ーーーー仙台市郊外 一軒家内リビングーーーー
外の呪いを粗方片づけ、面倒だと渋る彼をどうにか促し、帳を張った後、僕と針倉術師はそのお化け屋敷の中に入った。
中はごく普通の建築だ。
マンションの一室が博物館のようになっていたり、駅が変異していたりはしていない。
生得領域はなし。
なら、大したことはない。
そう思いたいが、
「相手は特級呪物だぜ? そんなわけないだろう」
僕の隣で淡い期待を否定する彼。
「その証拠にほら」
針倉術師が指差す方向……たしか車の中で間取りを確認した時は、キッチンだった場所。
そこから妙な呪力を感じた。
それに何かの物音もする。
「…………『毒蟲』」
すぐに偵察を飛ばす。
『毒蟲』は物音のするリビングへ。
すると、
ーーキィィィィッーー
甲高い叫び声と共に、蟲が消失した。
一瞬の出来事で対応が遅れたことに気づいた時、すでにそれは僕のすぐ側にいた。
人、の形はしている。
しかし、肌は赤黒く、普通の人間では生きているのがありえないほどにその体は痩せ細っていた。
小柄である僕よりもずっと小さい子供くらいの大きさ。
でも、それの顔を見れば、子供のそれとは掛け離れているのが分かる。
『ーーーーーーーー』
言葉にならない言葉を発して、こちらを睨む『ソレ』。
一瞬、その様相にたじろぐ。
「『針灸』」
ーーパァァァンッーー
反応の遅れた僕とそれの間に飛ばした針が爆ぜる。
それを見て、僕も我に返った。
「あれは……」
「どうやらあれが『宿儺の指』を取り込んでるようだねぇ。少なく見積もっても一級かな」
「一級……」
同等級の呪霊ならば十分祓うことができる。
僕の等級は三級相当で、針倉術師は準一級。
どちらにしても格上だ。
「あれあれ? もしかして、ビビってる?」
「っ、そんなことはないけど」
「大丈夫さ。君の『赤マント』も『惑夢蝶』も等級にしたら一級レベル。つまり、君には一級程度の力は与えられている」
それを使いこなせるかは別だけどねぇ。
そう言って、馬鹿にしたように笑う針倉術師。
「『赤マント』!」
対峙した小さな呪いへ向け、『赤マント』を放つ。
針倉術師に言われたからでは決してないが、『赤マント』ならば人型呪霊には強いはずだ。
『ーーーーーー』
何かを発する敵の呪霊。
それに構わず、
ーーグンッーー
『赤マント』は手にした注射器で、小さな体を突き刺しにいく。
だが、相手も避ける。
けれど、それは想定の範囲内だ。
「着地を潰せ」
『………………』
僕の指示通りに、奴の着地地点に合わせて注射器を突き出した。
しかし、それも避けられる。
こいつ、見た目通りに、いやそれ以上に素早い。
「恐らく何かしらの術式、もしくは呪力操作だろう」
呪力が動くのが見える。
針倉術師は僕の隣で解説をする……っていうか、あんたも攻撃をすればいいだろう。
そんな僕の心の声を感じ取っていたのか、針倉術師は答えるように掌印を結ぶ。
「術式反転『吸針ー囲ー』」
相手の呪力を奪う彼の術式。
針が相手の周りを囲んでないと発動できないって話だったけど……。
「いつの間に」
「外のを祓う時に家の外に刺しといたのさ。一流っていうのは準備を怠らないものだぜ?」
一流、ね。
ここ数ヶ月で彼の実力が確かだというのは理解してはいる。
人格はともかく。
「さて、呪力は吸い尽くしたよ。あとは『両面宿儺の指』を回収すればいい。長月ちゃん、探して探して」
針倉術師の言うように、気づけば呪霊は消え去っていた。
あれは一体なにから生まれた呪いだったのかも考える暇もなくーー
ーージクッーー
目の前で針倉術師が刺された。
『………………』
「は?」
僕の呪霊『赤マント』によって。
「なにをしてる!?」
『…………』
ーーザクッザクッザクッザクッーー
僕の呼びかけには答えず、『赤マント』は彼を刺し続ける。
「ぐッ、ガッ」
「止めろ!」
術式を解除しようとするが、上手くいかない。
なんで!?
ーーバンッーー
家の扉が勢いよく開く音。
同時に足音も聞こえてくる。
すぐにリビングに現れたのは、黒野堀さんと有島術師。
「!」
「呪力が乱れてるから何かと思えば……やっぱり呪霊使いなんてろくな奴じゃねぇってことだ」
黒野堀さんはすぐにスマホを『赤マント』に向け、撮影する。
『落筆呪法』で呪霊を祓っているんだろう。
すぐに『赤マント』は血飛沫に変わり、それは針倉術師に降り注いだ。
「ち、違う……」
「…………」
説明しようとする。
だけど、僕には説明をできる材料がない。
『赤マント』が勝手に彼を攻撃した、なんて信じてもらえないだろう。
「おい、黒野堀」
「…………ん」
「呪術規定に基づき」
「菅谷長月、お前を拘束ーーいや、
「っ」
どこからか有島術師は刀を取り出した。
微弱ながら呪力を感じる。
呪具ってやつだ。
「逃がすな、黒野堀」
「……『落筆呪法・包』」
「っ、『毒蟲』!」
ーーゾゾゾゾゾッーー
僕の周りを呪力の膜が包む。
咄嗟に『毒蟲』を放ち、膜の外へ。
ギリギリ数匹が膜の外に出せた。
外側と内側から喰い破れば……。
「喰い破れっ!」
「させると思うか?」
有島術師がこちらへ刀を構えたまま迫ってくる。
気のせい、ではない。
彼の周りに呪力の円が見えた。
円と刀。
……嫌な予感がする。
早くこの膜をっ!
「シン・陰流『簡易領域』ーー」
呪力の円が迫る。
「ーー『抜刀』」
ーーブンッーー
ーーブチッーー
膜を喰い破ったのと抜刀は本当に同時だった。
予想以上に速く、防御のため咄嗟に出した左手が少し切られる。
「っ、『惑夢……」
……いや、今は出せない。
『赤マント』が祓われたことで、僕の呪力量はずいぶん少なくなってしまっていた。
なら、今とれる選択肢は一つ。
「『毒蟲』ッ!!」
ーーゾゾゾゾゾゾゾゾゾッーー
残る呪力を使って蟲をばら蒔く。
できる限り多く、目の前が真っ黒になるまで放出する。
「チッ、おい、これどうにかしろ!」
「っ、無理。下手に動くとウチらも喰われるし」
「クソッ」
『毒蟲』を目眩ましにして、僕はどうにかそこから逃げ出した。
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次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
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よい・やってみせよ
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完結したんだからNG
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いや、むしろ私が書こう(有能絵師)