ーーーー紡視点ーーーー
走る。
あの防犯カメラーー長野桜が映っていたのは、長月ちゃんがいなくなる直前に立ち寄った土産物屋付近のものだったはず。
そして、こっちの方に向かったなら!
「はぁっ、はっ……」
息を整えて、恐らく彼女が向かったと予想できるエレベーターに乗り込みます。
見ると、私の他には三人。
一組のカップルとその反対側に灰色のコートを着た男性がいました。
そして、針倉さんが合流して合計5名を乗せてエレベーターは下の階へ動き出します。
「ふむふむ」
「針倉さん、どうしたんですか?」
「いや、紡ちゃんは大したものだと思ってね」
ーーグチャッーー
「え……?」
「こうも呪詛師を引き当てるとはねぇ」
カップルの男性の体が急にねじ切れる。
一瞬何が起きたか分かりませんでした。
理解が追い付いたのは、時間にして1秒ほど。
女性の悲鳴が響き渡ります。
それをやったのは灰色のコートを着た男性で、異常に肥大した筋肉に覆われた右腕がそのコートから露出していました。
『
エレベーターの中だと『吹き飛べ』や『堕ちろ』などの強い呪言は使えない。
それに彼が何をしたのか分かりません。
ただ術師ーー呪詛師であるならば。
そう判断して、相手を眠らせる呪符を瞬時に作り、飛ばす。
ですが、
「…………」
「効かない!?」
「紡ちゃん!」
針倉さんの声に反応して、未だ悲鳴を上げねじ切れた男性にすがる女性を庇うように女性と術師の間に入る。
その瞬間に、エレベーターが強く振動し、その動きが止まる。
針倉さんが『針灸』を放ったのだと察します。
「下に落ちた。紡ちゃん、追うよ」
「っ、でも、この人を置いてはいけませんっ」
「そ、なら先に行ってるよ」
そう言って、針倉さんは自らの術式でエレベーターに開けた穴から飛び降りて行きました。
このタイミングで呪詛師に遭遇したのはたぶん偶然ではないでしょう。
長野桜とあの灰コートの呪詛師は繋がっている。
そんな気がーーいえ、確信に近いものです。
でも、この女性を放っておくわけにもいきません。
私は……。
「ここは危険です。私と一緒にここを離れましょう」
ーーーーーーーー
牧さんと合流して、女性を安全な場所に避難させた後、私は再びあのエレベーターに戻りました。
中に入り、空いた穴から飛び降りる。
足に呪力を集め、強化しながら降りていく。
やがて、一番下に降り立ちます。
そこからエレベーターの扉を開けて外へ。
そこは地下鉄のホームでした。
「針倉さん!」
辺りを見渡しても返事はーー
ーーガァァァンッーー
「!」
返事はない代わりに、轟音がホームに響く。
そちらへ駆け出すと同時に、懐から筆を取り出します。
「『針灸』」
針倉さんの声。
そして、呪力が爆ぜる音。
音のする方を見ると、いました!
「針倉さん!」
「やぁやぁ、紡ちゃん。遅かったねぇ」
いつもの軽口。
だけど、いつもと違い、その額には汗が伝っていました。
本来なら不謹慎なことを言いながら、涼しい顔で戦闘も終えるような人です。
だから、その状態が異常なのはすぐに察しました。
「強いんですね」
「……まぁ、それなりにはね」
針倉さんの視線の先に、灰コートの呪詛師はいた。
『針灸』で吹き飛ばされたにもかかわらず、大きなダメージを負った様子はなし。
ゆっくりと、でも、しっかりした足取りでこちらへ進んできます。
「呪言で動きを止めます! その間に『吸針』で呪力を吸ってください!」
言うと同時に、走り出す。
恐らくエレベーターの中では呪符だったから効かなかったんでしょう。
私の『呪言』は呪符ではなく、相手の体に直接書き込むことで効力が強化される。
相手に近づくというリスクを負うことで、術式が強化されるから。
だから、呪力で強化した脚力で距離を詰める。
「……………」
幸いなことに相手の動きは鈍い。
懐に入る。
これなら!
『
相手を地面に叩きつける呪言。
並の呪詛師ならこれだけで勝負がつくものです。
だから、私は油断していた。
「…………」
「え……?」
何事もなかったかのように、目の前の光景は変わらない。
いえ、目の前の彼はゆっくりと、でも確かに肥大した右腕を振りかぶりました。
そして、彼の右腕は、
ーーバキィィィッーー
私の右腹部を捉え、私の身体を破壊したのです。
ーーーー長月視点ーーーー
ヤバいとは思ってた。
出られないとか、身動きがとれないとか。
そういう類いのヤバさ。
けど、思ったよりも状況は悪い。
最悪と言っても過言ではない。
なぜならぐるぐる巻きに縛られた僕の前に、とある人物が立っていたからだ。
いや、人物と言っていいのだろうか?
「……呪霊に近い」
呪力とか残穢とか。
そういうのがやっとはっきり分かるようになってきた。
だからこそ分かる。
この異世界ーー『生得領域』を作り出してるのが目の前のこの人物であろうことが。
「…………」
『…………』
沈黙。
相手が呪霊である以上こちらは下手に動けない。
なのだが、相手も動いてこない。
「…………」
『…………』
試しに、一歩下がってみる。
すると、相手も一歩下がる。
次は右へ。
相手はこちらから見て左へ。
こちらと対称な動きをしてくる。
なぜか敵意は……感じない。
「お前は……」
『お前は……』
……なるほど。
何となくだけど、この呪霊の正体とこの異世界の正体を理解した。
ならば、できる。
この呪霊を上手く使って、ここを脱出するんだ。
次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
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よい・やってみせよ
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完結したんだからNG
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いや、むしろ私が書こう(有能絵師)