呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第40話 影鬼ー弐ー

ーーーー1ヶ月前 菅谷家ーーーー

 

 

 

「なんで、こんな……」

 

 

目の前には、ばあちゃんの亡骸。

僕の腕の中にあるその身体は、もう冷たくなっていて手遅れなんだと分かる。

腹部にも大きな穴が空き、血も沢山……。

 

 

「うっ……」

 

 

嘔吐する。

混乱と悲しみと怒り。

誰が?なぜ?なんのために?

自分でも処理し切れない感情が頭の中をぐるぐるしている。

しばらく混乱が続き、

 

 

「…………菅谷長月」

 

 

彼女の声で、我に返る。

 

 

「……『無常』」

 

「家族か」

 

「あぁ……ばあちゃんだ」

 

 

それを聞き、『無常』は亡骸の前で手を合わせる。

呪詛師にそんな感情があるか分からないが、それでも死を悼んでいるように見えた。

 

 

「ここは儂が処理しよう。無論、この遺体は取り込まん。安心せい」

 

「………………」

 

 

今だけはその言葉を信じることにする。

僕にはもうひとつ確認しないといけないことがあったから。

 

 

ーーーー2階 子供部屋ーーーー

 

 

「…………」

 

 

その部屋の前に立つ。

怖い。

怖い、怖い。

恐怖に支配される。

けれど、僕は確認しなくちゃいけない。

姉として。

 

 

「……霞」

 

 

ノックをして呼びかける。

だが、返事はない。

 

 

「霞、僕だ。長月だ」

 

 

声をかけても、やっぱり返ってくる声はない。

 

 

「入るよ、霞」

 

 

恐る恐るその扉を開ける。

鍵は閉まっていなかった。

だから、僕は最悪の事態を想像していた。

けど、その想像は裏切られる。

中には、誰もいなかった。

想像していたような最悪ではなくて安心する。

ただ安心と同時に膨れ上がる疑問。

 

 

「霞、どこに……?」

 

「菅谷長月」

 

「っ、『無常』ッ」

 

「ふぅ、そう警戒するでない」

 

 

ばあちゃんの遺体は綺麗にしておいた。

後は警察と葬儀屋の仕事じゃな。

『無常』はそう言って、僕に先んじて霞の部屋に入っていく。

 

 

「お、おい!」

 

「……ここは?」

 

「霞の、僕の妹の部屋だ」

 

「ふむ」

 

 

僕の話を聞いて、なにやら考え込む『無常』。

 

 

「何を考えてる?」

 

「いや、随分悪趣味な妹じゃったんじゃな、と」

 

「は?」

 

 

彼女が部屋の一角を指差す。

僕もそちらを見ると、壁には魔方陣のようなものが書かれていた。

 

 

「こ、これ、なんだよ……?」

 

「呪術的なものであることは確かじゃな。じゃが、ふむ……」

 

 

そこまで言って、彼女は黙った。

霞はただの中学生だ。

それはずっとあの娘と過ごしてきた僕が証明できる。

だが、これはなんだ?

壁一面に書かれた魔方陣のような絵。

血で書かれた、とかではないし、残穢は感じない。

 

 

「『無常』、これは一体?」

 

「分からん。じゃが、1つだけはっきりしていることはある。お主の祖母の遺体には残穢が残されていた」

 

「ッ!?」

 

 

叫びたくなる感情をどうにかこらえ、冷静に訊ねる。

 

 

「それは……その残穢は誰のものか分かったのか」

 

「あぁ」

 

 

それは誰のものだ。

それを聞く。

彼女は答える。

そこには思惑も、謀略もない。

ただ事実を述べる温度で告げる。

 

 

 

「狗巻紡」

 

「お主の祖母の遺体には、その呪力の残穢が残されていたよ」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

確かに、僕の家のリビングに残されていたのは。

僕と共に戦った彼女の。

『才羽』を殴り殺した彼女の。

彼女の呪力だった。

 

信じたくはないけれど、そうなんだろう。

自分の五感で確認したのだから、間違いないのだろう。

 

ばあちゃんを殺したのは、紡ちゃんだ。

 

 

 

ーーーー1ヶ月後 H村 影踏峠ーーーー

 

 

 

「ひ、人殺し……? 長月ちゃん、何を……?」

 

 

 

「長月」

 

「……あぁ、分かってる」

 

 

私と目があったのは一瞬で、長月ちゃんはすぐ祠へ向かい直りました。

そして、

 

 

「『友引腕(ともびきかいな)』」

 

 

祠を掴む無数の腕を呼び出す。

私の知らない術式でした。

 

 

「加えて『毒蟲』……喰らえ」

 

ーーゾゾゾゾッーー

 

 

『腕』で掴んだ祠を『毒蟲』が喰らい尽くしていく。

私が呆然としている間に、祠は綺麗になくなっていました。

 

 

「長月、取り込めたか」

 

「いや、まだ。逃げられた」

 

 

彼女とやり取りをする少女。

あの姿は見たことがあります。

一度戦ったこともあるあの少女は、

 

 

「『無常』」

 

 

長野桜という少女を騙った呪詛師。

長月ちゃんを拐った呪詛師。

 

 

「ん? この間は世話になったな」

 

 

私の声に反応して、そんなことを言う『無常』。

そこで納得しました。

長月ちゃんが私を人殺しと呼んだのはーー

 

 

「あなたが長月ちゃんに何かしたんですかっ!」

 

「……何かしたのはお主じゃろうが」

 

「な、なにを!?」

 

「おい、狗巻」

 

「え」

 

 

 

「こいつらの処刑が先だろうがッ!!」

 

ーーブンッーー

 

 

 

私たちの会話に割り込むように、有島さんが斬り込む。

待ってください、という間もない。

『抜刀』。

シン・陰流最速の技。

私には見えないほどの速度。

 

 

「長月ちゃんっ」

 

「…………」

 

 

心配は、全くの杞憂でした。

有島さんの刀は、長月ちゃんの前で止まっています。

 

 

「! あぁっ!? なぜ止められる」

 

「『首吊梯子(くびつりばしご)』」

 

 

また違う呪霊!?

発動と同時に、有島さんの首に縄が現れる。

そして、その背後に巨大な梯子とそれに足をかける呪霊。

その手には縄。

 

 

「っ! ダメです、長月ちゃんっ!!」

 

「…………吊るせ」

 

『つリマしョウね、ツッテしまいマショうネ』

 

 

その一言で、呪霊はゆっくり梯子を上がっていく。

有島さんも手にした刀で切ろうとするけれど。

 

 

「かっ、なぜ、斬れねーー」

 

「っ、『止めろ(ヤメロ)』」

 

 

咄嗟に呪符を作り、飛ばす。

その呪符は、

 

 

ーーゾゾゾゾゾゾゾッーー

 

 

蟲に阻まれてしまいます。

 

 

「なっ」

 

「邪魔をするな、娘。長月は止まらん」

 

「そんなわけにはいきませんっ!! このままじゃ長月ちゃんが有島さんを殺してしまいますっ」

 

 

なんとしてでも止めます!

梯子を上がる呪霊さえ祓ってしまえばいいんです。

左手に呪力を込めて、梯子に近づく。

 

 

「…………」

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

『ツッテしまーー

ーーグヂャーー

 

 

まずは梯子を壊し、それから呪霊を叩く。

予定通り、私の左拳は呪霊の腹を貫いた。

 

 

「かっ、はぁ……はぁ……」

 

「有島さん!」

 

「死ぬかと思ったぜ……」

 

 

どうにか、なりました。

長月ちゃん、落ち着いてもらわなきゃ。

 

 

「長月ちゃんっ! 落ち着いてーー」

 

 

 

「ーー落ち着いてられるかッ」

 

「僕の家族を、ばあちゃんを殺した相手を目の前にして、落ち着けるかッ!!」

 

 

 

その目は、私を捉えていて。

ドス黒い憎しみが伝わってきました。

 

 

「長月、退くぞ」

 

「…………あぁ」

 

 

黒い蟲が長月ちゃんの周りを包み込み、2人の姿は消えてしまいました。

私は呆然とするしかなくて。

ただ、彼女の名前をポツリと呟きました。

 

 

ーーーーーーーー

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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