呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第11話 朱殷ー壱ー

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『特級仮想怨霊』

そう呼ばれる呪霊がいる。

 

呪霊は人間から漏出した呪力の集合体。

実在しなくとも共通認識のある畏怖のイメージは強力な呪いとなって顕現しやすい。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「つまり、都市伝説とか怪談とかの類いってことね」

 

「そう。勿論、その噂通りの性質をすべて備えている訳ではないよ」

 

 

噂っていうものはいつの間にか尾びれがつくものだからね。

だから、噂を知っておくことは必要だけど対策にはならないんだよ。

そう言う針倉術師。

 

それにしても『赤マント』か……。

聞いたことはある。

というより、何かの漫画で読んだ記憶があった。

 

 

「発生の起源すらあやふやなものだというのに、その噂自体は蔓延し、人々の記憶の片隅に残っている。中々に厄介なものだよ、怪談の類いはさ」

 

 

ヤダヤダと言いつつ、彼は肩をすくめた。

 

……さて。

特級仮想怨霊とやらのことも話し終えたし、そろそろ聞いてもいいだろうか。

 

 

「ところで、なんで僕は制服を着させられてるんですか」

 

 

任務に当たって、これを着るようにという指定を受け、僕は私服からこの制服に着替えていた。

まぁ、それ自体はいい。

別に僕自身一応高校に通っている年齢なわけだし。

だが、この制服は恐らく……。

 

 

「よくぞ聞いてくれました」

 

「これから私と長月ちゃんはとある学校に潜入します!」

 

「その学校とはーー」

 

 

「某私立中学でしょ」

 

 

「ご名答」

 

 

ニヤリと笑う針倉術師。

そんな彼もいつものライダースジャケットではなく、スーツ姿になっている。

ただし、髪色はプリンのままである。

そんな状態で、

 

 

「長月ちゃんも私のことは針倉先生と呼ぶように」

 

「…………」

 

 

などとのたまう。

潜入する先が私立中学だというのにあの髪色。

どう考えても教師と呼ぶには無理があるけど、深くは突っ込むまい。

 

 

「なぜその中学校なんですか」

 

「七不思議ってあるだろう? どうやらその中に『赤マント』に関するものがあるようなんだよ」

 

「七不思議……」

 

 

あまり馴染みのあるものではないけど、そういうものがあること自体は知ってる。

ただ、たかが学校の七不思議だ。

そこに一々反応して派遣されていたら、ただでさえ少ない呪術師のキャパは軽く越えるだろう。

きっとそれは任務を出す上層部って人たちも分かってるはず。

ということは、恐らくだけど。

 

 

「実害が出てるってことですか」

 

「正解」

 

 

詳しくは現地で話そう。

針倉術師の言葉に頷いた。

 

ともかく僕は中学生のコスプレをする高校生として。

針倉……先生は不良教師として。

ある私立中学に潜入することになった。

 

 

 

ーーーー福都市 成領中学校ーーーー

 

 

ぼっちはぼっち。

6月の中二なんて、グループが完全に固まってしまっているはずであるという予想通り、僕は潜入先でも浮いてしまっていた。

そんな僕に声をかけてくるのは……って、この下り覚えがある。

 

 

「あ、菅谷さん」

 

 

学級委員長だというこの娘だけ。

名前は、たしか……なんだっけ。

 

 

「あ、えっと、佐藤茜だよ」

 

「……まだ名前覚えてなくて」

 

「しょうがないよ。まだ一日目だもん」

 

 

それが普通だよ。

そう言って笑う佐藤さん。

学級委員長という役割のせいだろう。

転校生に声をかけ、クラスに打ち解けられるように、なんて気を使っているみたい。

……しかし、

 

 

「……中学生に気を使われるのか」

 

「え? 何か言った?」

 

「ううん、なにも」

 

 

思わず漏れた一人言を適当に誤魔化す。

言い様のない虚しさは感じるけど、今回の任務はこの中学校に巣食う呪霊を取り込むこと。

そのためには、周りから情報を集めなければならない。

教員側には針倉術師が潜入し、情報を集めてる。

僕はこっち側担当として、やることをやらなくては。

 

 

「菅谷さんは部活とかどうするの?」

 

「え……」

 

「前の学校は氷川市の学校だったんでしょ! 部活強いところ?」

 

「あー」

 

 

部活、ね。

僕は中学でも高校でも帰宅部だった。

あんまり興味なかったし。

だから、潜入するだけなら入るつもりはないんだけど……。

 

 

「テニス部とか興味あるかも」

 

 

僕はそんな心にもないことを口にする。

すると、佐藤さんは目を輝かせて僕に詰め寄った。

 

 

「ほんと!? わたし、テニス部なんだ!」

 

「放課後、連れてってあげるね!」

 

 

そう言って、僕の手を取る彼女。

 

運がいい。

これは手間が省けた。

これで件のテニス部に効率よく近づける。

 

 

 

ーーーー成領中学校 テニスコートーーーー

 

 

 

針倉術師からの情報によると、赤マント事件の被害者3人のうち、2人がこのテニス部に所属していたという。

 

見学という体でテニスコート内に入れた僕は、辺りの様子をしばらく観察していた。

今、ここにいる部員は11人。

そのうち4人が球拾いをしてるのを見るに、その4人は1年生なのだろう。

ということは、残りの7人が2年生以上。

その中に佐藤さんの姿もあった。

球数を多く打ってるのを見ると、彼女はレギュラーなのかもしれない。

そんなことを考えていると、

 

 

「菅谷さん!」

 

 

その佐藤さんから声をかけられた。

声に応じて、彼女の方に近づく。

彼女のそばには一人の男性と女子生徒が立っていた。

 

 

「紹介するね! 顧問の鈴木先生と部長の神山先輩」

 

 

鈴木先生と呼ばれた男性は、30代ほどだろう。

少しくたびれた雰囲気をもった人物だった。

神山先輩はショートカットでいかにも運動部といった、堂々とした佇まいだ。

だが、その二人には……。

 

 

「残穢……」

 

「ん? 菅谷さん、なにか言った?」

 

「……ううん」

 

 

不思議がる佐藤さんを適当に誤魔化したけど、二人には確かに残穢ーー呪霊の痕跡が残っていた。

どちらも首筋に。

どうやらこのテニス部と呪霊が関係あるのは間違いないみたいだ。

 

 

「君が転校生?」

 

「はい。テニス部に興味があって」

 

「そっかそっか! 歓迎するよ!」

 

 

道具もないみたいだし、今日は練習の様子を見学してよ。

その言葉に頷くと、神山先輩は練習に戻った。

顧問の先生は何も言わずに、校舎の方に戻っていった。

 

 

「菅谷さん、私も練習に戻るね!」

 

「あ、うん。僕は適当に見てるよ」

 

 

さて、僕は調査だ。

まずは部内の噂話でも集めるか。

 

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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