呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第3話 監視者

ーーーーーーーー

 

 

 

呪術師・狗巻紡との出会いから数えて数日、僕は自室の荷物を整理していた。

なぜわざわざこんな大掃除じみた整理をしているかというと、僕に刻まれているという術式ーー『呪霊操術(じゅれいそうじゅつ)』のせいだ。

彼女曰く、

 

「それは使いこなせなければ、呪い……呪霊を集めるだけです。コントロールできるまではこの家にいない方がいいと思います。でなければ……」

 

僕の家族に害が及ぶかもしれない。

ならば、僕はばあちゃん家にはいられない。

 

 

 

ーーーー菅谷家ーーーー

 

 

 

「じゃあ、ばあちゃん行ってくるよ」

 

「あぁ、行っておいで」

 

「……霞は、その……」

 

「……任せな」

 

「ありがとう、ばあちゃん」

 

 

 

「いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「いいご家族ですね」

 

 

 

ばあちゃん家から数百メートル先に立つ彼女は、にこりと微笑みそんなことを言う。

 

 

「自慢の家族だよ」

 

 

チラリとだけ振り返り、僕はまた前に立つ彼女に向き直る。

 

 

「昨日、家に近づいてきてたっていう呪霊は……」

 

「心配いりません。私ともう一人で祓いましたから」

 

「ありがとう、紡ちゃん」

 

 

あっ、そういえば……。

 

 

「紡ちゃん、年上なんだよね」

 

「そうですね、今年で二十歳です。お酒だって飲めます」

 

 

ということらしい。

 

僕の高校には呪術師関係のコネで入り込んでいたとのことで、実はもうとっくに成人しているそうだ。

僕が高2だから、3つ上。

まぁ、同性の僕からしても色気みたいなものは感じていたから、まぁ納得といえば納得か。

 

改めて自己紹介をした時に、それを聞き、敬語を使った方がいいか聞いたんだが……。

 

 

「敬語、いりませんからね?」

 

「あっ、はい」

 

 

凄みを感じる。

なんだろう?

彼女には距離をつめることに何やらこだわりみたいなものがあるような……。

 

 

 

ーーーー車内ーーーー

 

 

 

「さて、これから長月ちゃんを監視しにきているもう一人の術師に会いに行きます」

 

 

彼女が運転する車の中で、これからの予定を改めて聞く。

一応聞いてはいたけれど。

 

 

「なんで僕なんかのために、二人も監視に来ているのか」

 

「そんなことを言いたげな顔ですね」

 

 

コクリと頷く。

 

この数日間で、呪術師は人手不足だという話を聞いた。

東京にある呪術高等専門学校ーー通称・呪術高専の今年の入学生だって二人らしい。

二人って……僕が住んでる地域の普通の高専だったらあり得ない話だよな。

とにかく少ない。

だから、呪いを視認できる人間を探してる。

平たく言えば、スカウトだ。

 

今回のこともその活動の一環だとは言っていたけれど、それにしても僕一人に人手不足の呪術師が二人もつくというのは、素人からしてもおかしいと思う。

 

 

「そのくらい、貴女の術式は貴重なんです」

 

「貴重で……危険なんですよ」

 

 

ポツリと呟く声を僕は聞き逃さなかった。

ただなんとなく、その呟きが彼女らしからぬ声色で。

だから、今は聞いちゃいけない気がして、聞かないふりをした。

 

 

 

 

ーーーーF県 氷川市氷川駅前ーーーー

 

 

 

車に揺られること約1時間。

県内では1、2番目に発展した都市の駅前に、僕と彼女はいた。

端から見ると、女子高生が二人で駅前をうろついてるように見えるだろう。

 

ふと、気づく。

そこに近寄ってくる一人の男性の姿。

 

傷んでボサボサの金髪。

その上、髪の根元が地毛の色であろう黒色になったプリン頭。

それに不釣り合いなライダースジャケット。

今時、田舎にもいない一昔前のヤンキー風な外見の人物。

 

それが、

 

 

 

「やぁ、紡ちゃ~ん」

 

 

 

彼女の名前を呼んだ。

それだけなら、彼女に付きまとうストーカーという認識もできたのだが、

 

 

「あ、針倉さん」

 

 

彼女はその男性を認識していることが分かった。

どうやら、この人が例のもう一人の術師、らしかった。

残念ながら。

 

 

 

「長月ちゃん、紹介しますね」

 

「こちらは針倉優誠(はりくらゆうせい)さん。私と一緒に貴女を監視しにきている呪術師です」

 

 

 

「やぁやぁ、君が『呪霊操術』の術式を持っている17歳の女の子・菅谷長月ちゃんだね」

 

 

 

なんとなく話し方が芝居がかっていて、笑顔も偽物臭い。

一目見ただけでそう感じる人物だった。

 

 

「おやおや、どうやら印象は最悪だねぇ」

 

「だから言ったじゃないですか。女子高生に会うんですから、身なりはちゃんとした方がいいって」

 

「まぁまぁ、そんなに警戒しないでくれよ。私だって女子高生にキモがられるのはショックなんだぜ」

 

 

こんな胡散臭い人が僕の監視、か。

呪術師の人材不足というのは本当らしいね。

 

 

「まぁ、腕は確かなので」

 

 

そんな彼女のフォローも、針倉という男性の嘘っぽさで怪しく思えてしまう。

それほどまでに第一印象は悪かった。

そんな彼は、僕の訝しげな視線もなんのそのといった風に、話を進める。

 

 

 

「それじゃあ、行こうか」

 

祓い(おしごと)に」

 

 

 

 

 

ーーーー氷川市 廃アパートーーーー

 

 

 

再び車に乗り込み走ること20分。

僕と彼女、そして、針倉術師はとある廃アパートに来ていた。

昔は普通に人が住んでいたんだろう。

けれど、今は窓ガラスもほぼ割れ、壁にも蔦が張り巡らされていた。

 

 

「ここは?」

 

「廃アパートに決まっているだろう?」

 

 

そんなことは見れば分かる。

僕が聞きたいのは、

 

 

「数日前にお話ししたかと思いますが、呪いは負の感情によって生まれます。学校や病院、墓地のような場所にはそういうものが溜まりやすいんです」

 

「なるほど。こういう廃屋もそれと同じようなもの、ということか」

 

 

その通りです。

僕の答えに彼女は満足そうに頷いた。

 

 

「一週間ほど前にこの廃アパートに肝試しで入った地元の高校生が行方不明という報告を受けたんです。ただの家出なら話は早いんですが、場所が場所ですからね」

 

「行方不明者の捜索と原因の究明が今回の目的です」

 

 

「…………」

 

 

実害が出てる。

それを聞いて、ふと母親のことを思い出す。

とその思考を打ち消すように、針倉術師が指を顔の前にかざしーー

 

 

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

 

 

ーーなにかを唱える。

それと同時に、廃アパートを囲むように、なにか……幕のようなものが辺りを覆っていく。

 

 

「『帳』といいます」

 

「呪いに関わることで人は恐れ、新たな呪いを生みます。そうならないよう、一般人には認識されにくくする結界で覆うんです」

 

 

僕の心中を察したのか、彼女が説明してくれる。

 

 

「まあまあ、気休めみたいなものだけれどね。どうせ中の人間はほぼ死んでいるさ。死体では呪いは生めないからね」

 

「針倉さん、不謹慎です」

 

「呪いに殺されて死体が残るなら幸運な方だから、高校生諸君の日頃の行いがいいことを願おうか」

 

「針倉さん!」

 

 

「…………」

 

「長月ちゃん?」

 

「……ううん、なんでもない」

 

 

行こう。

そう促し、私たちはアパート内に向かった。

 

 




針倉優誠
イメージ画像
【挿絵表示】

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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