呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第45話 寝覚月ー弐ー

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振り向いた私の目の前には、長月ちゃんがいました。

フードを深々と被り、私と目を合わせないようにも見えます。

 

 

「長月ちゃん……なんで、ここに……?」

 

 

シャーロットさん達は、長月ちゃんの目撃情報があったから任務に向かったはずです。

だから、ここに長月ちゃんがいるのはおかしいのに。

 

 

「そっちは僕じゃない。術式で『変身』した無常だ」

 

「僕が『紡』ちゃんに接触するには近くにいたあの2人が邪魔だったからね」

 

「長月ちゃーー」

 

 

「さて、始めようか」

 

 

そう言って、長月ちゃんは手を結んだり開いたり、手遊びを始めた。

それが術式の発動だと気付くよりも先にーー

 

 

「『友引腕』」

 

「!?」

 

 

ーー右腕を掴まれていました。

痛みはない。

恐らく攻撃ではありません。

でも、やるしかないですよね……。

 

 

「『友引腕』の能力は術式の封印。この腕が触れているところで発動する一切の術式を封印する」

 

「『呪言』は厄介だからさ」

 

 

私の『呪言』を封じてきた。

だけど、今の私にはそれ以外の武器がある。

 

 

「はぁっ!!」

 

ーーブチィッーー

 

 

「!」

 

 

よし、切れました。

この1ヶ月、シャーロットさんからつけてもらった修行は無駄ではありませんでした。

今の私なら戦えます。

戦って長月ちゃんを取り押さえる。

落ち着いて話を聞いてもらえるようしなくちゃいけません……。

 

 

「なら、これだ。『腐大蛇(くさりおろち)』」

 

ーーウゾゾッーー

 

 

また新しい呪霊。

大型の蛇型呪霊、その体長は裕に5mはある。

その名前から腐らせる類いのものでしょう。

 

 

「腐らせろ」

 

「っ」

 

 

飛び掛かってくる呪霊を跳んで躱す。

そのまま上から蛇を呪力を込めた一撃で殴る。

蛇型呪霊の耐久性は低く、それで消えていく。

けど、その攻撃の隙を長月ちゃんは見逃さない。

 

 

「行け」

 

 

下級呪霊の群れが襲い掛かってきます。

ただそれも意味がありません。

 

 

「はぁっ!!」

 

ーーブンッーー

 

 

シャーロットさん直伝の足技の前に、呪霊達は散っていく。

次は何がくるかと警戒していた私でしたが、長月ちゃんはそこで攻撃の手を止めました。

 

 

「…………」

 

「長月ちゃん! 聞いてください!」

 

 

今しかない。

そう思って、私は声を張った。

幸いなことに追撃は来ません。

 

 

「私は……確かに人殺しです」

 

 

長月ちゃんに言われたこと。

それは紛れもなく事実です。

沢山の呪詛師を殺した。

しかも、

 

 

「私には……殺人衝動があります」

 

「幼い頃からずっとです。どうしてもそうしてしまいたいという衝動を心の中にもっていて、でも、そんなことしてはいけないって押し殺していました」

 

 

私には『呪言』という力がある。

私が『死ね』と書けばそれが実現してしまう。

 

 

「両親はそれを恐れて、私にある封印を施しました。衝動を1つの人格として構築し、封印する術式」

 

「けれど、その術式は中途半端なもので、時折その人格は顔を出すんです」

 

 

それがあの呪詛師を殺した時に、長月ちゃんに見られてしまったもの。

私にはどうすることもできない衝動です。

 

 

「だから、人を殺したことを多目に見ろと?」

 

「っ、そんなことはーー」

 

 

 

「ーーばあちゃんを殺したことを許せって言うのか」

 

 

 

そう言う長月ちゃんの瞳は、憎しみの感情に染まっていました。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください! そもそも私は長月ちゃんのおばあさんを殺してなんかいませんっ」

 

「なら、どうしてあの場所にーー殺害現場に『紡』ちゃんの呪力の残穢が残ってた?」

 

「……え?」

 

「僕は確かにそれを感じ取った。僕だけじゃなく無常もだ」

 

 

長月ちゃんのおばあさんが亡くなったのは高専からの報告で知ってはいました。

でも、それをやったのは長月ちゃん自身だと聞いていた。

殺害現場からは長月ちゃんの残穢が残っていたと。

勿論、それを信じた訳じゃありません。

牧さんや明ちゃんと同じく、誰かが殺し、何らかの方法で長月ちゃんに罪を擦り付けようとしてる。

そう思っていました。

だけど、長月ちゃんは現場から私の残穢を感じ取った?

それって一体ーー

 

 

「……これ以上は時間の無駄だ。『毒蟲』」

 

「!」

 

 

長月ちゃんは会話を止め、それを放つ。

彼女が最初に手に入れ、最も使い慣れているであろう呪霊を。

 

 

「待ってください! 話をーー」

 

「喰い散らかせ」

 

「っ」

 

 

こうなってしまっては話をするのは後です。

向かってくる黒いそれから逃げなくては。

呪力で強化した脚力で駆ける。

それでも少しずつ蟲との距離は縮まっていく。

 

 

「っ、なら!」

 

 

太ももの外側にしまってあったそれを構えます。

 

 

「暗器?」

 

「いえ、これも歴とした呪具です!」

 

 

呪具『祟り火の小刀』。

呪力を火に変換する術式が付与された短刀で、シャーロットさんから借りているものです。

これ自体は三級呪具で等級も高くありません。

これを借りたのは、呪具に呪力を込めるという呪力操作の練習の一環だったんですが、

 

 

ーーボッーー

 

「役に立ちましたね」

 

 

目の前に迫る蟲を焼き祓うことに成功しました。

 

 

「『蟲纒』」

 

 

遠距離からの攻撃が効かないことに気付き、一瞬でやり方を変える長月ちゃん。

蟲を体に纏わりつかせ、こちらに向かってくる。

 

 

「っ」

 

 

咄嗟に呪力で強化した右腕で受けた。

けど、長月ちゃんの蟲は呪力も奪ってくる。

長くは保ちません。

 

 

ーーゾゾゾゾゾッーー

 

 

「はぁっ!」

 

ーードゴッーー

 

 

「っ……!?」

 

 

呪力が奪われる前に仕掛けた左手での掌底が彼女の腹に入り、長月ちゃんの体勢が崩れた。

今なら!

 

 

「ごめんなさい、長月ちゃん」

 

 

彼女の右腕を掴み、そのまま引く。

そのまま呪力で強化した膂力で長月ちゃんを床にねじ伏せ、体重をかけ肩の関節を外す。

手応えあり。

荒っぽいことをしてしまいました。

でも、今なら話すことができます。

 

 

「ごめんなさい。すぐに家入さんに治してもらえるようにしますから」

 

「このまま処刑されるのがオチだろ」

 

「そうならないように動いてます。家入さんも、シャーロットさんも上層部に話をしてくれるはずです!」

 

「…………」

 

「信じてください、長月ちゃん」

 

 

これは説得。

……いいえ。

私にできるのはただ自分の気持ちを伝えることだけです。

 

 

「私はあなたの家族に手をかけていない。証拠はありません。でも、私達が協力すれば真実が分かるかもしれません」

 

「だからーー」

 

 

 

「ーー戻ってきてください、長月ちゃんっ!」

 

 

 

「…………」

 

 

長月ちゃんは答えない。

沈黙が流れます。

数十秒ほどで長月ちゃんが口を開きました。

 

 

「僕はーー」

 

 

けれど、その言葉を聞くよりも前に、

 

 

ーーゾゾゾゾゾゾッーー

 

 

長月ちゃんの身体を黒い霧が包んでいく。

いえ、これは蟲?

 

 

「長月ちゃんっ」

 

「…………また来るよ」

 

 

フッと彼女に触れていた感覚が消え、同時に長月ちゃんの姿も私の目の前から消えてしまいました。

 

 

 

「…………長月ちゃん」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「……無常」

 

「どうやら失敗したようじゃの」

 

「お互い様だ」

 

「あぁ、儂も一度殺された。『降霊杖』でどうにか生き返ったが」

 

「…………ひとつ、聞きたい」

 

「なんじゃ?」

 

 

 

「『狗巻紡』が僕のばあちゃんを殺した……本当にそうか?」

 

 

 

「…………儂に言えるのは、あの場にその娘の呪力が残っていたという事実だけじゃ。それはお主も確認したじゃろう」

 

「あぁ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………まぁ、もしその事実を語れるとしたら、一人しかいないだろう。この数ヶ月、呪霊を取り込むことと並行して探しても見つからなかったがのぅ」

 

 

 

「霞」

 

「妹なら何か見ていたかもしれない」

 

 

 

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次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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