通りまだ実戦では使えないだろう。
前回杭葉を倒せたのは相性がよかった。
彼自身は体術が得意ではなかったようだったから。
「ふむ」
「……なんですか」
「いやぁ、ここまでボコボコにされてもめげないんだから見上げたものだよ」
「…………」
「それに呪詛師とはいえ、人を殺してもなんともないようだからね」
私なんて呪詛師を初めて殺したときは3ヶ月は寝込んだものだよ。
そんな風に彼は嘯いた。
平気だった訳じゃ……いや、そんなことはないか。
「……まぁ、あの人は他人だったから」
彼の言葉に僕はそう答えた。
「他人、ね」
「悪いですか」
「いやいや、それがいいよ。それに彼は悪い術師だったわけだしねぇ」
同情の余地はないだろう。
君の考え方は正しいさ。
全肯定……というのもなんだか気持ち悪い。
いや、別に糾弾されたかった訳ではないけど。
「ところで」
僕の思考を遮るように、話題を変えられる。
僕としても助かる。
あまり詳しく聞かれたいことでもないし。
ただし、
「どうだい? 同棲生活は」
変えられた先の話題がマシとも限らない。
むしろ出来ることならこっちの方が話したくない。
「ただの居候ですよ」
「まぁまぁ、そう恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」
「恥ずかしくはないけど」
「けど?」
「毎日大変ではある」
今、僕はなぜか紡ちゃんの家に上がり込んでいる。
稼ぎのない僕にとってはありがたい話ではある訳だけど。
ただ、西合町での一件以来、なぜか紡ちゃんがベタベタしてくる。
毎食美味しい料理を作ってくれたり、夜も隣で寝ようとしたり。
挙げ句の果てには、風呂まで入ってこようとするし。
……とにかく。
何故かは分からないが、人付き合いをあまり好まない僕にとっては……うん。
「仲がよくて結構じゃあないか」
「流石に疲れる……」
嫌というわけではない。
ただ少し離れる時間だって欲しい。
まるで恋人のようだ、という針倉術師の冷やかしをため息で返し、どうにかならないかと聞いてみる。
すると、彼はニヤリと笑う。
「なら、ちょうどぴったりの任務が来てるよ」
「任務?」
そんな提案を彼はした。
……なるほど。
任務となれば、確かに少し家からは出られるだろう。
けど、さっきも話してた通り、僕の『毒蟲』は実戦ではまだ使えない。
呪力のコントロールも少しは出来るって程度だし。
それだとまた紡ちゃんと一緒に任務に出ることになって、彼女と離れるという目的は果たされないのでは?
僕がそれを口にすると、針倉術師は笑って答える。
「この任務には紡ちゃんは連れていかないよ」
「それに、君にしかできないことだからねぇ」
僕にしかできない。
それはつまり、
「……呪霊を取り込むって話ですか」
「そ。察しがよくて助かる」
「まぁ、たしかにそれは、僕にしかできないんでしょうけど」
今の彼女の様子を考えたら、着いてくると言いかねない。
「それは大丈夫さ。紡ちゃんには別の任務を入れてあるから」
「……それなら」
「それに心配もいらない。長月ちゃんの任務には私も着いていくよ」
「ソレハココロヅヨイ」
心ない言葉を返すが、彼は気にする様子はない。
まぁ、針倉術師が苦手なのはともかく、何度も言うが、彼女が嫌いとかいう訳ではない。
……なんて言い訳じみたことを心の中で呟きながら、針倉術師の提案に頷く。
「それで、どんな呪いなんですか」
「ん? 聞きたいかい?」
「……まぁ」
なぜか嬉々とした表情の針倉術師。
嫌な予感はするが、聞かない訳にもいかないだろう。
前回の杭葉のことだって、先に聞いていれば何か対策も早めに打てたはずだったから。
呪術師としての自覚が出てきたようで何よりだよ。
そんな風に笑い、彼は僕に話をし出す。
「長月ちゃん」
「君も聞いたことくらいはあるんじゃないかな」
「怪人『赤マント』」
「私たちの任務はそれの排除及びーー」
「ーー『赤マント』を君が取り込むことさ」
次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
-
よい・やってみせよ
-
完結したんだからNG
-
いや、むしろ私が書こう(有能絵師)