呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第32話 猜疑会敵ー玖ー

ーーーー下水道ーーーー

 

 

誤算であった。

人を雑巾のように搾るほどの怪力の『膿腕』。

人間離れした再生力を持ち死ぬことのない『才羽』。

その二人が破れるなど、『無常』は考えもしなかった。

 

 

「屈辱じゃ……」

 

 

切れる息を整えるために、座り込む『無常』。

自らの計画が根本から崩れたことへの屈辱感。

それ以上に、

 

 

「……優。……泰司」

 

「儂よりも先に死ぬとは……親不孝者どもが……」

 

 

家族を失ったことへの喪失感。

彼女の中にあった感情はそれであった。

 

 

「…………待っていろ。計画を進め、必ず生き返らせる」

 

 

彼女にとって幸いだったのは、二人は彼女に大きな遺産を残したこと。

『膿腕』は死ぬ間際に彼自身の血肉を捧げ、『才羽』は損傷の激しい身体から切り離した頭部を捧げた。

そして、それを『無常』は自らの内に取り込んだ。

つまり、彼女は二人の姿を継承していた。

それだけでなく隷属した人間ならば、記憶や術式ですら継承することができる。

 

だから、彼女は知っていた。

『才羽』が菅谷長月に話した内容も。

 

 

「泰司との会話で、猜疑心の種は植え付けた」

 

「あとはあの娘がどう動くか、じゃのぅ」

 

 

様々な感情の濁流に飲まれながら、それでも彼女は妖艶に笑った。

 

 

 

ーーーー回想ーーーー

 

 

 

「逆に君はなぜ呪術師をしてるんだ」

 

 

 

自分が『無常』に仕える理由や彼の術式を話した彼は、僕にそう尋ねた。

なぜ呪術師をしているか?

それは……。

 

 

「なぜって…………僕の……大切な人を死に追いやった呪いを祓うため」

 

 

母親のこと。

おかしくなっていたとはいえ、大切な家族。

呪い殺した呪霊自体は紡ちゃんが祓ったとはいえ、それでも呪いっていうものは残っている。

それに僕には『呪霊操術』という力があった。

ならーー

 

 

「ふぅん、でも、矛盾してるだろ」

 

「…………」

 

「呪いを祓うために呪いを使役する。その術式は君の目的と矛盾してる」

 

 

自覚は、ある。

それでもこの力で少しでも多くの呪いを祓えるのならば……。

 

 

「あとさ、『ソレ』って本当に偶然なのか」

 

「……は?」

 

 

それ、というのが何を指すのかすぐには理解できなかった。

その様子を見て察したようで、彼は続ける。

 

 

 

「君の母親を殺した呪霊」

 

「本当に偶然憑いたのかね」

 

 

 

それは、どういう……?

 

 

「呪術師ってのは万年人材不足ってのは聞いたことあるだろ」

 

「『呪霊操術』……貴重で、その上強力な術式を持つ人間は喉から手が出るほど欲しい」

 

「家族を呪い殺した呪霊を祓いたいと思うのは自然だろう。さらに上手く丸め込めば呪術師として使えるようになる」

 

 

彼の話を聞く内に、背筋に冷たい何かが這うような感覚を覚えた。

彼の言うこと、理解はできる。

可能性だってあるだろう。

でも、彼女がそんなことに加担するとは思えない。

 

 

「狗巻紡、だっけ」

 

「呪術師の家系……狗巻家の人間。なら、余計に可能性はあるだろうな」

 

「…………っ」

 

 

言い返せる論理的な材料は今の僕にはない。

可能性は、ある。

そう考えてしまう自分がいる。

 

 

「……つまり、あの呪霊を僕の母に憑かせたのは狗巻家だと」

 

「ま、その辺は分からないが、はっきり分かることはある」

 

 

 

「呪術師って人種は信用できるものではないってことだ」

 

 

 

「…………」

 

「ま、論より証拠。百聞は一見に如かず」

 

 

そう言って彼は僕に近づき、何かを刺した。

途端に僕の体から力が抜ける。

声も出せない。

 

 

「心配しないでいいよ。簡単なまじないみたいなものさ」

 

「とにかくそこで見てなよ」

 

「ボクが見せてあげよう、呪術師の本質ーー『業』ってやつをさ」

 

 

ーーーーーーーー

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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