呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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断裁永訣
第33話 疑念


ーーーー記録ーーーー

 

 

2018年6月30日。

都内の呪詛師『無常』が所有するマンションにて。

 

一級呪術師・七海健人

準一級呪術師・針倉優誠

他三名が呪詛師『無常』『膿腕』『才羽』及び元高専所属の準一級術師・有島楽と交戦した。

 

『無常』は逃走。

『膿腕』・『才羽』・有島楽は死亡。

『無常』に拉致されていた現在針倉管理下にある呪術師・菅谷長月を救出、保護された。

 

 

 

ーーーー呪術高専女子寮内ーーーー

 

 

「それで、いつまでここにいるわけ?」

 

 

食堂で黒野堀さんに声をかけられる。

そのまま彼女は向かいの椅子に座った。

 

 

「…………」

 

「紡ちゃんと住んでるんでしょ? 帰らなくていいわけ?」

 

 

どこから情報を聞きつけたのか分からないけど。

まぁ、うん。

 

 

「少し距離を置きたくて」

 

「倦怠期?」

 

「いやいや、そういうんじゃない」

 

 

というか、そういう関係でもないし。

僕が彼女と距離を置きたい理由。

それは、呪詛師『才羽』と会話したあの内容が引っ掛かっていたからに他ならない。

 

 

「黒野堀さん」

 

「ん、なに?」

 

「高専や呪術師が呪霊を一般人にけしかけることってある?」

 

 

高専側の呪術師である彼女にそれを聞くなんて、正確な判断ができる状態ではなかったんだと思う。

そのくらい僕はいっぱいいっぱいだった。

奇妙な質問だったろうに、それでも黒野堀さんは答えてくれた。

 

 

「あるよ」

 

「!」

 

「でも、あくまでも低級の、四級にも満たない蝿頭ってやつだけど」

 

 

事件に絡んだ人間が呪霊を見ることができるか判断するために放つ。

放つ時は必ず呪術師が同伴して、責任をもって祓う。

だから、それが害を為すことはない。

彼女は、丁寧に教えてくれた。

 

 

「……そっか」

 

 

なら、母を呪ったあの呪霊は違うのか。

紡ちゃん曰く、あれは低級。

とは言え、人を殺めることはできたはずだ。

蝿頭ではないはず。

そう納得しかけたところに、黒野堀さんは、

 

 

「ただ……」

 

「上層部は……あの人たちは、何考えてるかわからんし」

 

 

伏し目がちにそう呟いた。

上層部。

たしか御三家とか言ったっけ。

 

 

「……狗巻家はどうなの」

 

 

思わず口をついて出た疑問。

それに、彼女はまた顔を伏せて答える。

 

 

「わかんない」

 

 

僕の中の疑念は、まだ消えない。

 

 

 

ーーーー高専入口ーーーー

 

 

「さ、任務だ」

 

 

高専を出たところに集合。

そう言われて集まると、そこには針倉術師の姿があった。

紡ちゃんの姿は、ない。

 

 

「あの……」

 

「ん? あぁ、紡ちゃんはいないよ」

 

「……そう」

 

 

その言葉に少し安心する自分がいる。

針倉術師と2人、というのは嫌だけど。

 

 

「さて、あと2人来るはずだけど……」

 

 

……本当にこの人は任務の情報を僕に伝えてこないな。

僕は正確には高専所属じゃないから、任務の情報が入ってこないの分かってるのだろうか。

いつも通り、この人への嫌悪感を感じながら待つこと10分。

高専内からこちらへ向かってくる2人の姿が見えた。

1人は、

 

 

「あ、やほやほ」

 

「黒野堀さん」

 

 

少し前まで一緒にいた彼女。

『落筆呪法』を使う二級呪術師。

 

それともう1人。

知らない男性。

黒いスーツを着て、マスクをつけた20代半ばくらいの人で、刺すような鋭い眼光の人だった。

 

 

「やぁやぁ、久しぶりだねぇ」

 

「……針倉」

 

「相変わらず暗いなぁ」

 

「チッ」

 

 

暗い。

そう言った針倉術師に対し、舌打ちで返す男性。

初めて見た僕でも分かるくらい嫌っている。

たぶん七海術師以上に針倉術師を嫌っているだろう。

 

 

「長月ちゃん、紹介するぜ。彼は有島哀(ありしまあい)

 

「なんとこの間高専を裏切り、猪野くんに殺された準一級術師・有島楽のお兄ちゃんだ」

 

 

「…………」

 

 

針倉術師の紹介を無視し、こちらへ歩み寄る有島術師。

身長がある。

僕からだと見上げるような姿勢になる。

彼はマスクをしたまま、訊ねてくる。

 

 

「お前が『呪霊操術』使いか」

 

「え……あ、はい」

 

「チッ」

 

 

いきなり舌打ち。

なんだ、この人。

 

 

「おい、一つ言っておく」

 

「…………俺の目の前で『呪霊』を出すな」

 

 

 

「もし出したら、お前ごと切り殺す」

 

 

 

本当に、なんなんだ。

混乱する僕に背を向ける有島術師。

そんな雰囲気を困ったように、黒野堀さんは見ていて。

そして、

 

 

「親睦も深まったようだし、そろそろ任務に向かおうか。なに、準一級が2人に二級が1人。あとおまけの長月ちゃんがいればすぐ終わる任務だ」

 

 

空気の読めない針倉術師がそれを告げる。

今回の任務の内容を。

 

 

 

「『両面宿儺の指』回収ミッションだ」

 

 

 

ーーーーーーーー

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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