呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第41話 陰鬼ー壱ー

ーーーー呪術高専ーーーー

 

 

土地神の消失。

それと同時に、私たちには帰還命令が下されました。

勿論私は食い下がった。

あそこにいれば長月ちゃんに会えるかもしれないから。

でも、命令は私が思ったよりも強力なものだったようで、すぐに戻ってくるように指示された。

そして、今、私は、

 

 

「ウチが監視役だってさ」

 

 

明ちゃんと一緒の部屋にいました。

 

 

「明ちゃん」

 

「話はいちおー聞いた。菅谷ちゃんが……」

 

「はい」

 

 

沈黙が流れます。

少しして、それを破ったのは明ちゃん。

 

 

「ごめん、もしかしたらウチのせいかも」

 

「え……?」

 

 

それから明ちゃんは、話をしました。

長月ちゃんから相談されたこと。

そして、長月ちゃんが母親の呪殺に狗巻家が関わってるかもしれないと疑っていること。

それに、

 

 

「『才羽』を殺害した時の紡ちゃん」

 

「っ」

 

「それを見られてたっぽい」

 

 

あれを見られてしまってたんですね。

呪詛師と変わらないあの姿を。

……なら、私を人殺しと呼ぶのも納得です。

 

 

「でも、長月ちゃんのお母さんのことに狗巻家は絶対に関わってないはずです」

 

 

そもそも狗巻家は呪術界と極力関わらないでいたいはず。

だから、呪霊を一般人に放つなんてありえません。

なら、後は

 

 

「私のあの姿……あの衝動を説明すれば……」

 

 

長月ちゃんと和解する。

それを考える私に、

 

 

「ねぇ、あのさ」

 

 

明ちゃんが声をかける。

どうしたんですか、そう返すと、

 

 

「その前に、例の補助監督くん殺しが片付いてないけど」

 

「あっ……そう、ですね」

 

 

そうでした。

まだその件がありました。

 

 

「…………」

 

「その疑惑はまだ晴れてない。なら、和解したとこで意味なくね?」

 

「…………」

 

 

明ちゃんの言う通りです。

なら、私にできることは1つ。

 

 

「私、長月ちゃんのこと調べます」

 

「牧さん殺しと針倉さんへの攻撃。あの2つを解き明かせば呪術高専側も彼女を追う必要がなくなりますから」

 

 

「なら、ウチも」

 

 

そう言って、明ちゃんは頷いた。

かったるそうに、でも、やっぱり、

 

 

「明ちゃんは優しいですね」

 

「べつに」

 

 

ーーーー呪術高専 医務室ーーーー

 

 

「家入さん」

 

「狗巻……紡か。どうした、怪我でもしたか?」

 

 

家入さんの問いに首を横に振る。

怪我ではない。

じゃあ、なんだ?

そう訊ねる家入さんに、私は答えます。

 

 

「紡ちゃんのことです」

 

「……あぁ」

 

「調べてるんです」

 

「そうか」

 

 

コーヒーでも淹れよう。

そう言いながら、入口の鍵を閉めた家入さん。

聞かれたくない話だってことは察してくれたようです。

 

 

「…………それで君はどちら側だ?」

 

 

どちら側。

家入さんはそう聞いた。

ずっと迷っていた私の心の内を見抜いていたのかもしれません。

聞いていた証拠からも分かるように、長月ちゃんが牧さんを殺したのはほぼ間違いない。

それに針倉さんを攻撃したのは事実で。

でも、信じたくない。

そんな2つの感情で揺れていました。

 

 

「私は……長月ちゃんを信じたい」

 

 

「フッ。若さが羨ましくなる」

 

「家入さんだってまだ若いじゃないですか」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

そんな話をしつつ、本題。

 

 

 

「牧さんは、本当に長月ちゃんに殺されたんですか?」

 

「…………これを見てもらおうか」

 

 

見せられたのは、一枚のレントゲン写真。

人の胸部、でしょうか。

それが何か訊ねると、殺された牧のものだと言われます。

その写真の中で家入さんが妙だと感じたのが、

 

 

「傷痕、ですか?」

 

「あぁ」

 

 

牧さんを殺害した際につけられた傷痕だという。

素人目にも、かなり多くの傷がつけられているのは分かりました。

 

 

「どこからも『毒蟲』の残穢が検出されている。それに傷痕のほとんどが内側まで呪力がこびりついていた」

 

「それのどこがおかしいですか?」

 

「……それ自体はまぁ、喰い破られたと言われればそれまでなんだがな」

 

 

ため息を吐きながら、家入さんは1つの傷痕を指差す。

 

 

「綺麗すぎるんだよ、ここだけ」

 

「?」

 

「喰い破られたんだ。普通はもっと酷い状態になる。他の周りの傷のようにな」

 

 

そう言われて見ると、確かにその傷だけ妙に綺麗だ。

スッと何かで刺されたような痕。

確かに普通の刃物ではこうはならない気がします。

なら、一体……?

 

 

「…………さぁな。私から言えることは1つ。残穢は確かに菅谷長月のものだ」

 

「だが、どうにも腑に落ちない」

 

 

「…………」

 

 

違和感。

それを感じているようでした。

 

呪術師っていうのは、どこかイカれてる。

針倉さんや明ちゃん、勿論、私も。

じゃなきゃ、こんな仕事できませんから。

けれど、このイカれ方はなにかが違う。

どこか狂気に近いものがある、そんな気がしてる。

 

 

「…………少し電話してもいいですか?」

 

「あぁ、構わんよ」

 

 

私は今分かったことを伝えるため、明ちゃんに連絡した。

 

 

 

ーーーー石木町ーーーー

 

 

「……ん。わかった、ん」

 

「…………ふぅ」

 

 

紡ちゃんからの連絡で、補助監督くんの死に不審な点が見つかったという事実を聞いたウチは、大きく息を吐いた。

菅谷ちゃんが無実だという可能性もある。

それが分かっただけでも、今の紡ちゃんにとってはいいことだし。

そちらは紡ちゃんに調べてもらうとして、ウチはーー

 

 

「ここっしょ」

 

 

菅谷家。

ここには紡ちゃんは来れない。

上層部は菅谷ちゃんと仲のいい紡ちゃんを監視対象にしてる。

菅谷ちゃんから接触してくる可能性を考えてるから。

だから、ここに来て調べられるのはウチしかいないってわけ。

それじゃ、

 

 

ーーピンポーンーー

 

「…………」

 

ーーピンポーンーー

 

「…………?」

 

 

呼び鈴には反応なし。

 

 

「…………こんちはー、すがや……長月ちゃんの友達だけど」

 

 

声をかけても返事がない。

留守?

鍵は…………かかってない。

 

 

「…………」

 

 

スマホを手にする。

何か、嫌な予感がするから。

 

 

ーーーー菅谷家 リビングーーーー

 

 

中には誰もいなかった。

ただ気配はあった。

 

 

「呪いの、気配……」

 

 

その原因はハッキリしてる。

リビングにベッタリこびりついた血。

人1人が死ぬには十分な量っぽかった。

つまり、人が最低1人は死んでる。

それはーー

 

 

『ヤやっテナイィィぃぃ』

 

「呪霊……」

 

 

ーーこの呪霊の元になった人だと思う。

呪力量からして元々は一般人。

 

 

『チガう、ちガウチチがウ』

 

「…………菅谷ちゃんの家族の誰か」

 

 

情報によると、長月ちゃんにはおばあちゃんと妹ちゃんがいたはず。

たぶん、そのどちらかがここで殺され、呪いに転じた。

 

 

「…………かったる」

 

 

ホントにかったるい。

けど、ここに来たのがウチでよかった。

やっと立ち直り始めた紡ちゃんに、これは酷すぎるし。

 

 

 

「ちゃんと祓う」

 

『オねがガイだ、シんししシンじて』

 

 

 

「『落筆呪法・薙』」

 

 

 

強くない呪霊。

一回で祓うことができた。

 

 

「ウチらは信じてるから」

 

 

ポツリと呟き、静かに手を合わせた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

手掛かりはこの血痕。

これ自体は乾いてる。

ここ数日って感じでもない。

1ヶ月かそれ以上経ってる。

 

 

「遺体はない……ってことは……」

 

 

誰かがウチの前に来た?

警察?

にしては、この建物の管理が雑すぎ。

一般人なら警察に通報してるはずだし。

とすると、ここに来たのは、

 

 

「……菅谷ちゃん」

 

 

それしかない。

って、ん?

そこで気づく。

血痕には残穢が残ってる。

さっきの呪霊のものとそれからもう1つ。

 

 

「これ……紡ちゃんの……?」

 

 

1ヶ月前。

紡ちゃんがここに来たのは聞いてはいる。

でも、呪力を使うようなことはしてないはず。

 

 

「……なるほど。これで、人殺しにつながるわけね」

 

 

少し話が見えてきた。

ん。

これ、紡ちゃんにLINEしとこ。

スマホをいじってメッセージを送る。

 

 

「ん?」

 

 

けど、なぜか送れない。

よく見ると、圏外になってた。

……おかしい。

さっきまではそんなことはなかったのに。

 

 

「まさか……」

 

 

リビングの窓に飛びつき、外を見る。

今は昼の12時。

それにも関わらず、外は真っ暗だった。

 

 

「『帳』……?」

 

 

ウチは下ろしてない。

そもそも『帳』を下ろしたら、ここで何かしてることが高専側にバレる。

だからーー

 

 

 

「やぁやぁ」

 

 

 

振り返る。

家の入口ーーそこに、彼はいた。

ヘラヘラと軽薄に笑う男。

ここにいるはずのない人物が、いた。

 

 

 

 

「針倉……優誠」

 

「元気かい、黒野堀ちゃん」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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