ーーーー呪術高専 空き教室ーーーー
秋葉原での一件の後。
私たちは呪術高専に戻ってきていました。
教壇には針倉さんがいて、席には私と牧さん、そして、教室の後ろの壁に七海さんが寄りかかっています。
重苦しい雰囲気。
そんな中、針倉さんが口を開きました。
「黒野堀ちゃんは戦闘不能。私の方で治療はしたが、戦線復帰にはもう少しかかるだろうね」
珍しく苛立った様子の針倉さん。
そこに手を挙げて、牧さんが発言をします。
ですが……。
「あ、あの、優誠先輩……」
「なんだい? 裏切り者の術師を二人も派遣した無能の補助監督くん」
「うぅ……」
言葉の棘が、すごい。
こんな彼は初めて見る……。
相当苛立っているんでしょうか。
と、ここで七海さんが口を開きます。
「今は人に八つ当たりをしている場合ではないでしょう」
「七海」
「菅谷長月、彼女の救出が最優先。違いますか?」
「…………あぁ」
ピリッとした空気が流れる。
けれど、本来の目的を思い出した針倉さんも少し冷静になったのか、一つ息を吐きました。
「状況を整理しよう。長月ちゃんを拐ったのは長野桜で間違いない。前に本人が言っていたからね」
東京駅でのことですね。
私が『膿腕』にやられて気を失っていた間に話していたと言っていましたし。
「問題は相手の勢力です」
「そ、そう、ですね」
七海さんの言葉に牧さんも私も頷きます。
異形の右腕を持つ『膿腕』。
不死身の『才羽』。
長野桜。
そして、
「あとは七海が仕留め損なった準一級1人、だねぇ」
「…………」
「ゆ、優誠先輩っ!?」
また余計な一言を発した針倉さん。
七海さんは……。
チラリと彼の方を見ると、針倉さんの挑発には乗らずに落ち着いた様子だった。
「逃げられた術師の術式は分かっています。その上で対策をーー1人、猪野という術師に応援を要請しています」
問題はないでしょう。
そう言う七海さん。
猪野……という方は分かりませんが、一級術師である七海さんが言うのならば間違いないでしょう。
「ゆ、優誠先輩、七海さん」
「なに、牧ちゃん」
「……五条悟に協力を要請するわけにはいかないでしょうか」
五条悟。
現代呪術界において最強の呪術師。
確かに彼に協力してもらえれば……。
「いえ、あの人は今、別の任務についています。『両面宿儺』関係の任務ですから、こちらに派遣されるのはまずありません」
「というわけだね、牧ちゃんにしてはいい考えだったけど」
「……そう、ですか」
「今いる戦力で叩くしかありません」
「んじゃあ、私と紡ちゃんで長野桜と『膿腕』を叩く。『才羽』は七海がどうにかしてよ」
針倉さんの提案、というだけで信頼はできませんが、それでも今、考えられる最良の割当。
とは思います。
おそらく牧さんも同じ考えのようで、手帳を取り出し、その分担をメモしていました。
「それでいいよね、七海」
投げやりに、針倉さんは七海さんにそう投げかけます。
それに七海さんは、
「…………いえ」
異を唱える。
「紡さんは私と一緒に行動してもらった方がいいでしょう」
「は?」
「あなたは『膿腕』の相手をお願いします」
「…………」
「『才羽』には紡さんの『呪言』は効くのでしょう。であれば、長野桜と『才羽』、『膿腕』を分断し、長野桜と『才羽』は私と紡さんが担当します」
「……はぁ、一級術師様の仰せのままに」
本当に嫌そうに。
針倉さんはそんな皮肉混じりの返答をしました。
「……紡さん、黒野堀さんの様子を見てきてもらえますか」
その後、七海さんの言葉を受けて、私は教室を後にしました。
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紡と牧が退室した後、針倉は七海に問いかける。
「どういうつもりだい、七海」
「……それはこちらの台詞です。私から言えばあなたの考えが分からない」
そのまま数秒間沈黙が流れる。
沈黙を破ったのは針倉。
一歩、七海の方へ詰め寄った。
「聞いているのはこちらだ。恐らく長野桜は『膿腕』と離れない。それを分断するという手間を考えれば、紡ちゃんは私と一緒に行動した方が効率がいい。違うかい?」
「分断は私の拡張術式『瓦落瓦落』で可能です」
あなたの言う効率を考えれば『呪言』の使える紡さんと私が組んだ方がいいでしょう。
七海はそう返す。
「…………七海」
「……正直に話しましょう。私はあなたを認めてません……いえ、信用していないという方が正しい」
「知ってるさ」
「大人である私たちには自分より子供を優先する義務があります」
「紡ちゃんは二十歳だぜ。子供じゃない」
「えぇ、彼女は擦り合わせもできているのでしょう。立派な術師だと聞きます」
「なら、いいだろう。紡ちゃんは私と組むようにしようぜ」
「……いえ、術式を自覚して1ヶ月しか経っていない少女を戦場に立たせるような人間には任せられません」
「呪術師の世界なんてそんなものだろ? 私や七海だってーー」
ズレを直すような仕草で七海は眼鏡に触れた。
そして、針倉の言葉を遮るように、七海は彼に告げる。
「あなたは彼女たちーー紡さんと長月さんを使って何か企んでいる」
「そんな人間に仲間の命を預けられますか」
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「あ、あのっ! 狗巻さんっ」
医務室へ向かう途中の廊下で、牧さんに呼び止められました。
振り返ると、そこには息を切らせて走ってくる牧さんの姿。
「どうかしましたか」
「あ、そ、その……ずっと下を向いていた、ので……」
少し気になって。
牧さんはそう言って、私に訊ねる。
「大丈夫、ですか」
「っ」
どうやら、牧さんにはバレてしまっていたんですね。
「…………正直、混乱しています」
長月ちゃんが無事か心配だという気持ち。
早くしなくては、という焦燥感。
何もできなかった自分への憤り。
そして、呪詛師への怒り。
「今まで、友人と呼べる人はいませんでしたから」
4月から……いえ、私が呪術師だと明かした5月からの1ヶ月間。
短い間だったけど、私にとって長月ちゃんとの時間はとても大切で。
思えば、今までもかなり取り乱していました。
蟲の時も、東京駅の時も。
任務に同行できなかった『赤マント』の時も、長月ちゃんがピンチに陥る度に針倉さんに詰め寄っていた覚えがある。
今までの自分だったら考えられない姿だと自分でも思います。
それでも、すぐにそのピンチを解決してきました。
長月ちゃんは強いから。
「普通、術式を使い始めて、1ヶ月であそこまで強くはなれませんよね」
でも、なんでしょうか。
今回は今までとは少し違う。
そんな嫌な予感がしてるんです。
これは一体ーー
「なんなんでしょうか……」
「…………」
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「…………っ」
目が、覚めた。
辺りは暗く、なんとなく湿気っぽい。
「あ、起きた……」
起き抜けで回らない頭で、声の主を探す。
室内は広くないようで、声の主はすぐに見つかった。
入口の側にいる。
長野桜でも、勿論『膿腕』でもない。
黒スウェットのボサボサ髪の少年。
不意に思考が繋がる。
恐らくこいつはーー!
「『毒蟲』!」
「あー、殺そうとしても無駄だよ。ボクの術式は不死身みたいなものだからさ」
「っ……お前は……」
彼の言葉に僕は一瞬、躊躇してしまう。
その隙に彼は口を開いた。
「はじめまして、ボクは『才羽』」
次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
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よい・やってみせよ
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完結したんだからNG
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いや、むしろ私が書こう(有能絵師)