ーーーー都内 マンションーーーー
都内23区内にある高層マンション。
長野桜ーー『無常』はその最上階の一室にいた。
彼女はモニター越しに、数部屋隣の倉庫代わりに使っている部屋の様子を窺う。
そこにいるのは『膿腕』。
彼は膝を抱えて、ブルブルと震えている。
秋葉原駅で受けた長月の術式『惑夢蝶』によって、彼はずっとそんな様子であったのだ。
「儂の声も届かん……なんとも厄介な」
術式自体は解除されている。
だが、彼の心はまだ帰ってきていない。
「さて……困った。どうしたものか」
ため息混じりにそう呟く『無常』。
実際、彼女にとっての『膿腕』は貴重な戦力である。
そもそも彼女の術式は戦闘向きではなく、事戦闘に関してはすべて彼が担っていた。
針倉との会話の中の言葉、彼が右腕であるというのは彼女の本心。
だから、彼が動けないのは彼女にとって痛手であった。
それに『才羽』には連れ去った長月の監視を命じている。
そのため今、彼女を守る者は存在しない。
「まずいのぉ」
だから、彼女にとって現状は芳しくない状況であった。
ーービキビキビキッーー
突如として部屋の壁に亀裂が入る。
呪力が壁一面に走った。
「呪力を物に込める拡張術式ッ!」
モニターから離れ、部屋の外へ。
同時に、今まで彼女がいたその一部屋が崩落する。
「人のマンションをよくもまぁ」
崩れた部屋の前で、ため息を吐く『無常』。
その背後に2人の術師が立っていた。
「長野桜ですね」
1人は一級術師・七海建人。
もう1人は、
「やぁやぁ、東京駅ぶりだねぇ」
針倉優誠。
「坊主共……人のマンションを破壊しておいてその態度は褒められたものではないぞ」
「人拐いに言われる筋合いはないさ」
「菅谷長月はどこです」
「さぁ、あの娘は『才羽』に任せているからここにはおらんよ」
先程から七海は辺りの呪力を感知してはいる。
彼女の返答通り、近くから長月の呪力は感じ取れない。
ここにいる術師の他は少し離れたところに、1人分の呪力を感じるくらいだ。
本来であれば、呪力の感知に関しては、針倉の方が七海よりも上ではある。
だが、
「それにあの木偶はどうしたんだい? もしかして長月ちゃんにやられたとか?」
「……本当に不愉快な坊主じゃな」
この男を信用できない。
七海はそれをずっと感じていた。
そもそも聞いても虚偽の情報を掴まされる可能性もある以上、自身で呪力を感知する必要があった。
「ふーむ、何部屋か離れたところにいるあれが件の木偶の坊か。なら好都合だねぇ」
そう言って、針倉は懐から針を取り出し、呪力を纏わせる。
その針を『無常』へ飛ばしーー
「『針灸』」
ーー仕掛ける。
『無常』はその場でしゃがみ針を避けた。
針はマンション廊下の壁へ当たり、呪力が爆ぜる。
同時に七海が動いた。
ーーブンッーー
『無常』へ向け、呪符を巻いた鉈を振るう。
『十劃呪法』
対象を線分とした時、7:3の箇所に強制的に弱点を作り出す術式。
その威力は刃のないナマクラの鉈でもーー
ーーブシャァッーー
「ぐっ!?」
ーー呪力で守った人の腕ですら両断できる。
「ナイスだ、七海」
「このまま足を潰します。合わせてください」
「はいはい」
針倉は自身の針に。
七海は鉈に。
呪力を込め、攻撃する。
2人の攻撃は『無常』に命中し、彼女は両足を切断された。
「ぐぬぅ……」
残った右腕で、彼女は自らの体を支える。
満身創痍の状態で、これ以上の戦闘続行は不可能であった。
「呆気なかったねぇ」
「…………反転術式で治療を」
「必要かい?」
「菅谷長月の居場所を吐かせる必要があります。治療を」
「もう少しこの無様な姿を眺めていたかったけれど……仕方ないか」
針倉は針を彼女の左腕と両足に刺し込む。
今度は攻撃ではなく、反転術式による治療のためであった。
呪力が『無常』の身体に流れ込み、傷を癒していく。
「私の治療を受けられるんだから光栄に思うといいよ」
「…………」
「……?」
「…………坊主共」
「! 何かするつもりです! 拘束をーー」
「また会おう」
ーーパァァァンッーー
至近距離で彼女の身体が破裂した。
2人の術師は瞬時に呪力で身を守る。
だが、少し遅い。
ーービシャッーー
「っ、これはーー」
2人の顔に赤黒い液体がかかる。
そして、ほのかに香る花の焼けるような匂い。
七海は話に聞いていた『それ』を思い出し、名を口にする。
「『反魂香』っ」
「チッ、やられた……呪霊が来る」
純度は今までの赤い珠よりも圧倒的に濃い。
呪霊が集まってくる量も比ではないだろう。
七海はすぐに口を開いた。
「呪霊が集まってくる前に呪力の感知を!」
「言われるまでもない」
七海の言葉よりも前に、針倉はそれを始めていた。
そして、既にその呪力を捉えている。
「結果的に私の判断は正しかったねぇ」
「……それは結果論です。あなたがしたことは彼女たちを危険に晒す行為でしかない」
「なんとでも言えばいいさ」
七海と口論しながらも、針倉はすぐに電話を取り出し、彼女に伝えた。
「奴は地下に向かったようだよ」
「……あぁ、そっちは頼むね」
「紡ちゃん」
ーーーー回想ーーーー
黒野堀さんへのお見舞いの後、私は牧さん伝てで七海さんから伝言を受け取った。
内容は今回の任務では、針倉さんが長野桜を、七海さんが『膿腕』を撃破するというもの。
そして、私は『才羽』という少年。
結局、あの後七海さんと針倉さんが話をしたのでしょう。
最初に聞いていた内容とは違っているようでした。
針倉さんからの指示ならともかく、七海さんからの指示ならば信頼できます。
なら、私はそれを全うするまで……なんですが。
「…………」
1人で、相手にするんですよね。
ふと、そんなことを考えて不安になります。
今まではそれが普通だったはずなのに心配になる。
私はーー
「大丈夫なんでしょうか」
何が、なんて惚けるつもりはありません。
それは自分が一番分かってる。
……それでも、私は長月ちゃんを助けたい。
ーーーーマンション入口 紡視点ーーーー
「彼女は地下に向かったようです」
針倉さんからの通話を切って、すぐに彼女に伝えます。
「地下…………何階まであるわけ……」
「たしか、地下3階まであったはずです」
「はぁ、かったる……」
そう言って、黒野堀さんはため息を吐いた。
反転術式による治療を受けたとはいえ、完治には程遠く、未だに治らない顔の傷が痛々しい。
それでも、
「流石にウチの目覚めが悪い……」
仲間思いというかなんというか。
見た目で誤解されがちなんでしょう。
悪い人じゃない、むしろ呪術師には珍しくいい人ですよね。
「頼りにさせてもらいます」
「ん、それじゃーー」
『落筆呪法・穿』
黒野堀さんの術式。
地面を撮影し、それを編集し穴を開けた。
これで地下への直通の入口が出来上がりました。
「これを繰り返せばすぐ着くから」
「はい!」
早速、その穴から下へ飛び降りる。
……うん。
きっと大丈夫です。
黒野堀さんと連携して戦えば、きっと長月ちゃんを助けられる。
「待っててください、長月ちゃん」
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次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
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よい・やってみせよ
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完結したんだからNG
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いや、むしろ私が書こう(有能絵師)