ーーーー秋葉原 中央通りーーーー
本来ならば休日で歩行者天国になるはずの中央通りに、今いるのは3人だけ。
針倉と黒野堀。
そして、もう1人。
秋葉原駅に向かおうとする二人の前に立ち塞がる人物がいた。
「ギャルに、チンピラ……やだなぁ……」
目の回りの隈とボサボサで傷んだ髪。
上下黒のスウェットに身を包み、左の親指の爪を噛むその少年は決して高専側の人間でない。
呪詛師。
名を『
その名前ですらも本当のものではなく、『膿腕』同様に長野桜につけられたものだ。
「ボクの苦手なタイプだ……」
ボソボソと喋りながらも、彼は二人の前から避けようとはしない。
覇気は感じない。
だが、弱くはないのだろう。
「急いでるんだけど、退いてくれないかな」
「それは無理な相談だよ……ボクは時間稼ぎを頼まれてるんだ」
針倉の言葉にそう答える『才羽』。
「ふむふむ。なら、仕方がないねぇ。ね、黒野堀ちゃん」
「はぁ、かったる」
針倉の呼びかけにため息を吐きながら、彼女はスマホを取り出した。
ゲームをするため、ではない。
それが彼女の術式。
ーーパシャッーー
「『
撮影した対象の画像を編集することで、編集した通りの現象を現実にも引き起こす。
『薙』は撮影した画像に線を入れることで、切断する技。
彼女の術式の中で最も簡単だが、強力なものだった。
ーースパァァァンッーー
術式が発動、『才羽』の首が飛ぶ。
崩れ落ち、その体はピクリとも動かない。
「さっすがだねぇ。『落筆呪法』万能な術式で羨ましいよ」
「これさぁ、呪力チョー使うからヤなんだよ」
「それじゃ休んでても構わないよ。日比谷線の方は七海くんだしダイジョブでしょ」
駅に向かって呪詛師2人を祓うだけさ。
針倉はそう言って、歩を進めようとするがーー
「……だから嫌なんだよ。こういう人種は話を聞かなくてさ」
『才羽』はおもむろに立ち上がり、再び針倉たちの前に立ち塞がる。
飛ばされた首は離れたまま。
「マ?」
「……えぇと、首はどこだろう……」
うろうろと首を求めてさまよい歩く『才羽』。
思わず黒野堀は一歩、後退る。
それを見た針倉は冷静に呟く。
「不死身?」
「そんなところ……」
「なるほどね、それは時間稼ぎにもってこいな訳だ」
さて、どうしようか。
懐から針を1本取り出し、針倉はニヤリと笑った。
ーーーー秋葉原駅構内ーーーー
「長野桜……」
「成領中学校の時以来だのぅ、菅谷長月」
あの時とは違う古風な口調。
こっちがこの人の本来の姿なんだろう。
「なんで僕を……」
僕を狙っているというのは針倉術師から聞いてはいた。
だから、『赤マント』や『紫鏡』を使って僕を襲ったんだろう。
だけど、そもそも何が目的で僕を狙っているのかが分からない。
「オォォオオォォ」
「落ち着け、『膿腕』。殺すのはまだじゃ」
「…………」
奴の真意を考えるのは後だ。
今はこの状況を打破する方法を思いつく。
できなければ、僕はここで殺される。
状況を整理して頭を回せ、菅谷長月。
灰色のコートの男『膿腕』。
あれが紡ちゃんが会敵したという『呪言』の効かない術師。
そして、筋肉で肥大した異形の右腕。
見るからにパワーでごり押ししてくるタイプだ。
術式を使ったという話は針倉術師からは聞いていない。
ならば、まずはーー
「『蟲毒』」
ーーゾゾゾゾゾッーー
『毒蟲』を展開して奴らを分断する。
僕から放たれた蟲たちは奴らの身体を瞬時に包み、視界を奪う。
あわよくばそのまま奴らの身体を喰い破れれば……。
「オォォォオッ!!!!」
「鬱陶しいのぉ」
「…………ダメか」
『膿腕』は強引に蟲を振り払う。
長野桜は、何故か『毒蟲』の方が奴から離れていってる。
振り払われたのはともかく、長野桜の方はどういう理屈だ?
僕から蟲への指令が届いてない……というわけでもなさそうだけど。
……でも、一瞬奴らの間に距離ができた。
「『赤マント』!」
その隙に、『赤マント』を呼び出し、
「女の方を相手にして」
『…………』
長野桜へ向かわせる。
紡ちゃんの『呪言』が効かなかったことから推測するに、『膿腕』には言葉が通じない。
ならば、問答で術式が発動する『赤マント』は言葉が通じる長野桜に当て、僕が『膿腕』を相手にする。
ーーゾゾゾゾゾッーー
走りながら『蟲纏』を発動。
それと同時に『毒蟲』も展開する。
蟲で翻弄しながら、隙を突く。
これで時間を稼ぎ、紡ちゃんがこちらに来てくれるのを待つしかない。
彼女が来てくれれば、長野桜は倒せるはずだ。
後は『膿腕』を誘導して、針倉術師もしくは七海術師の方へ連れていけばどうにかなる。
「オォッ!!」
ーーブンッーー
距離を詰めた僕への右の大振り。
それを身を屈めて避わす。
そのまま、
ーーゾゾゾッーー
「喰らえ」
屈んだ先にある奴の右足を喰らい切る。
「ガッ!?」
成功。
右足を喰われ、バランスを失った『膿腕』はそのまま倒れ込んできた。
このまま心臓を貫く!
これを防がれたとしても、周りから迫る蟲が喰い破る。
長野桜は『赤マント』が足止めしてくれているはず。
奴にとってこの状況は詰みだ。
だがーー
「オォォッ」
「!?」
普通なら防御体制をとる場面で、奴はさっき振り損ねた右腕を振りかぶる。
体勢が崩れたまま攻撃モーションに入っていた。
「嘘っ!?」
想定外の行動だった。
咄嗟に『蟲纏』を解除し、蟲を『膿腕』との間に固める。
さらに周りに放った蟲も集め、蟲の盾を作り出した。
強度自体は大したことない。
その代わり、拳が僕に当たる前にそれを喰い尽くす盾だ。
「オォォオオォォオォォ!!!!」
ーーブゥゥゥゥンッーー
「っ」
ーーバキィィィーー
結論から言えば、蟲の盾は奴の拳を喰い尽くせなかった。
強引に振り抜いた右拳は、ガードしたはずの僕の両腕の感覚がなくなるくらいには強烈で、僕を後方へ吹き飛ばした。
距離は離せたが、腕は……。
「……ある、な」
折れては、ないと思う。
だけど、しばらくは思うように動かないだろう。
『膿腕』を見る。
正確に言えば奴の右拳を。
蟲は役目をしっかり果たしており、その拳は親指側の半分は蟲で喰らえていた。
なのに、振り抜いてきたということは……。
「避ける気がない……厄介だ……」
「アァァア!!」
ーーブンッーー
血が吹き出るのも構わずに、喰われた拳をまた振るう。
本当に厄介だ。
こいつは自分の身体を守る気がない。
こいつの頭にあるのは僕を殺すことのみ。
恐らく長野桜の指示を完遂することだけを考えているんだろう。
本当に厄介だ。
……仕方ない。
まだ使い慣れてないからうまく使えるか分からないけど……。
「…………ふぅ」
痺れる手で掌印を結ぶ。
呪力を開放。
「来い」
「『
次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
-
よい・やってみせよ
-
完結したんだからNG
-
いや、むしろ私が書こう(有能絵師)