呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第15話 朱殷ー伍ー

ーーーーーーーー

 

 

成領中学校での任務中、準一級術師針倉優成が同校教諭鈴木和矢を拘束。

特級仮想怨霊『赤マント』に関わる事件の参考人として聴取するため、呪術高専所属の補助監督への引き渡しを行った。

その後、呪術高専に輸送されてきた車両から、補助監督二名と鈴木の遺体が発見された。

その遺体は、身体の水分が全て抜き取られ、まるでミイラのような状態であった。

 

遺体及び車両から見つかった残穢は、現在までに登録されている呪霊・呪詛師のどれとも合致しなかった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「ということで、この呪具で次に『赤マント』に襲わせる生徒を決めていたようだよ」

 

 

そう言って、針倉術師は僕に小さな赤い珠を渡した。

ビー玉くらいの大きさで、よく見ると珠自体は透明で、赤く見えるのは中に漂っている濁った赤い気体のせいのようだった。

こんなものであの呪霊を操っていた?

そんなことが出来るのか?

 

 

「まぁまぁ、操るとまではいかないね。あくまでも方向性を定めるだけさ」

 

「方向性……」

 

「そ、この珠を狙いたい相手にぶつけ、中に入っている気体を浴びせることで『赤マント』が狙いやすくする、だそうだね」

 

 

なるほど。

マーキングのようなものか。

針倉術師の説明で、その仕組みをなんとなくだけど理解した僕は、赤い珠を返し、尋ねる。

この呪具がここにあるってことは……。

 

 

「それで、この呪具の持ち主は?」

 

「ん? 高専関係者に引き渡したよ。黒幕についても吐きそうになかったし」

 

「……黒幕?」

 

 

不穏な言葉が聞こえ、聞き返す。

 

 

「鈴木って教師はただの小物だった。そもそも呪術も信じてなかった」

 

 

嫌いな生徒に投げつけると、その生徒が貧血になる。

その程度の認識だったらしい。

録な先生じゃないねぇ、と針倉術師は笑う。

彼に言われたくはないだろうが……まぁ、鈴木がやってることも最低だから、いいとしようか。

 

 

「じゃあ、『赤マント』はもう人を襲わないってこと?」

 

「いいや、そうはいかないねぇ」

 

 

被害を受けた生徒には作為的なものはあったとは言え、もう呪霊自体は動き出してしまっている。

方向性が定まらない分、今までよりも厄介だ、と針倉術師は話す。

って、それじゃあ……。

 

 

「だから、こうしよう」

 

「は?」

 

 

ーーパァンッーー

 

 

彼は、僕に例の赤い珠を投げつけた。

そして、笑いながら言う。

 

 

「次のターゲットは君だよ、長月ちゃん」

 

 

 

ーーーー成領中学校 2階女子トイレーーーー

 

 

 

「はぁ……」

 

 

ため息を吐く。

『赤マント』は僕が祓う気ではいたから、僕がターゲットになるのはいいんだけどさ。

けれど、得体の知れない呪具を女子の顔に投げつけるとか……。

 

 

「ん? なにか言ったかい?」

 

「いや」

 

 

どうやら僕のため息は、トイレの外に待機している針倉術師にも聞こえたようで。

正直今は人の顔に呪具を投げつけるような人と話したくないし、会いたくもないけど、彼のサポートがないと『赤マント』を祓うのは難しいから仕方ない。

……って、早速だ。

思ったよりも例の呪具の効力はあったようで、無駄話をしてる余裕はないらしい。

 

 

「長月ちゃん」

 

「……はい」

 

「気づいてるかい?」

 

「はい」

 

 

辺りの空気が変わる。

目の前の視界が歪み、赤く染まる。

そして、現れる『赤マント』

 

 

『…………』

 

「…………」

 

 

無言で僕と奴は対峙する。

同時に、針倉術師の声が聞こえた。

 

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

 

帳が下ろされる。

かなり狭い範囲に下ろした帳。

事前に打ち合わせた通りだ。

それは外側からの侵入を防がない代わりに、内側からの脱出を完全に封じるもの。

つまり、

 

 

「これで、閉じ込めた」

 

 

幸いなことに、針倉術師の権限で、今日は学校自体への出入りを禁じてもらっている。

だから、帳で外部からの侵入を防がずとも戦える。

内側から奴を逃がさない。

それだけを考えればいい。

 

 

「油断しないように、ね」

 

「分かってる」

 

 

『…………』

 

 

僕の後ろの針倉術師には目もくれない。

奴は僕の方しか向いていない。

それをいいことに、

 

 

ーーシュッーー

 

「『針灸』」

 

 

針倉術師が先に仕掛ける。

奴の足元に針を飛ばし、呪力を送る。

 

 

ーーパァンッーー

 

 

爆ぜた呪力は奴の右足を吹き飛ばした。

だが、勿論すぐに再生する。

 

 

「まだ! 『毒蟲』!」

 

ーーゾゾゾッーー

 

 

そこに追撃。

そのまま左足を喰い千切る。

いける!

 

 

「そのまま全てを喰らえ」

 

ーーゾゾゾゾゾゾッーー

 

 

蟲が奴を覆い尽くし、喰らっていく。

本来ならここで終わるはず。

だが、

 

 

『……………』

 

 

背後に、いる。

一瞬で再生し、僕と針倉術師の間に現れた。

これなら連携して畳み掛けられる。

 

 

「『毒蟲』」

 

「『針灸』」

 

 

二人同時に、術式を展開。

蟲と針が『赤マント』の周囲へ迫る。

 

 

ーーベチャッーー

 

 

「!」

 

「消えた、か」

 

 

けれど、術式は空振り。

奴の姿が目の前から消失してしまった。

 

だが、帳の範囲は狭い。

遠くへはいけないはずだ。

呪力を感じ取れればーー

 

 

 

『あかイカミか、アオイかみカ』

 

 

 

術式を解いたその瞬間、背後からその声は響いた。

振り返る前に、また激痛ーー

 

 

ーーキンッーー

 

『ーーーー』

 

 

ーーは感じない。

 

 

「流石に、同じ轍は踏まない」

 

『…………』

 

 

注射器が刺さらないことに理解が追い付いてないんだろう。

いや、呪霊が理解なんてものするかは知らないけど。

 

『赤マント』は注射器を刺すことで初めてあの質問が出来る。

 

それは予想がついていた。

恐らく首筋を狙ってくるということも。

ともかく、奴が狙ってくる場所が分かっているなら簡単だ。

術式を解いた振りをして、奴を誘う。

首筋に誘導して、そこにはあらかじめ呪力を纏った『毒蟲』を密集させておく。

これが、

 

 

「『蟲纏(むしまとい)』」

 

 

『毒蟲』の新しい使い方。

 

 

「針倉術師!」

 

「ふふふっ、いいね」

 

『ーーーー』

 

 

僕の声を聞き、針倉術師が動く。

やっと思考が繋がったのか引こうとする『赤マント』。

だが、蟲が奴の注射器を捕まえ、離さない。

それを見て、術式の開示を始める。

 

 

「知ってるかい? 術式には『順転』と『反転』が存在する」

 

「僕の針の『順転』は『針灸』ーー僕の呪力を針へ飛ばし、爆発を起こす」

 

「そして、『反転』はその逆の効果。つまりーー」

 

 

 

「術式反転『吸針ー囲ー(きゅうしんーかこいー)』」

 

 

あらかじめトイレの回りに配置された針が、奴の呪力を吸い始める。

話に聞いていた通りの術式。

送り込む『針灸』と吸い出す『吸針』。

反転術式の応用だと針倉術師は語っていた。

その効果は身体が呪力そのもので構築されている呪霊相手には絶大だった。

 

 

『ーーーーーー』

 

 

崩れ落ちる『赤マント』。

 

 

「長月ちゃん」

 

「はい」

 

 

体を翻し、奴と向かい合う。

呪力と蟲を右手に集中させる。

手刀の要領で、奴の首を、跳ねる。

 

 

 

「『蟲纏・一刀(むしまとい・いっとう)』」

 

 

 

切った首から『毒蟲』が入り込む。

喰らう。

喰らう。

喰らう。

呪力を、奴の血を、喰らう。

内側から喰らっていく。

喰らい尽くすまで『毒蟲』は止まらず。

10秒もしないうちに、奴は消え去った。

残ったのは、その残骸。

 

 

「…………ふぅ」

 

「お疲れ様、長月ちゃん」

 

 

上手くいって……よかった。

安堵の息を吐く僕に、針倉術師は奴の残骸を渡してくる。

 

 

「……これは?」

 

「『赤マント』の残りカスさ。それを君が飲み込み、取り込めば終わり」

 

「…………蟲のときはなかったけど」

 

「それは君が直接食べてしまったからさ、むしゃむしゃと」

 

 

そういえばそうだった。

でも、なるほど。

これを取り込めば、『赤マント』が僕の呪霊になるってことか。

 

 

「分かった」

 

「噛んじゃ駄目だよ。飲み込むようにね」

 

 

その言葉に頷き、僕はそれを口にした。

 

 

「あ、そういえばそれ滅茶苦茶不味いらしいよ」

 

「~~~~っ!?」

 

 

そういうことは先に言え!?

 

 

 

 

 

 

「おえっ」

 

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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