ーーーー地下鉄ホームーーーー
灰コートの攻撃を受け、紡が吹き飛んだ。
その体は地下鉄のホーム下、レールの上へ転がる。
そんな彼女に駆け寄る針倉。
追撃を警戒しながら、反転術式で回復を試みる。
「……はっ……ふぅ、ふっ……」
殴られた右肺の損傷が酷く、呼吸が上手くできていない。
そう判断した針倉は針を彼女の右胸部へ。
反転術式で作り出した正のエネルギーを流し込む。
恐らく彼女は、この戦闘ではリタイアだろう。
針倉はそう考え、紡を右手で抱えた。
幸いなことに針が彼女の体に刺さってさえいれば、反転術式は回せる。
「さて、私はここを退くことにするよ。まだこの娘を殺されるわけにはいかないからねぇ」
この娘にはやることがある。
そう言って、ニヤリと笑う針倉。
「君はどうする? 退くのかい」
「…………」
灰コートの男は答えない。
強い呪詛師ではある。
だが、動きは鈍く、逃げることくらいはできる。
針倉には一般人を助ける気は更々なく、もし自分を追ってきたところで一般人を遠ざけるために下ろした帳を上げ、このまま駅に戻って一般人の中に紛れればいいだろう。
そんな風に考え、逃げる算段をつけていた針倉の横、ホームの先から声。
「いいや、退かせんよ」
「!」
不意に聞こえた声に、針倉は右側へ視線を向けてしまう。
その隙をついて、灰コートの男が雄叫びをあげながら迫る。
ーーバキィィッーー
「グッ……」
瞬時に判断し、呪力で固めた左腕で受け止める。
咄嗟に紡を抱える右側を庇う形で受けたが、針倉は自分の左腕が折れたことを悟った。
いくら針倉が準一級といえど、異形の右腕とパワーを持つ灰コートの全力の一撃。
まともに受けた結果、その体は壁に叩きつけられる。
勿論、紡も放り出され、彼女の体はある人物の腕の中に抱きかかえられた。
「女性はもっと丁重に扱うもんじゃ、坊主」
まるで老婆のような口調で、彼女は針倉に忠告した。
その姿を見て、針倉は一言その名を呼ぶ。
「長野、桜……」
レールからホームへ飛び上がり、紡をホームの床に横にさせた『長野桜』は灰コートの男の側に歩み寄る。
そして、彼の頭を撫でながら、針倉を見下ろし話しかけた。
「ふむ。思ったよりも元気そうじゃのぅ……呪力の扱いだけでそこまでダメージは抑えられまい。何かしたか?」
小首を傾げる彼女。
外見だけで言えば、決して不細工ではない。
むしろ中学校での姿よりも人の目を惹く何かを纏っているように感じられる。
「化粧でも学んだのかい? それ、中学校の校則に違反してるんじゃないかな」
「いやはや儂に言える立場かいな、針倉先生」
お互いを煽るように言葉を交わす針倉と長野桜。
と針倉にとってそれは時間稼ぎ。
呪力を纏わせた針を動かし、ホームまで這わせるための。
そして、
「『針灸』!」
呪力が爆ぜる。
その直前ーー
「『
「あぁ、ぁぁぁっ!!」
長野桜の声に反応するように、灰コートの男ーー『膿腕』が飛び出し、彼女の盾になった。
「なるほど、その男は君の傀儡ってことか」
「いいや、右腕と言ってほしいのぅ」
男はかなり頑丈なようで、『針灸』を受けてもそこまでダメージを負っていない様子だった。
「この子は『膿腕』といってな。生まれつき右腕が肥大化し、脳も発達できない子だったのよ」
「可哀想なことに親に捨てられてのぅ」
「それを君が拾って呪詛師に育てたってことか」
御名答。
そう言って妖艶に笑う長野桜。
その笑みは中学生のそれではないことは自明であった。
「……まぁ、それはいいさ。その男の境遇なんて私にはどうでもいい」
「おや、つれない反応じゃな」
「私が知りたいのは君の目的だ。目的が分からないのは不気味なんでね」
「安心しなさいな。儂は坊主とそこの娘には興味がないからのぅ」
じゃあ、君の目的はーー
「菅谷長月、か」
「それも御名答」
長野桜が答えると同時に、膿腕が再び襲いかかる。
真っ直ぐに大振り。
それを跳んで避ける針倉。
空振った右腕の上を駆け、膿腕の右側頭部を呪力を込めた脚で蹴り抜く。
だが、
「甘いかっ」
「あぁぁぁあぁっ!!!」
ーーブンッーー
右腕を上へ振る膿腕。
針倉はその腕を蹴り、宙を駆け、二人の後ろへ。
そこには紡の体。
「これで、私の目的は完了さ」
横たわる体を抱え、そう告げる。
「ほう。端から儂らと戦う気はない、と」
「言っただろう? 退くってさ」
「クックックッ、ようやりおる」
追おうとしてくる膿腕の足元に、針を飛ばす。
そのまま呪力を流し、爆発を起こした。
「呪力でホームの床を破砕し、煙幕代わりにしたか。不気味なのはどちらかのぅ」
興奮する膿腕を撫で、落ち着かせる長野桜。
「……ふむ、あの坊主が下ろした帳が消えた。いずれ非術師がここに降りてくるじゃろうな」
「折角東京駅まで来たんじゃ。めぼしいモノ数匹搾り取ってから帰ろうかの。上手く血を搾り出せたら、膿腕にも少し分けてやろう」
長野桜の浮かべた笑みは。
まるで御馳走を前にした子供のようで、孫を慈しむ老婆のようであった。
「……向こうではどれ程経ったかは知らぬが、そろそろよいかの」
「そろそろ『あの娘』も力尽きておろうて」
次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
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よい・やってみせよ
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完結したんだからNG
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いや、むしろ私が書こう(有能絵師)