呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第13話 朱殷ー参ー

ーーーーーーーー

 

 

「どういう、こと……?」

 

 

針倉術師の腕に抱えられる彼女の顔は、確かに長野桜のものだった。

 

双子?

呪霊『赤マント』の術式?

それとも……?

さっきまで昇降口で話していた彼女は一体……?

 

 

「長月ちゃん」

 

「っ」

 

 

『赤マント』を挟んで向こう側からの針倉術師の一声で我に帰る。

考えるのは後だ。

今は目の前の呪霊を取り込むことを考えなきゃいけない。

そう思い直したところに、

 

 

ーーグンッーー

 

「っ!」

 

 

奴の一撃。

咄嗟に体を捻り、避ける。

同時に術式を展開、『毒蟲』を奴めがけて放つ。

だが、その攻撃はすり抜けてしまう。

一瞬の判断だったから狙いがぶれた、とかではない。

すり抜けた、のだ。

 

 

「これは……」

 

「恐らく奴の術式だろうねぇ」

 

 

思っていた以上に厄介そうだ。

そう言う針倉術師。

 

 

「仕方ないねぇ」

 

 

彼は助け出した女子生徒ーー長野さんをトイレの個室に隠した後、やれやれと言いながら個室から出てきた。

 

彼女のことを考えるとここを離脱するのが一番だろうけど、奴に隙がない。

だから、先に祓う。

そう判断したんだろう。

彼はネクタイを緩め、懐から鋭い針を取り出す。

2cmにも満たない短い針だ。

それを、

 

 

ーーシュッーー

 

 

『赤マント』に飛ばす。

飛ばした針の軌道は見えなかった。

恐らく奴もそうだろう。

さっきまですり抜けたはず奴の体ーー腹に当たる部分にそれは確かに刺さった。

奴がそれを認識すると同時にーー

 

 

『ーー』

 

ーーパァァァンッーー

 

 

ーー爆ぜる。

 

 

「私の呪力を針を媒介にして流し込んだ。これが私の術式」

 

「『針灸』」

 

 

爆発を受け、よろめく『赤マント』にすかさず術式の開示。

どれほど効果があるか分からない。

任務に入る前には聞いてはいたけど、彼の術式『針灸』は針を通して呪力を流し込むだけ、という予想以上にシンプルな術式だ。

術式効果を多少でも上げておくに越したことはない、という考えなんだろう。

 

針使い。

そこまで強くはないその術式で準一級まで登り詰めたというのだから、実力は確かなんだと再認識する。

軽薄さと不謹慎な態度は大概だが。

 

……ともかくそれはいい。

今は目の前のことに集中だ。

 

 

「ダメじゃないか、長月ちゃん。咄嗟のことで呪力がこもってなかったよ」

 

「…………はい」

 

 

まだ呪力のコントロールが完璧ではないとはいえ、『毒蟲』の扱いはある程度はなれているはず。

現にさっきは奴の左腕を喰らえた。

けれど、今はーー

 

 

「…………」

 

「さて、長月ちゃんどうする?」

 

 

そう尋ねてくる針倉術師。

やることは単純だ。

 

 

「祓うために術式を探る」

 

「うん、当たりだよ」

 

 

再び構える。

 

まずは整理しよう。

奴に僕の術式は通用する。

それは確かだ。

ただ、もう奴の左腕も腹もは回復している。

呪霊は呪力でその体を再生できるのは、紡ちゃんに教えられて知識としては知っている。

だが、それとはまた何かが違う感じがする。

…………蟲だけでは分からない。

ならばーー

 

 

「……針倉術師」

 

「なんだい?」

 

「こいつを呪力で殴ります」

 

「ふふふっ、いいね」

 

「サポート、お願いします」

 

「はいはーい」

 

 

一瞬、目をつぶり、込める。

目を開けると同時に動く。

 

 

「ーーーー」

 

 

身を低く、長身の呪霊の懐へ。

50cmの注射器。

リーチは長いが、逆に言えば懐に入ってしまえばそれで突き刺すことはできない。

しかし、奴も強引に懐の僕へ注射器を向けてくる。

それを

 

 

「『針灸』、爆ぜろ」

 

ーーパァンーー

 

 

こちらも強引に弾いて、注射器を腕ごと仰け反らせる。

そのまま僕は、

 

 

「ふんっ!!」

 

ーーバキィィッーー

 

 

呪力を込めた拳を上へ振り抜く。

それは『赤マント』の腹を捕らえ、奴を天井に叩きつけた。

 

 

「なかなかいいアッパーだ。ボクシングジムにでも通ってたのかい?」

 

「…………っ」

 

「ん? 長月ちゃん?」

 

 

針倉術師の軽口。

それに、返せる余裕はない。

なぜなら、この機に追い討ちをかけ一気に叩くはずだったから。

けれど、僕は『赤マント』を喰らうための『毒蟲』を出さなかった。

いや、出せなかった。

 

 

「…………右腕、痺れてます」

 

 

僕のもとへ寄ってきた針倉術師にそう告げる。

違和感というにはハッキリしたもの。

『赤マント』を殴った右腕が痺れ、力が入らない。

拳を握るのも厳しい。

 

これもこいつの術式?

長野さんのこと然り攻撃のすり抜け然り、術式が多すぎる。

この呪霊は一体……?

そう思って、僕は奴を叩きつけたはずの天井を見上げて、驚愕する。

そこにはもう奴の姿はなかった。

 

 

「どこに!?」

 

 

落ちてくれば流石に分かる。

穴も空いてないから、上の階に行ったのも考えにくい。

……いや、あのすり抜けがあれば上にも行けるのか?

 

 

 

 

『アカいかみカーーあおイカミか』

 

 

 

 

ゾワリ、と。

背後からの声に思考が中断される。

瞬時に振り返る。

 

僕の顔のすぐ脇に能面があった。

 

危ない、と思うよりも先に。

首筋に激痛が走る。

 

 

「か……ッ」

 

 

それが注射器を突き刺された痛みだと気づく前に、もう一度あの声が耳に入ってきた。

 

 

『アカいカみカーーあおイカみか』

 

 

「長月ちゃん!」

 

ーーシュッーー

 

 

針倉術師の声がして、激痛は消える。

だけど、動けない。

倒れ込み、荒い呼吸のまま、僕から距離をとった『赤マント』を睨み付ける。

 

 

「は……はっ……」

 

『………………』

 

 

あの不気味な問いかけはしてこない。

 

気を張り続けろ。

さっきは目を離した隙に回り込まれた。

このまま注意を反らすな。

注意を、

 

 

「そ、ら…………」

 

 

そこで僕は意識を失った。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

『………………』

 

「まったく……君はよくピンチに陥るねぇ」

 

 

気を失って腕の中でぐったりとしている長月を針倉は笑う。

 

 

「流石にいきなり一級相手は部が悪かったかな」

 

 

しかし、この程度の呪霊は取り込んでもらわないと私が困るんだよ。

誰に言うわけでもなく、針倉は続ける。

 

 

『………………』

 

「私の隙を窺っているつもりかもしれないけど無駄だよ、『赤マント』くん」

 

『………………』

 

「言葉がまともに通じるとは思わないけれど、一級ならこっちの力量くらいは測れるだろう」

 

 

彼の言葉を受けてかは不明だが、『赤マント』は次の瞬間には姿を消していた。

針倉はそれを確認して、長月を抱え上げる。

 

 

「私が祓うのは簡単さ」

 

「けれど、奴は君が祓わないとね、長月ちゃん」

 

 

それは彼女の成長を思ってか。

それともなにか別の思惑があるのか。

意識のない長月には、その言葉の真意を確認する術はなかった。

 

 

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次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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